七章  「サマルカンド解放戦争」


サマルカンド中央にそびえる要塞のような城
いかつい外壁とは裏腹に内側の城は正しく純白で優雅さを漂わしている
『白鳥城』と名乗られるだけあってその美しさは見事と言ったところか
・・しかし、この城からは街同様に活気がまるでなく静まり返っている
「・・それで、民衆共にも貴公らと同じ公社の人間がついた・・っと」
玉座に座るガリガリに痩せた男が言う
頬もかなりこけており、髪の一本もないのでまるでシャレコウベのような顔だ
「ええっ、ですが向こうに雇われたのはたかが数人の素人に毛が生えた輩。
一応は我々と同じ組織ですが恐れるに足りません」
礼儀正しく接するは18部隊の隊長・・、あの男だ
「・・ふん、ならばその素人共の始末も貴公らに任せるぞ」
「仰せのままに、バスティーユ様」
王の間でほくそえむ二人・・
その時


ドォン!!!ドォン!

たてつづけ2回の爆発音が・・

「・・何事か?」
大して驚きもせずに18部隊長が近くの兵に言う
兵達は無駄のない動きで外の見まわりと連絡を取る
「・・街の南北で巨大な爆発が起こったようです」
「爆発・・?レジスタンツどもの悪あがきか・・。では王、我等は配置につかせてもらう」
「ああっ、私に逆らう者を皆殺しにしろ。けぇっけぇっけ!!」
気味の悪い笑い声を取るバスティーユ。
頼もしい助っ人に満足しており、
早くも自分の『絶対なる支配』を思い浮かべているようだ


一方、街では


「全員突撃!目指すは白鳥城!この一戦で全てを終わらせるぞ!!」
「「「応!!!!」」」
民を引き連れ先導するはラファイエット。
住民達は農具等での簡単な武装だが彼だけは立派なプレートメイルにレイピアを装備している
おそらくは彼の家に伝わる代物なのだろう
「この私が援護してあげる、露払いなら任せなさい!」
銀模様が描かれる黒法衣を纏うファラ。魔杖を振りかざし意気揚々に叫ぶ。
蒼髪のポニーテールに小さな丸眼鏡。か弱そうな少女に見えるファラだが
今は雄々しく戦線に加わっている
彼らは街の南側、開戦の狼煙を上げて一気に街の中央にある白鳥城へ向かう
レジスタンツのリーダーの先陣は騎士達にとっても予想外であり統率のとれていない
彼らはレジスタンツにことごとく叩きのめされていった
そしてラファイエット勢とは逆の北側では・・



「さぁ!南では盛大に盛り上がってるようだし、こちらも行くぞ!!」
革鎧姿のクラーク、得物のブレードをかざしてレジスタンツのメンバーの士気を高める
「おおぉぉぉぉぉ!!!!!」
傭兵公社の戦士が先導するとなってかなりレジスタンツには心強いようだ

”こちらフロスだ。ラファイエット達はすでに侵攻を開始した。
クロムウェル達もすでに行動を開始した。そちらも城に向かって進んでくれ”
突如クラークの脳に声が響く・・。魔導による通信『テレパシー』と呼ばれる術だ

「了解だ。しかし・・、魔導による通信とはな・・。この間のお勉強が思わぬところで役に立ったな・・」

”ふっ・・。全くだ。ともかく、私はこの時計台から指令を出す。せいぜい派手に暴れてくれ”

「任せておけ!よし!!サマルカンドの戦士達!俺に続け!!!」
気合い一発、クラークが駆け出す。
待ちうける騎士達など歯牙にもかけずなぎ倒し、一気にレジスタンツを導く道を作り出す
それは正しく鎌鼬・・、峰打ちなれども騎士達は少し唸って倒れていく
事態は見る限りレジスタンツの優勢に進んでいるようだった


「・・ふっ、戦力を分断させるのは手痛かったがそれでも流石に切りこみは早いな・・」
街の状態を城の次に高い時計台のてっぺんからみながらフロスが呟く
階下には護衛に数人、これが彼の戦術
南北から同時に進行させ、注意を反らせる。そしてその間に本命が動くのだ
それをうまく稼動させるために必要なのが魔導による通信。
南勢はファラ、北勢はクラークと軍師の指示が円滑に回るようにしている
「公社の連中には通じん手だろうが・・実戦慣れしていない者達には十分だ」
上昇風に髪が乱れつつもフロスは静かに事態を見守った・・。


そして解放への狼煙が上がると同時間に街の地下道を走る一組の男女・・

”・・ポイントへ到達できたか?”
通信魔法によるフロスの声がナタリーの頭に響く
彼女は優秀な剣士だけでなく、魔剣使いの一面もありクラークよりも魔法の扱いが上手なのだ
「良い感じよ、それじゃあ予定通りにある程度注意を引きつけたら突撃するわね〜」
重大な役目なのに至って軽いナタリー・・
これが戦場では本当に頼りになるものだ

”ああっ、クラーク達が暴れている分、そちらも頼むぞ”

そんなナタリーに構わずフロスが通信を切る
・・・・・
「なぁ、もういかないのか?」
静かに上の状況を聞くナタリーに対して落ち着きがないクロムウェル
「慌てない慌てない。上の連中がクラーク達にほどよくつられるまで待ちなさい」
「俺・・、こういうの苦手だよ」
「貴方って団体行動や人付き合いが苦手だの待つのが苦手だのほんと社会性薄いわね〜。
駄目駄目よ?」
「・・ってもなぁ・・。今まで団体行動なんてしたことなかったんだし・・」
「ふぅん・・。随分孤独だったってことね。だからひねくれたの?」
「そこは放っておいてくれよ・・」
「まぁまぁ。ともかく、姉御としては貴方のその苦手な部分を克服させてあげないとね。
フロスも気にかけているようだし」
「・・まぁ、それで姉御と二人っきりでこんな暗いところにいるわけだよな・・」
「ぼやかないの。これが一番重要な任務よ?
それを任されたってことは貴方の腕を買っているわけよ。
まぁ、死ぬ確率も高かったりしちゃったりなんてね〜♪」
「・・笑いながら言うな・・」
もはや呆れるしかないクロムウェル
「それはいいとして。今まで鍛えていた分の実力を披露する記念すべき日よ。
これだけはいっておくけど今の状態でも貴方の力はもう18部隊なんて相手にならないわ」
「・・本当か?」
「あれっ?知らないの〜、私やクラークの出身である「カムイ」の住民は嘘なんてつかないのよ」
「・・マジで?」
「う・そ♪」
「・・・・・・」
「おほほほ♪・・さっ、フリートーキングもここまでね・・行くわよ!」
そう言うや否やナタリーが腰の二刀を一気に抜き壁を斬る!!

ズズズ・・・・

鋭い残光があったと思いきや地下道の壁がズルズルずり落ちていく・・
そして先に見えるのはどこかの地下室・・
「ビンゴ♪お城の地下室ね。牢屋もあるし」

”何の音だ!!”

壁が崩壊する音にさっそく反応するバスティーユ勢
地下室の先から足音が聞こえてくる
「さぁ、本番よ!キリキリ動きなさい!!」
さっきとはまるで違うナタリーの声、気の良いお姉さんから一転、無慈悲なる剣客へと変わった
「先手は必勝!!鋭!!!!」
薄くらい地下室を疾風の如く駆け抜け異常音に見回りにきた兵士達を切り払う!
やってきたのは3人、どれもナタリーの剛剣にて頚動脈を切り裂かれた
「・・手際良いな・・」
出遅れたクロムウェル、声もたてずに絶命する兵士を唖然と見る
「こんくらい当然、でも結構広い牢屋みたいね。・・網目のような作りみたいだし・・」
周囲を見て地下室の構造を見る
あちらこちらに曲がり角があり一区画ずつ2部屋牢屋があるようだ
「こんだけ死角が多いと不意打ちに気をつけないとな」
「・・・じゃあ、二段陽動って感じにしましょうか?」
「はぁ?」
「連中だって馬鹿じゃないんだし、上の動きが陽動だってわかっているはずよ。
だからもう一発陽動ということで私が敵をおびき寄せる、貴方が騎士団長を助けなさい」
「・・おい、そんなの姉御が危険だ。賛成できない」
「ば〜か、戦場で女もクソもないわよ。時間だってないの。戦力差は段違いなんだからね」
「・・でも・・」
「じゃあ代わる?今の貴方の腕じゃあ制限なく襲ってくる連中に対処しきれないと思うけど?
・・こいつら18部隊らしいし」
血の海を作っている死骸を軽く蹴るナタリー
「・・わかった。じゃあ俺は騎士団長を助ければいいんだな・・」
「ええっ、人付き合いの苦手さもついでに克服してきなさい。・・ってことよ、フロス?」

”・・仕方あるまい。だがかなり危険だぞ?”

「これくらいの修羅場、なんてことないわよ♪さぁ行くわよ!」
そう言うとナタリーは一気に駆け出す

「18部隊のへっぽこども!!!私がここよ!!死にたい人からかかってらっしゃい!!!!!」

地下牢獄中に響く大活声
それと同時に何人もの足音が一斉に動き出す
先ほどの壁の破壊の音を警戒したのだろう
刀を持ち、待ち構えているナタリーに挟み撃ちするように遅いかかる兵士
防御を高めるために公社支給品の鎧でなく、騎士鎧を着こんでいるようだ
クロムウェルは襲いかかる兵士達を軽く見、走り出した・・


・・・ナタリーが18部隊の兵達を抑えている間にクロムウェルは
牢屋を一つ一つ確認しながら走る
「・・ったく姉御、大丈夫かよ・・」
少し唸るクロムウェル、敵地のど真ん中で挑発しながら勝算のない戦いに挑む
自分も無茶だと自覚していたが彼女はその上を行く

「ぐあぁ!」
「うわぁっ!!」
「も・・もっと来援を・・ぎゃ!!」

そんな心配を余所に男の悲鳴が響く
それが杞憂だと思い知らされるクロムウェル
「・・へっ、姉御には適わなねぇな・・」
少し笑いながら先を進みだす
自分は心配する必要はない。彼らの言うとおりにすれば全てがうまくいく
・・そう信じれる気がした
ともかく先に進もうとしたクロムウェル、地下牢獄の隅なようで
角になっている地点にきたところで彼は何かに気付く
「・・この壁・・、他のと色が違う・・?」
まるで補修されたようにそこの壁だけ土色が濃い
「・・ここだ!・・はあ!!」
確信を持ち渾身の力で正拳突き!!

ゴゴゴ・・・

流石に日頃達人に鍛えてもらっているだけにその一突きは壁を粉々に粉砕できた
「・・俺、これだけの力ついていたんだ・・」
思った以上の威力にクロムウェルは唖然とする
・・がそうもしていられないようで粉砕した壁の向こうに
待機していたと思われる傭兵が二人・・
騎士鎧を着ていないところからすればそんなものに頼らないツワモノと見える
「ふん・・、13部隊の出来そこないにしてはここまでくるとはな・・」
「だが、ここまでだ。すぐ楽にしてやる」
揃って見下す男、両方とも黒髪で同じ顔つき、しかも場所こそ違えど顔に傷がある
二人とも髪が立つくらい短く、傷さえなければ全くの双子に見える
「・・・へっ、そんなところでコソコソ隠れている処、ブランってやつはこの先にいるようだな」
グローブを締め直しながら不敵に応える
前の自分ならばこんなことでもキレるのだが、
13部隊の人間との知り合ったことでむしろ滑稽に見えてしまう
「そんな事を貴様に言う必要はないな」
「・・へへっ、っという事は先にいるわけだな。じゃあ遠慮しねぇぜ!!」
そう言い一気に突っ込むクロムウェル
「「愚か!18部隊の力思い知れ!!」」
二人は笑いながら得物を抜く
二人とも得物は刀で正しく阿吽の呼吸で抜き払う
「13部隊の力!なめるな!!」
巧みに刀を振る二人をかいくぐるクロムウェル
「な・・何!?」
「我等の太刀を・・!?」

「お前等なんか姉御の足元にも及ばなねぇよ!!」
そう叫びながら回し蹴り!!

バキッ!

一人の後頭部にモロに入る
「あ・・兄者!」
もう一人が声をかける
・・どうやら兄のようだがくらった本人は壁に頭をうずめ、ピクリとも動かない
「へっ、その刀、クラークさんへの土産にするのも悪くねぇな!」
「きっ・・貴様!」
慌ててクロムウェルに斬りかかる剣士
しかし
「うぉりゃ!!!」
クロムウェルの連撃が腹に決まる
急所を重点的に攻撃しろ・・、
喧嘩殺法で今まで生きてきたクロムウェルにナタリーが教えてくれた言葉だ。
それにより溝打ちから肺、心臓と内部へのダメージが利く場所を的確に連打する
「が・・き・・さま・・如き・・」
それをまともに受ける剣士、身体を痙攣させながら地へと倒れた
訓練とおりの結果を出せたが流石に息が弾むクロムウェル
だが落ちている刀を見て
「ううん・・、まぁ良さそうに見えるから持っていくか」
男の得物を鞘ごと失敬する、本当にクラークの土産に持って行くつもりだ・・
とりあえずナタリーのしているように腰に下げ奥の牢屋へと駆け出した

隠し通路の突き当たり。そこに一層厳重な牢屋があった
牢屋前の天上にははしごが設置されており、上に続いている
あの双子の剣士はそこから来たのだろう
「・・・あの騒音、貴様がやったのか・・?」
牢屋の中の囚人服男がクロムウェルを見て言いやる
髪の毛はまったくないが口の回りの髭が長くいかつい顔つきをした巨漢だ
「ああっ、あんたを救出しにきた・・サマルカンド騎士団長ブランだな」
「そうだ。だが救出?この国の者ではない貴様が何故そんな事をする?」
「俺は傭兵公社からの派遣だよ。任務であんたの救出を依頼されたんだ」
そう言うと制服の襟元についてある灰色の獅子のエンブレムを見せる
これが傭兵公社の紋章であり、公社のシンボルとして広く世間に認知されている
「任務で・・か。さっきの剣士達も貴様と同じ物をつけていた。
同じ組織の人間をいとも簡単に殺してのける男を信用しろと言うのか・・」
「まぁ、一枚岩じゃないっていうのか・・?この世界は思った以上に非道みたいなんだよ。
さぁ、俺の事はいいからさっさと牢から出て騎士団を静めてくれ。
レジスタンツが苦戦しているだろうし」
「!・・レジスタンツが・・?あ奴らが動いたというのか!?」
「ああっ、もう時間がないって言ってな。あんたがこの戦争のキーマンって奴だ・・頼む」
「・・・・・・・・。ふっ、貴様、良い目をしているな」
「・・はっ?」
「良いだろう!お前を信じ、騎士を静めてくれる!」
「ようし、じゃあ鍵壊すぜ!」
拳を構えるクロムウェル
「無用だ・・ぬぅん!!!」
彼を無視して力任せに鉄格を押し広げる
やがてそれはひしゃげブランはまたいで通路へと出る
「よし、いくぞ。」
「あんた・・、自分で出れるならなんで今までここにいたのか?」
「ふん、ここから出ても俺一人できることは限られる。故に時を待ったのだ」
「やれやれ、俺にはそうは見えないんだがね。ともかく急ごう、
向こうで俺の仲間が奮闘しているんだ」
「承知!」
巨漢が走る!クロムウェルも唖然としながらその後をついて行った



白鳥城の地下でナタリーとクロムウェルが活躍しているその時
地上では南北からの進軍が意外なほどスムーズに進められている
・・っというのも城側は北のクラークに目をつけ重点的に戦力を注いでいるようだからだ
南から進んでいるのは首謀者といえども『所詮は戦闘経験が浅い若造』っと見たのだろう
そのため、南の防御網を浅くして北側を重点的にしたようだ・・が

「まだまだぁ!このくらいで止められると思うな!!」

前方に待ち構える兵士達を気合いと共に突撃するクラーク
その勇姿に絶望的な状況でも士気は一向に衰えず騎士達もたじろいでいる
そしてその隙をつきラファイエット達は・・
「私を数にいれていないかったのが落ち度ねぇ!!」
薄くなった防御網へファラが自慢の黒炎弾をぶち込む!
怒涛の炎弾に兵は逃げるしかなくついに城への門が見えた
「皆!目指すはバスティーユただ一人だ!あいつを倒せば全てが終わる!!」
ラファイエットが叫びいまいちど士気を上げる
「「「「応!!!」」」」
ファラのおかげもあって怪我人は極少数なレジスタンツの面々
顔を引き締めて最後の戦いに向かう
しかし・・

城の入り口に立つ一人の男が・・
黒髪のオールバックにでかい戦斧を持つ18部隊隊長
「あいつ・・、よし、ラファイエット。アレは私に任せてさっさと王様をしとめなさい!」
「・・わ・・わかりました。いくぞ!」
ファラの言う事を素直に聞き18部隊隊長を牽制しながら通りぬける
・・彼はレジスタンツに目もくれずジッとファラを見つめているだけだ
「・・・、あいつらを素直に通すなんてどういうつもり?」
「・・俺の目的は貴様達を血祭りに上げること・・それができればあんな老いぼれなぞどうでもいい」
目に灯るは狂気の瞳、彼は最初からクラーク達を殺害さえできればそれでいいようだ
「それじゃあ特別予算がもらえないんじゃないの?」
「それ以上に、ふざけた隊長や問題のある隊員の塊である貴様達が気にいらないのだよ」
「・・じゃあ・・、その斧ごと黒焦げになってみる・・?」
立体魔方陣を展開しながら戦闘態勢に入る・・が
「・・ふ・・ははは!」
高笑いをする隊長、そして次の瞬間その巨体からわからないくらいの速さで何かを飛ばす

グサ!

「え・・・」
意表を付かれたファラがそれを肩に食らってしまう・・。
見れば魔術用の祭具のような楔が
「こ・・、このくらい!・・・・・!?」
怯まず魔法で対抗使用するが発動できない
「・・魔法が使えまい。貴様に打ちこんだのは魔導封じの魔具だ。さぁ、どうする?逃げるか?」
「じょ・・冗談・・」
肉弾戦となれば実力は雲泥の差、肩に走る痛みに耐え策を考える
「安心しろ、今ここで殺しはしない。あの男を殺した後じっくりと嬲り殺してくれる・・」

ドス!

「が・・クラ・・・・ク・・」
溝打ちを叩かれファラは気を失った。
「ははは・・・はははははは!!!!」
正しく狂喜する18部隊隊長、気を失ったファラを担いで城へと入って行った。


一方
「ぜぇぜぇ・・流石にキツイな・・・!」
押し寄せる兵士達になんとか対抗しているクラーク
っとは言え最初からかなりの数を相手にしてきたのでそろそろ体力もつきそう
レジスタンツもかなり数が減ってきておりこのままでは全滅の可能性も見えてきた
「フロス!状況は・・!」

”ナタリー達がブラン救出に成功した。彼は今城の外壁まで進んでいる・・もう少しだ”

「・・へっ、もう少し・・か。ラファイエットのほう・・は!」

戦闘しながらもフロスに聞くクラーク、見る限りは結構余裕に見えるのだが・・

”バスティーユ勢の勢力はお前のほうを重点的に襲ってきている、
ラファイエット達はすでに城へと侵攻したようだ・・。
そこからは通信が途絶えたが・・”

「・・ちょいと嫌な予感がするんだけど・・仕方ないか」

”あぁ・・、とりあえずもうすぐブランが現れる・・いや、来たぞ!”



      偉大なるサマルカンド騎士団に告ぐ!!!!


フロスの通信を遮るような大声、魔法で拡声したのだろう
その言葉に騎士団や兵士は動きをピタッと止めて声がきたほうを見る

    諸君らがレジスタンツと戦う必要はもうなくなった!悪しきを裁く時が来たのだ!!
    総員、道を開き戦闘を止めい!!

白鳥城の城壁に立ちながら囚人服のまま叫ぶブラン。
その姿、声を確認しだい騎士団の面々は大声で叫ぶ
「ブラン様!!」
「無事だったのですか!!」
「皆の者!道を開けるのだ!!!」
感極まった彼らだがすぐブランの言う通りに道を開ける
「「「「どうぞ!お通りください!!!」」」」
「あ・・・ああ・・」
今の今まで押し合いへし合いしていた相手が急に礼儀正しく道を開けるので
クラークも唖然となっている

”ふっ、ともあれこれで騎士団は収まった。
城内部の18部隊と近衛兵はナタリーとクロムウェルが対応しているようだ。
お前もすぐに城へ向かってくれ”

「わかった、皆はここまでだ!城へは俺達13部隊で攻める!
騎士団とレジスタンツ両勢は今の戦闘での怪我人の手当てをしてくれ!」
そう言いやるとクラークは傷ついた体のまま眼前にせまる純白の白へと向かって行った


「・・どうやら、あのおっさんうまくやってくれたようだな」
「まっ、これで一段落ってやつかしら?」
地下室から戦闘をしながら上部へと上がり食堂にへたり込むナタリーとクロムウェル
周りにはおびただしいとか言い様がない死体達が・・
二人も傷だらけで座っている食堂のテーブルも血でまみれている
「・・でもやるじゃない?18部隊と近衛兵相手にこれだけやったのよ?」
「へへ・・、18部隊相手でも大丈夫ってあんたが太鼓判押してくれたじゃねぇか」
「そうかしら?後はすでに上に上がったラファイエット達だけね・・。あ〜!疲れた!!」
テーブルに寝転ぶナタリー、それを見てクロムウェルも苦笑いする
「でもあいつらを協力しにいかないのか?こいつらの中に18部隊の隊長いなかったし・・」
「ファラがついているから大丈夫でしょう?一応フロスに聞いて見るよっかしら・・。
ねぇ、フロス。ファラ達はどうなの?」
けだるく起き上がるナタリー、軽口叩いているわりには疲労の色は濃いようだ

”お前達が暴れている間に城に入った・・がファラとはつながらない状況だ”

「な・・・なんですって!!なんでそんな事早く言ってくれないのよ!」

”さっきから何度も呼びかけていただろう!それを無視して戦闘していたのは誰なんだ?”

「う・・、と・・とにかく急がないと!今から上に上がるわ!」

”ああっ、クラークもそちらに向かっている。
お前達が暴れてさらにラファイエット達が城に入ったとなれば兵力はほぼ壊滅しているだろう・・
頼むぞ”

「・・なぁ、どうしたんだ?姉御・・」
「ファラと連絡がとれないの!ダベってないでさっさと行くわよ!」
「ええ!?おい・・」
一気に走り出すナタリー、クロムウェルも慌てて後を追った・・


白鳥城の上部にある王の間。
ナタリーとクロムウェルが辿りついた時にはすでにレジスタンツ代表ラファイエットと
独裁者バスティーユの話はクライマックスに向かっていた
バスティーユは王の間までレジスタンツが来るとは思っておらず顔が真っ青になっている
「さぁ、覚悟はいいか!バスティーユ!」
「ひっ・・こ・・こんなはずではない!公社の連中はどこへ行った!!」
「助けを呼ぼうと誰もこない!貴様の味方は誰もいないんだ!」
「く・・くそ!ワシはサマルカンドの王だ!貴様などに!!」
狂乱したバスティーユ、手にもつ宝石だらけの剣を抜く・・
見る限り儀礼用の剣で切れ味が悪そうだ
「王なんて必要ない!今こそ僕達・・民の怒り思い知れ!!」
誓いを胸に暴君へ刃を立てるラファイエット
そして・・

ドス!

・・元より勝負になるはずもなく暴君は目を丸くし奇妙な叫びをあげて絶命した。
「・・・終わった・・わね」
決着がつき呆然としているラファイエットにナタリーが声をかける
「ナタリーさん、無事だったのですか?」
「それはこっちの台詞だぜ、あんた、ファラはどこ行ったんだ?」
「えっ、ファラさんですか・・?城入り口で18部隊の隊長の相手をしていたはずですが・・」
「あの子が・・!?それで連絡がつかないって・・」

「娘ならここだ・・」

「「「!!!」」」

玉座の裏手にある小さな階段に姿を見せる18部隊長・・
気絶しているファラにナイフをつきつけ不敵に笑う
「ふん!間抜けどものおかげで俺の部隊は全滅か・・、老いぼれも浮かれよって・・」
「てめぇ・・」
「おっと動くな若造、この女がどうなってもいいのか?」
スッとファラの首にナイフを走らせる
白い肌に赤いができた・・
「・・・くそっ!」
「貴様!それでも戦士か!」
卑劣な手にラファイエットも激怒している
「ハッ!こうなっては誇りなんぞどうでもいい!貴様達13部隊を皆殺しにできればな!
隊長に伝えておけ!この先時計台にて待つ・・っとな。おかしな真似をしたならこの女の命はない
ふ・・はははははは!!」

大声で笑いながら彼は階段をのぼっていく
そして・・
ガラガラガラ!!

扉を閉めるように上から石柱が倒れてきた
「・・ちっ!余計なことをするなって事か!姉御!どうするんだ!?」
「・・こればっかりは私達が下手に動いても仕方ないわ・・ね。クラークが来るのを待ちましょう。」
「・・皆さん・・、すみません。あの時僕がファラさんと・・」
「はい、そこまで!貴方が後悔しても仕方ない問題よ。
それにあいつ相手に加勢しても殺られているだけ。」
「・・そうですか・・」
「ここは私達に任せて、貴方はそこでボーっとしている仲間と共に城を完全に制圧しなさい!」
王の間の入り口で事態に唖然と見ていた
レジスタンツメンバーに喝をいれながらラファイエットに言う
「わ・・・わかりました、では・・、行くぞ!」
「「は・・はい!」」
暗い表情のまま王の間を後にするラファイエット、
暴君が倒されたが思わぬ展開になってしまい複雑な心境のようだ
「・・姉御・・」
「難しいことになってきたわね・・、全く!」
クロムウェルは悔しそうに壁に殴りつけ、ナタリーは頭を掻きながら地べたに座りこんだ


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