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第四節  「忘却の秘境」


軍国シュッツバルケル・・、国土の東の端には巨大な山が遮っており
そこがこの国の国境となっている。
っというのもこの山は標高が高く登頂は困難そのものでありその山の全様は未だ謎に包まれている
因みにこの山を越えた東はフィン草原都市郡となり広大な草原が広がっている
山の名はスレイトホルン、頂上の行くほど鋭く尖った山で先端が雲に隠れてよく見えない

そんな中、山の中腹に二つの巨大な影が飛来した
ちょうど山が尖りだす手前でかなりの規模で広い丘のようになっている不自然な地帯だ

『到着だ、どうだ!早かっただろう!?』

先に地についた飛竜メルフィ、三人を降ろして雄雄しく言ってのけるが・・
「これは・・、並みの竜騎士でも振り落とされますね」
よろけながらメルフィの背から飛び降りる神父、何だかんだ言ってもケロッとしている
「確かに、仮面が飛びそうだったからな」
肩を鳴らしながら降りるロカルノ、飛行の途中からは仮面を飛ばされまいとずっと抑えていたようだ
そして・・
「・・・・・・・」
げっそりなセシルさん、顔が青くなっており生気ゼロっぽい
「・・セシル、しっかりしろ」
「・・・あ・・・あんたらなんで・・そんなに平気なの・・?」
「このくらいならな。クラーク達も到着したか・・」
彼らが立っている草原に影がさしアミルが降り立った。やはりメルフィよりも丁寧な着地だ・・
しかも彼女とさほど時間に差は出来ていない様子
『お待たせしました、どうぞゆっくり降りてください』
おまけに親切に身をかがめてクラーク達を降りやすくしてあげたり・・
ここらが大きな違いである
「よし、いやぁ空から見る景色ってのもすごかったな」
「そうですねぇ!鳥になった気分ですよ!」
「ミィ、かぜがきもちいい!」
降りた面々はどうやら快適な空の旅を堪能してきた様子・・それに対し・・
「納得できない!こらメルフィ!もうちょっと丁寧に飛べなかったの!?」

ピカー!!

「これが普通だ!アミルの飛び方はなよっちいだけじゃ」
閃光を放ち人形態になったメルフィ、やれやれと腕を上げて笑う
どういう原理か服装は元のままで破れていない
「一般的に言ったらアミルの方が普通よ!ねぇ!ロカルノ!」
「個性だ」
「そうですね」
メルフィ組、セシルの相手をせず・・

ピカッ!

「まぁまぁ、メルフィ様は少々飛び方が荒いだけですよ」
こんな時でもメルフィのフォローを忘れないアミル、大人で知的な女性である・・
「むっ?そうか?」
「そうですよ、メルフィ様。背中に人を乗せてローリングしたら大抵落っこちちゃいます」
「「「・・・・・・」」」
飛竜の視界だからこそ見えた前方の脅威、クラーク達でも冷や汗がたらりと垂れる
「でしょ!?目が回るっちゅうねん!っもう二度とごめんよ!」
「ま〜ったく、細かいことを気にする娘だな!こっちこそ願い下げじゃ!・・ともかく、全員揃ったところで里に入るぞ」
プンスカなメルフィ、一人歩き出し丘の前で止まる
「・・おい、そこに何かあるのか?」
「ここが里なんです。下界との関わりを避けるために結界を張っていまして・・」
「なるほど、ここは山の中腹、住処にするにはちょうどいいですし結界を張れば気付かれないわけですね・・」
「そうです、まぁそれでも気付かれているようなんですが・・」
途端真剣な顔つきになるアミル・・、それに対しメルフィは・・
「ふん!必要な戦力は揃った、後は妾の力にて滅ぼしてくれるわ!」
「・・随分な自信だな」
少女の自信にロカルノも思わず微笑む、
その動きには幼さが出ておりそれに焦りが出ているのを彼は勘づいている
「本来ならば妾一人でも十分じゃ!さぁ里に入るぞ!」
そう言うとメルフィは懐より小さな鈴を取り出し魔方陣を展開しながらそれを鳴らした

リィ・・ン、リィ・・・ン

・・カッ!・・

鈴が静かに鳴ったと思うと周囲に閃光が走った!
次の瞬間・・
「・・何・・これ・・・?」
「・・これが結界というわけか」
一同感服する。周りの光景は全く変わっていない・・が、そこにさっきまでなかった小屋が幾つも並んでいる
「下界と遮断するために私達のご先祖様が英知を結集させたものです。
普通の人間ならば結界の効力で無意識にこの集落を避けるように歩いてしまいます・・
まぁ、それ以前にここに来る人なんて私が産まれてから一度たりともありませんが・・」
アミルが丁寧に説明しながら奥へと招く・・、住民はどう見ても普通の人間で建てられているものも正しく普通の木造建物。
軽く会釈をするところを見ると普通の人間よりも彼らのほうが礼儀正しい
しかし彼らは会釈するだけで決して自分から話し掛けてこようとはしない・・
「・・アミルさん、皆さんどうしてしゃべってこないのですか?人間がくるのは珍しいんでしょ?」
少し異常とも思える光景にキルケが聞いてみる。彼女の人柄ならば快く応えてくれると思ったのだが・・
「それはだな、これからの事態に警戒しているのじゃ」
何故かメルフィが応える・・、どうやらアミルばかりしゃべらすのが気に入らないらしい・・
「・・、それほど切迫しているわけか」
「まぁな。皆は竜形態を封印して未だそれを解けずにいる状態じゃ。
長寿ゆえの膨大な知識は持っていれども碌に戦えん・・攻められたらひとたまりもないんじゃ」
「なるほどな、おまけに助っ人として来たのが襲ってくる連中と同じ種ってなりゃ内心複雑か」
「・・はい、助けを求めるのにも一族で賛否両論起こりました
・・結果としては族長の言葉で助けを求めることになりましたが・・それで全員納得したわけでもありません」
申し訳なさそうにアミル、しかし面々は一切気にせずにいる
「安心しろ、風当たりの強さを感じることはよくある。それよりもその長に詳しく話を聞かなければな・・。どこにいるんだ?」
「あの一番奥の館じゃ。ほれっ、さっさといくぞ!」
一人さっさと進むメルフィ・・、それに周りは結構呆れていたり
「ガキなのにせっかちねぇ。全く・・」
「ほう、お前がそれを言うとはな・・」
「・・何よ、皆して変な目で見て」
軽く口にしたセシルだが面々が奇異の目で見ていたり・・、特にキルケ&クラークはリアクション付き・・
「い・・いやぁ。お前が・・ねぇ」
「ええ・・、雨になりますね」
「・・・・、私が正論言っちゃ悪いの!?」
「っうかお前の存在自体が不謹慎だからさ」
「おいこら眼鏡侍!この山の頂上に括りつけたろかい!!」
メルフィの飛行に付き合わされて元々不機嫌なセシルだけに宿敵(?)クラークの言葉にプッツン3秒前・・
「あ・・あの・・皆さん・・」
それを見てアミルがおろおろする・・が周りがいたって冷静だったり
「安心しろ、いつもの事だ。戦闘が始まっても周りには迷惑はかけない。
・・・それよりもさっさと長に会おうか。こうしている間にも敵は攻めてくるかもしれないからな」
ロカルノが冷静に接する、それにアミルはホッとしながらも
「あの・・貴方達のチームのリーダーって・・クラークさんですよね?」
ロカルノが引っ張っていっている感じがしたようだ
「・・ふっ」
思わずロカルノが笑った瞬間、クラークVSセシルの戦闘が始まった

・・・・・・・・・

結果がわかっている戦いはともかく、ユトレヒト隊+αは族長の館へと招かれた
館の内装は質素そのもの・・木製のしっかりとした造りでこれといった癖もなくどっしりとかまえている
館は集会場のようなものにもなっているらしく一階は殆どそのスペースが占めている
そしてその広いフロアの床に静かに座っている老婆が一人
よぼよぼで見えているか見えていないかわからないほど細い目をしており一番の特徴は
その白髪からメルフィと同じ角が生えていること・・
「ばあちゃん!!」
館に帰るなりメルフィがその老婆に飛びつく・・
「おおっ、メルフィ・・無事だったか・・?」
彼女を受け止めながら優しく声をかける老婆
「・・どうやら血縁関係ってわけだな」
微笑ましい光景を見るは血まみれなクラーク、女性に手を上げるのが嫌なら火種を放たなければいいのだが・・
「ええっ、メルフィ様は族長の孫ですので・・。早く里に帰って族長の姿を見たくてあんな無茶を・・」
「・・・・・、やれやれ。そんな訳聞いたら機嫌悪くしているわけにもいかないじゃないの・・」
腕を組んでため息をつくセシル、そんな彼女の頭をロカルノは軽く撫でてやった
「・・それで、そちら方が助けに応じてくれた人かの?」
「そうじゃ!妾が探した!」
どうやら祖母の前では甘えん坊らしいメルフィ
「・・まぁユトレヒト隊って名乗っている冒険者だ。メルフィとアミルさんの依頼でここに参上した。
・・あんたがここの代表か?」
老婆の前に座るクラーク、こうした事は彼担当・・他の面々は口を出さないのは面倒だからだったり
「・・いかにも。この高位飛竜族の里を治める婆じゃ・・。
このたびは我らの声に応えてくれて礼の言いようもない・・しかし事は思ったよりも深刻じゃ。・・最悪の場合は・・」
「婆さん、最悪の場合にさせないのが俺達の仕事だ。余り悪い方に考えなさんな」
「そうじゃ!妾とアミルも戦う!そうすれば連中なぞ灰にしれくれる!」
「・・メルフィ、己の力に過信するな。飛竜といえど弱点はある。」
「・・むぅ〜・・」
老婆の言葉にシュンとなるメルフィ・・
「まっ、それはいいんだけど。具体的なことを教えてくれないかな?」
「わかった・・その前に皆さん座りなさい。メルフィ、お茶を・・」
面々を招きつつ老婆は静かに説明をしだした


・・・、事のきっかけは一ヶ月ほど前。
里の結界を干渉する気配を感じた飛竜族が使いを数人ふもとの町などで情報を集めに行ったことで事態がわかったらしい
シュッツバルケルが軍の力を取り戻し自分達を襲撃しようとする展開に一族は封印を解こうと試みたが
長すぎた期間ゆえに簡単に解けるものではなく、年齢の若く力も幼いメルフィとアミルの封印を解くことで精一杯であった
そんな状況の中で侵略する軍と戦うのは無謀であり別の方法を考えていくうちに
自分達の存在を信じ力を持つ者を探すことで話が決まったようだ
そして老婆の導きによりクラーク達と会いこの場まで招く結果となった・・

「・・それで、問題のシュッツバルケル勢はどうなっているんだ?」
一通り話を聞き終わった後でロカルノが老婆に聞く
「・・・、詳しい勢力は分からんが麓の人里に軍人が集まっているのを一族の者は確認した。
それからは危険ということで接触はさけておるが恐らくは・・」
「そうか、ならばある程度の準備は整っていると考えたと見ていいな。
ここいらは山の中腹の割には平たい・・、登山もできように教育した馬もあるならば騎馬兵もいるかもしれないな・・」
頭脳担当なロカルノ、今ある材料だけで考えられる状況をシュミレートする
そこへ
「・・シュッツバルケルの騎馬はどんな悪路でも走れるように調教しています・・。その可能性は大いに考えられますね」
ずっと静かに黙っていた神父がゆっくりと告げる
「・・神父様?・・なんで・・」
「・・まぁ、詳しいことはいずれ言うことにもなるでしょうが・・私は元シュッツバルケル軍にいた身でして・・。
恐らく今回の出来事の仕掛け人も特定できます」
「ほう・・、ではその首謀者は?」
「ミネルバ、
かつては将として勤めていた女騎士です。
シュッツバルケル=ビルバオ間戦争で軍部の信頼が失墜した状態からこれを建て直し
飛竜を用いて編成しようとするだけの行動力や洞察力を持ち合わせているのは彼女くらいですから・・」
「そのミネルバってのと知り合いなのか?神父さん」
「ええ、そうですね。・・良く語った仲です」
「・・じゃあ!神父様が話しかければ・・!!」
争いを回避できる、瞬時にアミルが微笑む
「・・・・、残念ですが彼女には話し合いは通用しないでしょうね、私は国を捨てた身ですから・・・、
それでも試して見る価値はありますか」
「いやっ、話を聞く限りにはそれは危険だ。それに女一人で軍を掌握するほどの力量ならば感情で左右されることはあるまい・・」
「・・面目ないです」
申し訳なさそうに頭を掻く神父・・
「そんじゃあ戦いをするにゃまず相手を知ることから・・かな?セシル、その麓の町の様子でも見ていてくれよ」
「・・私〜?敵さんいたら暴れていいの?」
「偵察だっての!」
戦闘向きなセシルさんにはこうした仕事は不向きか
「いやっ、住民の迷惑にならない程度ならば暴れてきてもいいだろう」
それに意外な意見を出すロカルノ・・
「・・いいのですか・・・?」
「何、どの道攻めてくる可能性は強い。それだったら出端を崩した方がこちらの体制も整えれる
・・まぁ、向こうに攻め入る口実を与えることになるかもしれないがそれはセシルだ。
・・・通り魔的な犯行にしか見られないだろう」
「「「なるほど・・」」」
特に『通り魔』のフレーズに共感なユトレヒト隊面々・・
「・・この恨み、晴らさずにおくべきか・・」
「膨れるな、どの道、お前は余所の里で暴力沙汰を起こしているんだ。白い目で見られたくなければ少しは貢献しろ」
・・先ほどの乱闘はクラークからは手を出していないので高位飛竜族の視点からしてみれば
セシルの暴行としてしか見られていなく・・
「・・ちっ、わかったわよ!手柄は頂くわ!」
「よし、では手はずを整えよう。いいか・・」
セシルの苦い顔を全く相手せずにロカルノは説明を進めた
まぁ、内心知れ渡っているだけにこれしきのことはあまり大した事でもないらしかった



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