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第十一節  「一騎当千」


イオの馬に跨り単身敵地に駆けるクラーク
前方には簡易に築かれたシュッツバルケル軍キャンプ場があり
すでに彼に気付いた兵士達が弓を引いている
「どけぇ!!邪魔すれば命はないぞ!!」
刀を抜き鬼の気迫のクラーク、それに兵士達は飲まれるがそこは軍国の兵
素直に言うとおりにするはずもなく矢は放ってくる・・
鋭い矢が飛び交う中クラークは溜めるように構え・・

斬!!

強烈な雷を帯びた雷光真空刃を放つ・・・
気を練り十分に溜めたそれは正しく一撃必殺の一撃にて門を真っ二つにする
門兵はその威力に腰を抜かすがそんなことおかまいなしにクラークはさらに突進・・、
敵陣に舞い込んだ
「・・・ちっ・・」
草原に雷鳴が鳴り響いたのでテントにて待機していた兵士達も一斉に武器を手に表に出る
「この中にメイガスって野郎はいるか!!」
そこにはいるは黒薔薇師団の騎馬隊長イオが乗っているはずの騎馬に跨る碧のコートを着た
青年、斬りかかる時の気合声にも似た大声で周りに叫ぶ
「何者だ!?なぜイオ殿の馬に乗っている!!?」
その中で一人の老騎士が動揺する兵達の間からゆっくり歩みだす
「俺は高位飛竜族の助っ人だ。メイガスという者に用がある!」

ジャキ!!

敵だとわかり全員が得物を構える!
しかし代表者らしき老騎士は手を振りそれを抑えた
「・・二度も敵人が単身で言うとは・・お主らは正気か?」
「正気を問いたいのは俺のほうだ。てめぇらの軍規には失敗した者は人体実験の対象にするのか!?」
「な・・なんだと?」
「イオは一度俺に敗れたが再びこの馬に乗り姿を表した、しかし彼女は奇怪がへばりついた
戦闘人形と化していた!俺はその落とし前をつけに単身ここまできたんだ!メイガスとやらはどこだ!!」
痩せ気味の眼鏡男の言葉・・しかし凄まじい怒気が込められており軍人達の戦意を削いでいく
「ぬ・・、メイガスが・・」
同じ軍でもどうやらその名の反応からして良い眼では見られていない
そこへ

”何を起こっていらっしゃるのか・・”

人を見下した感じの声がし軍人はその方向を見つめる
そこには黒い法衣を着た薄気味悪い術師が・・
目元まで深くフードを被っており表情はわからないが口元はにやけている
「・・・てめぇがメイガスか?」
ジッと見据えるクラーク、鋭い剣気を放ち威圧するが術師は気にすることなく
「ええっ、飛竜なしの単独で敵地に乗り込む・・普通ならば異常とも思えますが・・流石は傭兵公社第13部隊隊長・・クラーク殿ですね」
術師メイガスの声に周りがざわめく・・
「昔の肩書きなんざ意味はない、てめぇがイオをあんな姿にしたのか」
「いやはや、彼女は部下の失態を引き受けて罰を受けた・・それだけですよ。」
「・・・」
「お気にめさない・・っと言った表情ですね。彼女自身がそれを認めミネルバ様も了承したのですがねぇ」
メイガスの言葉に軍人は騒ぎ出す、知らず知らずにメイガスから距離を置きだす
「お前達の間の話なんか知ったことか、イオの分の落とし前はつけさせてもらう」
「・・やれやれ、熱血漢ですな。・・それでこそ歴代の戦士ですか」

斬!!

余裕面のメーガスに問答無用の真空刃!一直線にメーガスに迫るのだが・・
ボコ・・
急に地中から何かが起きだし真空刃をモロに受ける!
「・・おおっ、怖い怖い。中々の攻撃力ですな」
メイガスは無傷、そして目の前に現れたのは鎧だけの騎士・・中身は空洞だが全身に青い霧がかかっている
武装はないが手には鏡のように反射する大型の盾を装備している
どうやらクラークの刃をこの鎧もどきが受け止め耐えたようだ
「人形か。・・どうやら自分の手を汚さないでいるのが好きなようだな」
「ふふっ、魔術師ふぜいが戦場に出るのにはこのくらいの用意は必要ですよ。それに・・」
軽く指を鳴らすメーガス、今度は空間を歪め赤い霧のかかった鎧が現れる
これは両手に大型の剣を持ち戦闘用なのがわかる
「他の者は手出し無用です。クラーク=ユトレヒト・・サンプルとしては優秀ですからね」
そう言うと指示を出し赤騎士が突進しだす!

ブン!

力任せの攻撃、周りに仲間がいようとおかまいなしだ
「ちっ・・、手出し無用だぁ?ついでにこいつらも殺して人体実験にでもするつもりだろうが!」
馬から飛び降り回避、そのまま赤鎧を蹴り飛ばす
余り効果はないが周りの軍人達に被害を出さずに済む
「ほう・・私の考えを読みましたか。」
「てめぇみたいに薄汚い奴の考えることは単純なだけだ。じいさん!下がれ!邪魔すればただじゃ済まさないぞ!!」
「ぬ・・、うむ・・」
気迫に圧される老騎士、だが事態からしてメイガスが自分達に牙を剥くことは間違いなく
敵であるクラークの言うことに従い周りを下がらせた
「やれやれ・・嫌われたものですな」
「やることやって好かれたいのか?」
メイガスを守るように青鎧、そしてその前で構える赤鎧・・対しクラークは愛刀『紫電雪花』を持ち下段に構える
「・・やれ」
メイガスの合図とともに赤鎧が力任せに襲い掛かる、剣術云々ではなくただただ鋭く相手を斬り殺すようでとんでもない速さで大剣を叩きつけてくる
「・・・・」
クラークはそれを観察するようにギリギリで回避する、おまけにずっとメイガスを睨んでいる
「・・どうしたのです?こちらを見ても何も変わりませんよ」
にやけるメイガス・・赤鎧がさらに速度を上げ

キィン!!

力任せに大剣をクラークに叩きつけた、愛刀でもろそれを受けたクラーク・・地を滑りながら何とか堪える
「流石のクラーク=ユトレヒトも私の兵には敵ませんか」
勝ち誇るメイガス・・しかし
「・・・・ふっ、はははは・・・」
回避しながら突如笑い出すクラーク・・
「何を・・笑っているのですか?」
「一つ諺を教えてやるよ、『胃の中の蛙、大海を知らず』ってな」
キッと顔を引き締め紫電雪花を左手に持ち替えた、そして右手に現れるは鬼神剣『九骸皇』
遠慮なく力の限りの発動し不気味な剣気が鋭く走る・・
「おおおおっ!!」

斬!!

まずは赤鎧を切り裂く、魔を利用している存在ゆえに九骸皇が触れるだけで粉々に消滅してしまう
「次だ!覚悟しろや!!」
「ば・・馬鹿な!こいつの防御なら・・」
自慢の道具を一瞬でかき消されたのにメイガスは慌てだす・・が時すでに遅く

斬!!

鉄壁の防御を誇ると言い張っていた青鎧も九骸皇の一撃に消滅する・・
「・・き・・さま、一体どんな方法を・・」
「お前に教えることでもないさ・・アイゼン流古式外法・・『血粧桜』」
二刀流のまま駆け目にもとまらぬ速さで剣を走らせる・・
次の瞬間、メイガスは膝をつき座り込んだ
「ひ・・ひいい!!」
その刹那身体の至るところから血が吹き出る・・
「さ・・寒い!わ・・・私の血が・・血がぁ!!」
「本来なら声帯もぶった切るんだが・・な。てめぇは特別だ。そのまま見苦しく吼えて・・死ね」
冷たく見下ろすクラーク。ひ弱な青年ではなく正しく不死身の名を持った部隊を引き入れた戦士の顔・・
「し・・死んでしまうじゃないか!魔法で・・!?魔法が・・・使えな・・!!」
「てめぇの魔力は根こそぎ砕いた。もう悪さもできないさ」
「ひゃ・・・ああ・・・・あ・・・・・・」
血がピタリと止まった瞬間、メイガスの声も途絶え・・ピクリとも動かなくなった
その壮絶な光景に周りの兵たちは唖然としている
「・・これで落とし前はつけた。じゃあ俺は帰らせてもらうぜ」
指を鳴らすと後ろに下がっていたイオの馬が彼の元へ走ってきた、どうやら彼にはよく懐いているようだ・・が

ジャキ・・

周りは無言で剣を構える
「少なくとも今はお前達には用はない。剣を収めろ」
馬に乗りながらクラークが静かに言う、その威嚇は凄まじく目の前で絶命した魔術師を見る限りハッタリでもない
「・・だが、我らはシュッツバルケルの軍人だ。敵をおめおめ逃がすわけにはいかぬ」
あの老騎士は再び前に出てくる
「軍人・・な。職務に誇りを持つことは結構だが・・愚行に付き合うのは最も恥ずべきこと・・そうは思わないか?」
「・・・ぬっ・・・」
「命令は絶対、それは理解できるがお前達がやろうとしていることは正しい事ではない。
・・・それでも立ち向かうというならば、こいつみたいな末路を歩むことになるぜ」
「・・・・」
「じいさん、俺だって好きで戦っているわけじゃないんだからな・・」
そう言うとクラークは静かに馬を操る、何人かが弓を構えそれに狙いを定めたが・・
「よせ・・・」
老騎士が周りをさとす、それに周りの軍人は騒ぎ出すがやがて手を引いた
「・・いけ、目をつぶってやる」
「・・じいさん」
「ふっ、お前はわしの若い時に似ている・・。さぁいけ。次に会う時は・・・こうはならないだろうからな」
「なんとかしてやるさ・・じゃあな!」
そう言うと勢い良く走り出すクラーク、素晴らしき馬脚にてアッと言う間に軍地を飛び越えていった


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