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第十五節  「悲運の竜帝 駆け昇らん」


空より降り注いだ光とともに現れた飛竜の軍勢
押し寄せる異形達を真っ向から迎え撃っている中、その里では・・

「一体・・、何が・・」
閃光、そして周辺からの地響き外を見ようとしても何がなんだかわからないアミル家の人々・・
巨大な物体が飛び上がるのがかすかにわかる程度だ
「封印が解けたのではないでしょうか?クラークさん達の話だと竜達の封印は彼らの行いを見定めてから決めると言っていたようですし」
「なるほど・・、それならば頷けますね。飛竜達のために命がけで戦っているわけですし・・」
ステアとマーチスが事の憶測をする
そこに・・・

カッ!

また閃光が走る・・、次の瞬間二人の間に白い光を放つ竜が・・
山頂で出現した竜と同じ姿なのだが今では鳥のような大きさまで縮んでいる
「これは・・」
『・・今、我らが封は解かれた・・。高位なりし我らが力は間違いなくかの異形を焼き尽くすだろう』
「・・や、やはり・・」
『だが、戦士よ。汝の心にはそれを拒んでいる』
ジッとマーチスの顔を見つめる光の竜・・、それにマーチスは静かに頷く
「・・ええ、あの異形の中に・・私の大切な人がいます。しかし・・何故・・?」
『汝の事を案じている同族の意思が我らの中にある。・・汝は竜に関わった者と見受ける』
「・・その通りです。しかし同族の意思・・まさか・・」
『汝はこの者をセプターと呼んでいたか・・、この者は死すとも汝を見守っている』
「・・私を・・許すと言うのか・・?セプター・・」
『この者は汝を恨んでなどいない・・それよりも汝よ。我らが力・・一度だけ貸そう
竜と分かち空を駆けた戦士・・その願いを適えるがよい』
「・・わ・・私ですか・・?」
『汝も我らを救おうとこの地に来た者・・これは我らが礼だ。行くが良い・・』
そういうと光の竜が粒子と化しマーチスを包み込む
「これは・・力が・・!」
全身の力がみなぎってくるのがわかる・・・。
「・・マーチス様・・・」
「・・ありがとう・・セプター。そしてミネルバを救うために・・私は戻ろう・・今宵一度だけの『竜帝』に!」
そう言い静かに立ち上がるマーチス、その瞳にはかつての闘志が溢れている
「マーチス様・・行くのですか・・?」
「ああ・・ステアさん、飛竜が甦えったのならばここはもう安全だが・・ミィと二人を頼みます・・」
「ミィ・・?」
「ミィ、ステアの言うとおり大人しくしておくんだ」
「ミィ!がんばって!」
事情がわからないが空気で察したミィはマーチスに激励・・それにマーチスは少し微笑みながら
「ああ・・、いってきます」
「マーチス様・・それならばこれを・・」
ステアは甦った竜帝に槍と盾を渡す・・
「これは・・イオさんの槍・・ですか?」
渡されたのは綺麗な薔薇が刻まれた美しい槍。使い込まれており業物であることが人目でわかる
そしてもう一つは青みが掛かった美しい円形盾。通常品よりもやや大きく頑丈に出来ている
「ええっ、回収したイオ隊長の槍です。・・そして私が使用しているバックラーです・・どうか御武運を・・」
「・・ありがとう、ミネルバの事は・・任せてください」
槍を受け取り軽く持つ、名将が使用していただけのその槍は鋭い光を見せている
「・・マーチス様・・お願いします・・」
サラも半身を起こしながらもそう言い、マーチスは無言で頷き外へと飛び出した

・・・

外はすでに闇一色
だが草原の彼方から灯りが指してきている・・見れば草原が焼けており
空には無数の飛竜が魔法陣を展開している
正しく一方的な暴力
「これは・・急がないとミネルバごと焼き払われるか・・」
焦るマーチス、そこに状況を見守る二人の影が・・
「・・神父さん!?どうしたのですか!?」
メルフィとアミルだ。マーチスが槍を持って出てきた事に驚いている
「ああっ、飛竜によって力が一時的に戻ったのです。二人は・・ここで番ですか?」
「うむ、奴らと約束したしな・・まぁ皆の力が甦ったのならば加勢も必要あるまい・・あんな異形ども・・取るに足らんわ」
不適に笑うメルフィ、ようやく高位飛竜族の力を見せ付けることができたと大満足な様子
「・・それでは困るんですよ、私はミネルバを助けたい・・」
「・・異形に操られている御大・・ですね。しかしこうも攻撃が激しいとなると・・近づくのも難しいのでは・・」
「皆を説得する時間もないぞ、・・どうするのだ?」
「・・・・、メルフィさん、力を貸してくれませんか?」
ジッとメルフィの顔を見つめるマーチス、メルフィはそれに驚きつつも・・
「妾・・か?・・良いのか?加減はできんぞ?」
「高速戦闘ならば慣れています・・腕もまだ錆付いていませんよ」
「し・・神父さん!私が言っては何ですが・・メルフィ様の飛行はそれはもう無謀もいいところなのですよ!?」
「・・アミル、・・そんな風に見ておったのか・・?」
「あ・・す・・すみません!」
非常事態に思わずポロリしちゃったアミルにメルフィさんジト・・っとした目で凝視しちゃってます
「・・ふん、振り落とされても知らんぞ!」

ピカッ!

マーチスの願いに答えメルフィは飛竜形態へ・・
「ありがとう、アミルさん。ここはもう安全でしょう・・おそらくユトレヒト隊の皆さんは飛竜の猛攻に撤退をしているはず・・
彼らを迎えに行ったほうがいいですよ」
「・・あ・・ですが・・ここは・・」
「いざとなればステアさんに任せれば持ちますよ。ロカルノさんの傷が心配ですし・・お願いします」
「・・わかりました。」
『雑用は任せる、アミル!では・・飛ばすぞ!!』
「ええ・・参ります!!」
メルフィの体が飛び立ったかと思うと魔法陣が展開し爆発的な加速のまま草原を駆け抜けていった

・・・・・

草原を超低空で駆けるメルフィ、その加速に流石のマーチスも前を見るしか出来ない
首の部分に突起状に生えている竜鱗に捕まり何とかしがみついている・・っといった状態だ
「まさか・・これほどとは・・・。道中の飛行は本気ではなかったようですね・・」
ハイデルベルクからここに来るまでメルフィの背に乗ったマーチス
その時も十分乱暴な飛行だったが今はその比ではない
『当たり前だ!妾は飛竜の長の血を引く者!まだまだ速度が上がるぞ!!』
「なるほど・・しかし、ようやく慣れてきましたよ。もうすぐ交戦地域に突入します・・回避に気をつけて!!」
『承知だ!お前の指示に従う!!』
眼前には燃え盛る炎と揺らめく異形集団、空からは雨のように炎弾が降り注いでいる
その手前でユトレヒト隊が落ち合ってその光景を見つめているのが見えたがそれも一瞬、
暴力的なスピードのまま一気に突っ込む!!
「蹴散らす!」
黒い修道服を纏った竜騎士は全速は駆けるメルフィに乗りながらも魔法弾で援護しながら槍で敵を切り裂く!
『やるな!・・だがこやつ等は雑魚か・・あの鎧・・』
肉人形の先にはリビングアーマーの軍勢・・攻撃型は飛竜の炎弾に次々と焼かれているが防御型は盾を使い防戦一方ながらも
ほぼ生存している
「リビングアーマー、近衛と言ったところですか・・」
『飛竜の魔弾に耐えておる・・厄介だな・・』
「何、魔法が駄目なら切ればいいんですよ!頭を下げて!」

斬!!

『ぬわっ!』
気合とともにイオの槍『セントローゼス』を鋭く振り広範囲の真空刃を放つ!
刀や剣が発するものとは違いその刃は大きく、まとめて二、三体を切り払う
「メルフィさん!速度を落として安定!このまま真空刃で掃討する!」
『わ・・わかったが!妾の首まで刎ねる気か!』
「そんなつもりはありませんよ!ちゃんと加減はしています!」

斬!斬!斬!!

聖職者とは思えないその戦いっぷり・・減速をしたメルフィから放たれる真空刃にリビングアーマーももはや壊滅状態
『お前・・やるな・・』
「まだ腕は錆付いていないようですね・・さぁ・・これからです」
火の雨が降る中二人をジッと見つめる騎士が一人いた
『・・御大、ミネルバか・・』
白い白馬に乗った麗しい戦士、両端に刃の付いた槍を持つ赤毛の聖騎士ミネルバ
「・・予感がこうも的中するのは・・、嫌なものですね」
唸るようにつぶやくマーチス、以前の彼女とは全くの別人、肌を蠢く不気味な触手に焦点の合っていないうつろな眼
覇気を放っていた頃とは程遠い彼女がそこにいた
「・・・・て・・き・・」
「ミネルバ!私だ!!」
呟くミネルバに叫ぶマーチス、しかし無言のままに白馬は彼に襲い掛かる・・
「くっ!回避を!」
『分かっている!』
咄嗟に飛び上がるメルフィ、予想以上の踏み込みにメルフィも驚いている
「・・ミネルバ!!」
「・・・」
マーチスの必死の叫びにもミネルバはうつろに顔を上げるのみだ
『無駄だ!あの蠢く触手に完全に操られている!お前の声は届かんぞ!』
「では・・どうすれば!?」
『動きを止めろ!奴を蝕む元凶を葬れば・・うまくいくかもしれん!』
「わかりました!」
小さな魔方陣とともに放たれる三連魔法弾・・、超高速の連弾にてミネルバを止めようとしたのだが・・
「・・・・」
無言のまま両刃の槍を振るミネルバ・・魔法弾を無造作に切り払いつつ空の敵に真空刃を放つ!
「メルフィさん!」
『わかっている!!』
咄嗟に高度を上げて強力な真空刃から間一髪逃れた・・
巨体な分高速で走る刃から逃れるのは困難なのだ
「両刃槍『イシュタル』・・魔を退ける槍・・でしたね」
『ならば遠距離は厄介だな・・接近するにしてもあんなカマイタチなぞ近距離では回避しきれんぞ!?』
「ですがやるしかない・・彼女の動きの癖ならわかっています・・真空刃が放たれるとわかれば一気に飛び上がってください」
『・・・やる気だな・・』
「ええ、私に後退はありません・・覚悟はいいですか?」
『望むところだ!お前がやる気で妾が逃げ腰でいるわけにもいるまい!!』
「・・お願いしますよ・・!」
『応!』
一気に急降下!真空刃を出させる前に突っ込み

キィン!

強力な一撃をミネルバの槍にぶつける!
「・・ぐ・・この力・・!!」
『異形に操られているのか・・尋常ではない能力を持っているようだ』
「それは私とて同じ事・・負けるわけにはいかない!」

キィン!キィン!キィン!

メルフィの動きに合わせてマーチスが神速の突きを放つがミネルバはそれを全て受け流す・・
『これほどの攻撃を受け流すだと・・!ならば妾が!!』
「メ・・メルフィさん!」
攻めあぐねているマーチスにメルフィからも巨腕にて攻撃を開始する!
「・・・・」

ドォン!

飛竜の一撃を真っ向から受け止めるミネルバ・・
凄まじい一撃のはずなのにその威力を相殺している
『な・・そんな馬鹿な!』
唖然とするメルフィ・・しかしミネルバが緩やかに槍を振りかぶったのを見るなり・・
「メルフィさん!急上昇!!」
『わ・・わかっている!』

轟!!

凄まじい真空刃が至近距離から放たれる・・間一髪それを回避できたメルフィだが
わき腹を軽く切られている
『妾が・・こうも圧されるとは!』
「く・・竜の一撃をも耐えるこの力・・、メイガスの仕業か!」

”その通りですよ・・竜帝様”

「!?・・姿を見せないつもりか・・」
”まぁ・・肉体が滅んでしまいましたのでね。ご勘弁を・・”
宙に響くメイガスの声・・、人を見下したその声はどこからともなく・・
「これが貴様のもくろみか!」
”・・そんなところですね。彼女に関してはすでに心が脆くなっていましたからねぇ”
「・・なんだ・・と?」
”貴方が重傷を負い国を離れてから彼女は居場所をなくした。残ったのは有能さ故の羨望という重圧のみ・・、
頼るべき存在を失い隙だらけになった彼女を操るなど造作もないこと・・まぁ、ばれずに事を進めるには手間は必要でしたが”
「・・・」
”ふふふ・・どうやら、全く気づかなかったようですね・・では・・ミネルバから話してもらいますか”
邪悪に満ちたメーガスの声
それに反応するようにミネルバが静かに口を広げ
「・・マー・・チス・・」
「ミネルバ!」
「な・・んで・・・私を・・独りに・・」
「・・!!・・」
”これは操っているわけではありませんよ、彼女に眠っていた心理を表出しただけです・・貴方に彼女が救えますか?”
「・・黙れ・・」
”邪魔だてをせずに大人しくしてくれれば・・”
「黙れ!・・私を・・怒らせるな!」
宙に木霊する咆哮!それと共に彼が持つ槍が白く光りだす!
『・・(神父の叫びに・・竜の力が呼応した・・、これが・・竜騎士という物か)』
”な・・この力は・・”
「私のせいでミネルバがこうなったのであるならば・・それを救うのは私の役目!この・・命に代えても!!メルフィ!」
『・・お・・おう!!』
気合とともに急降下・・メルフィの身を気遣ってこそいるが本人は正しく捨て身
「うおおおおおおおお!!」
「・・!?」
必死のマーチスの気配に操られているミネルバも圧される

そして

ドス!

光輝く刃がミネルバの鎧を貫き胸を刺す・・
『この女を殺すのか!!?』
「・・私には見える・・ミネルバを巣食う物が・・」
「あ・・あ・・」
”!?蟲のみを・・!?ミネルバ!そいつを殺すんだ!”
「あああああああ!!」
ドス!!
「!?」
彼女のものとは思えない乱暴な突きがマーチスの肩を貫通する・・
「あ・・・ああ!」
しかしその衝撃かミネルバは槍を手放して錯乱しだす
”ちっ!もはや制御ができんか・・ならば自分の手で死ね!”
メイガスの非情な命令・・ミネルバは自身の短剣にて腹を刺そうとしだす
「させ・・ない!」
『お・・おい!』
肩からおびただしい血を流してながらもメルフィからミネルバに飛び掛る!
「!?」
決死のダイブにミネルバが自害の前に抱きつきそのまま落馬・・
「ああ!・・・あああ!!」
皮膚の触手が激しく蠢き苦しむミネルバ、そんな彼女をマーチスは手足を押さえている
「目を醒ませ!・・お前は・・そんなに弱い女じゃない!!」
「あああああああ!・・マ・・チス・・!!」
激しく抵抗するミネルバ・・その衝撃でマーチスの肩の出血は激しさを増している
『退け!神父!その傷では無謀だ!』
「冗談を・・ここで退いたら・・私は負け犬だ。それに・・今度こそ・・彼女を・・」
「うあああああ!」
「ミネルバ!うおおおお!!」
渾身の力を込めるマーチス、その腕は白く輝き彼女の胸を押さえる
刹那、閃光が二人を包みだした・・

・・・・・・

『・・何が・・起こっている・・?』
メルフィにも様子がわからなず呆然としてしまう
光が収まるともはやミネルバは静かに倒れているのみ・・
「・・あ・・、マーチス・・?」
ゆっくりと目を開くミネルバ・・その声はかつての冷たいものではなく・・
「・・ようやく・・目が醒めたようだね・・」
「マーチス・・マーチスなの・・?」
目の前に想いの人がいる・・そして肩から血が流れているのを見て愕然とする
「・・ああ、私だ。」
「その傷・・もしかして・・」
「・・いいんだよ、君が無事なら・・それでいいんだ・・」
しっかりと彼女を抱きしめて気絶するマーチス、ミネルバは静かに涙を流し頷く
『やれやれ・・、竜の力を出し切って気絶したか。御大!妾の背に乗れ!急がないと死んでしまうぞ!』
命がけの男の行動にメルフィも感心しながらもそう言い二人を非戦闘地域まで乗せていった


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