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中編  「過ぎ去りし時」


鳥の囀り・・
静かな森の中、彼らは倒れていた
遠くで波の音が聞こえるので海が近いのだろう
「う・・・、ん・・・」
木に持たれるように倒れているロカルノが目を醒ます
「・・、ここは・・、おい、セシル・・」
隣で気を失っているセシルに声をかける
「んん・・、もう朝なの・・?」
「寝ぼけるな、起きろ」
ロカルノも少し焦っているようでセシルの頬を叩き、起こす
「ああん、何よ〜・・って。・・どうして森の中で寝ているの?」
身の周りの異常に気づくセシル
「・・私達は館の居間にいたはずだ・・。それが気を失っているうちに森にいる・・」
「夢遊病じゃないんだし・・。でも波の音が聞こえる・・。少なくともあの館周辺に
海なんかないわね」
「・・・とりあえずはどこか人のいるところに行こう。ここがどこなのかはっきりさせないとな」
「・・・・・、そうね。全く、今朝から奇妙な事続きね〜」
ぼやきながらも立ちあがるセシル。第六感で人のいる場所を探し出した
「そうだな・・、私達がいないとなると館は戸締りもせずに開きっぱなしだ。早いとこ・・、!!」
立ちあがりつつも何かに驚くロカルノ
「?・・どしたの?」
「・・・・なんでもない」
「そう?じゃあいきましょいきましょ・・」
「・・・・(あの珠が私の上着の中に・・?あの瞬間捨てたはずなのだが・・)」
頭に浮ぶ疑問を振り払い彼は歩き出した



森を進むうちに彼らは小さな道に出た
「街道の枝道っぽいわね、どっちに行きましょうか?ロカルノ?」
「・・・・こっちだ・・」
何かに誘われるようにロカルノが歩き出す
「えっ、即答じゃない」
「・・・・私はこの景色を見た事がある・・・・・」
「・・え・・・?」
「こっちだ・・」
一人歩き出すロカルノ、いつもの平静な彼はそこにはいなかった・・

・・・・・・
・・・・
・・

しばらく無言のままに進む二人。
木々に囲まれて先があまりよく見えないのだがロカルノは迷わず先に進んでいる
・・・やがて道が開けたとこに出た。
木々はそこで途絶えており芝生が生え、潮風が・・
そしてそこに質実剛健な造りの家が建っている
どうやら新築の様で壁にはシミ一つない
家の周りには倉庫らしきものがあるだけで他には何もない
恐らくすぐそこは断崖絶壁になっているのだろう
「・・・・・決定的だな・・」
それを見て汗を一つ流しながら呟くロカルノ
「・・何が?」
「私はこの家を見た事がある・・」
「あらっ、そうなの?じゃあ現在位置がわかるじゃない!よかった〜♪」
「安心するのはまだ早い、私の記憶が確かならこの家はもう数年前に撤去されているはずだ
それでなくても所々痛んでいた・・・」
「・・・どういうこと?見たところあの家、出来て間がないって感じよ?」
「・・・・・、だから決定的なんだ・・」
「???」
ロカルノの言っている意味がわからない状態のセシル

そこへ・・

「あらっ?こんな人里離れたところに二人でどしたの〜?」

明るい女性の声が・・
見ればそこには碧髪を括った美しい女性が。
目鼻が整っており気品が漂うほどの美貌だ
着ているものはどれも普通の街娘姿・・、白衣を着ているところを除いては。
手に持つカゴにパンが入っているところを見るとどうやら買い物をしていたようだ

「ミュ・・!!」
その人を見たロカルノは声を失う。
「そうなの、気がついたらそこの森で倒れていちゃってさ〜。ようやくこの家を見つけたの。」
見たところ同い年くらいの女性なので気安く声をかけるセシル
「ふぅん、気がついたら・・、何?盗賊にでも襲われたの?」
「それがよくわかんなくってさ。さっきまで居間にいたんだけど・・」
「・・・それで、すみませんがあの家で休ませてもらえませんか?」
セシルの口を挟むようにロカルノ
「ええっ、別にいいけど〜、私があの家の住民だってよくわかったわね?」
「他に家もないようですし、買い物帰りでこんなところをうろつくのは不自然・・と言う所です」
「ははっ、それもそうね〜、貴方結構鋭いわね、私の旦那に似ているし♪
・・名前は何て言うの?」
「・・ロカルノ・・です。こっちがセシル」
ロカルノがセシルを小突きながら説明する
「ふぅん、私はミュンって言うの♪よろしくね〜、こっちよ」
ミュンは軽く手をふり二人を先導し始めた

「ヒソヒソ(・・・ねぇ、ミュンってもしかして・・)」
「ヒソヒソ(・・ああっ、お前の思っていることは間違いない)」
「ヒソヒソ(亡くなったんじゃないの?それにあの若さ・・・、まっ、まさか・・)」
「ヒソヒソ(そこまでだ。とりあえず少し様子を見るぞ?)」
「何ひそひそしているの〜?あっ、ひょっとしてロカルノ君私に惚れた?」
「・・まぁ、そんなところです」
「あらあら、手が早いこと♪」
まんざら悪い気がしないようなミュン、二人を連れて上機嫌で家に案内した・・。


家の中は質素ながらも小奇麗、まだ出来て間がないためか意外に生活雑貨は少ない。
奥には『工房』と書かれたプレートがかけられている扉がある
「狭いところですがどうぞ、今お茶入れるわね〜」
今の椅子に二人を招き、そのままどこかへ行くミュン。
おそらく台所だろう・・
「・・・・ねぇ、じゃあ私達、俗に言う『タイムストリップ』ってやつになったの?」
二人っきりになったのでこらえきれずセシルが話す
「・・だろうな。この家の造りも私が知っているものだ。それと・・、『タイムスリップ』だ。
・・同僚の騎士を脱がす気か?」
「ああっ、タイムがストリップ・・ねぇ。うまい!ザブトン1枚!!」

「生憎、そういう物はこの家にはないな・・」

不意に男の声が聞こえたかと思うといつのまにか目の前に男が座っていた
やや長めの黒髪で、質素な服装だがきちんと着ており、だらしなさを感じない
「あっ、いや、今のは言葉のアヤって奴で・・」
「わかっている。ミュンから話は聞いたよ。まぁ、大変だった・・ようだな。俺はセイレーズ。
あいつの旦那ってところだ。よろしく、ロカルノ君にセシル君」
「こちらこそ・・、いきなりお邪魔してすみません」
ロカルノが静かに応える・・。
「構わないさ、これでも自由人ってやつでな。それで、この後君達はどうするつもりだ?
元いた場所に戻るのなら少しぐらいは手伝ってやれるが・・」
「そうねぇ、でも・・。戻り方わかんないし〜・・ねぇ?ロカルノ?」
「うむ・・、ともあれ、少し考えを整理したいので一晩泊めさせてもらっていいですか?」
「ああっ、いいだろう。まぁ、他人を泊めることを念頭に入れてないから・・この居間ぐらいしか
スペースがないがな」

「あらあら、そんな狭かったら存分に愛せないじゃない〜♪あっ、でもキッチンというシチュもあったわね〜」
危ない発言をしながらミュンが登場。お茶を入れてもってきた
「あの・・、お邪魔していてそういう事は・・」
「あらっ?私は全然おっけ〜よ♪その方がこっちも張り合いがでるでしょう?
ねぇ?セイレーズ」
「俺は今晩は『仕事』だ。」
「あら・・、じゃあ・・ロカルノ君・・、3人で・・♪」
「・・・・・・あの・・」
圧倒されるロカルノ。母親に手を出すわけにもいかない
「・・・すまんな、冗談だと思って聞き流してくれ。ともかくゆっくりするといい。
俺は、野暮用があるからこれで失礼する・・。ミュン。客人に変なことをするなよ?」
「もう!愛想ないんだから・・、じゃあいってらっしゃい!」
ミュンの声に軽く手を振りセイレーズはさっさと出ていった・・
「・・・ご免なさいね、あの人無愛想でね〜」
「なぁに、この人も十分無愛想だから大丈夫よ。でっ、キッチンは使ってもいいの?」
「・・・セシル・・」
重い口調でセシルを正すロカルノ
「・・ぷ、はははは、貴方ってほんとセイレーズに似ているわね〜、まぁ、ごゆっくり♪私も工房でお仕事するから。夕食時にまた会いましょう、部屋にあるものは自由に使って構わないから・・。んじゃね〜」
手をパタパタ振り、ミュンは工房に入って行った・・
彼女が言った通り、周りにはそれほど雑貨もないので盗もうとする気にも起こらないだろう



「・・・、信じがたいが。夢ではなさそうだな・・・」
二人っきりの静寂を打ち壊すかの如くロカルノが呟く
「そうね、私なんか特に実感わかないわ。でもどうやって元の場所に戻るの?」
「さぁな。・・だが、ミュンさんに何か関係しているのかもしれない・・」
「??・・どうして?」
「今朝私はあの人の夢を見た。そしてあの珠の効果か時をさかのぼり若かりし時の二人に
会う事になった・・・偶然と考えるのは妙だ」
「そうねぇ・・・。貴方が意外にあの人のことを引きずっていたから天国から心配でこんなことしにきた〜なんてどう?」
「・・・・・・」
軽い口調のセシルに黙り込むロカルノ
「ちょっと、そんなに怒らなくても・・・」
「・・・・・・・」
セシルの声が届いてないかのようなロカルノ、
話が続かなさそうなのでセシルもそれ以来口を開く事はなく
ただ、知らない家での時が流れた・・

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