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第九節  「飛竜の石碑」


ロカルノとアミルの単独での襲撃より数日
以降ミネルバ軍勢からの動きはなく膠着状態が続いていた
クラーク達もこちらから出向くというわけにも行かず動向を見守りながらその日は族長の家にて話し合い

「・・さて、向こうに動きがないってのは気にかかるが・・どうしたんかね」
お茶をすすりながらクラークが呟く、
族長である老婆を中心に円形に座っており竜人も数人参加している
「・・あの者達は退く気はないんじゃな・・?」
族長が静かに尋ねる、できれば争いは避けたいというのが彼女の本音だ
「残念だが不可能・・だな。話し合いにも応じるつもりはないらしい」
直接その場にいたロカルノが言う、それに竜人達は落胆の声も・・

「くそっ・・我らの封印さえ解ければ人間如き・・」
「族長、何とか間に合いませんか?」
本来ならば人間相手など歯牙にもかけない高位飛竜族、
しかし今やその実力を発揮できるのは若い二人の竜人女性のみ・・彼らが焦るのも無理はない
「わしも、お主らも封印されている期間が長すぎる・・それをこの短期間で解けるわけもなかろう
・・が、このままその者達のみに頼るというのも・・」
族長も色々と悩んでいるようだ
「気になっていたんですけど、封印って事は皆さん一人一人術を施しているのですか?」
突如竜人の会話にキルケが口を挟む・・
「そうではない。このスレイトホルンの頂上の石碑に全員の力を封じている。
アミルとメルフィはまだ若く力を石碑に封じず仮に封印していたために解除ができたのじゃ・・」
「・・なら、その封印が解けないか見に行きませんか?クラークさんの九骸皇なら解けるかもしれませんし。
向こうも偵察でこちらを見ている限りにはその封印を解いて飛竜として利用する方法を持っているかもしれません」
「なるほど、魔を払う剣だしな。言ってみる価値はあるかもしれない・・けど・・」
「・・この膠着状態に兄上が抜ければ圧される可能性があります、いかがしますか?」
静かに見守っていたクローディア、彼女の言う通り今この場を離れるのは好ましくない
「・・だが、このままだと不利なのには変わらない。試してみるのもいいだろう」
「・・おっ、任せていいか?ロカルノ?」
「・・ふっ、私とセシル、クローディアがいる。それに若いとは言えアミルやメルフィもいるんだ
そう簡単にやられはしないさ」
「そうそう!まっ、私にお任せよ♪」
自信たっぷりなセシル・・だが竜人さん達にとってはこの得体の知れない女性に疑いの眼差しもちらほらと・・
「そうか・・、じゃあ用意ができれば行ってみるか。案内は婆さんがしてくれるか?」
「むぅ・・まぁいいがこの老体で頂上まで出向くのはちと厳しい。メルフィ、代わりに行ってくれるかの?」
「わ・・妾が!?」
「何、わしの術があればお前の視界を通じて情報が見える。詳しいことは念波で話せばよかろう」
大役を孫に任す族長・・それにメルフィは少し腕を組むも・・
「わかった!見事案内してみせよう!!」
胸を張り決心する・・それに族長もニヤリと口元を上げた
「よし、ならば私達は警戒を強めておこう。神父さんとステアは戦闘になった時の非難を頼む」
「私も・・戦いますが・・」
ロカルノの言葉にステアは戦う意思を見せる。
全員が行動を起こす中、もはや捕虜ではない自分にも何か役に立ちたいとうずうずしているようだ
「・・ステアさんは同僚と戦うことになるかもしれません。それは・・」
「クローディアの言う通り。そんなの辛いでしょ?戦闘は私達に任せて、
もし突破された時皆を守ってくれたらいいから・・ね?」
巻き込んだ張本人が諭す・・、まぁそうする責任があるのだか当然ではある
「わかり・・ました。」
「すまんな、では解散するか。飛竜族の人間はどんな事態にも対応できるだけの心積りだけはしておいてくれ。
・・血生臭い事は私達で何とかする」
ロカルノの言葉に一族の人間は安心したかのように頷いた

・・・・・・・
・・・・・

スレイトホルン、
頂上に近づくほどに急斜面になり高位飛竜族が住んでいる里とは全く違った地形となっている
麓はどこにでもあるような山林、
中腹部はそこからは想像もつかない草原地帯、
そして頂上に包むにつれ植物はなくなり雪が積もっている地帯へと変化していく厳しい環境だ
普通に上ればベテランの登山家でも一瞬の隙で転落してしまいかねない斜面が続く中
クラーク達は空路をとりゆっくりと上昇している
「流石に・・こっちに来る時のような無茶な飛行はできないか?」
メルフィの背中でキルケを抱きしめながら言うクラーク
凄まじい上昇気流が渦巻いており気温は氷点下・・人が到達する地点ではないことは一目瞭然だ
『当たり前じゃ、ここらは妾らの中でも聖域に入る。おいそれと入れる場所ではない』
「じゃ・・じゃあこの風も飛竜の結界の影響ですか?」
クラークの腕の中で寒さをやり過ごすキルケ、コートの中にすっぽりと入っている
「いや、これは普通の自然だろう。正しく天然の要塞ってわけだが・・ここまで高度が高いと
低酸素症になりかねないな。苦しくなったらすぐ言えよ・・キルケ」
「は・・はい、でもクラークさんは大丈夫ですか?」
「俺は少ない空気の消費でやり過ごせる呼吸法ってのも知っているからな。大丈夫だ」
「剣術使いって色々と便利ですねぇ・・」
頼もしいクラークに惚れ直すキルケ・・、それに対しクラークはシレッとしながら
「まぁ高山で修行とかもしたしな、こうした場所で鍛えたほうが持久力が付くんだよ・・それよりも寒くないか?」
「クラークさんのコートのおかげで大丈夫です・・♪あっ・・手を握っても・・いいですか?」
「・・おっ、そうだな。女性ってのは手足が冷えるんだったか・・ほれ」
「・・♪♪♪・・」
『妾の背中で何をしている・・?』
「何、防寒だ。っうかそんなに気になるのか〜?オマセさんだなぁ♪」
『わ・・!妾はそんなことを言っているのでは・・』
「でも〜、ステアさんの尋問の時もメルフィちゃんは瞬きもせずに見ていたじゃないですか」
クラークにつられてキルケもいや〜な笑みを・・
『違う!あれは・・あの娘が・・その・・おかしくなって情報が聞けなくなってはいけないと思ったからじゃ!』
「お〜お〜、真面目よの〜」
『お前達がフシダラなのじゃ!』
「へ〜へ〜、どうせ俺たちゃフシダラーズだよな〜♪」
「あ・・ん、クラークさん〜♪」
かなりの高度なのにバカップルは変わらない・・
それに対しメルフィは
『お前ら〜!!』
フシダラーズへの戒めとして空中一回転!
「ぬおおっ!?おいこらっ!落ちたら確実に死ねる高さで何のつもりだぁ!!」
それでもしっかりとキルケの手を持ち安定させて無事なのは流石というべきか
『お前ら!妾の里の危機に不謹慎じゃ!!』
「っうか人間欲には勝てないってよ・・ほれっ、もうすぐ頂上だぞ・・」
お馬鹿なことをしているうちについにスレイトホルン頂上付近へ・・
そこは正しく鋭利な刃物のように尖っており頂上のスペースは殆どない
オマケに周囲は暗雲に包まれてその中を雪が渦巻いている
「・・降りれ・・ます?」
すぐそこには凹凸がなく遥か下まで続く崖・・落ちたら100%輪廻転生です
『心配するな、頂上にしがみ付けばよい』
そう言うと頂上の狭いスペースに足をつけるメルフィ・・
鋭い爪で地を抉り固定したのを確認して二人を降ろした
「うおっ・・、気を抜くと風で飛ばされそうだな・・。キルケ、これを括っておけ」
人類が未踏の土地に降りながら警戒するクラーク、キルケに『紫電雪花』の鞘に巻かれてある
紫の紐を解き彼女の手首に縛ってやる
「ありがとうございます・・ほんと・・すごい風ですね・・」
小柄な彼女には相当堪えるらしくクラークの腕にしがみ付いてる

ピカー!

「ふん、惚気よって・・」
人形態に変身するメルフィ・・いつでも不機嫌っぽい
「こうでもしないと飛ばされるんだよ、お前は飛ばされても変態すればいいだけだろ。
・・それで・・あれがそうか」
目の前に人が建てたと思われる身長代の石碑が凍りに覆われていた
まるで剣のような形をしたそれは幾つもの符と紐で縛られており中央には何かの文字が刻まれている
「・・何て書いてあるんだ?メルフィ・・」
「ちょっと待て・・婆ちゃん・・?・・ふむ・・!そうか」
肉親とのテレパスを開始し状況を分析するメルフィ・・その光景は少し怖かったり
「・・どうなん・・です?」
「『この石碑に我らの魂を封じる。願わくば極寒に閉ざされこれを解くことのない世が続くように・・』・・だそうじゃ。
皆は争いが・・嫌いだったんじゃな」
「・・残念だが、その願いは続かない・・か。今は平和を乱さないために必要な力だ」
そう言うとクラークが丸眼鏡を外し懐にしまった。
「じゃがどうする?この石碑は並大抵の力ではびくともせんぞ?年々結界は強固となり
この永久凍土のコーティングも厄介じゃ」
「魔で出来たものならば魔で払う・・まぁやってみるか。・・九骸皇・・!」
右手を払った瞬間にその姿を表す鬼神剣『九骸皇』手首の数珠も淡く輝きその禍禍しい
剣気を押さえ込んでいる
「ぬ・・、これは・・凄まじい念じゃ」
メルフィもその力に圧倒される・・、
「これでも数珠が力を抑えている状態だ。
こっから先は危険なレベルだから使用できないんだがな・・。
これでも十分魔を潰せる・・やってみるか!!」
そう言いながらクラークは石碑の前に立ち九骸皇を振りかざしつつ・・

斬!!

紅の刃が残像を残しながら石碑を走った・・
「・・やり・・ました・・?」
「・・ちっ・・」
クラークの舌打ち、それと同時に石碑を覆っていた氷と紐などは切り裂かれ激しい風に流されたが・・
「駄目じゃ・・な。ふむ・・これほどの破魔剣でも通じないのか・・」
石碑は驚くべきに傷一つついていない
「こりゃあ高位飛竜族の長が頭を抱えるわけだな・・どうする?」
「ううん・・何かあるんじゃないですか?調べてみましょうよ」
邪魔な氷が払われて直に石碑が見えるとなりキルケが近づいて石碑を見回す
「無駄じゃよ、材質こそ少々特殊じゃが珍しい物ではない。それを強固な物にしているのは妾達の魔力の性じゃ」
腕を組みながら諭すメルフィ・・
「でもぉ、何かあるかもしれないですよ?」
そう言いながら石碑に触れてみるキルケ
すると・・

カッ!!

瞬間閃光が走り石碑から光の弾が数個天に向かって放たれた
「・・あっちゃったね」
「・・うむ」
キルケの言うとおりになって二人も唖然、当の本人が一番驚いているのだが・・
「どうなった・・んでしょうね?」
「ううぬ・・わからぬが・・ぬっ!?」
天に放たれた光が戻ってき、それが集まって竜の形へと変形していった
『・・何用だ?』
メルフィと同じように頭に響く念波で話し掛ける光の竜
それに応えるべくメルフィが前に出る
「妾は高位飛竜族の長の血を持つ者、メルフィじゃ!お前は何者だ!?」
『我・・いやっ、我らは汝らの力の意思・・それが結集したモノだ』
男と女の声が入り混じった光竜の声が応える
「力の意思・・?」
『さよう、我らが平穏を望む心が集まり間接的に汝らに接触している・・何用だ?』
「・・い・・今、飛竜の里は危機を迎えておる!
力を封じた妾らを捕らえ戦争の道具にしようとする不届き物が現れたのじゃ!それを退けるために皆の力を解放しにきた!」
『・・・飛竜を手懐ける・・っということか。愚かな・・』
「そうだ、本来助っ人できた俺達が退けたいんだが・・決定打にはならなさそうだからよ」
『事情はわかった。だが・・何故この小娘を里に入れた?』
光の竜はジッとキルケの方を見ている
「小娘・・?キルケの事か?」
『さよう、この娘は魔人。・・天と魔が生み出した災厄の元凶たりし存在になる種。
人間どもの侵略よりこの娘の存在のほうがよほど危うい』
「な・・何言うんですか!?私はそんな物騒な人間じゃありません!それはセシルさんです!」
「「・・それは確かに・・」」
どちらかといえば光竜の言う存在がセシルに当てはまっている・・・
『汝には気付くまい。だが汝には確実にその血が流れている・・ならばこそ我はそれを警戒するために具現化したのだからな』
「・・ってことは必要とあらばキルケを殺すってか?」
『この娘にその意思があるならばな。・・だが、どうやらそうでもないらしい』
「当たり前ですよ!!失礼ですね!」
珍しくプンスカ怒るキルケ、仕草からして怒っているようには見えないのが特徴だ
「キルケは妾達に協力してくれる者じゃ!害は与えぬ!だから封印を解いてくれ!」
『・・・・・、その判断は簡単ではない。メルフィと言ったか。
その男が持つ剣、そしてこの魔人の娘。両方は我らにとっても危険な存在だ。
封印を解いて我らが世界を壊す方向に向く可能性もある』
光竜の発言にメルフィは目を丸くし小さな手を握り締める
「・・暴走し世界の秩序を乱すくらいならばいっそのこと滅んだほうがいい・・ってか?」
『そうなるな。それが悠久の時の流れを見、数々の生物の儚き最後を見てきた存在の考えだ』
長寿ということは必ずも幸福ではない、光竜の言葉にはそうした感情がにじみ出ていた
「・・いいだろう。だが、それでもメルフィ達は守るべき者のために必死なんだ。
俺達も別にお前達に迷惑かけるつもりもない。
・・ここは一つ様子を見てくれないか?」
『様子・・だと?』
「ああっ、俺やキルケが本当に飛竜族を覇者に変える存在なのか・・
そしてメルフィは飛竜族を間違った方向に向かわせない力を持つ者かどうか・・。
もうすぐ大規模な戦闘が始まる・・その間に見極め、俺達が正しければ・・・力を貸してくれ」
『・・・』
「高位飛竜族の力は世界を覆すほどの力だ。間違っていなければ最小限の被害で食い止め
その後平穏をもたらすこともできるはずだ」
『・・いいだろう。汝らの力この頂きから拝見させれもらう』
そう言うと光竜は再び分散し石碑の中に返っていった
「・・・不思議なものですね・・」
石の中から現れた光の竜、それにキルケも不可解に首をかしげる
「長寿で膨大な知識を持っていたらこうした事もできるんだろうなぁ」
「でも失礼ですよ!人を災いな人間に決め付けて!クラークさんだって酷い言われようじゃないですか!」
「まぁまぁ、落ち着け。他人がどう思おうと関係ないだろ?肝心なのは俺とお前の心のつながりさ♪」
「クラークさぁん♪」
途端に懐くキルケ・・それを見てメルフィも呆れに呆れ
「さっきまでの真面目は話はなんだったんじゃ・・バカップルが・・」
腕を組みながらジト目になる
「でもぉ、また魔人って言われましたよ。何なんでしょうね?」
以前にも悪趣味な魔術師に魔人と言われて気味悪がれたキルケだけに気になるところだ
「ううん・・メルフィ、わかるか?」
「魔人・・か。まぁ色々と言われておるがさっきの光竜の言ったような魔人は聞いた事がない
まぁうまく石碑の封印が解かれれば力とともに古代の情報も開放されよう」
「そうですか・・、まぁ私は私なんですけどねぇ」
「そうそう、魔人ってのはセシルみたいなのを言うんだよ。俺達は真人だ」
「・・っというかセシルは悪魔じゃ」
同時刻遥か下方でセシルはくしゃみをしたという
「そんじゃ、細かい事は後が考えるにして里に戻るか」
「うむ、では急いで戻るか。」

ピカー!!

メルフィの身体は光再び飛竜の姿に・・
「わかりました。じゃあ帰りましょう!」
「おう、降りる時も風が強いからな。この紐は結んだままにしておくか」
二人もまたその広い背中に乗りゆっくりとその地を後にした

その光景を石碑は静かに見守っているようだった


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