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第二節  「暴走を止める者」


謎の女性からの依頼

それに対し話を聞く事を認めたロカルノはその後館に戻った後に頃合いを見計らってその事を伝えた

内容もわからない以上大胆とも言える行為なのだがクラークやセシルは特段驚きもせずその旨を理解した

二人とも「まぁ、ロカルノが言うなら大丈夫なんだろう」っとの事だとか・・

性格の違いはあれど付き合いが長い分信頼という物は確かにある

クラークが良いと言えばキルケやクローディアも当然その意見に同意をする

結局は内容もわからない内に一同依頼を受けるという事で方針が決まった

そんな状態で日は沈み昼間会った女性が訪れるのを待つ一行

 

「え〜っと、一応お茶請けとか用意した方が良いですか?」

 

第2溜まり場、こと和室にて待機する一同、

そろそろやってくるかとキルケがお茶の用意をするのだが何故かそう言う事まで気にしてしまう

それも家事をする者としての性分なのか・・

「いや、いいだろう。客である事には違いないがこんな時間だからな」

すでに日は沈み虫の鳴き声が外に響いている、

普段ならば湯を沸かし和気藹々と入浴タイムに突入している時分だが来客がいる以上行動は制限される

・・っと言えどもいつも集まる場所でくつろいでいることには違いないのだが・・

「それにしても直接私達に依頼・・ねぇ。メルフィ達が来た時を思い出すわ」

食後の紅茶を楽しみながらセシル、雑な女なのだがこうした姿は様になっており

猫かぶりの才能の片鱗を感じさせる

「ふっ、その時に比べてたら礼儀正しい事には違いないか」

セシルの隣で静かに笑うはロカルノ・・

っというのも今回みたいに予め予約をするような律儀な方法ではなくメルフィ達の一件は正しく押し掛け・・

珍しく町に出掛けたクラークを捕まえた末に強制的に招いたようなものである

 

因みにその後日談としてはメルフィの策略としてプラハに

『クラーク氏幼女誘拐疑惑&ロリコン疑惑』が浮上して

彼は館より外に出られない日々を送る事になっていたり・・

事情は違えども同じ屋根の下で暮らすことになっているのだ

・・疑惑を持つ者の視点からしてみれば無理矢理住まわせているようにも見えなくもない

そんな訳で人の噂も75日、しばらくの間クラークは大人しくするしかなかった

 

「・・ふ・・・ふふふふ・・・メルフィには世話になったからなぁ・・」

 

当時を思い出し静かに笑うロリ()疑惑()()()

元々外出しない性分なので影響は強くはなかった

だからと言ってそれは喜ばしい出来事ではなく・・

「ふぅ、全く人間というのは噂が好きじゃからのぉ。妾の予想以上に長引いてしまったわ」

メルフィさん反省の色なし、

っと言っても事情を知った後にアミルにこっぴどく叱られベソをかいていたりしたのだが・・

「まっ・・元々買い出しぐらいしか外出しないんだからいいんじゃなかったの?

どうせメルフィの一件がなくてもトラブっていたでしょうし」

「──言い返せないのが辛いところだな・・」

本人に自覚はないのだがトラブルメーカーな彼、町に出れば何かしら騒動に巻き込まれてしまう

まぁそのおかげでキルケやメルフィが救われた事になるのだが本人としては不名誉な事なので余り嬉しくはないらしい

 

「話はそこまでだ・・どうやら来たようだな」

 

「──、そうですね。綺麗な気配です」

 

和やかな雰囲気の中、ロカルノとクローディアがそう言った瞬間に

表からノック音が響き渡った

 

────

 

「夜分失礼したします」

 

和室に招かれたは昼間のあの女性、和室は初めてなのかどう座ればいいかわからない様子であったが

ラフな格好のまま正座をして落ち着いた

その礼儀正しい依頼主に一同身を引き締める、

彼女の放つ雰囲気からして空気が張り詰められる感じがするのだ

その中セシルだけは同じくらいの髪の長さを持つ美女に興味を持っているらしくじろじろと見つめている

「構うことはない、招いたのは私だからな・・。

自己紹介はしなくても一通りの情報は用意していると見受けるが・・」

「はい、ユトレヒト隊の情報は頭に入れてきています」

「・・それよりかさ、名前ぐらいは明かしてもいいんじゃないか?」

「──失礼、申し遅れました。私はミランダと申します」

礼儀正しく一礼する女性ミランダ、全く動じる事なく自分のペースで話をする

「ミランダ・・か。

了解した、それでだ・・。内容は引き受けてからの説明のようだが・・察するに一国の存亡に関わる物と見た」

ロカルノの言葉にミランダの眉がかすかに動く

「何故、そう思いになるのですか?」

「君の身のこなし・・、正当な訓練を受けた物と見受ける。その姿勢の正しさからして見れば女騎士・・

そんな女性が冒険者に依頼をするには相応の大事だろう」

「・・・・・」

ジッとロカルノを見つめるミランダ、

無表情なのだがかすかにロカルノに対して尊敬の念を抱いているようにも見えた

「そんなに珍しい事でもない。これでも身内に騎士崩れなのが多くてな」

「──ちょっと、どういう事?」

ハイデルベルク一の騎士崩れことセシルが不満を漏らす

他にも彼の身内で騎士崩れと言えば義妹のフレイアもそれに該当するのだが

現職中なので本人の名誉のためが誰も彼女の名前を言わなかった

「恐れ入りました。ロカルノ様のおっしゃる通り私は騎士職に就いていた者です。

そして依頼する内容も貴方様がおっしゃるように国を巻き込んだ規模の話になります・・

それ故に内容をお伝えするのは引き受けて頂けなければ説明する事はできません」

「妥当だな、わざわざこの場で身分を明かす事も頷ける・・。

さて、では依頼を受けるかどうか・・だな。クラーク」

「あいよ。それでは依頼を受ける方は挙手をお願いしま〜す」

一応はリーダー、面倒臭そうに場を仕切る

っとは言えども最初から心つもりはできていたのでそこにいる面々は一同軽く手を挙げる

「・・って訳だ、ミランダさん。依頼を受けよう」

「──あの・・そんなに簡単に引き受けてよろしいのですか?」

余りにあっさりと依頼を受けたユトレヒト隊にミランダの表情が崩れる

「あんたという人を見て判断したんだ。手放しに協力するほど俺達は慈善家じゃないぜ?」

「ふっ、お前にしては真っ当な意見だな」

「うっせ・・」

「・・本当に、よろしいのですか?」

「そう言うことだ、君は信頼に値する・・そう全員思っているのだよ」

「・・・ありがとうございます、では・・詳しい内容をお話します」

背筋を伸ばし深く一礼をした後にミランダはゆっくりと丁寧に依頼内容を説明しだした

 

 

────────

 

それはここより遠く離れた国の話。

周辺国家と有効な関係を築いてきたその国は表向きは平和そのものであった。

しかしそれは表立ってのもの、元々国力が強くない・・

その国は富を得るための有効な手段を持たず細々と農作物で自給をし続ける穏やかな国であるはずであった

事の発端は農地開拓に対する改善を行うために国王が外部から魔術師を雇った事に始まる

国王お抱えの魔術師は特殊な農薬を開発し国は徐々に豊かになっていく

それで終われば幸せなのだが・・

国王は魔術というものに強い関心を示しそれを他国侵略に活用しようと思い立ったのだ

その具体案は最重要機密、しかしその計画に気付く者はいた

そしてそれに気付いた者が今回の依頼者である・・

 

「・・自分の娘からの依頼か・・、親子の仲は宜しくないようなのかな?」

 

話を聞き終えた後に呆れるように笑うクラーク

そう、今回の依頼主は国王の一人娘であるコーネリア姫からのもの

問題の国リキニウスの後継者とも言われている人物であり

ミランダは彼女の侍女として仕え、彼女に代わってはるばるプラハまでやってきたという訳だ

「王は魔術に関わってから人が変わられたように思います、それまでは仲睦まじい親子であったのですが・・」

「魔法というのは知らない人には黒い魅力がありますからねぇ・・。

話からしてみれば貧しい国情が魔法によって改善されたのならのめり込むのも無理はありませんね」

魔術の心得があるキルケにとってはその王の内面が理解できるようだ

「左様です、国王は今まで痩せた土地をいかにして豊かにし国民に平穏を与えるか悩み手腕を振るって参りました。

その苦労も手伝い魔法という物が非常に甘美な物に見えてしまったのでしょう」

「しかし、魔術の深みに足を踏み入れてしまった・・か。厄介だな・・」

「そうですね・・、あのミランダさん。

その最初にやってきた魔術師というのは今でも顧問として滞在しているのですか?」

疑問を口にするはアミル、

飛竜と人の戦いを巡る一件にて敵国がある魔法使いに操られていた事から真っ先にそれを疑ったようだ

「いえ・・、農薬開発の魔術師はその時だけ招かれたようです。

ですので・・誰かに操られたというよりかは独学で魔術を学ばれたと見た方がよろしいでしょう」

「独学か・・一番難儀なタイプじゃの。大概は途中で挫折するもののたまに自分のモノする奴が出てくる

そうなると難しい。何せ魔術というモノは倫理がなければ暴走するのが関の山じゃからのぉ」

「そうですね・・正しい魔というのは制約を守ってこそ成立するものです。

それを進言する人がいない内に習得して他国侵略を行うなんて危険ですね」

人であり人以上の奇跡を行使するのが魔、故にそれを学ぶが上で倫理という物は非常に重要

なんせ使い方を誤れば国の一つ、簡単に滅んでしまうものなのだ

故に巷では魔術師に道徳というものは強く求められ学者兼魔術師のような者も多い

・・もっとも魔術の最高峰とされるアルマティのように

道徳観に欠け魔術そのものの高みを優先する者も多いのだが・・

「・・はい、姫様もそれを危惧してこそ王を止めるように願い立ったのです」

「ふむ・・、しかしリキニウスとなるとここからはかなり離れている。

わざわざ私達の元まで来る理由がわからないな」

ロカルノが思うのも当然の疑問、リキニウスという国はここら一帯とはエリアが違う国

情報通の彼でさえその国情など全く知らなかったほどなのだ

それに対しミランダはここの事を調べて尋ねてくる・・それは確かに不自然と言える

「一つはこの計画が気付かれないようにするためです。

王がどのような術を学んだかわからない状態であの国近辺で他人にそれを頼むのは危険と判断しました

もう一つはここだときっとこの依頼を引き受けてくれると思ったから・・です」

「──俺達ってそんな遠い国まで有名だったのか?」

そこまで行動エリアを広めていないがためにクラークも驚く

「一般的には知られてはいません・・・が、シウォング国でのユトレヒト隊の活躍は耳にしておりました」

「なるほどな・・リキニウスとシウォングは平原を挟み隣接している。

シウォングの事情を知っているのならばそれも頷けるか」

「・・・それもあるのですが・・おそらく王の狙う国がシウォングのようなのです」

重苦しい口調で告げるミランダ、それに一同言葉を失った

「シウォングを・・狙うのですか?」

「酔狂な・・真龍騎公の呼び名を舐めておるな」

真龍騎公ライ、シウォングの王にして極星騎士団の長、

一騎当千の戦士としてその名は広く知られている

「ライ=デェステェイヤーの腕は我が国でも知れ渡っております。

それを知った上で王はシウォング侵攻を計画しているようなのです」

「・・・・、勝てる見込みがあっての暴走か。

こりゃますます見過ごせない事になってきたな・・

でもよ、それだったら直接ライの処に言えばいいんじゃねぇの?」

「此方の動きを気付かせる訳には行きませんでした。

最近の王の言動は明らかに異常です

もし私がシウォングに赴きライ=デェステェイヤーと

面会をしている事を感づかれては姫様の身にすら危険が及ぶと察知し

確実に気付かれず助力を頂ける方にお願いする必要があるのです」

「なるほどねぇ〜、良くわからない分慎重に行かないといけないってわけ・・」

「はい、流石の王も真龍騎公の事は知れどもユトレヒト隊の事など知ってはいません。

そしてこんな東の国の事情まで目を光らせているとは考えにくい・・

だから休暇として私は身分を隠してここに参ったのです」

休暇で長距離旅行をしてきた割にはラフすぎる服装のミランダ

どうやらそういう旅行をした経験がない以上に職業軍人だったようで着飾るという事を知らないようだ

「・・まぁそうまでするに値する事態だが・・。それで・・内容は王の暗殺か?」

「・・・・、最悪の場合はそれも仕方ないでしょう。

ですが当面の目的は王の暴走を止める・・っという事でお願いします」

「父親を殺す事にためらいを感じているようじゃな、そんな事では返り討ちに遭う可能性もあるぞ?」

「承知の上です、しかし姫様も私も・・王を尊敬しているのです。命を奪わずに納まるのでしたら・・」

「オーケー、わかった、最善は尽くそう。そいじゃその国や状況を分かる範囲で教えてくれよ

まずはそれからだな」

「畏まりました、それでは現在の状況をお伝えします」

表情を崩さずに話を続けるミランダ、

依頼主の代行者とは言えどもその顔には決意の色が浮かび上がっており

ユトレヒト隊の面々も真剣に耳を傾けるのであった

 

 

──────

 

 

 

小国家リキニウス

王国ヴィガルド、オブシディアという巨大な国家と希望都市シウォングにほど近い位置に存在する国

国土は広くはなく土も上質な物ではないためにそこに侵攻する国家もおらず日々自然と向かい合ってきた国である

しかし希望都市という物ができあがる前は二大国家に目を付けられていたがために軍備には最低限力を入れていた

その結果、兵卒は農村出身で期待のできない物なのだが

将ともなるとオブシディアの騎士に引けを取らないほどの力量を持つとなった

・・だが所詮は規模が違う、将と言えば聞こえがいいものの実際は見てくれだけ・・

一騎当千の力を持てどもそれが2,3人いるだけでは国は守れない

コーネリア姫が侍女ミランダもその一人であり女騎士でありながら

将を授かった才女で一人娘の身を案じた王たっての願いでコーネリアの侍女としてその身を任されたという

自身の力では大国に太刀打ちできないとして己のふがいなさを恥じていたミランダにとっては

その命令は救い舟とも言え以降コーネリアを自分の命よりも大切に守ってきたという

他の将も同様、将という身分を捨て民を第一に気遣い痩せた土地でも平和に暮らせるようにと努力をしてきた

しかし希望都市ができてからは状況は少し変わった、

ヴィガルトとシウォングは少なくとも敵対関係にはあらず・・

それもそのはず、何故ならヴィガルトにいた者達によって造られた国であるから

そしてオブシディアとシウォングが戦争に発展したのだが

それもすぐに集結し同盟を結ぶ事となりこの辺りに平穏が訪れた

こうともなると国に仕えた将も一人の国民として国を豊かにするために精を出し

緊張感がない日々が送れるようになった

 

・・しかし、現実はうまくはいかない・・

 

シウォングのように祝福を受けた土地ではない以上自然は厳しく国は豊かだとは言い難かった。

何とかして国を豊かに使用と切磋琢磨する国王・・

そして風の噂に聞いた魔術師を招く事になった。

結果はミランダがユトレヒト隊に言った通り・・作物の豊かな国となったのだが歯車は狂いだした

現在リキニウス城には立ち入りを厳禁する建物が多数ありそこで王は他国侵略の策を練っていると思われる。

魔術に没頭する王は政治もおそろかになりつつあるのだが現在のところ問題は表面化してきていない

それ故に城下町などでは久々の豊作に人々が喜んでいる姿が多数見受けられた

 

 

「街の様子を見る限りは平和そのものだな・・」

 

 

街の一角にある小さな酒場にてくつろぐクラーク、

ここがコーネリア姫と落ち合う場所であり

怪しまれないように全員別行動でこの店に落ち合うようになった

ミランダより話を聞いた後、一夜明かしてからアミルに乗り一度リキニウスへと飛び立った一行

王の状態がわからない以上警戒するに超したことがないと国外にて着地してそれ以降別行動を取ったのだ

一行と同じくアミルに乗ったミランダはそのままコーネリアに合流しその旨を伝えに行った

流石の侍女も飛竜に乗った経験などあるはずもなく最初は目を丸くして驚いたものの事態が動き出した以上

それもほどほどにしひとまず主の元へと歩を進めたのであった

残ったユトレヒト隊はそのまま入国、極力怪しまれないようにと普段通りの服装で気を遣い

ロカルノとアミルはペアでそのまま入る

・・もちろん恋人という名目で・・

見事なまでに違和感がないのだが仮面はお預けということで

続いてはキルケ&クローディア、こちらは姉妹と言うことで・・

ゴスロリと隻眼はそれなりに目立つのだが違和感はなく仲睦まじく・・、

クラークと一緒でいたかったのだがそれだと目立ってしまうという事でやむをえなし

最後にクラークとセシル・・、二人とも嫌々だが恋人ということで何とか落ち着いた。

一応それらしく振る舞うために手を握って歩いたりもしたのだが

実際はどちらが先に相手の手の骨を砕くかのパワーファイトだったとか・・

因みにメルフィは今回は参加せず・・理由は単純・・角が目立ち過ぎるから

もちろん彼女は大激怒なのだが見せ場を作ってやるという約束を交わし何とか落ち着いた

 

「けどねぇ〜、何でこんな奴と恋人のふりしなきゃならんわけよ?全く・・」

 

同じく到着したセシルは早くを酒を飲み不機嫌モード

それもそのはず、ロカルノとアミルが幸せ新婚状態なのに

自分は何故にロリコン眼鏡と恋人ごっこせにゃならんのや・・っと瞳が燃えている

「我慢したのは俺も同じだっての。

大体ロカルノとお前がペアで歩いていたら余計変な目で見られたんじゃないか?」

「ぬぅあにぃ!?」

「パツキンケダモノとその飼い主♪」

「クラーク・・今は暴れられないから宣言だけしておくわ・・。

この一件が終わったら貴方にドメスティックにヴァイオレンスしてやる!」

「おやぁ?いいのかぁ?俺に手を上げて迷惑かけたら誰が一番困るのかなぁ?んん〜?」

嫌な笑みを浮かべるクラークさん、女性に手を上げられないと言っていた彼はもういない・・

否、セシルを女性と分類して見る者など皆無な状況からしてみればまだ女性に手を上げない彼ではあるか・・

「ぐ・・卑怯よ!!」

「何とでも言え、俺はアミル派だからなぁ・・」

「おのれぇ!誰か!誰か私の味方はいないのかぁ!」

叫ぶセシル・・しかしそれを望むにしては彼女の生き様は余りにも自由奔放であり・・

ぶっちゃけ現状は自業自得というより他はない

因みに指定された酒場は本日貸し切り、

ここのマスターはミランダが信頼する人物であり詳しい内容は聞かない方が良いと予め

言われているらしくクラーク達が到着するやいなや姿を消した

その様子からしてミランダという女性の人望を感じさせる

カウンターと軽いテーブル席しかない小さな酒場なのだが棚に置かれた酒の種類は豊富であり趣味が良い

「味方作ろうとしてねぇだろうが・・てめぇわ」

「あら〜、人に優しく生きているのに何て事言うのかしら!このロリ鬼畜眼鏡!」

 

「・・やれやれ、国が変われどもやる事は変わらんか」

 

喧嘩が始まりそうな雰囲気の中呆れるように呟く男の声

当然それは・・

「ロカ〜♪・・って!!」

愛する男に抱擁してもらおうと彼の方を向くセシルだが硬直してしまう

何故ならそこにおわすは紛れもなく美男美女のカップル

どこかの貴族を思わせる整った服装のロカルノ、

仮面パージ状態故に文句のつけどころがない端麗なる容姿

そして彼の腕に手を回すは漆黒のドレスに身を包んだ美女アミル

質素ながらも胸を強調される形の服装、清楚ながらも扇情的、やや照れている表情がさらに男をそそらせる

そう、そこにいるは正しく「ナイスカップル」

紛うことなき相思相愛の男女なのだ!

「・・どうした?」

「一番乗りはクラークさん達でしたか、少し遅れましたね」

寄り添う二人、微笑ましい事この上なくそれ以上にセシルが小さく見えてくる

「まぁな・・ってか見事なまで絵になるカップルだな」

「ええっ・・そ、そんな・・」

クラークの言葉に頬を染めるアミル・・

「ちょい待ち!新婚夫婦っていうのはあくまで役柄でしょう!?

そこまで本格的にする必要性なんてないじゃない!異議有りよ!」

「ふっ・・王が使い魔などを放っていたら見られている可能性もあろう?自然に見せているだけだ」

っと軽く笑うロカルノ・・

察するにこの光景をセシルに見せるのが真の狙いであることは明白である

「良い理由だな・・ってか〜、メルフィ置いてきてよかったのか?だいぶ怒っていたぜ?」

「納得はして頂きました。お小遣いを多少上げましたので今頃上機嫌でプラハに繰り出していると思います」

 

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クラーク心の一句・・

「そりゃまぁ・・いいか。それにしてもその農地の改善ってのはよほど上手く行ったのだろうなぁ・・」

街中歓喜の色に包まれている様子でその喜びの声がここまで届いてくる

この酒場に落ち合うまでに人々の笑みを見てきた分裏で

良からぬ事が進められている事に何とも言えない気持ちになってしまう

「そのようだな。この街の喜びが王を凶行に走らせているのかも知れないな」

「・・そんな・・、それで死者が出たのならば本末転倒ですよ」

「一般庶民の視線ではな・・。しかし王の視線というのは普通の人間のソレとは違う。

責任と重圧により管理を行うために犠牲を顧みない行為をする事も多い。

そんな王にしてみれば他国の富んだ土地というものは酷く魅力的に見えるものだ」

「元王子が語るってわけねぇ」

「・・・ふっ、そうだな。だからこそ私は王という役割を嫌いヤスに任せたのだ」

「ロカルノさん・・ロカルノさんなら・・立派な王様になっていますよ」

「アミル・・」

見つめ合う二人・・途端に心配するアミルの視線は恋する乙女のモノに早変わり

「はいはい!元祖恋人がいる前でイチャつかない!!」

「妬いちゃってねぇ〜♪ほら、セシル・・今目の前に広がる光景はお前が招いた事態だよ。

それに『元祖』じゃない『元』だ、この馬鹿♪」

全くその通り、大人しく恋人であるロカルノを虜にしておけばよかったものの

勝手な事ばかりしていたがためにアミルという強力なライバルを作ったのだ

──もっとも、日頃の行いが良くてもアミルはロカルノに惚れていたのかもしれないが・・

 

例え国が変わってもやっていることは違いない面々・・

そこに最後の二人が到着した

 

「おや、私達が最後でしたかぁ・・」

 

「そのようですね・・」

 

流石にゴスロリドレスと着流しは目立つと言うことでこの二人だけは普段の服装とは替えている

所謂町娘ファッション、キルケはわざわざオサゲを解き質素な白ブラウスと黒スカート姿

対しクローディアは眼帯に着流しは職務質問の対象ということで大きくコスチュームチェンジ、

キルケが見立てた焦げ茶色のスーツを着用、

眼帯は外しやや濃い目のサングラスを付け髪も黒いカチューシャ装着でイメージを変えている

見た目からして東国の田舎着物娘とは思えない、

隣のキルケとセットならばそれは正しく『アイドルとそのマネージャー』状態

キャリアなんて全くないのにキャリアレディに見えてしまうのかその気品が成せる技・・

「ヒュ〜♪クローディアやるじゃないの〜」

「・・へ、変でしょうか?」

「心配するな、どこからどう見てもおかしくないさ。どうだ?サングラスの使い心地は?」

隻眼を隠すのはロカルノ担当、当初は仮面を進めたのだが結局はサングラスで落ち着いた

彼にしてみれば仮面着用はごく自然なものであり

今回のリキニウス入国に対してもセシルに指摘されるまでは気付かれないと思っていたらしい

完璧男子が唯一かなりズレているポイントである

「そうですね・・、日差しを避けるためとは言えども視界が悪くなるのは余り好ましいとは言えませんね」

「まぁここまでの我慢だ。でも似合っているぜ?着物以外のお前もそそられるな」

「あ、兄上・・♪」

「はいはいはいはい!仕事中でしょう!イチャつかないの!!

ともかく、全員集合したんだから後はそのコーネリアンが到着するのを待ちましょう!」

絶えて久しい甘い空気に耐えられず場を仕切り出すセシルさん

なんだかんだ言って彼女もロカルノに甘えたいようなのだがクラーク達の手前、

おまけにアミルもいるために我慢をしているようだ

「そうですねぇ、目立ったらいけない分ここから出ずに待った方がいいですね」

「そうだな──、まぁここから見える範囲でこの国の事をもう少し調べるとするか・・」

小さな酒場を拠点としてユトレヒト隊は依頼主を待つ

それに対し街には喜びに満ちた人々がたくさん見受けられたのであった

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