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三章  「魔女の素顔」


第13部隊の初陣が成功してから数日。
翌日からも簡単な依頼に難儀な注文をつけた命令が下されたのだが
フロスの名案やクラークの行動力もあって全て解決できている
だが、そんな快進撃の中でもクラークは少し腑に落ちない事があった・・

それは・・・・




所は傭兵公社本部、いつもながらの重厚さな建物の中
あのドアの前にクラークが立っている

コンコン

「開いている、入れ・・」
「邪魔するぜ・・」
部屋の主、公社の最高責任者『総師』の声に大して遠慮もせずにズカズカ入るクラーク
中はあの13部隊任命を受けた時と全く変わっていなく、初老の総師の隣にいる
女性秘書もその時と同じままだ
「報告は聞いている、中々見事な手並みだな・・」
入って早々、クラーク達の功績を誉める総師
「このくらいはできて当然・・って言うのが本音じゃないのか?」
「・・ふっ・・。まぁかけろ・・おい・・」
総師は秘書に軽く声をかける、それで全てを察したのか
無口なままで秘書はお茶を出す・・
スラッとしたスーツに黒いお団子髪。見た目は非戦闘員だが全くの隙がない・・
また無表情で機械的な作業をするところを見ると・・

(アサシン・・か)

・・っとクラークもおおよその見当がつく
「さて、何の用だ?表立った話は伝言で済ませるのが公社の規則。
重大な事には違いないとは思うのだが・・」
「あんたには重要ではないが俺にとって重要だな・・」
「・・・ほぅ、その話とは・・?隊長の任を取り下げろ等と言い出すのではないだろうな?」
軽くあごひげをさすりながらにやける総師
玄人が見てもぞッとするような不気味さをかすかに見せる
「まさか・・、あんたが俺の補佐に派遣したファラについてだ・・」
「・・気に入らんのか?変わりならいないこともないが・・」
「そうじゃない。あいつは初陣の時に人が変わったように暴力的になった時があった・・。
普段でも口がいいほうではないが、あの時の殺気は本物だ。あいつの過去には何かあるのか?」
「・・ここでは不用意に昔の事に触れるのは御法度だ。
・・っと言っても規則違反の常習者であるお前には通用しないか」
はぐらかす総師、クラークもいちいちそれに構ってもいられないようだ
「これは部下を従える隊長としても重要な事だとは思うぜ?
いきなりあんな状態になられたら対応しようがないからな」
「・・ふっ・・いいだろう。だが、それは本人から直接聞け。その方がトラブルがない」
「・・・はぁ?」
「人間、知られたくないものがあるのだ。
それに、他人にいきなり自分しか知らないことを言われるのは不快だろう?」
「・・まぁ、そりゃあ・・そうだけど・・」
総師らしからぬ正論を言うので言葉が詰まってしまうクラーク
「そう言う事だ。派遣する人材についてはこちらからの情報はアテにするな。
自分で何とかしろ・・・ただ・・」
「ただ?」
「ファラ=ハミルトン。事情を聞いた以上は赤の他人としての見れなくなる。
そこらへんは良く考えておけ・・」
険しい口調でそう言う総師、クラークも思わず息を呑んでしまった・・







「・・でっ?それが悩み事ってわけ?」
13部隊兵舎に戻ってから話相手には兆度いいナタリーと偶然談笑室にいたフロスに
クラークはその事を打ち明けた
ファラは折り良くというべきか、
ここ数日クラークと必死に書き上げた書類を提出しに出ていったようだ・・。
「ああっ、あのじじいの言い方だとかなりの過去があるんだろうが・・」
「まぁ、私は彼女が殺気立つ所を実際見ていないが、
作戦に差し支えがあるのならば知っておく必要はあるな」
「私もそこらへんは賛成〜、だって同じ部隊ともなれば運命共同体ってやつでしょ?
知っておいたほうが良い事は知っておくべきよ・・例えば私のスリーサイズとか♪」
いつもの深緑の軍服は着ておらずラフな普段着のナタリー、
胸を寄せて自慢のバストを強調している
「それのどこが必要なんだ・・?ともかく聞いてみることにするか・・
お前達には後で伝えるって事で・・。
そのことについてはあんまりファラには言うなよ?」
「ああっ、軽軽しく他人のことは言うべきではないからな・・」
そう言うとフロスは談笑室の席から腰を上げ、どこかに行ってしまった
「まっ、それも隊長の仕事ってやつじゃないの?それともファラに気があるとか!?」
「・・おいおい・・」
「駄目よ!貴方はクローディアと結婚してもらいますからね!」
「・・何でいきなりそんな強く口調になるんだよ。大体クローディアは男に興味がないだろう?
いつも俺の隣で剣に全てをかけていたじゃないか。強引なのは良くないぜ?」
「・・・・貴方・・・・、本気でわかってないの?」
「・・何が?」
何言っているんだ?この女・・っと言ったクラーク
「・・はぁ、我が妹も苦難の道を選んだもんだわね・・」
「???、でもクローディアか、懐かしい名前だな。まだお師さんところで修行しているのか?」
「ええっ、私はきちんと文通しているからね。
この間お師さんから刀をもらったって書いてあったから真剣での訓練に入ったみたいね。
・・っというわけで私は可愛い妹の為にペンを走らせてくるわ。
貴方はファラとどう話すか考えていなさい!」
そう言うとナタリーはひょいと座っていたテーブルから降りて部屋を出ていった

「・・・どう話すって・・そう言うの苦手だからな・・」

一人になったクラークが思わずぼやく
知らない女性と話をしたこと自体あまりない彼だ。
そんな男が身の上を聞き出すなんてことはかなり難しいことだろう・・
しばし、木造の天上を見つめ思考を巡らせる・・知恵熱が出ない程度だが・・

「ただいま〜」

考え出してから30分は経った頃、渦中の人ファラが帰ってきた
持っていったはずの書類の一部を持って帰って・・
「あらっ、クラーク、ここにいたの?隊長室にいないから探したわよ」
どうやら真っ先に隊長室でクラークに詰め寄ろうとしたようだ
「ああっ、まぁ・・な」
「?何か上の空ね・・それよりも、提出した書類、これだけ不備があるから次回までに直して
再提出だって!もっとしっかりしなさいよ!」
数枚の書類を談笑室のテーブルにバン!っと置くファラ
「はは・・わりぃ・・。次はがんばるよ」
押され気味のクラーク、頭を掻いてはぐらかす
「わかればよろしい!最近は素直になってきて嬉しい限りだわ。」
「それよりもファラ、今から食材買いに行かないか?」
「・・食材?」
「ああっ、もう備蓄していたやつも尽きるだろう?
配給するまでは俺の書類の不備でまだ少しかかりそうだからさ」
「・・まぁ、確かにそうだけど・・そんなの隊長がわざわざ行くの?私一人でも・・」
「そんな幼児体型じゃ、4人分の食材を担げないぜ?」
「幼児体型で悪かったわね!・・いいわよ!荷物全部持たせてあげるわ!覚悟しなさい!!」
「ああっ、わかったよ。じゃっ、こんな軍服さっさと脱いで行きますか・・」
そう言うとクラークは軽く軍服の上着を脱ぎ部屋へ戻っていった
「・・・・・」
その妙なクラークの提案にファラは少し首をかしげたが彼がそんなに深く考えがあって
行動しないタイプなのでやがて気にすることもなく、彼を待った



軍事国家グラディウス


首都であるグラディウスから南に山ひとつ離れた荒野に傭兵公社の兵舎等が置かれており
完全に隔離されているようだ。
グラディウスと傭兵公社領を隔てるその山の麓には公社の生命線とも言える街
「サウスヴァージニア」が存在している
ここには公社の全ての兵舎が利用しているため武器商人や
日保ちの良い食材を扱う店などが並んでおり大いに賑わっている
町全体が市場のようになっており宿などが全くないのも特徴と言える


その表通り、一応整備されている通りを紙袋を抱えて歩く身長差のある一組の男女・・
すなわちクラークとファラがテクテク帰り道を歩いている
「やっぱ・・、重いもんだな・・」
両手に紙袋を持つクラークがうめきながら歩く、対しファラは手ぶらだ
・・出発前に言ったことを嘘偽りなく実行している
「わざわざ重い食材買うからよ。大体、兵舎の厨房の設備だとパンも焼けるんだから
米なんて買わなくてもいいじゃない」
荷物の大半は彼が買った米が占めてあるのだ
「ん〜、まぁ俺の主食だからな、ナタリーも米がなかったらうるさいだろうし。
ファラが反対したから買わなかったって言ったらあいつ一晩中お前の耳元で囁くぞ?
『米食いたい〜米食いたい〜』って・・」
「う゛・・ほんと・・?」
「本当だ。まぁ、それはそうとして、ニンジンもちゃんと買ったから今日はキャロングラッセだな」
「ええっ!嫌よ!なんであんなモン買ったの!返品しなさいよ!」
「・・返品する理由がないだろう。好き嫌いはよくないぜ?お前もいっちょ前の大人ならな」
「ぶー・・」
丸眼鏡を軽く上げ、うなだれるファラ。本当にニンジンが嫌いなようだ
そうこうしているうちに二人は街を出て、13部隊の兵舎へと続く荒野の道へと出た。
その地方独特の赤土が広がっており、短い草木が所々生えている程度の殺風景なものだ。
日も沈みかけており、黄昏時なのでなおさら物悲しい感じになる
「でもいきなり食材買いに行くなんてどうしたのよ?翌朝から行ったほうが品揃えもいいのに・・」
「・・あ〜、ま〜、何だ。ちょっと・・な」
気まずそうなクラーク、ファラからは紙袋で顔が見えないがかなり困惑顔だ
「???」
「お前に聞いておきたいことがあるんだ」
「・・・・」
その一言に全てを察するファラ、途端に顔が暗くなる
「まぁどう言う事かはわかるとは思うが・・、この間のお前の豹変ぶりがどうしても気になってな」
「・・・・・・・」
「話してくれないか、お前の過去を・・」
「・・・・忘れてって言ったじゃない。言いたくないの・・」
「それはわかっている、だか、知っておきたいんだよ。今後のことにも関わるし、
なによりもお前のために・・・だ」
「・・隊長命令?」
「いいやっ、一人の男としての頼み・・かな」
その言葉に少し悩むファラ
しばらく無言で歩いていたが決心がついたようで重い口を開けた

「・・いいわっ、話してあげる。・・・私は戦争孤児なのよ。こんなご時世どこにでもある・・ね。
食べ物探してさ迷っているうちに魔法都市レイアードについてね。そこで一人の男に拾われたのよ」
黄色い空を見ながら悲しそうに呟く
「初めて神様っているんだ・・って思った。
私はその人のためにがんばろうとあの人のことを何でも聞くようになった。
その人はね、魔学アカデミーの名誉会長だったの・・。
だから魔法の事は色々教えてもらったわ・・」
「・・・」
「でもね、それは表の顔。
裏では自分の地位を守るために新たな術を発表する実験のために孤児を囲んでいた鬼畜だったの。
私も・・・より多くの術の実験をさせるために・・・・」
「・・・・だいたいはわかった。無理して言わなくても・・」
「いいえっ、聞いて。そいつの為に私の精神は二つに別れされられたの。
多重人格というやつ・・、私が寝ている間にもう一人の私が目を醒まし術を学んでいたの。
十分な睡眠や運動は許されなかったから身体も成長しなくってね」
自分の身体を見て自嘲的に笑うファラ。
年齢の通りだとナタリーくらいの背があってもいいぐらいなのにクラークの胸元ぐらいしかないのだ
「・・・・・」
「このままでは殺されると思って私はもう一人の私と精神を統一してあの男を殺したわ。
後は流れ流れて公社に辿りついたの。ちょうど貴方が16部隊で活躍していた頃かしら・・。
統一したって言っても彼女と意見を合わせて生活をしているの。
だからこの間みたいに感情がうまく処理できない時にはもう一人の私が顔を出すのよ。
・・・・でも安心して、悪い子じゃないから貴方達に危害を加えることはないわ・・」
「・・・・すまないな。辛い事を言わせて」
「いいのよ、そんな事聞いてくるの貴方がはじめてだし・・。
頼んでまでこんな女の事聞きたがるなんてほんと物好きね・・」
「まあ、一緒に闘う以上は家族だからな」
荷物を持ちなおし、ファラの頭を軽くポンポン叩いてやる
「家族・・」
「そっ、俺達はお前を裏切ったりはしないから安心しろ」
「・・・・・・ありがと・・」
目を閉じ少し照れくさそうにファラが応える。
夕日の中、それ以上に彼が眩しくみえたのだろう
「とりあえず今日はキャロングラッセだけどな♪」
「それは止めてよ!」
「隊長命令♪」
「そんな事で隊長極限を使うな!」
怒るファラをポンポン頭を叩きからかううちに彼らの生活の場、兵舎が見えてきた

結局この日の食卓はキャロングラッセにニンジンパン。ニンジンスープと赤い物つくし・・
ファラはクラークの見張りもあり、涙目になりながら食べたそうな・・・



その夜
食事も終わり仕事もないので後は就寝するだけなのだがその前にも軽く話をしたりもする

もちろん、酒を肴に・・だが

「葡萄酒の味にも慣れてきたな・・」
暗くなった談笑室、蝋燭と錬金技術が組まれたカンテラのほの暗い明かりの中、
クラークがビンに入れられた赤い葡萄酒をグラスに注ぐ
「ほんとよね、私達の国では果実から酒を作るなんて考えられないし」
ナタリーも同じく葡萄酒を注ぎながらうなずく
「酒が珍しいのか〜!!二人ともぉ〜!!!」
一人だけ出来あがっているファラ、顔もまっかっかでガブガブ飲んでいる
フロスは一足先に寝床についており談笑室にはこの3人だけだ
その3人ともすでに寝巻きでクラークは普段着のままで寝るようだ
ナタリーは白装束の和服寝巻きでいつもよりかは大人しめに見える。
そしてファラ、フリルのお子様パジャマ・・。サイズの合うものはこうしたものしかないらしい
本人は仕方なしの様だが酔っていれば関係ないらしい
「・・・おいおい、ファラ。さっきからガブガブ飲んでいるけど大丈夫なのか?」
「酒は飲むモンでしょ〜!くらーくぅぅ!!」
「・・だめだこりゃ。やれやれ、こんな連中引き連れていくのも苦労するもんだな・・」
からんでくるファラを手で押さえながらため息まじりに呟いている
「でも、気に入っているんでしょ?最近のあなた、やる気みたいだし・・」
「乗りかかった船・・だからな。まぁ正直俺が隊長だなんてお師さんなんかが聞いたら笑われるか」
「手紙にゃ笑いすぎて腸捻転になったらしいわよ?それで一言・・「似合わん」ですって」
テーブルに腰掛けてナタリーが面白そうにつぶやく
「・・・・」
「まっ、貴方の意気込みは買えるわね。私もせいぜい手をかして上げる。
さてっ、私はもう寝る事にするわ〜、ファラは?」

「zzzz・・・」

テーブルに突っ伏して眠りこけているファラ
「・・寝ている・・な。静かだと思えば・・・。」
「じゃっ、この子の介抱は貴方がしなさい。隊長でしょ?」
「・・都合がいいな、おい」
「ふふっ、まっ、こちらとして貴方のことをよく知ってクローディアに伝えないとね♪」
「???・・はぁ?」
「こっちの話よ!じゃ、おやすみ〜」
からかい口調で部屋を出ていくナタリー。
クラークは彼女の考えが全く理解できないようで一人腕を組んで首をかしげた
「なんなんだ?一体・・」
結局わかるはずもなく寝酒にもう一杯飲もうとしたその時

「クラーク・・」

急にファラが起き出す・・・が顔つきがいつもとは違う事にクラークは瞬時に察知した
「・・・・お前は・・・ファラか?あっ、もう一人のファラと言ったほうがいいか?」
「ええ。昼間ファラが話したけれどもあたしはもう一人のファラ、
あの子が今酔いつぶれて寝ているからこうしてでてきたんだ」
いつものファラとは違い口調もどこか冷たいものを感じさせる
「・・・わざわざ出てくるなんてな。俺に何か用か?」
「忠告だ。・・これでも、ファラは純粋なんだ。軽い気持ちでこいつをたぶらかすのは止めてくれ」
「・・俺が、か?」
「そうだ。今日の話でこいつは少なからずお前のことを想い出した。
だが、あたし達を本当に受け入れなければあたし達は幸せにはなれない・・。それの忠告だ」
「・・・・・まっ、俺は拒絶するつもりはないぜ?ファラ。軽い気持ちでもない。
同じ家族としてお前を心配している。・・両方、な」
「・・・・・、後悔するかもしれないよ?」
「そんなこと気にしていたら剣の道なんて歩けやしないさ。お前達が苦しんでいるならば
それを助けるのも隊長として、そして仲間としての役目だ」
「・・・・・」
クラークの言葉に目を丸くして驚くもう一人のファラ。かなり困惑しているようだ
「なんだよ?おかしいか?」
「いやっ、わかった。あたしもあなたに協力する。あなたは信用できそうだ」
「光栄だな。さっ、もう夜も遅い。そろそろ寝ようぜ」
「あ・・、いや・・もう少し・・一緒にいてくれないか・・?」
「??・・・ああっ、わかった・・じゃあもう少し飲むか」
もう一人のファラに軽く葡萄酒を注いでやるクラーク
二人はしばし軽い身の上話をしながら飲み合った
その時のファラは誰にも見せた事のないような笑みを見せていた・・


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