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第十一節  「団結、そして・・」


レイハが信号を出しそのまま一端要人の安全確保のためにシウォング領に駆けた後でも

そこで作戦を続ける者がいた

「予定通り・・・まぁそれも当然ですかね」

一人リキニウス城に残ったディ、半分呆れながら書斎の一つ一つを物色していく

他に厄介な物を研究していないか調べているのだ

無論目的である王が逃げ出したとしても感知できるように城周辺には結界が張っており

いつでも追撃可能な状態にしている

しかし、城内の兵士の全てがレイハに叩き伏せられた中でも城内に一つだけ気配が残っている

「やれやれ、不退転の覚悟で喧嘩を売ってきたというところですか・・」

ため息一つ、計画に使用したと思われる参考資料などをあらかた見つけた後にその気配の元へ伺おうと

立ち入りの禁止された城内廊下をゆっくりと歩く

「今まで調べた中で見つかったのは魔に関する書物の他に魔石製造に魔導機兵構造、

そして洗脳と他人格構成・・全てがこの事件に繋がるモノ。

だとするならば切り札というものがなくなったはずですが・・、

堂々と待っているところ隠し玉はまだありそうですね」

蒼に白銀飾縁取の貫頭衣型法衣と蒼色のグローブを装備した金髪の魔導師

小柄な体躯には似つかわしくなく自信に満ちた表情で薄暗い廊下を歩く・・

それとともに前方から規則正しい金属が響いてくる

 

「・・ふぅん・・この城は室内で馬を飼ったりするのですかねぇ・・」

 

呆れながらその場に止まり肩を竦める、前方に姿を見せるはリキニウスの戦馬

室内配備用らしく手には槍ではなくショートソード、両手にそれを装備して規則正しく歩を進めている

とりあえずは2騎・・併走して侵入者に近寄ってきた

「では、一流と三流の違いでも見せて差し上げましょうか」

そう言いながら懐より取り出すは宝石の如き美しさを持つ魔石

それを空に軽く投げると共に指鳴らす・・

刹那、魔石は発光しながら魔導機兵のフレームを展開し騎兵の姿に固定される

さらにその両腕が輝き装備が転送され戦闘準備完了

出現された魔導機兵は2騎

片方は基本装備+赤い外套に両手に白と黒の短剣を持つ高機動型

片方は高機動型よりも骨格がしっかりとしておりハート型のベルトとナックルガードを装備した格闘型

「さて、結果は見えてますが行きますよ戦馬さん。魔力の貯蔵は十分ですか?」

軽く指示を出して2騎の魔導機兵が駆け出す

それに反応した戦馬が迎撃に突っ込みだす・・真っ向から対決する

結果は明白・・鋭い攻撃を放つ戦馬に対し魔導機兵達はその中に潜り込み一気に切り払う!

高機動型はその手を風のように走らせ戦馬を細切れにしていく

格闘型はもっと強引、がら空きの鉄の体に豪腕で叩く、叩く、叩く

猛烈なラッシュで戦馬の体はひしゃげ飛ばされる

致命傷を負った戦馬達、その刹那体が発光して・・

 

ドォン!

 

派手に爆ぜた・・

周辺を巻き込む爆発・・自爆装置が仕込まれていたらしく

2騎の爆発はかなりの威力であり廊下の壁を吹き飛ばし大穴を空けている

まともに巻き込まれたディなのだが相手の自爆などは最初から想定済み、

防御障壁にてそれをやり過ごし魔導機兵達もほぼ無傷のまま待機している

「・・予想以上に威力の高い自爆ですね。軍に特攻されたならそれなりに厄介だったでしょうが・・

僕の魔導機兵には無駄でしたね、無駄無駄無駄無駄です」

爆破の様子を注意深く観察していたディ、

周りが黒こげになっている事に対しては気にもとめておらず
魔導機兵に対しても同様・・

もっとも間近にて爆発をまともに受けてもその魔造の鍛体には傷一つついていないのだが・・

そして奥から駆けて来るは増援の戦馬2騎・・どうやら小出しで迎撃をさせるつもりのようだ

「足止め・・か。まぁいいでしょう、この際城内の戦馬全員お相手しますよ」

余裕の表情を崩さないディ、

そして我が手足のように魔導機兵を操り迫り来る馬達の相手をさせる・・

それよりしばらく、城内では爆発音が絶える事がなかった・・

 

 

・・・・・・・・・

 

閑話休題

闇夜を照らし周囲に伝えるは解放を知らせる閃光、それにより戦況は一変した

リキニウス騎士団はそのままシウォング軍へと投降し戦馬隊はほぼ全滅

残すは元凶の確保と偽りの決闘を続ける者達を止める事なのだが・・

 

『暴れ足らんのぉ・・どうじゃ、ナイチチ。このままリキニウスを焦土とせんか?』

 

平原を火の海にしておきながら空にてとんでもない事を言い出すは極悪同盟メルフィ

 

「阿呆、だからお前はトカゲナンダ。もしそんな事して見ろ、キツイお仕置きが待っているだけダ」

 

メルフィの背に乗り腕を組むは至極満足そうなルー、

彼女にしてみれば良いストレス発散になったのだろう

『う゛・・お仕置きは・・イヤじゃ・・』

「・・ダナ・・」

双方、されたくないお仕置きを心の中に浮かべ身震いするもそこに二人の決定的な違いがあった。

・・片方は純粋なお仕置き、もう片方は卑猥全開なオシオキ

男性経験ではルーが圧勝でメルフィなんぞ子供の作り方も禄に知らないのだ

『じゃがこのままだと中途半端じゃのぉ・・、そうじゃナイチチ。

ライ達に頼まれた事は済ませた、このまま夜明けまで夜間飛行と洒落込むか?』

「そうダナ・・後は他の奴らが上手くまとめるダロウ。だが・・並の速度で満足する私ではないゾ?」

『抜かしたな!ならば見ておれ!数多の国を超えて太陽が出る瞬間の姿を拝ませてくれよう!』

「ふっ・・その様な初日の出を見るために暴走する族がするような戯れ事・・、まぁイイダロウ!」

言われた事しかやらない小娘二人、

結局は後の様子など全く関係なしと
爆発的な加速を行い

シウォング=リキニウス間の平原上空より姿を消した

 

教訓 保護者はちゃんと対象が勝手にいなくならないように目を付けておきましょう

 

・・・・・・・・

 

一方同じくリキニウス上空にて戦闘を繰り広げていたもう一組

ロカルノとアミルVSセラフの空中戦は双方かなりの疲労によりその動きが鈍ってきた

滞空しているだけでも体力を消耗する戦い、それ故に長期戦などは本来あり得ないのだ

しかしそこは戦天使と飛竜

強力な魔術を行使しながらも未だ戦闘を可能とさせるのはそれだけ種として優れているに他ならなかった

しかし

 

「アミル・・そろそろ限界か?」

 

『・・ええ・・、申し訳ありませんが・・飛行するだけで精一杯です・・』

 

満身創痍なアミルに跨るロカルノ、

奥義同士の衝突は相殺に終わりその後も高速飛行での魔弾の撃ち合い

質量の大きさと騎手であるロカルノを傷つけないように

アミルは回避しきれないセラフの攻撃を受け続けた結果彼はほとんど無傷で済んでいる

騎手を守るのではなく最愛の主を守るがために行為、

故に傷については自分からは何も言わないのだが相当な深傷なのはロカルノにはよくわかっている

 

『ここまでやるとは・・思いませんでした・・』

 

対しセラフも無事では済んでいない。機動性ならば圧倒的に勝っているセラフ

だがロカルノとアミルの連携は実に巧みであり絶妙なタイミングで魔弾を撃ち込んでくる

そうかと思えば瞬発的な加速とともに接近戦を仕掛け、

戦いのペースとしてはロカルノに握られていた

いかに高度な知能を持つ高位飛竜であれども彼女だけではここまで戦えない

司令塔としてのロカルノの存在感の大きさを感じセラフは目の前に立ちふさがるコンビに感服する

「・・死力を尽くしても決め手がないのだがな・・」

『そこまでは流石にやらせませんよ・・、

さて・・どうやら作戦は最終段階に移行できたようです・・ですが・・』

「ああっ、このまま終わるのは戦士としての納得が行くまい。

次の一撃で全力を尽くそう・・、・・すまないな、アミル・・」

『ロカルノさん、私はいつでも貴方の意見に同意します・・お気になさらないで』

心の中に伝わる彼女の声は穏やか、

肯定するだけのイエスマンではなく彼女はロカルノの全てを信頼している

故にどのような判断だろうが疑いの欠片もなくそれに従い事を成す

それこそが二人の強さ、互いに命を預け互いに命を守るのだ

『私の方もそろそろ時間切れです・・次の一撃で決めましょう・・

我剣達、いまこそ我求めに応じ、その力を一つに・・

 

神剣エグゾードヴァーニル 召喚』

 

セラフの言霊に応じ烈風裂羽と聖星霊刃が音もなく光の粒子となり螺旋を描く

それは絡み合い纏まり光と共に一つの剣を造り出した

セラフの身長の倍はあろうかと言う超長剣、神々しい光に守護されしそれは正に神の刃

まともに受ければアミルでも危うい

『ならば・・私の残魔力の全てを・・ロカルノさん!』

「承知した、だが最低限は残しておけよ・・」

アミルを気遣いながらも天に向かい振り上げるは業火の戦剣。

その鍔より魔法陣が広がり巨大な炎の刃を造り出す

それはディ・ヴァイン本来の物ではなくアミルの魔力により増幅されたモノ

かつてないほどの巨大な刃を造り出し刃の形にしっかりと固定されている

「最終ラウンドだ・・いくぞ!」

『承知!これで・・!』

「・・決める!」

最後の激突・・、小細工なしの力のぶつかり合い

もはや飛ぶことも精一杯なアミルは最後の力を振り絞り相手に向けて飛びかかる

対しセラフも限界が近く他に術も使わずに突進

 

そして闇夜を切り裂く巨大な刃が真っ向からぶつかった

 

「ぬ・・うおおおおおおお!!」

『はぁぁぁぁぁぁ!!』

 

神剣と炎剣、その力は拮抗しているのだがロカルノ一人ではセラフの力には及ばない

アミルの加護が加わって成せる・・

しかしそれも限界を超えており炎剣は力の衝突に耐えきれずに固定された刃が揺らめき崩れていく

そして、エグゾードヴァーニルは炎を裂き、薙ぎ払うようにアミルの翼を切り裂いた

『う・・ぅ!』

空を飛ぶ事に必要不可欠な翼が傷つきアミルは姿勢を大きく崩しながらセラフの横を通過していく

「・・ここまでか・・。アミル、無理をせずゆっくりと着地するぞ・・翼の傷は私がなんとかする」

『すみま・・せん・・』

弱々しい声、一撃を交えて交差した後アミルはゆっくりと地に向かい高度を下げる・・

だが・・

『ふ・・流石はロカルノさん・・限界の見極めが絶妙・・でしたね・・』

神剣を振り切った姿勢のまま宙に浮くセラフ・・ぽつりと呟いたかと思うとその身に閃光が走り、

次の瞬間には一組の男女がそこに現れ地に向けて落下する

『ロカルノ・・さん!』

「最後の一撃で限界を超えたか!アミル!」

『わかっています!』

「・・世話をかけるな・・」

『貴方様のお世話なら、喜んで・・』

彼女の声は至極穏やか、そして血を噴きながら飛竜は雄々しく旋回し

二人の落下地点に潜り込み・・そのまま地に激突するのであった・・

 

 

・・・・・・・・

 

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

戦況の変化にも気に止めず対峙するはシフォルナとクローディア

居合いの構えを整えてから周辺の時はあたかも止まったかのようであり

そこには音もなく風もない

互いに呼吸を整え神経を研ぎ澄まし相手を見つめる

肉体的な疲労はない・・が精神は常に張り詰めておりそれが心を疲れさせる

「・・・・・・くっ」

クローディアは無表情のまま姿勢を固定している、

それはルナも同じなのだが刀同士の真剣勝負・・

それも居合い打ちでの物は初めて
打ち込む覚悟はあれども長い対峙にて精神に疲労の色が見える

額には汗が滲み出るがそれでも眼前の敵を見つめる

相手は感情を失っているためか元よりその勝負に優れているのか・・

先ほどから全く姿勢が乱れない

「・・・・・」

堂の入った型、ルナにはそれが大きく見えてきた

彼女に飲み込まれないようにルナも気を引き締まらせる

それとともに珠のような汗が一つルナの顎から地に向かい静かに落ちた

丸い水玉、それが草の葉に落ち弾けた刹那・・

「・・・・」

「・・・・!」

彼女の体が跳ねる・・それは緩やかに流れるよう、

しかしとんでもなく速く感じられる

ルナは彼女が足を動かした瞬間に同じように踏み込む

そして無音のまま双方から放たれた刃が交差し銀色の閃光が筋となり消えた

立ち位置が入れ替わり草原に立つ二人

「『不斬散気の太刀』・・確かに・・」

手応えはあった、逆刃は彼女の脇腹に食い込みそのまま祓われた

対し彼女の一閃はルナの後頭部を軽く掠め虚空を切る

小柄なルナ、それをさらに姿勢を低くしたのがやりすごせたのだ

「そのままでいてください、すぐに・・悪夢から・・っ!」

刀を収め振り向こうとした瞬間、本能的に危機を感じ咄嗟に飛び退く

自身に向けて放たれたのは紛れもなく刃の閃

そしてそこに立つは不斬散気の太刀を受けてもなお立ち剣を振るう剣士の姿

瞳は無感情ながらも動きは鈍い

ルナの一撃は確実に効いているのだがそれでも彼女は戦う事を止めようとはしないのだ

「ば・・かな。動けるはずはない・・」

紫の瞳が恐怖に怯える、

目の前にいる女性がまるで剣の鬼のように見え戦意は失われ後ずさる

パツキンケダモノであるセシルでさえその身動きを封じた不斬散気の太刀

それが絶妙なタイミングで命中したはずなのに彼女がまだ戦おうとしている

「・・・」

重い足取りでゆっくりとルナに近寄る、

辛いのかその動作はぎこちない・・しかし刀はしっかりと握られている

無言のまま近づく女剣鬼、

恐ろしいまで気迫にルナはすくみ上がり紫の瞳は緋色に戻ってしまう

「クロ・・ディア」

それでも彼女は止まらない、ゆっくりと刀を振り上げた

ルナはそのまま動く事ができず刃が脳天に向かって落ちる!

 

『・・っと、そこまでだ』

 

それに割って入るように駆け寄る男・・クラーク

流石に妹に乱暴な真似はできず素手で彼女の刀を握り締めて止める

「クラーク!!」

「よう、・・まぁ・・なんだ。・・大変だったな、ルナ。後は俺に任せろ」

刃を握り締めて手からは血が噴き出すがクラークは全く気にする様子もなく

そのまま刀をふんだくる、クローディアは目を見開くもそれ以上の反応はない

「全く・・キルケもキルケならお前もお前だ・・俺って実は信用ないんじゃないんだろうな・・?

ほれっ、さっさと起きろ。クローディア」

そうぼやきながら彼女の頬を軽く叩く

「・・っぁ・・」

弱い悲鳴、それとともに隻眼の瞳に意志が戻ってくる・・

「おはよう、クローディア」

「・・・あに・・うえ・・?」

「ああっ、俺だ。夢じゃないぜ?」

「兄上・・生きて・・いらしたのですね・・」

目に涙を溜め声が震える、

今の今まで刃を持っていた剣士の顔ではなく正しく少女のもの・・、

そのまま力なくクラークの胸の中に倒れる

「俺がいないとほんとダメだな・・クローディアも・・」

「申し訳ありません・・あ・・体に・・力が・・」

「ルナのあの太刀を受けたんだ。体に力が入らないだろう・・説教は後にするから今は休め」

「・・はい・・兄上・・よかった・・」

そう言いクローディアの瞳から涙が流れ落ち意識が途絶えた・・

悪夢から目覚め今度は幸せに包まれた夢へと誘われたようであった

「・・・クローディア・・大丈夫?」

「ん〜、まぁ無茶したんだろう。あの太刀を受けても動いたわけなんだしな

全く・・、これじゃおちおち芝居も打てないな・・」

頭を掻きながらぼやくクラーク、

だがそれは妹がそれだけ自分の事を想ってくれている事の証拠でもあり

実に複雑そうな顔つきになってしまう

「わう・・?」

「っと、ルナもご苦労だったな。

もう大丈夫だ・・そんでだ、そこの草むらに女が倒れているんだけど

そいつを背負って俺と一緒にライ達と合流してくれないか?

王の方はディが何とかしているし俺としても気を失っている奴らの身の安全を確保したいからな」

「わん!」

クラークの頼みルナは快く了承、そして閃光とともに狼の姿へと変わり

気を失っているミランダを器用に背に乗せた

「・・後は・・セシルか。・・・あいつは・・別にいっか」

「わんわん!」そうだそうだ!

よもやセシルが自分の事で激情しているとは夢にも思わないクラーク

結局はそのまま放置の方向でライとの合流を急ぐのであった

 

 

・・・・

 

 

そのセシルは未だ戦闘中・・

火の手が治まりつつある平原の中、氷壁のリングにて攻防を続けている

炎上する平原でそれを防ぎながら戦う目的ではなく純粋なリングとしてそびえ立っている

しかし四方を巨大な氷壁で囲んでいるがために状況など確認できない

以上にセシルもシエルも眼前の敵にのみ精神を集中させているために他の事など構っていられない

 

「やるじゃないの・・シエル・・」

 

「・・ふん・・、忌々しい。攻めきれないとは・・」

 

冷たい空気が流れる中対峙する二人

高速戦闘を行うシエルは当然の事ながらそれを防ぐセシルも疲労は激しい

しかし双方まだまだ戦闘は可能、闘志も萎えていない

「そう簡単に勝てるとは思わない事ね」

「だが私が勝つ、絶対にな」

そう言いながら身を低くし再び構えるシエル、その姿勢から何時でもセシルに跳びかかれる

その俊敏な攻めは一騎討ちでは驚異・・

セシルとの距離は十分あるのだがそれでも喉元に刃を突きつけられたようなものである

「・・火の手は治まったようね。なら・・」

ニヤリと極悪な笑みを浮かべる・・それとともに四方を囲んでいた巨大な氷壁大きな亀裂が入る

炎により焼かれてもビクともしなかったソレ、

流石は造り出した本人故にいとも簡単に根元が切り裂かれそれが傾き出す

「・・ふん・・、空中戦でケリをつけるか・・」

「空だと身動きが制限されるでしょう?次が待っているのよ・・急がせてもらうわ!」

空牙を投げ捨て両手で氷狼刹を構えるセシル、

本体のスタイル・・

シエルとの決着をつけるべく騎士剣をしっかりと握り氷を操る

そして一斉にリングを潰すように内側に倒れる氷壁の群れ・・、

無数に皹が入ったそれは地に激突し
轟音とともに氷壁はまるで硝子のように粉々に砕け飛び散る

シエルとセシルはその瞬時に宙に舞い上がり相手を狙い刃を立てた

しかしただ斬り合うだけがセシルの狙いではなかった

砕けた氷壁、飛び散る破片は宙を舞うのだがそれは突如として渦をなし氷刃の竜巻と化した

「っ!あの盾か!」

シエルが舌打ちをした時にはすでに手遅れ、

吹雪がその体を包み込み細かい氷片が刃となり襲いかかる

「もらったぁぁぁぁ!!」

視界が奪われたシエルに対しセシルは猛然と斬り掛かる、

自ら造り出した氷の竜巻に向けて氷狼刹の刃を振りかざした瞬間!

 

『はい、そこまでぇ』

 

絶妙なタイミングでセシルの体に鞭が巻き付く・・

「っ!?な・・にぃ!?きゃあ!!」

体の自由が奪われ鞭に引っ張られる・・そのまま・・

 

ゴォン!

 

頭から地面に激突・・、

不格好な姿勢のままに直撃を受けたセシルは声にならない悲鳴を上げ悶絶、

竜巻は急激に力を失いそれでもシエルは姿勢を正し鮮やかに着地した

「何やっているのぉ?セシル・・」

頭を抑えるセシルの前に立つはチャイナ服姿で呆れ顔を見せているアルシア

「ア、アルシア!何よ!一対一の決闘に横槍入れる気!?」

「全くぅ、もう芝居打たなくていいのよぉ?

中断させようにも二人とも止めないしでっかい氷の壁で中に入られなくて大変だったのよぉ」

珍しく不機嫌そうに言うアルシア、それもそのはず・・

ルナの援護のつもりだったのだが、

セシル達の方が歯止めが効かないと思い様子を見ようと出向いた彼女

しかしいざその現場に来てみれば、氷のリングのために中に入り込む隙間もなく、

そうこうしている間に合図が昇ってしまった

それでも戦闘が終わる気配がないのでこれは本気だと焦っていたのだ

「芝居?何の事よ!」

「・・・はぁ?シエル、どういう事ぉ?」

「・・作戦の事はこいつには伝えられていないようだ」

私に聞くなと不機嫌そうなシエル、それでも応えてくれるのが彼女らしい

「そうだったのぉ・・、セシル、クラークが死んだのは嘘よぉ」

「・・・へっ?」

「だからぁ、裏で動き相手の目を欺くためのお芝居だったのぉ・・

ロカルノから持ちかけたんじゃないの・・貴方達には伝えられなかったの?」

「あいつ・・そんな事一言も言っていないわよ!!?」

「相手に勘づかれない用に当人にしか伝えていなかったのねぇ・・

もうキルケやお姫様も救い出したみたいだから」

「何よ、私に内緒でそんなとこまで進んでいたの!?」

戦いに夢中になっていた分、完全に取り残されていたセシルはもはやぐぅの音もなく・・

「全くぅ・・シエルも合図確認できていたなら止めなさいよぉ?」

「ふん、ここいらで痛い目を合わせてやろうと思っただけだ」

「何よ!追い詰められていたくせに!」

「舐めるな、あの状態でもお前の喉元は捉えていた。

あのまま打ち込んでいれば致命傷を負うのは寧ろお前だ」

バカニスルナヨっと見下すシエルさん。

作戦を知っていても彼女はセシルを仕留める事が第一だったご様子で・・

「ふぅん・・上等じゃないの?じゃあもっかい試してみる?」

「結果は同じだ。私が勝つ」

「やってみなければわからないわよ・・?」

「はいはいぃ!そこまで!とにかく一端合流するわよぉ?」

「・・合流って・・ライのところに?」

「他にどこがあるっていうのよぉ?」

「・・そうよねぇ・・でも今の今まで殺す気満々だった分・・ちょっとね・・」

「それは状況を見切れなかったセシルの責任よぉ、大人しく笑われなさい」

っと意地の悪い笑みを浮かべセシルの鼻を軽く突くアルシア

仲介役にはうってつけであり、本気で死合っていた二人と軽くあしらう

険悪なムードのままなシエルとセシルであったが場の空気をアルシアに支配させられた以上

戦闘を続ける訳にも行かずその後無言で彼女の後についていくのであった

 

 

・・・・・・・・・

 

 

その後、平原中央にて散り散りに戦っていた面々が集結された

 

「とりあえずは〜無事って見ていいのかな?」

 

周囲を見渡しライ・・、

シウォング軍はそのまま待機させリキニウス騎士団の介抱をしており

ロギー達は一応捕虜という扱いで世話になっている。

故にそこに集うは極星騎士団とユトレヒト隊・・しかしその様子は様々・・

一番傷を負っているのはアミル・・セラフの攻撃をロカルノ分も受けていた分細かい傷も含めてかなり痛々しい

人の姿に変わってもその傷は治っておらず止血処置はされているが地べたに座り込んでいる

そしてその隣をロカルノとリオ、アルシアが治療を続けており

アレスはセラフ召還後故に全力で戦える状況ではなさそう

シエルとセシルに関してはまだまだ戦闘可能と言ったところか、

しかしシエルの体には細かな切り傷が残っている

氷竜巻の一撃を受けた時に出来たモノなのだが本人はさほど気にしていない

クローディアは気絶したまま、

ミランダを背負ってきたルナはまだまだやれそうなのだが精神的な疲労は感じ取れた

要人護衛に徹していたレイハは無傷、

彼女にとってはここまでがウォームアップのようなものであり

同じく隠密行動をしてきたクラークもまだまだやれそう、

その隣でいるキルケは元気そうだが目の下のクマがやはり凄かった

 

「・・ってか、ルーとメルフィは?」

 

その場にいない事を不審に思うクラーク、

あれだけ目立つ存在なのだが平原の上空に確認する事はできず・・

「・・・・、それでしたら作戦領域外に飛び去る姿を目撃しましたが・・あれはライの指示では?」

「いんや、何も言ってないぜ?・・ひょっとしたら・・」

「遊びに行った・・とか?」

まさか・・っと一同乾いた笑みが浮かぶのだが・・

 

同時刻、超高速の自由落下飛行にのめり込む極悪同盟の姿が他国で目撃されたとか

 

「・・後でオシオキだな・・。でっ、アミルの方は大丈夫か?」

「そうねぇ、基本的な体力が高い分心配はないけどぉ・・

一応は安静にしておいた方がいいんじゃないかしら?」

「・・申し訳ありません・・」

弱々しい声で謝るアミル、魔力は底を尽き体は傷だらけ・・それでも周囲に気を遣うのも彼女らしい

「気にすることはない。お前はよくやった・・」

「ロカルノさん・・」

見つめ合う二人・・また一つ、ロカルノとアミルの仲が進んだらしい・・

それにさらに不機嫌になるセシル・・思えば今回も良いとこなしである

「イチャイチャして!作戦の事ぐらい教えなさいっての!!」

「言わない理由はわかるだろう?第一・・もう少しクラークを信用しろ」

あきれ果てたロカルノの言葉にセシル轟沈

「そうだぜぇ?ったく・・俺としてはユトレヒト隊サイド全員が気付いていると思っていたんだが〜・・

芝居が上手かったからかな?随分真に受けられたみたいだな」

ライの言葉にセシルに止め、キルケ轟沈・・

気絶しているクローディアのみノーダメージ?

「ふっ、まぁ不足の事態が起こった故に判断能力が鈍っただけだ。余り悪く言うな」

「・・まっ、ここまで際どい芝居も初めてだからな。

しょうがないって事だ・・敵をだますにゃ味方から・・

とりあえずは万事オッケイと言ったところさ」

「ふむ、そうだな・・。とりあえずはアミルとクローディア、そしてミランダとシエルの回復が先か。

・・アルシア、ミランダの方はお前では無理か?」

「無茶言わないでよぉ。私は魔導専門じゃないのよ?そう言うのはルーかディに頼んで頂戴」

っとは言えども双方不在・・

「・・仕方ない、ではしばらくは起きないとは思うがミランダを拘束しておこうか・・」

「それでしたらば、彼女の様子は私が・・」

一歩前に出てコーネリア、

シウォングに迷惑をかけた事に対し自責の念にかられている分その表情は浮かないモノがある

「コーネリア姫・・」

「申し訳ありません、真龍騎公殿。我が国の不始末にて貴方様にご迷惑をおかけしました」

「・・何、それはあんたの責任じゃない・・が、二度とこんな事をしてもらいたくはないな」

「・・はい・・」

「はいはい!辛気くさい空気にならないの!まだ事態が終わっていないのよ!」

「「お前が言うな、セシル」」

ハモりながらライとシエル、日頃周囲をかき乱している分そう言われても仕方はなく・・

「だがセシルの言う事も一理ある。王を捉えるまで事は終わっていないのだからな」

「じゃ、さっさと終わらすか。ディに任せてばかりいるのも悪いしな」

軽く腕を回すクラーク・・だが・・

「無茶したらダメよぉ、クラーク。

そこまで動けるほど回復していないのだからねぇ?」

「ア・・アルシアさん!それは本当ですか!?」

気遣うアルシアにキルケが驚く

「本当よぉ、キルケちゃん。芝居とはいえ気付かれないようにライと本気で戦ったのよぉ?

仮死状態で回収されてそのまま治癒したんだから・・

痛み止めはしているけどふさがり切れていないし骨も数本折れたままよぉ

一般で言うところ「重傷」状態ね」

それでよく動き回ったモノだと呆れるアルシア、対しクラークは頭を掻いて苦笑い

「骨なんてしょっちゅう折っていたからなぁ・・まぁ気にするな。

それでだ・・元々はこの一件は俺達の依頼だったんだ。

後の事まで手伝って貰ったら流石に格好がつかない・・

後はこっちで済ませるから・・すまねぇけど怪我人の手当任せていいか?」

疲労が激しいのはアミル、クローディアにロカルノ・・

ロカルノは戦闘はまだこなせそうだがアミルの応急処置に魔力の大部分を使った分本調子とは言えない

「わかった、そんじゃこっちは後始末に取りかかるとするか。

アレスとリオの疲労も激しいしミランダの事もあるからな・・

ったく・・ルーの奴ほんとどこ行ったのやら・・」

「飛行できる分こちらから探索できる範囲ではありません・・帰ってくるのを待つしかないですね・・」

流石のレイハでも超高速で飛び回る対象の追尾、探索は不可能

他に飛行できる者も出払っている分手の打ちようがない

「メルフィも後でアミルに説教だな・・、

うし、それじゃ俺とキルケ、セシルでリキニウス城に行く。後は任せるぜ」

「わかりました!」「え〜、私も〜?」

張り切るキルケと張り切らないセシル・・

キルケにおいては出番が来る前に捉えられた分面目丸つぶれなので鼻息が荒い、そしてクマが凄い

セシルは不完全燃焼でもやもやしている以上に

このままシウォング勢に預けても大人しくしていないだろうと予想ができたため

抑止力(ロカルノ)があの状態ではそれも無理はない

「妥当だな・・、じゃ、また後でな。ドタバタしたが落ち着いたら一杯やろうぜ?」

「おうよ。きっちり落とし前つけてきてやる」

そう言い握手を交わすライとクラーク、

真剣勝負の件もありここらで改めて仲間としての確認

そしてクラーク達は踵を返しリキニウスへと向かいライ達は後始末を行うために居城へと還っていった


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