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第二節  「災難な剣士」


鍛冶工房『HOLY ORDERS』
いつもながら繁盛しているプラハの名店。
ロカルノが修理を依頼している店でありクラークにしても店を建設しただけあって顔見知りである

「いらっしゃい!あっ、クラークさん!」
店内で今日も元気に接客する黒髪の女性・・シャン。元アサシンの彼女だが今ではすっかり
接客業に板がついた
「よう、ロカルノの槍と鎧の修理が終ったんだってな。あいつがこれない代わりに俺がもらいにきたんだけど・・」
「あっ、はい!出来上がってますよ!リュート!クラークさんが来たわよ!!」

「え・・ああ!わかった!!」

奥からこれまた元気に出てくるはこの店の亭主である犬人鍛冶師リュート。
小柄で頼りなさげな外見ながらにしても造り出す代物はどれも扱い安くファンも多いんだとか
それでも造るのは二本の腕のみ・・っということで予約待ちがかなりあるのがもっぱらの問題らしい
「どうも!クラークさん!」
作業服姿のリュート、鉄を打っていたのか工房から熱気が漂ってきており彼も汗をかなりかいている
「よっ、相変わらずがんばっているな!」
「忙しいのは良い事ですけど・・目が回っていますよ」
とはいいつつ爽やかに汗を拭くリュート、満足な生活を送っているようだ
「まぁ、俺の得物も具合が悪くなったら頼むぜ。ロカルノの槍・・できたんだろ?
あいつがこれないから俺がもらいに行ってくれってよ」
「はい、出来てますよ〜。あれからロカルノさんと設計を色々と話し合いましたのでこれもいい品になってます!」
そう言うと一旦工房に戻り鎧と槍を持ってやってきた。
鎧などは見事にひしゃげでいたがそれが嘘のように戻っており、修復技術の高さがよくわかる
「へぇ・・修復ってもっと後がわかるようなもんだと思っていたんだけどな」
クラークもその出来のよさに感心している
「物が良いですからね。重装鎧『フォートレス』はひしゃげたり裂けた部分を修復しつつも篭手やブーツ等の軽量化を進め、
生命線を守る胴体の厚みを増しました。ちょいと思いついたので
魔素を弾く塗料を塗って魔法防御を高めています。以前よりも黒くなっているでしょ?」
説明しながら鎧をまとめる、以前の黒を基調とした鎧とさほど色調は変わりはないのだが
言われてみれば変わったような変わらないような・・
「・・ふぅん、おおっ、確かに篭手は俺のと同じくらいの軽さだな。」
「それで目玉の『戦女』、刃に罅が入ったということで火を入れなおしたのですが
いっそのこと大幅に改良しようと思い刃の部分を増やしました。
元々一本の金属で造られたのでやり易かったです」
そう言うと布に包まれた槍を解く、
以前は柄と刃の比率が4:1ほどの長さだったが今度は刃の部分が大きくなり3:2と言ったぐらいか。
以前の洗練された刃とは違い修復後はまるで騎士剣のように広い刃が特徴となっている
「刃がでかくなったなぁ。こんなタイプは珍しいか」
「そうですね、剣槍に近いかもしれませんね。
槍と剣を扱えなければこれを使いこなすのはちょっと難しいと思いますよ。
中間よりやや槍より・・って感じですしね」
新しくなっても装飾はあっさりしているが刃に乙女の顔が刻まれているのは変わらずそれは以前の物と全く変わらない
「確かに・・、剣として使うのか槍として使うのか微妙な感じ・・だな」
実際に握って見て思わず唸るクラーク・・
「そうですね、まぁロカルノさんなら存分に使ってくれるでしょう。
後ちょっとギミックがありますが・・それはここでは見られないですね♪まぁ楽しみにしていてください」
「・・仕込みが好きだなぁ・・。よしっ、確かに受け取ったぜ?でも・・金どうしよう?俺そんなに持っていないぜ?」
「ああっ、設計中にロカルノさんにもらいましたから大丈夫ですよ。どうぞ持ち帰ってください」
「おっ、そうか。用意がいいな〜!助かるぜ!」
ホッと胸を撫で下ろすクラーク、以前に城一つ買えるほどの剣を造ってもらったこともあるから
値段を聞くのが少し怖かったり
「毎度ありがとうございます。・・それはそうとして以前セシルが店に押しかけて来ましたけど・・何かあったのですか?」
天敵の動向に気になるリュートとシャン、身内が来てくれたならば事情を知りうる
「ああっ、盲目の猫人を引き取ったんだよ。
何やら町の貴族がこの店の裏に住んでいた貧民猫人を利用してセシルに喧嘩売った・・ってところだな」
「・・あ・・・あいつに・・。その貴族は・・」
「ちょっと前に貴族の屋敷が襲撃された事件、あったろ?」
「あっ!確か屋敷の主人である夫人が行方不明で護衛や警備の大半が瀕死の重傷だったっていうあの事件ですか!?」
流石はシャン、近所付き合いでか町の話題は詳しいらしい
「そうそう、あいつがキレちゃってな〜。元凶の夫人はあいつがどこかのルートで人身売買・・
なんでも浮浪者の玩具と化しているんだってよ」
「「・・悪魔だ・・」」
その所業にリュートとシャンは震え上がる・・、被害者なだけに他人事には聞こえないみたいだ
「それでも獣人や少年少女は襲わなくなったってロカルノは言っていたぜ?その盲目の猫人に嫌われるのが嫌らしいからな」
「そうですか・・、じゃあディ・ヴァインの活躍の場が少なくなりましたね・・」
「普通の戦闘でも十分過ぎるくらいの威力だぜ?森をあっと言う間に焼き払ったんだからな」
「ええっ!?ロカルノさんにそれだけの魔力があったんですか!?
そこまでやったら普通なら衰弱しきってしまいますよ!?」
「いやっ、魔力の出元はセシル。使いたい放題だった」
「「・・悪魔だ・・」」
「まぁ、ディヴァインのおかげもあって少しは大人しくなったもんだぜ?
お前達を襲うことはもうないだろうから安心しろよ」
「・・なんで、断定できるんです?」
「・・これ以上減点されたらロカルノも愛想を尽かしてしまう・・ってところだな」
「「???」」
「色々あるんだよ、・・んっこれは?」
そういうとカウンターの隅に立てられた本に目を付く
「ああっ、僕が得た知識を纏めた本です。クラークさんの得物とかも載せてもらってますよ」
「ほぉ・・なるほど、カムイの事を良く聞いていたからなぁ・・・おっ、中々充実しているじゃないか」
一旦槍を置き書物を観覧するクラーク、自分が教えたカムイの伝記やユトレヒト隊の得物まであるので中々に面白いらしい
「ええっ、シウォングの皆さんの得物も見せて頂きましたし・・師匠の家にあった書物から得たのもありますよ」
「ふぅん・・これを参考に依頼とかもするのか?」
「まぁあくまで参考ですよ・・実際唯一無二な物も多いですしね。」
内容は言わずもかな・・伝説の剣まで登場しているのだからそれを造れといっても同じものなど早々はできない
「そりゃそうだな、じゃあこれからもがんばれよ♪」
「ありがとうございます!」
リュートを激励するとクラークは笑いながら防具を入れた袋を担ぎ店を出て行った

「・・・、シャン、クラークさんの言う限りは間違いないかな?」
「そうね。セシルの恐怖がなくなったのなら・・そろそろ子供を・・作る?」
「シャ・・シャン!?」
「冗談よ♪さぁ!仕事仕事!」
笑いながらリュートのおでこを軽く突くシャン
完全には安心できないが彼らの心の中にあった警戒心は少しは和らいだようだった


荷物を受け取り町の通りを歩くクラーク、表通りも仕事時ということで中々に人通りも増えてきている
「せっかく町にきたんだし・・パンケーキでも買って帰ってやろうかな?」
普段は日がな一日館にいたりしているので中々町にはこないクラーク
行ったら行ったで迷子に出くわしたり彼を知らないヤクザさんが喧嘩売ったり何かとトラブルに巻き込まれていたりしているのだ
それでも久々の町、いつもキルケが買ってきているパンケーキを思い出しその店に寄って行こうと思いつく
その時・・
「おい、そこのお前!」
突然少女の声が・・
「ん・・?俺っ?」
自分に対して向けられたモノと感じたが付近を見てもそれっぽい人はいない・・
「・・??気のせいか?まさか・・また霊かよ・・」
以前霊の声を聞きその姿を見たことがあるクラーク、今回の声も霊の仕業と思い出したが
「どこを見ている!ここじゃ!ここ!!」
「ほえ・・?おおっ!?」
声のするほうを見て驚く、背の小さい少女が自分を見上げていたのだ。
どうやら荷物が邪魔でわからなかったようだ
「気付くのが遅いぞ!人間!」
少女は東国の修道士『巫女』の赤装束を着ており、おかっぱなピンク髪をしている
それ以上に特徴なのが額の梵字とそれより少し上にある尖った角・・獣人のものと思われる
「お・・おおっ、それはすまないな。お嬢ちゃん」
「全く、背だけはでかくて不愉快だ!」
「・・って何怒ってんだ?そもそも俺に何か用?」
大層な物の言い方に唖然とするクラーク・・
「おおっ、そうだった。お前中々いい腕をしているようだからな。少し頼みたいことがあるのじゃ」
「・・・、悪いな。そう言うのは自衛団に相談してくれ・・じゃ!」
厄介事の予感、一礼して去ろうとするクラークだが・・
「待て!妾を馬鹿にする気か!」
少女も負けじと飛び掛り首をホールドする・・
「っうか!俺は一介の冒険者だ!そんな大層な物言いをするお嬢ちゃんの依頼を受ける身分じゃねぇ!」
「妾が・・こんなに頼んでいるのにか!?」
「これが人に物を頼む態度か?」
少女故に全然絞まっていないので余裕なクラークだが荷物が多いので中々少女を降ろせない
「うぬ・・ならば!・・きゃあああああ!!」
不意に少女が飛び降りクラークの手を引っ張り叫ぶ・・、それと同時に付近を歩いていた人や店の人が一斉にこっちを見だす
「このお兄ちゃんが私を・・私をぉぉぉ!!!いやっ!やめてぇぇぇ!!」
「て・・手前!何を言い出すんだよ!!!」

「ボソボソ(・・ねぇ、あの人って町外れに住んでいる人よね?少女捕まえて何やっているのかしら?)」
「ボソボソ(何だか叫んでいるしねぇ。変に大きい袋なんか持っているし・・あそこにも少女が??)」
「ボソボソ(ええっ!?まさか・・でもセシルさんがあの人ってロリ好きだって言っていたし・・)」
「ボソボソ(自衛団に連絡した方がいいわよ、絶対ロリコンよロリコン!)」


付近からの冷めた目・・
「・・おいガキ、この後始末どうしてくれるんだ・・?」
「何、長い人生の中の恥だ、気にするな。それよりも話を聞く気になったか?」
「・・断れば・・?」
「社会的に死んでみるか?」
「・・・・・・。俺が何をしたってんだ・・」
「まぁそういう『気』を出しているんだ。仕方あるまい。では行くぞ。ボサっとしていれば自衛団が来るぞ?」
「ちくしょう!やっぱ俺ってこういう性分なのかぁぁぁぁ!」
周りの目が痛く走り出すクラーク、しばらくは町に下りてこられなさそうだ


・・・・・・

「でっ、町の人間まで人攫いと勘違いさせてまで俺に何のようだ?」
首に掴まりながら館まで少女を連れて帰ったクラーク、当の少女はキルケが出したお菓子をさぞかし珍しそうに見ている
「???・・娘、これは何じゃ?」
「へっ?お菓子ですよ、クッキーです」
「くっきー?ふむ・・(モグモグ)・・うむっ!うまい!人間はこのように甘い物を好むのか・・」
マイペースにクッキーを頬張る少女・・、それに同席していたクローディアも唖然・・
「おいっ!俺の質問に答えろよ!」
「まぁ待て、お前も食うか?」
「・・自衛団に突き出したろか?」
「兄上・・落ち着いて・・」
「冗談はこのくらいにしておくか。実はお前に力を貸して欲しいことがあるのじゃよ」
手を拭きながら真剣な顔になる少女
「俺の・・?ってまずお前が何者かを名乗れよ」
どう見ても普通の子供ではない少女・・
「よかろう、妾はメルフィ。高位飛竜族の者じゃ」
「・・飛竜だぁ?・・竜人ってやつか?」
「まぁ、お前達にとってはそのような認識だろうな。妾は飛竜の中でも一際優れた種だ!
どうだ!驚いたか!」

・・シーン・・

「驚くも何も・・信じられるかぁ・・?」
「何故信じない!?」
「・・貴方が着ているのは私達の出身国『カムイ』の巫女装束です。カムイには飛竜などいませんから・・ね」
「下らんことを気にするな、お前達も。この衣装は人間の姿になる際に参考にしたまでだ」
「参考にした割には随分マニアックな・・。でっ、その竜人が何用だ?」
「ふむっ、そこなんじゃ。実は妾らが住んでいる里が今危機に瀕している」
「・・・」
思った以上に真剣な表情にクラークも顔つきを変える
「妾ら高位飛竜族は高い知能と絶大な力を持っている。・・その気になれば国一つ滅ぼすのも容易だ。
・・しかしそんな事をしていればいずれは自滅する。故に妾らはその能力の大半を封印し、静かに生きてきたのだ」
「それで・・?」
「妾らが住んでいる里の結界を破り侵攻しようとしている輩がいる。・・恐らく飛竜を手に入れ従えさせようと目論んでいるのだろう」
「・・それで他力本願か?自分達でその封印とやらを解いたら早くないか?」
「それができれば苦労はしない!長年封印をしてきただけにそれを解除するのには時間がかかりすぎる。
妾ともう一人能力を解除するのが精一杯だ。それだけでは適わないのでこうしてお前達に助けを求めているのじゃ!」
「・・助けを求める態度じゃないが・・、飛竜を従えさせる・・ねぇ。戦争を仕掛ける気満々じゃねぇか・・どこの連中だ?」
「ううむ・・確か・・シュッツバルケル・・だったかの。」
「・・あいつらか!」
シュッツバルケルの言葉にクラークが強く反応した・・、それにキルケやクローディアもびっくり
「兄上・・、知っているのですか?」
「まぁ傭兵時代にちょいと喧嘩を売った事があるんでな。内戦とかゴタゴタがあって悪さができないようになったはず・・だが・・」
「それらは妾も知らん、下界の事情なんぞ知ってもなんぼだからな。それよりも協力してくれるか?」
「・・・・、ちょっと待ってくれよ。まだ面々が揃っていない・・結論は揃ってから出させてもらう」
「まぁ、それでもいいが・・早くしてくれ。余り時間に余裕もないのでな」
依頼している身なのに大意張りなメルフィ・・
「安心しろ、もうじき帰ってくるさ・・」
苦笑いをしながら珈琲をすするクラーク、結局は依頼を受ける心つもりのようだ


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