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十七章  「命は風に舞う葉の如く・・」


公社内や唯一の街サウスヴァージニアではすでに壊滅扱いとなっていた13部隊
その帰還は彼らを震撼させた
逃げかえったという噂も流れたのだが総師直々のねぎらいがあり彼らが
本当に大国が防衛した土地を陥落させたことが証明されたのだ
そのことにより13部隊の事を『不死身の第13部隊』や最強の戦士達など囁かれ
一躍英雄扱いになった・・。
当の面々は元よりそんな名声のために命を張ったわけではないのでいつものままで・・。
ただ街での視線や公社内での噂にてその名称が少し肩にのしかかる程度だ

「やれやれ・・。街に出ただけでもあの騒ぎは何なんだよ、
この間まで幽霊見たような顔していたくせに」
サウスヴァージニアに買い物に行っていたクロムウェルが頭を掻きながら戻ってきた
ちょうど兵舎庭ではアルとシグマが静かに剣の講習を受けているところだ
「クロムウェルさん・・、街に行ってきたんですか?」
「ああっ、ちょいとツケがあったからさ・・。もみくちゃになったよ・・」
「・・・・・・、行く気にはならんな」
「シグマもそう思う?まぁ用がない限りは止めておいたほうがいいだろうな。
でっ、アルはシグマと何やっているんだ?」
「ええっ、シグマさんの剣を教えてもらおうと思いまして・・」
斬鉄剣『無銘』を抜き、型を教えてもらっているようだ
「なんだ?刀の使い方なんて姉御やクラークさんに教えてもらえればいいんじゃないのか?
そのほうが早いだろうし」
「そうなんですがあの人達の剣技は高等すぎてとても体得できないんですよ。
そこでシグマさんの我流剣術を教えてもらって僕なりに刀と組み合わせてみようと思ったんです」
「・・シグマ、剣も使えるのか?」
「・・・・・・、どちらかといえばそちらの方が得意だ。
まぁ我流といえども基本的な身体の捌き等だから何度かやれば体得するだろう・・。
後はアルしだいだ」
物静かながらにも優しい指導のシグマ、自分の戦い方をアルに注いでいるような感じだ
「ふぅん・・。じゃあ邪魔しちゃ悪いな・・。姉御は?」
「ああっ、部屋で手紙を書いているみたいですよ?
何でも今回でしばらく妹さんとの文通を終わりにしようとしているから入ってくるなって言ってました」
「・・あんだけ欠かさずにやっているのにか?・・変だな」
「そう言われればそうですよね、
クロムウェルさんだったらナタリーさんも何も言わないと思いますから・・
見てきたらどうです?」
「あ・・ああ・・そうだな。じゃあ見てくるわ」
何ともなしに気になったのでクロムウェルはナタリーの部屋へと向かった



コンコン

「開いているわよ〜?どうせクロムウェルだろうけど・・」

ガチャ・・

「よくわかったな〜、ほんと・・」
「ノックの感覚と・・臭い?」
机に向かっていたようで椅子を回して羽根ペンをクロムウェルに向けるナタリー
「ノックはわかるけど・・臭いって・・」
「執筆中は何だか感覚が鋭くなっちゃってね〜。・・でっ、何の用?
手紙書いている時は部屋に来ちゃ駄目っていつも言ってるのに」
「それはわかっているんだけどアルに聞いてさ・・、妹さんとの文通止めるんだろ?」
「まぁ・・ね。」
少し苦笑いのナタリー・・
「どうしたんだよ?あんだけ欠かさずやっていたのに・・」
「クラークがファラと付き合いはじめてクローディアも考えるようになってね。
しばらくは自分の剣について静かに考えたいんだって」
「クローディアさんにそのことを伝えたんだ・・・。ショックだったか?」
「まっ、手紙が少し濡れていたけど思ったより冷静だったみたい。
こんだけ離れて暮していたらどんなに鈍感なあいつでも
誰かに引っかかるって思っていたみたいね」
「・・それでいいのか?」
「そうするしかないじゃない、私にできることはもうないのよ・・・?
だから、一応の励ましとこれからの自分の生き方を剣を振りながら考えなさいって書いている最中よ」
「そうか・・・。じゃあ姉御も手紙書く時間が空いて暇になっちまったな?」
「そうでもないわよ?これからは舎弟の面倒を見てあげないとね〜(ゴきゴキ)」
「・・・・・・姉御、言っている事と仕草で二通りの意味が受け取られるんだけど・・」
「おほほほほ・・、なまいき言った分とことん付き合ってもらうわよ♪クロムウェルちゃんよぉ・・」
「やれやれ、姉御には適わないな・・」
なんだかんだ言って良い関係の二人・・

「おっ、こんなところにいたか」

そんな中突如ナタリーの部屋にクラークが入ってくる
「ちょっと!クラーク!女の部屋に入る時はノックしなさいってあれほど言っているでしょうが!
クロムウェルでさえできてることよ!」
「・・・『さえ』って・・」
「まぁまぁ。ちょいと任務が来てな、お前を隊長にして少数でこなしてくれないか?
相手は山賊退治・・。クロムウェルとアルを連れていけば十分だろう?」
「了解、詳しい内容はファラに聞けばいいの?」
「それが俺なんだ、これが・・」
「?、どうしてだ?」
「ファラはこの間のゼダン奪回の書類を本部に提出しに行ったからな。
その間に俺がこの仕事やっておけって・・さ・・」
「慣れない事を押しつけたもんね〜、それに今更山賊退治って・・」
「まぁ、何の問題もないさ。ちゃっちゃと済ませておくれ・・」
「はいはい、でっ、どこに行けば良いの?」
慣れない段通りで説明するクラーク、ナタリーは笑いながらも身支度を整えた


それより1時間ほど後・・
傭兵公社本部では正装姿のファラが以前のゼダンの任務の結果報告を書類を提出しにきた
「これです、不備があるかは確認してください」
使いなれない敬語で本部のホールで座っている事務官に書類を手渡すファラ。
背が低いものなのでついつい胸を張ってしまう・・
それを自分自身でも馬鹿馬鹿しいと思い内心苦笑いするファラ
以前はそんな感情もなかったのだが、クラークと出会ってから彼女も随分変わったようだ
「受けたまわりました。不備の確認が終るまでこちらでお待ち下さい」
事務官が手をやり案内する・・。
(??・・いつもならそれで終りなのに・・。規模が大きかったからかな・・?)
チェックが終るまで待つということは今までにないことだ。
以前はクラークの書類がつき返されたがそれは枚数チェックと同じに発覚されたもので
後日に指摘・・っというのがセオリーなのだ
「こちらへ・・どうぞ・・」
本部の豪勢な廊下を渡りとおされるは見事な客室。
赤い絨毯もさることながら壁にかけられた絵画も価値のあるものばかりだ
「は・・はぁ・・、では・・」
静かにソファに座るファラ・・。
部屋は外側がガラスばりになっておりこの地域独特の荒野が見える・・。
「なんだか・・緊張するわね・・。早く帰ってゆっくりしたいわ・・」
シン・・っと静まりかえる客室、何もすることがないので思わずぼやいてしまう
こうまでなると中々に退屈となりファラも絵画とかを見渡している
その中、誰かが置いていったのか2枚の書面が落ちていることに気付いた
「・・?前の客が落としたのかしら・・、全く、意外に行き届いていないのね」
やることもないし書類を取ってやるファラ・・
しかし不意に目に飛び込んだ内容に愕然とする
「・・シュッツバルケルへの攻撃通知・・・?それにビルバオへの禁呪古文書の受け渡し・・。
ど・・どういうこと・・?」

「あの戦争はわしが仕組んだという事だ・・」

「!!!・・総師・・!?」
振りかえると総師が入り口に立っていた
「書類に不備はなかったが・・君には不備があるようだな」
「いえ・・、勝手に拾って読んだのは申し訳なく・・」
「気にすることはない。それも仕組んだ事だ。
もし君がそれに気付かなかったらそれもよしと思っていたのだからな・・」
その表情・・正しく狂人・・
「で・・でしたら何故こんな事を・・」
「それを知っても仕方あるまい。君はジョーカーを引いたのだよ」
そういうとおもむろに剣を取り出す。
そして部屋全体を覆う殺気が・・
「!!・・・私を・・」
「書類に目が行った事を呪いたまえ。そして彼の為に・・死ね・・」
「こっ・・、こうなったら・・えっ!?魔法が・・!?」
魔方陣が展開しない・・、そして目の前には狂人の刃が・・・



本部での凶行が行われたのと同時刻
グラディウス近郊の山道にて三人組みが辺りを見渡している
すでに夕日がさしており、夜営の準備をしようかと迷うところだ
「山賊退治って言われてもね〜、大国相手にドンパチやった後じゃあしらけるわね・・」
「そうそう、っうかアルがいたらもうアッという間に終わるぜ!ダンケルクでもすごかったんだからよ!」
「いやぁ、クロムウェルさんに褒められるのは珍しいですね・・」
「後輩思いね〜。でもここって・・私達がはじめて任務をこなしたところね・・。
内容も確か山賊退治だったし・・」
「同じ所でんなことあるのか?」
「クラークが甘い事言って山賊団は一目散に退散して決着がついたけど・・。
まさか同じ場所でんなことする馬鹿もいないでしょうね。
とにかく、この先に村があるはず・・。そこで世話になって退治しましょう」
流石はリーダー、面倒見がいい分こうした時によく引っ張っていく
ともあれ日が暮れぬうちに三人は村へとついた・・


しかし・・

「・・・・・、こんな事態になっているとはねぇ・・。あ〜、しばらくお肉食べれないわ」
「山賊の仕業か・・?姉御?」
「それでも異常ですよ・・」
村に入って絶句した三人、家は焼け落ちそこら中に村人の死体が転がっている
それも何かで引き千切られたような無惨なものばかりだ
「魔物・・?それでもこんなのは・・・。」
すでに辺りは薄暗くこの事態の気味の悪さを引きたてている
「・・・・・・、しっ・・・。静かに・・」
「姉御・・?」
「囲まれています・・、クロムウェルさん」
村の中央まで駆け出す三人。互いが互いの背中を守るように陣を取るのだが・・
「来るわよ!」
ナタリーの叫び声とともに雨のように矢が降ってくる!
「いいっ!?山賊がんな事を!!」
「文句言わない!アル!捌けるわね!」
「やってみます!」
三人必死に矢を捌く、四方より飛び交う矢には流石にその場を動くわけにもいかない
その中でやはり不利なのは接近戦が不得意なアル
・・・次第に慌ててきて、手元がおぼつかなくなってる
「うわっ!」
「ったく!シグマに教えてもらった剣はその程度か!」
体勢を崩すアルにクロムウェルが身体を張って庇う、おかげで何本か身体に突き刺さったのだが
一瞬顔を歪めただけですぐさま迎撃に向かっている
「クロムウェル!大丈夫なの!?」
「この程度!姉御のゲンコツに比べたら屁でもねぇ!」
「それでこそ私の舎弟よ!」
必死に受け流す三人・・やがて矢の雨は止んだ。
いくら剣の達人といえどもその猛攻からは全回避はできず三人とも何本か身体に突き刺さっている

「さぁ!ふざけたことはもうおしまい!?さっさと出てきなさいよ!」

息が上がっているのを隠すナタリー・・、彼女が一番動き、
できるだけ二人が傷つかないようにしていたのだ
「お見事・・、流石は『不死身の13部隊』の誉高い三方ですね」
静かに暗闇から姿を見せるは黒髪の秘書嬢・・。
髪は長くなく、目は開いていないようにも見える
「あんた・・総師の秘書官?謀反でも起こすわけ?
まぁ私達を狙って勢いつけるのは悪い案ではないわね」
「違いますよ。私・・いや、私達がここにいるのは紛れもなく総師の命令です・・」
そういうと秘書嬢は手を振りかざす。
同時に現れる無数の兵士・・。
公社の兵隊だが目の色がどすぐろい赤色で見るからに異常だ
「総師が私達を殺そうとしているってわけ・・、そう・・。
命令違反ばかりで堪忍袋の尾が切れたっていうのかしら?」
「それを応える必要はありません・・。貴方達はここで死んでいただきます・・」
「うるせぇ!黙って聞いてりゃいい気になりやがって!俺達三人がいればてめえらが何人いようと・・・」
「クロムウェル・・、隙を見てアルと二人で逃げなさい」
息巻くクロムウェルにナタリーが静かに言い放つ
「あ・・姉御・・?」
「気付かないの?ほんっと馬鹿ね・・。こいつらの目の色・・生気がないわ。
たぶん、混乱系魔法で狂戦士とさせたか薬物ね。もはや人間じゃないわよ・・」
「ナタリーさん・・」
「それよりも私がこいつ等を引きつけるわ。クロムウェルとアルは先に下がって・・」
「姉御・・そんなこと・・」
「何回も同じ事を言わせない!私もまともにやりあう気なんてないわよ!」
どなりちらすナタリー
そんな光景を見て秘書嬢が口元を隠し静かに笑いだす・・

「いいでしょう・・。どうせ一番の目的は貴方です。
男性の方は生きようが死のうがどちらでもいいですしね・・。
先に逃げて後で仕留めてあげますよ・・・。」
「・・誰が逃げるっていったんだ!俺は逃げるつもりはない!」
「クロムウェル!」
「姉御ばかりに負担かけさせてたまるか!一歩たりともひかねぇぞ!!」
「・・、馬鹿な子・・・」
それは彼女にとっても嬉しい言葉なのだが、それに甘えるわけにもいかず・・

ドン!

突如ナタリーが刀の柄でクロムウェルのみぞおちを叩いた
「ガッ・・あね・・ご・・?」
「私を困らせないで・・。心配しなくても大丈夫だから・・ね」
「だめ・・だ・・ぐっ・・」
唸るように気絶するクロムウェル・・・・
「さぁ、アル、こいつ抱えて先に言って頂戴。後で追いつくわ・・。モノの5秒でねぇ♪」
にやりと笑うナタリー、しかしそこには覚悟を胸に刻んだ決死の形相が・・
「ナタリーさん・・。わかりました・・必ず・・きてくださいね!」
自分がいても足手まといになる・・。そう思いアルはクロムウェルを抱え静かに去っていく
狂戦士達もそれを襲おうとせずに全員ジッとナタリーのほうを見つめている

「おまたせさん。でっ、よってたかってバトルロイヤルでも洒落こむの?」
「いえ・・、この子達はあの二人を殺すための駒、貴方を殺すのは私の役目です」
「へぇ、秘書官は補充要員”イレギュラー”の人間。アサシン技術程度はあるだろうけど・・。
それで私に勝てるつもり?」
「ふふふ・・、何も知らないあなたにはその程度しかわからないですか・・」
「・・・何?その余裕面・・気に入らないわね・・」
「見せてあげますよ・・総師の思惑を・・・!グ・・・ガ・・・アアアアアアアア!!」
目をカッと見開いたかと思うと急に苦しみ出す女秘書官。
目の色は真紅で人間のものとは思えない

ボコ・・ボコボコ・・・!!

やがて身体の筋肉が盛り上がり爪が異常に固く伸びる・・。
髪も異常に伸び顔を覆い尽くしている
そこにはボロボロの秘書の服の魔猿が・・
身体の大きさからしてもナタリーの数倍ある
「これが・・、総師のご意志です・・」
「・・まいったわね・・・。夢見が悪いわ・・。この村人を殺ったのはあんたってわけ・・」
「準備運動には兆度いいですからね・・。それに、生きていられては困るのですよ。
貴方を含めてね」
「・・・・・・、ふぅ。どうやら私の死に場所は決まっちゃったかな?
・・でも・・私の一生で学んだこの剣技、最後まで使わせてもらうわよ!」
目の前には人外の獣、周りには無数の狂戦士の中、
女剣士ナタリーは二刀を振りかざし不敵に笑って見せた

・・・・・・・・・

二刀剣士ナタリーVS人外の女魔猿
周りの狂戦士は操られているので手出しはしない・・のだが
それだけでもナタリーは劣勢に立たされている
「型が甘いですね。抵抗しないほうが楽ですよ・・?」
「はっ、女猿が知った風に言ってくれちゃって!舐めているとバラバラになるわよ!」
とは言いつつも息が上がっているナタリー・・、
巨体なのに異常な敏捷性の魔猿は無傷のままナタリーを切り刻んでいっているのだ
「勢いはいいですね。クラーク=ユトレヒトなぞについて行かなければ
総師の御心で私達のような進化も遂げれたのに・・」
「進化?猿になっちゃ退化じゃないの?」

ザク・・!

ナタリーのその一言で目にも止まらぬ突きを放つ魔猿
彼女も回避できずに肩に深々と突き刺さる
「んん・・!」
「口に気をつけなさい?何なら周りの男達に嬲られてから殺してもいいのよ?」
「・・・・・・・、ふふっ・・・勝ち誇ってんじゃ・・ないわよ!!!」
肩に巨大な爪が刺さったまま前進し刀を振りかざす!

斬!!

懐にもぐりこみ真一文字に切り払う!
片手こそ動かせないがかなりの手傷のようだ
「ぐああ!貴様・・!!」
「私を甘くみないことね!かならずあんたをぶった斬ってあげるわよ!」
爪を引きぬき距離をとる魔猿に気丈に言い放つナタリー
しかし肩からはおびただしい出血が起こり構えもふらついている
「死にぞこないが・・、殺してあげる!!」
魔猿は天高く飛び急直落下でナタリーに飛びかかる
ナタリーも何とか迎え討とうとするが片腕が上がらない・・
「・・・ふっ、ここまで・・ね。クロムウェル・・アル・・クローディア・・、私の分も生きなさいよ・・」

轟!

そしてナタリーの身体を深く斬る鋭利な爪・・
「あ・・ああああああ!!」
「馬鹿な女だ・・。」
「・・・・・・・・・」
「さて、それじゃああの二人を追いましょう・・。・・!?爪が・・」
肩から深く刺さった爪を抜こうとしてもとれない・・
「・・・あ・・・・あいつらには手を出させないわ・・よ・・」
「死にぞこないが!!」

ドス!

もう片方の腕で腹を刺す・・、ナタリーは目を見開いて口から血を吐く・・
「・・・・皮を切らせて肉を斬る・・・・に・・肉を斬らせて・・骨を断つ!!!」
渾身の力で反撃!先ほど斬った腹をさらに深く斬る・・
「ぎゃあああああ!」
致命傷には至らないものの魔猿からも血が噴き出る!
衝撃にナタリーに刺さった爪を抜き腹を押さえてしまう
「こ・・・れが私の太刀よ!!!」
ナタリーが両手に力を込めて駆ける!
肩から、腹からは血が噴き出ており生きているのが不思議なくらいだ。
それでも目はジッと魔猿を捕らえ・・

斬!!

二刀を振るい驚くべき速さで魔猿の手足、首を跳ね飛ばす!
「・・・こ・・こんな・・奴に!!!」
魔猿はナタリー以上に血を噴き出してその場に倒れこんだ
もはやピクリとも動かない・・
「はぁはぁ・・、クローディア・・、クロー・・ディ・・ア・・」
暗い空を見ておぼろげに呟くナタリー、やがて立ったまま何も言わなくなった・・

それを見た狂戦士達、物言わぬナタリーに襲いかかろうとしたが

「待て・・、その必要はない」

そんな中に鶴の一声で入ってくる男・・、総師だ
声に従い戦士達は静かに立ち止まった
「・・・・・、立ちながら死亡しています」
総師についている長い黒髪の秘書嬢が目を見開いたまま前を見ているナタリーを見て言う
「・・立ち往生か・・、流石・・っというべきか」
法衣を血で汚している総師だがいっこうに気にせずにやけている
「いかがいたします?」
「クラークへの挑発はあの娘がしてくれる。・・こやつは・・、改造でもして狂戦士勢に加えるか・・」
「御意・・」
ナタリーの死体を回収しようとする秘書嬢・・
しかし

「そうはさせなくってよ!!」

女の声とともに木の枝から飛び降りる数人の男、
ナタリーを抱いて煙幕を張り、すぐさま立ち去っていく・・
総師達は追おうともせずにそれをジッと見たままだ
「・・・、この辺りを縄張りにしていた盗賊達です。いかがなさいますか?」
「報告では、あの盗賊達は山賊行為をしていた時に13部隊に見逃してもらった恩がある・・・。
まぁ、いいだろう・・」
「はっ・・」
「では、これよりかねてからの計画によりグラディウスへ宣戦布告をする、
狂戦士勢を先陣に全公社部隊への出撃命令を下せ。
・・そして13部隊は反逆の罪で処刑だ・・わかるな?」
「御意」
楽しくて仕方ないと言った総師
闇が支配する中、そこには不気味な空気が広がっていた・・






「おっそいな〜、ファラ。それにナタリー達もそんなに手間取るもんじゃないとおもうんだがな〜」
すでに夜も更けているがクラークは談笑室にてファラの帰りを待っている
「お前の書類に不備でもあったのだろう?これだけ遅いと帰った時にまた大激怒だろうな。
落ちつかせるのはお前がやれ」
「・・・・・・うむ」
同じく談笑室で珈琲を飲みながらくつろいでいるフロスとシグマ・・
「お前等・・、冷たいぞ?しっかし・・こうなったら二人ともうるさいぞ〜・・」
嫌な胸騒ぎがするがそれを振り払うように明るく言うクラーク・・、
しかし

ガチャァァァァン!!

隊長室の方からガラスの割れる音が・・
「・・・?なんだ?ちょっと見てくる」
クラークが席を立ち様子を見に行く・・・・。
そして隊長室には・・
「クラー・・ク」
血まみれのファラがうつぶせで倒れている
「ファラ!!」
「クラーク・・、よかった・・・・無事ね・・」
「どうしたんだ!?何があった!」
急いで抱きかかえるクラークだが傷を見て絶句する。
・・・彼も剣士だ。致命傷かどうかは一目でわかる・・いやっ、わかってしまう・・
「総師が・・、ぐっ・・気をつけて・・。ここも襲われるわ・・」
「わかった・・わかったからもうしゃべるな。止血をするぞ」
「馬鹿、わかっているんでしょう?ファラの精神ももう死んだわ。
まだ息があるのは二つ分精神があったから・・。でもあたしも・・、もう・・」
「ファラ・・・、くっ・・」
「ク・・クラーク・・、後は・・お願い・・」
「・・・・」
「ふふっ・・、あ・・あたしが・・貴方に・・抱かれて死ねるなんて・・フ・・ファラに申し訳・・ないわね・・」
「・・馬鹿な事を言うな・・」
「・・・ありが・・・とう・・」
血まみれのファラの顔に一筋の涙が零れ落ちる。
そして薄幸の魔術師は静かに目を閉じた
「ファラ・・?ファラ!目を開けろ!!ファラ!!」
クラークの悲痛の叫び・・、それは届くことなく空しく響いた・・・






闇夜が支配する中、ファラの遺体は彼女の部屋に静かに安置された・・。
フロスの計らいで冷凍されており落ちついたら埋葬してやろうと言う事だ
その間、クラークは終始無言だったという・・・
「・・・、だが、話が本当となるとここももうすぐ公社の人間が押し寄せることになる・・か」
「・・・・・・、ナタリー達が心配だ。」
「そうだ・・な。彼女達にも総師の手が回っているに違いない・・。どうする?クラーク・・?」
隊長室にて今後のことを話し合う三人・・しかしクラークは上の空だ
「・・・・、無理もない・・か・・」
「気持ちは察します。いざとなれば私だけでも・・」
「その必要はない・・。俺も出るさ・・」
「クラーク、大丈夫か?」
「まだ実感が湧かないからな・・、泣くのはこの真相を解決してからだ・・・。」
「わかった・・、しかしそうとなればなおさらあの三人と・・」

”連れてきたわよ!”

突如女の声が響いたかと思いきや隊長室のドアが一気に蹴り飛ばす
入ってきたのはウェーブかかった金髪を軽く後に括った女性、胸元が大きく開いた盗賊服を着ている
それは彼らにも面識がある女性・・
「お前は・・確かグラディウスの山賊の・・」
クラークに代わりフロスが話している
「ジャンヌよ、盗賊ジャンヌ一味の頭領。お久しぶりね」
「・・・・、知り合いで?」
「初陣の時の相手だ。クラークの計らいで殺害せずに逃がしたのだ」
「そう、それからあんた達の活躍は耳にしていてね。
今回あの三人がまたあの場所に来るらしかったから再会に・・っと思っていたのよ」
「思って・・いた・・?」
「ええ・・、残念だけど・・ね。連れてきなさい」
ジャンヌの声に兵舎から数人の男が入ってきて隊長室へ冷たくなったナタリーと
気絶したままのクロムウェル、そしてうつむいたままのアルが・・
「ナタリー!ジャンヌ・・これは・・」
「公社総師の凶行・・っとしか言い様がないわ。あの村の人間も皆殺しになっていた・・」
「・・・・」
穏やかな死に顔のナタリーをクラークは静かに見つめている・・。
その場にいた全員は話すのをためらったがそうも言っていられない状況
「ナタリーはこの二人を逃がすために一人狂戦士と化した兵士達の前に立ち・・散って行ったわ。
なんとか加勢したかったけど・・相手は化け物だから・・」
「・・わかっている。この女にこれほどの手傷を負わす相手だ・・。
生半可な腕では太刀打ちできない・・。それでアルは・・?」
「ナタリーさんの命令で気絶させたクロムウェルさんを担いで逃げました。
でも・・途中で道がわからなくなったところをジャンヌさん達に助けられて・・」
「そうか・・。とにかく・・、辛いだろうがこいつも起こさないとな・・シグマ・・」
「・・・・、わかった・・」
未だ気絶しているクロムウェルへシグマが近づく・・、長期間の気絶してるようで
よほどナタリーが強く打ったのかがわかる
「ふん!」

「!!・・く・・、ここは・・」
「兵舎だ・・。大丈夫か・・?」
「フロスさん・・、あ・・姉御は!?一人で大多数の・・・!!・・」
必死で情報を知らせようとしているがナタリーの姿を見て絶句する・・
「フロス・・さん・・姉御は・・寝ているだけだよな?すぐ・・目を醒ますよな?」
「クロムウェル・・・。少し落ちつけ。」
「落ちついていられるか!クラークさんも何とか言えよ!なぁ!!」
「黙れ!」
今まで聞いた事がないクラークの本気の狼狽。
否応がなくクロムウェルは黙ってしまう
「・・少し・・気持ちの整理をさせてくれ・・」
そういうとクラークはゆらりと席を立つ、半日で最愛の恋人だけではなく
長年憎まれ口を叩いていた女性も死んだのだ。
いくら彼でも冷静さを保てられない・・
「整理する時間は結構だけど、あまり時間はないわ。
今、傭兵公社はグラディウスへ宣戦布告をしたの、
それと・・13部隊を反逆罪という名目ですでに数部隊派遣しているみたい。
・・直に戦闘になるわ・・」
「・・・・・ああ・・」
聞こえないくらいの小さな声でクラークは応え静かに出ていった
「・・ジャンヌ、君達はどうする?もはやこれ以上ここにいたら・・」
「ここまで来て帰れるものですか、どうせ私達の抹殺も命令されているでしょう?
もう少し付き合うわ・・。外でいるから体勢が整ったら知らせて」
そういうとジャンヌ一味は音もなく隊長室から退陣する・・
「・・私達はナタリーを冷凍処理しておく・・
ファラと並べておけば寂しくもないだろう・・シグマ・・運んでくれないか?」
「・・、わかった・・」
「あの・・フロスさん・・ファラさんは・・」
「総師に殺られた。お前達がくる1時間ほどに前に瀕死の状態でここまできたんだ・・」
「「!!!」」
「・・お前達も少しは気持ちの整理をつけるといい・・。どうでるかはあいつ次第だが・・」
そう言いナタリーを担ぐシグマの後に続くフロス
一番冷静な彼でさえ瞳には怒りの炎が満ち溢れていた


そして隊長室にはクロムウェルとアルのみとなり・・
「クロムウェルさん・・」
「何で・・お前は姉御と一緒に戦わなかった・・?」
うなだれるクロムウェルが静かに口を開く
「・・・・・」
「なんで!俺の代わりに姉御を助けてやらなかったんだ!!」
やり場のない怒りが込み上げアルに拳を突きたてる・・

バキ!

手加減のない一撃だがアルは避けようともせずそれを受ける・・
「例え二人でも力を合わせいたら・・」
「クロムウェルさん・・、・・・しっかりしてください!!」
そんな彼にアルが手を上げる・・。

バキ!

・・いつも大人しく何をされても反撃しないアルがクロムウェルを殴った・・
「アル・・」
「ナタリーさんは・・それでも勝てないとわかっていたからそうしたんじゃないのですか!?」
「・・・」
「しっかりしてください!貴方はナタリーさんの一番の理解者でしょ!」
「・・・・・、そうだな・・。すまない・・アル・・気が動転して殴っちまって・・」
「・・いいんです。僕も手をあげましたから・・」
「・・へっ・・。俺は・・クラークさんがどんな行動を取ろうとも・・姉御を殺った総師達を倒す。」
「・・お共しますよ。今度は何があっても・・退きません・・」
怒りと悲しみに震える男二人、固く決意を誓い隊長の指示を待った・・





「・・・ナタリー・・ファラ・・、俺は・・隊長失格だな・・。だけど・・この落とし前は必ずつける・・。
だから力を貸してくれ・・」
一人自室で唸るクラーク・・。しかし、区切りをつけるかのように顔を強く叩き
部屋を出る・・
「13部隊員!全員作戦室へ集合だ!!」


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