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終節  「和解と平和」


異形集団が壊滅した後、飛竜はその姿を消し草原を焼いた炎も自然と鎮火されていた
そこに残されたのはむき出しになった大地のみ
シュッツバルケルの軍地も完全に焼け落ち何事もなかったように風が吹いていた

「・・う・・・ん・・」

「・・気が付きましたか」
飛竜の里のアミル宅・・、気絶していたミネルバが静かに目を開ける
それを介抱するはずっと傍で見守っていたマーチス
他の面々は各々戦いの傷を癒しており彼女の家の人数はもはや飽和状態
・・しかし、当の家主とメルフィは外出中なのだが・・
「・・マーチス・・ここは・・?」
「飛竜の里ですよ」
「あ・・・私・・はっ!!」
徐々に思い出されて飛び起きるミネルバ・・、それをマーチスは軽く抱きしめ
「落ち着きなさい、・・全て・・終わりました」
「私は・・あの・・魔術師に・・」
「ミネルバ・・」
「マーチス・・私を救ってくれたのか・・?」
動揺するミネルバをマーチスは優しく包み込む
「・・まぁ、そういうことです。もう二度と戦闘はできない体になったようですがね」
竜の力が消えたマーチス、再びかつての体に戻り加えて肩に負った深手も痛々しい
「・・どうして・・?お前は・・国を捨てたはずじゃ・・」
「もちろん・・君を救いにきたんですよ。」
静かに微笑むマーチス、彼女の罪を全て許す優しい笑みだ
「ミネルバ様・・」
そんなミネルバを傷が癒えつつあるサラとステアが見つめる
「・・!?・・サラ・・、貴公は・・」
「口惜しながら、私、ステア、イオの三名は敵勢の捕虜のなりまして・・」
苦笑いのサラ、捕虜というにはかけ離れた扱いなのだが一応はそういう状況にある
「そうだった・・か。ご苦労だった・・」
「・・いえ、それよりも・・この一件の記憶は・・」
「すまない・・随分前から記憶が途切れ途切れになっている・・どういう事なのか・・」
困惑顔のミネルバ・・思えばメイガスに操られていてからの記憶がないとするならば
この事態を把握するのは至極困難だろう
「・・最初から説明します・・落ち着いて聞いてください」

・・・・・
・・・・
・・・
・・


全てをサラは話終えた・・その頃にはミネルバは青い顔をしながら震えている・・
「・・私は、それだけの罪を・・」
自軍に仕える将を殺め、飛竜を操ろうとした目論見・・それに彼女は愕然としている
「・・メイガスは君のシュッツバルケル再建の意欲に付け込んできた・・、だがこの一件が君が起こした事件じゃない」
「・・マーチス・・」
「そうそう、それを気にしているんだったら良い国にしてみせろよ?優秀な将もいるんだ・・不可能じゃないだろう」
彼女達を静かに見守っていたクラークが声をかける
「お前は・・確か・・傭兵公社の・・」
「まぁそうだがこの際気にすんな」
「・・だが、飛竜達は・・」
「事情は話してある・・長は別に争いを起こすつもりはないと言っている・・気にするな」
ミネルバの心配にロカルノが静かに仮面を取りながら応える
「・・そうか。」
「それよりも今回の一件にてシュッツバルケルの軍力も少し弱まるだろう・・内戦などがまた起こらぬようにダンケルクとしても
援助を行おう・・」
「・・貴公は・・?」
「現ダンケルク王ヤスパールの兄にして第一王子のローディスだ。・・最も、その肩書きはすでに捨てたのだが・・助言ぐらいは
できる」
「・・・・、感謝する。」
静かに頭を下げるミネルバ・・、それにマーチスも安堵のため息を漏らす
そこへ
「あっ!イオさんが目を覚ましますよ!!」
キルケの明るい声が・・、全てが終わってからもイオに付きっ切りに治療をしていたのだ
「あ・・う・・私は・・」
「よう、目が醒めたか」
ゆっくりと起き上がるイオにクラークが軽く声をかける
「お前・・、私は・・メイガスによって・・いかがわしい体にされたのに・・」
「どうやらこっちの記憶は残っているようだな。安心しろ、全てケリをつけた。ほれっ、お前らの御大も無事だ」
クラークが指指す先には鎧を外し半身を起こした状態のミネルバが・・
「・・ミネルバ様・・」
その姿を見るだけで安堵の息をもらすイオ、我が命よりも主君が無事を喜ぶ・・それが騎士
「・・・すまない、私の不甲斐無さのために貴公らには命の危険に晒してしまった」
鎮痛な想いで謝罪するミネルバ・・しかし
「いえ・・それでも、我々黒薔薇師団は貴方様に仕える所存です」
そんなミネルバに深く頭を下げるサラ
「・・私も・・かつては国を裏切った者ですが・・シュッツバルケルが良い方向に向かうためならもう一度参加させてください!」
同じく礼をするステア・・、御大が無事だったということでもう涙目だ
「・・・私も同様です・・ミネルバ様」
キルケに抱き起こされながらイオも・・
「貴公ら・・ありがとう・・」
「・・大変だったでしょうが良い部下には恵まれたようですね、ミネルバ」
「・・マーチス・・、そうだな・・。私はその事をいつしか当然と思い軽く考えていたのかもしれない・・」
「ふふふっ、君らしい真面目な応えだ」
「マーチス、よかったら・・今度こそ私と・・共に・・」
「すいません、もう私は剣を持つこともできないでしょう。それに私には帰る場所がもうできましたからね」
申し訳なさそうに言うマーチス、彼はすでに軍人ではなく一人の神父なのだ
「・・・・」
その言葉にミネルバが押し黙る
「・・私の力がなくても君はがんばっていける。そう信じている・・」
「・・・、わかった。お前に笑われないように・・がんばってみる。ありがとう・・私のために・・」
「いいんだ・・、困った事があったら連絡をしてくれたらいい。私でよければ力になるし・・ユトレヒト隊の皆さんも頼りになりますしね」
笑いながらマーチスがクラークに振る
「・・まぁ、少々値が張るが相談には乗ってやるぜ・・?女御大さんよ」
「・・ありがとう」
静かに礼を言うミネルバ・・目の前にいるのはもはや怨敵ではなく頼りになる協力者だ
そこへ
「おう!二人とも目を醒ましたようだな!」
「・・無事で何よりです」
メルフィとアミルが入ってきた。人口密度がこれで一杯一杯か・・
そしてその後ろには長老である老婆が・・
「目が醒めたようじゃな。シュッツバルケルの・・」
「・・・・、今回の一件・・真に申し訳なく・・」
一目でその老婆がこの一族の長だと諭し謝罪するミネルバ
「よい、事情はメルフィから聞いておるのでな。・・じゃが、下らん魔には気をつけるようにな」
「・・はい・・」
「そこまで沈まなくてもいい。我らとてその力を封印することが必ずしも良いことではないということを思い知らされたのでな
我々にとっても良い勉強さ」
「そういう事だ。・・まぁ敵意を見せなければ妾らとて危害は加えん!後は好きにしろ!」
自慢げに言うメルフィ、・・今回の活躍を老婆から褒められたようでかなり上機嫌のようだった

・・・・・・

数日後

傷を癒したミネルバ達が山を降りる日がやってきた
アレから全員の治療は良好・・記憶と力が戻った竜達の秘術により見る見るうちに治療が終わったのだ
この数日間でミネルバは自国へと使いを出し、またイオの部下達やセシルが対サラ戦で蹴散らした黒薔薇隊員とも合流
シュッツバルケル国にもその事態が把握できるようになっていた
「・・すまないな。ユトレヒト隊・・」
愛馬に乗り改めて礼をするミネルバ
もはや不要となった里のバリケートにて別れの時を迎える
「いいってことよ。流石にきつかったがな」
「そうそう、黒薔薇ちゃん達も結構強かったからね」
ここ数日ロカルノの世話に付きっ切りだったセシル・・かなり疲れている様子だが至って明るい
しかし余裕の態度に彼女に惨敗した黒薔薇師団隊員は羨望の眼差しもちらほらと・・
「・・ふん、型破りに負けては黒薔薇の恥・・帰還してかた特訓せねばな」
それにサラが軽く応える
「いつでもかかってきなさい♪勝てるならね〜♪」
「・・ちっ、やはり好きになれん」
「・・まぁまぁ、皆さんお世話になりました」
サラに変わってステアが礼を言う
「おう、がんばれよ。イオもな」
「・・すまんな、剣聖帝・・」
「だからいい加減その名はやめれ」
「・・す、すまん・・クラーク・・さん」
なにやら照れくさいイオ・・軍人肌なためにそうした接し方は至極苦手なようだ
「んじゃステアちゃん♪私が忘れられてなかったいつでもお相手するわよん♪もうグッチャグッチャになるまで・・」
「・・・」
セシルの誘惑に頬を染めるステア・・確実に快楽は堅物の身体に刻まれているようだ
そんな二人を一同無視して・・
「では・・がんばって」
「・・ああ、シュッツバルケルを・・私の手で再建してみせるさ」
マーチスの励ましに決意の表情で応えるミネルバ
かつての恋仲は戻ることはないが良い結果として終わったようだ
そして女戦士達は静かに山を降りていった

・・・・・・・

その頃、草原の片隅では・・
「ぐ・・あ・・おのれ・・おのれ剣聖帝!!」
醜く蠢く肉の塊・・それはまるでゾンビのようでかろうじて人の形を保っている
「次こそは・・仕留めてくれる・・」
その声はメイガス・・、巨人が粉砕してもしぶとく生き残ったようだが
もはやろくに歩く事もできず体をうねうねと動かすのが精一杯のようだ
”そうは・・いきませんよ”

ドス!!

「ぎゃあ!!」
肉の塊に突き刺さるは鋭い忍刀・・
「・・・我が国の元凶・・ここで消えてもらいましょう・・」
そしてその忍刀を持つは・・
「ケ・・ケイオス!貴様・・生きていたのか!」
「・・瀕死でしたがね。貴方の正体を調べるぐらいの事はできましたよ」
血まみれの忍装束・・しかしすでに固まったようでぱりぱりな様子
「ぐ・・おのれぇ!」
「消えてなくなれ・・!」
そういうとケイオスは右手を振りかざす
刹那右手に炎が集まり

轟!!

主むろに肉塊に叩きつける
「ぎゃあああああああ!!!」
身を焦がす煉獄の炎がメイガスの体を包み込む
「魔術を失った貴方では・・もう精神のみで生きる事はできないでしょう。さぁ・・焼け死になさい」
「ぐ・・が・・あ・ああああああ!!」
人間のものとは思えない叫びとともに消滅するメイガス
その仕事が終わったかと思うとゆっくりとケイオスは立ち上がった
「・・ロカルノさん、感謝しますよ。・・・・さて、我が主の下へ帰りますか」
飛竜の里の方を見て一礼し戦忍は再び風となり主の下へ走っていった


・・・・・・・
・・・・・・・

一方、ユトレヒト隊は依頼が終わったということで帰り支度
「・・結局、報酬は望めなかったわねぇ」
村の広場にてため息をつくセシル、来た時とは違い村人はすべて出向いてくれている
「最初からアテにしてないだろう?ともあれ・・無事に達成できたな」
「心配するな、そこらへんは妾らとて考えている!」
そんな一行にメルフィは明るく話す
「・・お前が・・かぁ?一体なんだよ?」
「それはお前達を送り届けてから渡そう!」
ニヤリと笑うメルフィ、陰謀感120%
「皆さんお疲れ様でした。何とお礼を言っていいのか・・」
対し真面目に礼を述べるアミル、これが性格の差・・
「何、かまうことはない。困難な仕事だったが色々と勉強にもなった」
アミルに対しては何故かロカルノが応えることが多い・・それにセシルは静かに警戒をはじめていたり・・
「一族を代表してワシからも礼を言おう。ありがとう、勇者達よ」
「長老さん辞めてくれよ。俺達はそんなに大層な者じゃないって」
「ふ・・謙遜をするな、その真実はここにいる全員が知っている」
長老の声とともに周りから拍手喝采が・・
大きな戦いだったのだが竜人達の血が流れることはなかった。これはやはり彼らの成果なのだ
「・・て・・照れますねぇ」
それにキルケもなにやら恥ずかしそう
「何かあればわしたちも協力しよう・・今回はご苦労だった」
「・・よし!では送っていこう!セシル!お前は妾に乗れ!!」

ピカッ!!

竜形態になったメルフィが指をクイ・・クイ・・っとしてセシルを誘うが・・
「嫌よ!!もう貴方には乗らないって決めたの!!クラーク!交代しなさい!」
振り向くとすでに変身していたアミルの背にクラーク達が乗っていた
「おう、じゃあまた後でな〜」
『では・・いってまいります!』
アミルの声とともに天空高く羽ばたく飛竜・・
残されたのはここに来た時と同じメンバー
「さて、帰るぞ・・セシル」
「嫌・・!落ちるかもしれないのよ!?なんで二人は平気なの!!?」
「だから慣れですよ、セシルさん」
「そうだ」
「絶対認めない!お前ら異常じゃああああああ!!」
羽交い絞めされメルフィの背に・・
『よし!アミルなんぞ追い越して見せる!それでいいんだろ、セシル!』
「ちっがうわよ!・・・きゃ・・きゃああああああああああああ!!!」
天空高く木霊するセシルの声・・合唱・・(チーン)

・・・・・・

数時間後
超高速にて空を駆け国をまたぐもすぐに拠点に到着
当然のことながらセシルさん放心状態で涎垂らしながら「エへエヘ」呟いている・・
それ意外は別に異常などはなく・・
「ふぅ!ようやく我が家に帰ったって感じだな!」
「・・随分長い間空けましたが・・、町の人が掃除もしてくれていたようですね」
館はそのままの状態、草も綺麗にしてくれている心使いがクローディアも嬉しく微笑む
「ミィ〜♪」
久々の我が家にミィも大喜び、ややホームシックになりかかっていたようだ

「皆さんお疲れさまです!」
「ご苦労だったな!」

人形態に戻った竜人二人が笑顔で言う
「それはお互いさまだろ・・?でっ、何だよ、報酬って」
「・・喜べ!下界の見学とお前達への恩返しということで今日から妾とアミルがお前達の家に厄介になってやる!」
「「「「「・・・・・」」」」」
「・・喜べ!」
「っうか!お前らはそれでいいのかよ!?」
「まぁ長老から言われた時は驚きましたが・・里はもう安心でしょうし貴方達と一緒にいるのも楽しいですから・・」
「その心使いはありがたいが、私達は冒険者。血なまぐさいこともやるのだぞ」
「それも勉強だ、それに・・長距離の移動ならば妾らが役に立つだろう♪」
えっへんと大いばりなメルフィ
「・・まぁそれは便利なんだか・・」
何だか悪いとクラークは顔をしかめる
「いいじゃないですか♪にぎやかになりますし♪」
「・・キルケがそういうなら・・俺は何も言わないが・・異議がある人!」

「はい!この小娘の飛行は危険よ!役に立たないわ!」

「・・誰もいないな。じゃあメルフィにアミル・・今日からよろしくな」
セシルに発言権はあらず・・よって家族決定・・
「はい♪」
「おう!何でも手伝ってやるぞ♪」
「話をきけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

変わった家族を新たに加えつつユトレヒト隊は激戦を見事に勝利した


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