六章  「敵は隣人」


傭兵公社には各部隊が顔を合わせる機会が少ない
しかし隊長同士は月に1度ある隊長会議にて現状報告を総師に伝える義務がある
今日はその日にあたりクラークとファラが儀礼用の礼服
(普通の制服に若干飾りがついた程度だが・・)
を着て公社本部に向かう
隊長会議室は公社本部の建物の中央にありかなりの広さを持っている
重厚な木造の部屋の中に公社の大旗が置かれどでかい丸テーブルが置かれている
そして総師と20の部隊長の席が円を描くように置かれそれぞれの席に隊長が座っている
各部隊の補佐も出席するのだが彼らは座ることは許されず隊長の横に立って会議に参加している
「さて・・、今月の隊長会議をはじめよう・・」
身なりを整えている総師の言葉で会議は開始される
内容は現在の国外の情勢から各部隊の功績まで様々・・。
まぁ形式的な会議のようだが全員真面目に聞いている

やがて1時間後・・

「・・報告はこのくらいだ。それと・・・、今回は新設の13部隊が20ある部隊で一番功績をのこした、
故に13部隊には特別予算を加算する」
思ってもみない総師の言葉に部隊長がざわざわ騒ぐ
各部隊の管理は隊長の仕事であり本部より一定額を支給されやりくりをする
隊員の衣食住から武器の手入れ。備品の補充までだ
そんな中での特別予算は彼らにとって喉から手がでるほど欲しいものなのだ
「総師、そのことには異議があります」
ざわめくなか一人の男が口を開く
「・・なんだ?」
「特別予算は一月に最も活躍した部隊に贈られるもの、
それができたばかりの極少数部隊に贈られるのはおかしいです」
黒いオールバックの中年男性が講義する。
どうやら自分の部隊に特別予算が贈られなかったことがよほど不服なのだろう
「だが、私が調べた中では確かに13部隊がこちらから指令した命令を全てこなしてきている。
対し君の18部隊は一件キャンセルしているのだが・・・?」
「それは隊員の状態によります、
それに13部隊への依頼なぞ諸国の自衛団でもできるような簡単なものばかり。
これは不公平ではないですか!」
「・・、13部隊隊長からは何かあるか?」
急にクラークにふる総師
「あっ・・、俺?」
「貴様以外に誰がいるのだ」
他の部隊長が小ばかにした顔で言う
「ああっ、そうだな・・。予算については俺の部隊はがっつくつもりはない。
総師の判断がそうであるならば従うだけだ」
「・・なるほどな。では、少数でもできる簡単な任務ばかりという点はどうこたえる?」
「それは個人差があるだろう?
18部隊のエリートさん達とは違い俺達は何故だか一癖ある連中ばかりだもんな・・」
その言葉に総師はにやりと笑う
「ならばこそ特別予算は我等18部隊に来るのが妥当だ。13部隊の、今すぐ支給を断れ」
「だから、俺は総師の意見に従うってんだろ?お前の命令に言われる筋合いがどこにあるんだよ?」
高圧的な態度に馬鹿にした口調のクラーク、
このくらい言わないと隣で青筋立てているファラが暴れだしかねないのだ
「ならば、特別予算の支給にあたり、18部隊と13部隊で同じような任務についてもらう。
それで成功できたほうに支給ということにしよう、それでいいかな?」
「御意に!我等18部隊がこんな問題部隊に負けるはずがありません!」
「・・13部隊のほうは?」
「了解、あんたの事だ。難癖のある依頼なんだろう・・?」
「・・ふふっ、それはおって知らせる、ではこれにて会議を閉会する」
全員起立で敬礼をする・・、この動作で隊長会議は終了するのだ・・




「なんなのよ!!!!あの18部隊のおっさん!!」
兵舎に戻ってきて儀礼服の上着を脱ぎながら憤るファラ
二人とも隊長室に戻ってきたばかりでその時にもすでに日は暮れていた
「まぁ、腕はいいとは思うんだが・・慢心しまくりだしな」
自席に座りネクタイを緩めながらクラークが感想を言う
「こうなったら是が非でもあいつらに負けられないわよ!」
白のカッターシャツに深緑のズボン姿のファラが机を叩きながら叫ぶ
・・よほど腹立たしいようだ
「熱いな〜、まぁそうだな。どんな指令だか知らないけど・・売られた喧嘩は買うのが礼儀だしな」
「それでこそ隊長♪どさくさにまぎれて殺っちゃいましょう!」
「・・それはやり過ぎだ・・っうか真っ先に俺達が疑われるだろ・・」
ファラをなだめる様にポンポン頭を叩く
「いいんじゃない?弱いものは死ぬ、これは自然の掟じゃない!」
「無理に掟をだしてないか?・・まぁ機会があれば・・だな。
状態によっては18部隊の連中とも戦闘になるかもしれないし」
「さっすが♪それでこそ私のクラークよ♪」
「何時の間にお前のモノになったんだよ・・」
「いいじゃない♪さっ、今から魔法のお勉強よ」
「ええっ!もう夜じゃないか、固っ苦しい会議で疲れてるんだから勘弁してくれよ・・」
クラークは儀礼服を脱ぎながら応える
「三日坊主?全く〜、駄目よ?そんなんじゃ・・ってパンツ一丁になるな!」
近くにあった盆でクラークを叩くファラ
「隊長室って半分俺の部屋なんだぜ?リラックスさせてくれよ」
「ば・・馬鹿!私がいるでしょ!他人がいるのにだらしがないことをしないの!」
「まぁまぁ、俺とファラの仲じゃないか。お互い会議で疲れたんだ。仲良く風呂にでも入ろうぜ?」
「ば・・・ば・・馬鹿ぁ!なんで貴方とお風呂を入らないと・・」
もう顔が真っ赤なファラ、そんな彼女にパンツ一丁で接近するクラーク
これでは変態といわれても仕方ない
「添い寝したりキスする仲だろ?それにお前は俺の補佐なんだから背中ぐらい洗いなさい」
「い・・やよ。そんなの・・恥ずかしい」
「隊長命令」
「変態」
そんなやりとりをしつつ、まんざらでもないファラの肩をつかもうとする
しかし

ガチャ

「隊長〜、姉御が飯は食堂に置いて・・って・・うわぁ!!」
突如隊長室に入って固まるはクロムウェル
すでに寝巻きの彼だがクラーク達を見るなり硬直。
まぁ、パンツ姿の男がシャツ脱ぎ掛けの少女を掴んでいるんだ、誰でも固まるか
「あ・・いや・・じゃあ伝えたのでさいなら!」
見てはいけないものを見たと思い走りながら去っていくクロムウェル
・・だが・・

「どこにいくのかな?クロムウェル君・・」
廊下を走るクロムウェルにパンツ一丁のまま追いつきブレードを喉につきつけるクラーク
声には殺気がこもっている
「あ、俺、何も見てないので・・」
「いいから来い・・」
「助けて〜・・・」
今叫んだらナタリーが来るかもしれない
そうしたら半裸なクラークに自分が襲われていると強制的に思い込まれる。
それだけは避けなければならないとクロムウェルは大人しく彼に引きずられた

「連れてきた・・?」
「ああ・・」
隊長室にクロムウェルを連れてきて静かに扉を閉めるクラーク
ファラも先ほどよりかは身なりを整え笑顔でいる・・が殺気が・・
「な・・・なぁ。だから俺、誰にも言わないって・・」
「なぁにを?」
明るく接するファラ
「あんた達が肉体関係だってこ・・(バキ!)」
「違うわよ!私はこいつの補佐であってそんな関係じゃ・・!」
盆を立てて叩く、これは痛そう
「まぁ、そこらへんはいいんだが、例えお前がしゃべらなくてもナタリーが変に勘付くからな・・」
「べっ、別にばれてもいいじゃねぇか!」
「ま〜、そうなんだが色々あるんだよ。よってお前が今見た記憶、消します!」

「消すって・・おい・・やめ・・・あああああああああ!!」

クロムウェル=ハット・・闘死。翌朝には一晩の記憶と引き換えに蘇生するだろう

「・・なんか興冷めたな・・。一人で風呂はいるわ、悪いな」
クロムウェルをノした後、一応廊下に出られるように服を着るクラーク
「・・いいの・・?」
「いやっ、だって嫌だろう?明日も早いんだ。馬鹿ばっかやっていないで寝たほうがいいし」
「あ・・・でも・・」
「?」
「隊長命令なら・・仕方ないわよ・・ね。貴方の世話も私の仕事だし・・」
モジモジしながらそう言うファラ、これにはクラークが逆に驚く
「・・おい・・」
「勘違いしないでね!隊長命令だからよ!」
「・・ああ・・わかったよ・・。」
からかい半分でパンツ一丁になったが思いもよらない方向に動いたので
内心かなり驚いているクラーク。ともあれ二人はギクシャクしながら浴室へ・・。
クロムウェルは一人、大きなコブを作ったまま気絶していた


翌日
昨晩の記憶が全くなくなったクロムウェルを放っておいて
いつもの如くな13部隊の面々だった
すなわち午前からクラークとファラは隊長室で事務、クロムウェル、ナタりーは庭で稽古
フロスは一人書庫にて個人個人にあった作戦を模索
昨日クラークがファラと一緒に風呂に入るという一大事(?)があったのだが
それに気付く者は誰もいない・・
「・・・来たわよ・・」
そんな中、神妙な面持ちで隊長室に入るファラ、庭で伝書鳩による指令文を取ってきたようだ
「意外に早い・・っうかこんなもんか。でっ、内容は?」
「ハードねぇ。とりあえず読んで、私はみんなを会議室に呼ぶわ」
一方的に手紙を渡し出て行くファラ、クラークもその文を読み、微妙な顔つきになった


「何?小国のレジスタンツに協力!?随分でかい話になったもんじゃない」
全員が揃った作戦会議室、ナタリーが面白そうにクラークが読む指令文の感想を言う
「まぁ、クロムウェルを含めての初めての大掛かりな実戦・・っと言った処か」
眼鏡を少し上げ、興味深く言うフロス
「話はここから。レジスタンツの目的は圧政を繰り返す王家の崩壊。しかしそれを察知している
王家は軍事力を使い民衆を抑えているんだ。だからレジスタンツの規模は小さい」
「あらあらぁ、諦めが悪い人達が多いってことね〜。まぁその方が男気があっていいんだけど」
「そいつらは国内を転々として反撃の機会をうかがっていたのだが王家も今回、
レジスタンツを本気で潰すようで傭兵公社からの派遣を決定したんだそうな・・」
「な・・何だって!?じゃあクラークさん・・」
「そういう事だ、クロムウェル。俺達が協力するレジスタンツの敵に傭兵公社の部隊が加わる。
しかし俺達の目的はレジスタンツの協力だ。同じ公社の人間だろうが遠慮はするな」
きっぱりと言い放つクラーク、その言葉に表情を強張らせるクロムウェルだった
「しかし総師も無茶をする・・、
いくら公社の運営を優先するとはいえ身内同士で殺し合いさせるようなことを・・」
「まぁ、それには因縁ってやつがあるんだよ・・」
「??・・どう言う事だ?」
「ああっ、実は昨日の隊長会議でな・・」
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
「ふぅん、18部隊のおっさんが・・ねぇ。あっじゃあ!その王家側の傭兵って・・」
「多分・・っうか間違いなく18部隊だろうな」
「おいおい!クラークさん!18部隊って大人数のエリート部隊だろ!?
レジスタンツも少数なんだし分が悪すぎるぜ!」
「・・ふっ、クロムウェル。この部隊に周ってくる依頼はこういうのばかりだ。早い内に慣れた方がいい」
「でも、特別予算のためにこんな展開になるとはねぇ。
クラーク、敵となれば18部隊の皆さんバラバラにしてもいいの?」
「そりゃあな。こっちにその気がなくても向こうは殺る気満々だろう。
しかしこれですっきり対立できたからちょうどいいか・・」
「だが今回の依頼、流石に少々きついぞ?勝算はあるのか・・?」
「それは現地で聞きましょう、さぁ皆さん、
2時間後に出発するから荷物を忘れず入り口に集合しなさい!」
クラークの一声で全員解散、各自旅の準備に周った





・・・・
18部隊と13部隊の激突の舞台となった国サマルカンド
グラディウスに程近い小さな国で傭兵公社に依頼があったとおり
王の圧政により情勢が不安定だ。
そのため、普段なら活気で溢れている街も寂れておりレジスタンツ逮捕のため、
騎士がそこら中に配置されている
感じからして街にいるのはほとんどその騎士達ぐらいで
住民は自宅に閉じこもり厳重に鍵を閉めて息を殺している
下手に外に出て騎士団に目をつけられたら無条件で国家反逆者と決めつけられ
処刑される可能性もあるからだ

「こ〜りゃ随分なもんね〜。っうかあんだけ騎士団出して街の経済大丈夫なの・・?
店なんてほとんど閉まっているわよ?開いているのはほんとの数件ねぇ」
窓から見える街の様子にナタリーが素直な感想・・。
「それだけ暴走しているということだ。
国のゴタゴタに他国の傭兵を雇う事自体普通ではないからな・・」
隣で珈琲をすすりながら説明するフロス
彼らは街人の格好をし、警備の目をかいくぐってここまできた。
それくらいの腕がないと公社の人間としては認められないのだ
そしてサマルカンド侵入後で近くの茶屋で街の様子を確認しようとしているところだ
小さいながら洒落ている茶屋だが、客は彼ら以外誰もいない
亭主も注文したものを渡すとさっさと奥に入っていった
「まっ、これじゃあクーデター云々を起こす気にもなるわな。だが見たところ・・
並より下な力か。やはり問題は18の連中だな」
ナタリーに代わり窓からちらりと様子を見て力量を確かめるクラーク
「隊長、こんな戦力差でほんとに・・」
「な〜にシけた顔しているのよ、クロムウェル。戦いは量より質♪なんとかなるわよ」
「それにしてもいつもの強気はどうした?・・どうやら実戦は初めてのようだな」
あまり顔色の浮かないクロムウェルにフロスが的確に指摘
「・・まぁ、それもあるけど・・」
「ふっ、安心しろ。それにお前も13部隊の一員ならば
自分を叩きのめしたクラークやナタリーを信用しろ」
「ああっ、フロスもたまにはいいこと言うじゃないか♪」
「・・まぁ難しい事だがな」
「「・・・おい・・」」
「ともあれ、ここが待ち合わせの場所になるわけだ。クロムウェル、
今回の一件はお前はあまり他人と一緒に行動させないようにする」
「・・・?」
「今までの報告などを見る限りお前は人との付き合いが苦手なようだからな。
他人と行動させると実力も半減するだろう」
「へぇ〜、フロスそんなことまで見ていたんだ〜。
伊達に朝練参加せずにのうのうと暮していただけあるわね♪」
「・・・偏見のある言い方だな。・・まぁそういう事だ」
「わかったよ、助かる。フロスさん」
頭をかきながら礼を言うクロムウェル、どうやら人付き合いが苦手というのは図星のようだ
「さて、ファラはどうかな。そろそろ戻ってくるか・・」
そんな中、一人いないファラのことを気遣うクラーク。
彼女は先ほどから店の奥の方へ入って行ったのだ
そこでレジスタンツのリーダーと対面するために・・

今回は補佐が現場にて報酬の交渉を行う、そこで折り合いがつかなければそれまで
部隊はそそくさと退散するという感じだ
まぁ、相場は決まっているのでそれほどもめることもないのだが・・
他の面々が店内にいるのは多人数が一気に店の奥へ入るのを
騎士に見られたら流石に怪しまれると思ったからだ

ガチャ・・

スタッフルームのプレートが吊るされている扉から周囲を警戒しながら出てくるファラ
他の面々は普通の町人の服装に対してファラはゴスロリ調の黒のドレス。
いつもつけている丸眼鏡を外して髪型もオサゲにしておりよりいっそう子供に見える
「交渉成立よ。貴方達、見つからない様にきなさい」
小さな声で手招きするファラ、一同黙ったままスタッフルームに入った

中はこじんまりとしたもので店の備品などが片付けられている・・が
葡萄酒の樽の隣に地下室への階段がある
通常そういうものはどこにでもあるものだが、まるで樽で塞いでいるような跡があり
普通の地下室への入り口よりも重厚な物でファラはそこへ無言のまま先導する
・・・・・・・

「・・ここがアジトってわけか・・」
地下室へ降りてクラークが驚く
スタッフルームからは想像できないくらい広いスペースで街の見取り図や
作戦用のテーブルがおいてある
大体30人くらいがいれそうなそのスペースには20人くらいの男達がジッと13部隊を見つめている

「その通り。ファラさんにも驚いたが皆さん随分若いのですね」

代表者らしき若い男が13部隊の面々を見て言う
きちんとした身なりの銀髪男性でどこかの貴族のような感じがする
「ああっ、うちはちょいと特殊でな。
交渉はうまく進んだようだし、よろしく頼む・・。隊長のクラークだ」
「よろしく、クラークさん。
僕はこのレジスタンツ『サマルカンド解放機構』のリーダーのラファイエットです。」
固く握手する二人、どうやら双方好感が持てそうなようだ
「ふぅん、まぁ俺達が言うのもなんだけどリーダーにしては若いな」
「ええっ、僕はこのサマルカンドの下級貴族の息子でして・・、
今国を支配しているバスティーユ家の事などを一番知っているので進んでこの肩書きにつきました」
「ほぅ・・、貴族もレジスタンツに参加しているとはな・・」
これにはフロスも驚く。大抵こうした運動は民衆VS王家と言うのが普通なのだ
「ええっ、僕の家ウォルポール家は元々国の穏健派を訴えてきました・・ですが
バスティーユ王に目をつけられ父母は処刑されて・・」
「・・そうか、すまないな。言いたくないことだろう?」
「いえっ、これから世話になる人達なのですからこれも必要な事です。
では説明にうつらせてよろしいですか?」
軽くそう言い、ラファイエットはテーブルに向かう
「ああっ、現状を説明してくれ」
「はい、皆さん街で見かけたようにすでにこのサマルカンドは暴君バスティーユの騎士により
厳戒態勢で碌に外にも出れない状態です。
それはどこも一緒で丸一日、寝ずの番で反逆者を逮捕しようとしています」
「そうね〜、じゃあ貴方達はどうやって連絡とっているの?
まさかその人数でここで住んでいるわけじゃないだろうし」
この広間の所々に扉があるが居住できるようなスペースには見えない。
また明かりもそれだけの広さゆえに練金灯では間に合わず薄くらいのだ

「この街は葡萄酒の保管の為に各家庭保管庫が地下にあるんだ。
さらには下水整備や避難路として代々この街には地下通路がある。
みんなそれを使ってここに来ているんだよ」

レジスタンツのメンバーの一人が親切に説明してくれている
「なるほどな〜、だが何時までも地下を歩き回っても進展はない
何か勝算があって俺達を雇ったんじゃないか?」
「流石に鋭いですね。そうです。かなり危険な賭けかもしれませんが
僕達にも時間がなくなってきたので・・」
「時間が・・ない・・?」
「先日の王家からの通知で各家庭を立ち入り調査が行われるのです。
バスティーユの執拗な命令ならばこの地下通路が見つかるのは必至、
例え一つでも見つかったらこの広間がわかり僕達はなす術もなく囚われてしまうでしょう」
「・・・事態は緊迫している・・っということか」
「はい・・、ですが活路も少し見えます。バスティーユは自分の命令に兵を従わせるために
騎士団長ブランを牢獄に捕らえたのです。
彼は兵士達の信頼が厚く彼を助け出し街の騎士達を従えさせたら
バスティーユ勢力を抑えることができます。・・騎士達も自分達が尊敬する
団長を人質に仕方なくバスティーユにしたがっているようですので」
「ふむ、ではこの戦い。ブランという男を救出することが鍵となるわけだ・・な」
早速フロスが灰色の頭脳を回転しだす
「ただ、そうとなってもまだバスティーユには近衛兵と僕達が雇ったのと同じように
傭兵公社から派遣された傭兵がいます」
「ああっ、近衛はともかく、公社の人間が向こう側にいるのは俺達も知っている。
あいつらは俺達に任せておけ」

「・・なぁ、その傭兵達ってあんた達の仲間なんだろう?話し合ってなんとかならないのか?」
メンバーの一人が心配そうに13部隊に聞く
「残念だけどそう言う事が通じる組織じゃないの。命令ならば同僚も殺さないといけない職業だし・・
何より向こうはこっちを殺す気よ」
ファラが真剣な顔で伝える、ゴスロリ服に似合わず真剣な顔つきだ
「そう言う事・・。でもそのブランって奴。殺されていたらどうなるんだ?切り札がなくなるぞ?」
「大丈夫です。ブラン団長はバスティーユにとっても騎士達を操るのに必要な人材。
彼を殺害することは騎士達の怒りを買うことになり自滅につながります」
「その代わり、彼は向こう勢にも重要人物だ。その見張りは相当厚いと見ていいな・・」
「ああっ、そうだな・・。でっ、あんたらの戦力は・・?」
「今ここにいる面々以外にも僕のような身の上の貴族がいます。それらを合わせたら・・
大体200人くらいの兵がいます」
「それで精一杯ねぇ。対しバスティーユは騎士団ならびに近衛兵。さらには大部隊である
18部隊が揃って数え切れないくらいの勢力。これはどう行く?フロス」
「ふっ、元よりこれだけの人数ならば取る作戦は決まってくる。ではラファイエット氏。
私の策を言おう。異議があるなら何なりと言ってくれ・・。
っと言ってももはやそれ以外は打つ手はあるまいが・・」
フロスは静かに街の見取り図に木で出来た駒を置き始めた・・。
しばし広場にはフロスの声だけが響きその場にいた
全てのモノは食い入るように見つめていた


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