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十六章  「不死身の13部隊」


ビルバオ国とシュッツバルケル国の現在の境目にある巨大な谷・・。
かなり昔からあるもので噂ではファーラム神とラムウ神の争い
『二神戦争』によりできたものとされている・・

谷のそこには小さな川になっているが
それ以上に日の光を余りうけなくても育てる樹林が広がっている・・。
その中、自然にできた洞穴に腰を下ろす三人の人影・・
「・・・・・まったく、よく生きていられたもんだ・・」
シャツ一丁の姿のクラーク、洞穴から上を見て感嘆する
「この木々がなければ間違いなく即死でしたね・・・」
生きた心地のしない・・っと言った顔のアル。彼も着ていたものを脱いで乾かしている
「・・・・・・・・」
一人静かに瞑想するシグマ、彼はどんな時にも慌てない騒がない・・
「やれやれ・・。ともあれでっぱりがたくさんあるからそこをつたって
上に昇りある程度の所で上にロープを投げるか・・な?」
「投げるって・・上にみんながいるとは限らないんじゃ・・。」
「魔導による通信でファラ達と連絡をとる・・。
っと言ってもここらへんは魔素が安定しないようだからうまくつながらないんだがな・・。
上にいけば通信できるだろう」
「何でもできるんですね・・」
「俺もそっち系は初心者さ・・。ともあれ、少し休むか・・。
上の状態は気になるが落下の衝撃も甘く見れない・・」
「・・・・・、それが懸命ですね」
「でもみんな・・、心配しているでしょうね」
一番不安そうなアル・・、対しクラークとシグマは落ち着き払っている
「まぁ、フロスもいるしナタリーだっている・・しっかりまとめて最善策を考えているさ。
大体ここに傭兵公社の剣聖帝が二人いるんだぜ?よもや死んだとは考えないだろう」
「・・・・いやっ、剣聖帝でもこの高さから落ちたら・・」
「受け身をとれば大丈夫?」
「・・・うむ・・」
(化け物・・?)
驚き通り越して呆れるアル・・
ともあれ、すでに日が傾いたので焚き木をし川で濡れた服を乾かしながら一晩明かすことにした

「・・しかしアル、今回は流石にやばかったな」
「・・・ええ。隊長が助けてくれなかったらたぶん・・」
「だから前にも言っただろう?接近戦も想定しておけって」
「・・・・・すみません」
「まっ、これも教訓か。・・・そうだな。お前にこいつをやるよ」
そう言うとクラークが取り出したのはあの斬鉄剣『無銘』
「た・・隊長!?」
「こいつを腰にさげてよく考えろ。一人でも戦闘ができるように・・な」
「・・でもいいのですか?これは大切なものだと・・」
「大事な部下の為に渡すならば惜しいものかよ。
拠点にはブレードも持ってきているし格闘だけでも十分連中と渡り合える自信はあるぜ?」
「・・・・・、戦いの基本は格闘。武器に頼らざるは戦士として当然だ・・アル」
「シグマさん・・わかりました。ありがたく頂戴します。えっと・・この刀の名前ってあるんですか?」
「ああっ、あるようなないような・・とりあえずは名もない剣だったから『無銘』だ」
「むめい・・」
「なんだったらお前がつけてやればいい。自分がつけたモノならそんだけ愛情もわくだろう?」
「そ・・、そうですね!じゃあ・・『ジャッキンカッター』ってどうです!?」
手をグーにして力ごむアル!!
「「・・・・・・・・」」
対し気まずい空気を漂わす二人・・
「ど・・どうです?」
「・・・・無銘のままで・・いいんじゃない?」
「・・・・・・(コク)」
「そ・・そうですか。では『無銘』、使いこなしてみせます!」
「おう、扱いは難しいがお前の弓の扱いからして十分いけるはずだ」
「・・・・しかし、貴方もつくづく酔狂ですね・・」
あぐらをかきながら静かに笑うシグマ
「性分だ。俺一人でできることなんて限界はあるからな・・。さぁ、今日は休もう・・
早く合流しないとあいつらうるさいからな」
焚き木をそのままに三人は寝床につく・・
こうしている間にも上ではとんでもない事態になっていることを三人は知らない・・


一夜開けて・・
朝の光りのそこそこに三人は出発を図ろうとする
「上ではどうなっているのやら・・だな」
一夜開けても焦りもしないクラーク。洞穴から出発し川の通りを進む。
頭上は木々に遮られており良く見えないのだ
「あの大橋は落とされたんだし侵攻はできないんじゃ・・」
「そうだな、片岸から橋を造っているなんて難しいだろうし。後考えられるのは・・」
「・・・・・、竜騎士・・ですね」
「だな、大空を飛びまわり奇襲する竜騎士に対抗するには弓が一番手っ取り早いが・・。
ビルバオの連中には荷が重いし俺達の弓使いはここにいるってんだから」
からかい口調でそういうクラーク
対しアルは申し訳なさそうに頭を掻く・・
「すみません・・、でもあの竜騎士が軍隊できたらどうしようもないんじゃ・・」
「竜なんてそうそうお目にかかれない種だぜ?例えその中でも数が多いとされる
飛竜(ワイバーン)でもな。連中の戦力はすごいもんがあるが軍隊となってくるほどじゃないだろう」
「・・・・、いざとなればファラさんもいる・・心配は無用だ」
落ちつきながら進むシグマ、この状況ではほんと、頼りになる


とにかく、階段の如くになっている谷の斜面を器用に飛び昇る・・。
頂上はまだまだだがいくらかは日の光も差して来た
頭上彼方にあのファラが焼け落ちた橋がダランとぶら下がっているいるところを見ると
さして流されたわけでもないようだ・・。
「流石にこれだけボコボコ壁が出ていると簡単に登れたか・・」
多少息が弾んでるクラーク、崖から下を覗くともうかなりの高さで木々が小さく見えている
「ですがここからさきはもう足場はなさそうですよ?」
アルが言うようにここから上はもう大人が立っていられるような足場はない・・
あるといえば力を込めれば粉々に崩れそうな石の出っ張りが少々
「・・・・・。谷周辺は砂漠地帯・・。下の地層はまだしも上になればなるほどもろくなるはず・・」
「・・だな。これ以上は危険か・・。そろそろファラと連絡が取れるかどうか・・。
・・・・・あー、あー!本日は晴天なり・・、ファラ、聞こえるか?」

”・・・・・・ク!?・・・クラ・・・なの!!”

ノイズのような音が響くが確かにファラの声が脳へと届く
「ちょいと魔力を高めたらなんとか会話できそうだな・・、これでどうだ?ファラ!?」

”クラーク!生きていたの!?”

「勝手に殺すな。アルやシグマも無事だぜ?・・そっちは?」

”こっちも全員無事よ、でも・・ビルバオが陥落したわ・・”

「何だって!?」

”とにかく、送信ポイントを特定して救出にいくわ。話はそれから・・。今どこ?”

「崖を上ったところだ・・。これ以上はちょいと厳しい所だが
上からロープをたらしたら何とか昇れるだろう・・。ここまでこれる状態か?」

”大丈夫、フロス達にも言ってすぐ向かうわ・・また後で連絡する!”

ファラの声が途絶える、通信を終了して行動に移ったようだ
「・・隊長、どうなんですか?」
「ビルバオが陥落したんだってよ・・。
どうやら俺達が谷底で伸びている間に事は急展開しているみたいだ」
「・・・・・、ですがこの谷をどう渡ったのでしょうか・・」
「そっ、そうですよ!この幅なんて馬で助走つけても不可能ですよ!?」
「竜騎士が俺達が思った以上に多かったか・・。
もしくは少数の竜騎士の奇襲部隊でファラ達を振り切ってビルバオに到着して暴れたか・・」
「でもそうなったら僕達どうなるんです?任務失敗って事ですよね!?」
「それは、あいつらと合流してからだ。とりあえず待とう・・」
はやる気持ちを抑えて仲間を待つ三人・・。

約1時間後、ファラからの通信が入り部隊は無事合流できた。





「・・つまり、『人橋』・・って事か・・」
ファラ達と合流して拠点に戻った三人
シュッツバルケル軍は周囲には目もくれずビルバオへ向かったらしく
オアシスに向かう兵は一人もいない
「そう、数人の兵士が肩車をして文字通り人の橋となって騎馬兵を通す・・・。
それを回収もせずに兵達は突撃し、橋となった者は力尽きて谷底に落下・・だ」
「・・・・・・・、その割には川では死体は見ませんでしたね」
「流されたんだろう?死んでしまえば泳ぐこともないからな」
「・・っうかあんたたちがピンピンしているのが不思議よ・・・。化け物?」
「それは僕も思いました・・」
面々が数日ぶりに作戦室で話をしているが表情は皆暗いものがある・・
「だけど・・、シュッツバルケルも異常じゃないか?
そんな犠牲を払ってまで何で急にビルバオを攻めるんだ?
元々自分達の勝利なんて確定しているもんじゃないか」
「それだ。宗教上の対立とは言え今回のシュッツバルケルの動きは奇妙な点が多すぎる。
まるで何かを恐れるようだ」
腕を組むフロス・・、彼にもこの行動の真意がわからないようだ
「わからないことは置いといて、無事全員そろったけどこれからどうするの?
ビルバオはもう駄目だし。任務失敗は間違いなしよ?」
「まぁこの状況ではこれ以上の戦闘行為は仕方ないだろうな。
依頼主なんか速攻で殺されているだろうし」
「通常の任務ならば我々の負けは決定だ。しかしこの一件は普通じゃない・・どうする・・?」
「ううん・・・。」
クラークが頭を抱えて唸るクラーク。勝ち負けにこだわらない彼だが日ごろの命令違反の重なりもありそうそう尻尾を巻いて逃げれない実状なのだ
今後の事をどうしようかと悩んでいたその時・・


ゴォォォォォォォォォォン・・・!!

人の物と竜の物とも思えない奇妙な雄叫びが辺り一帯に響く!
「な・・・なんだ!?ワイバーンの遠吠えか!?」
「いくら竜が大きいからとはいえこんな馬鹿みたいにでかい遠吠えなわけないでしょう?
ちょっと見てくるわ!」
ナタリーが席を立ち外へと赴く・・。
何が起こるかわからないので刀は手放せないようだ

「・・・・・!!!!!全員ちょっときなさい!!早く!!」

外に出たとともに絶叫するナタリー、おしゃべりな彼女がここまで狼狽するのは珍しい・・。
さらなる異常を感じ一同は外へと走った
「ど・・どうしたんだ!?姉御!?」
「あれを見なさいよ!!」
ナタリーが指を差したのは砂漠を挟んで離れた位置にあるビルバオの街。
シュッツバルケルの侵攻も受け煙が出ているがそんなことなど微々たる事・・
街の中心に白い肉の塊のような巨人が現れ暴れているのだ
遠くからだがその奇腕に飛ばされる馬に乗った人影が見える
「な・・なんなの!?あれ!!」
「俺にわかるもんかよ。吹き飛ばされているのはどうやら騎馬兵・・か」

ゴォォォォォォォォォン!!

再び空を裂く雄叫びを上げる奇怪な巨人
「シュッツバルケルの兵が攻撃されているとなればあれはビルバオのモノだろう・・。
連中はこれを恐れていたのか・・?」
「あんな祈祷することしかできない連中があんなもんこさえていたってわけ?
ちょっと信じられないわよ」
「その祈祷が生んだ事かもしれない」
「「「「「「???」」」」」」
一同唖然と・・。
「あんな巨大なもの、そう簡単に召還もできまい。
宣戦布告以前から信者の血肉を使って製造した合成獣(キメラ)かもしくは
本当にファーラム神が降臨したのか」
無宗教なフロスでも神という存在を意識せざるおえないあの巨体・・
「・・じゃあビルバオの人間は全員あれになったってこと?」
「わからん・・。しかしあの巨人がビルバオのモノであり
シュッツバルケル勢と戦闘していることは間違いないだろう」
「・・・・・っともなればここで俺達が退く訳にもいかないか・・。
ビルバオがまだシュッツバルケルと戦おうとしているんだからな・・・・。」
「どっちにしてもこのまま公社に戻っても死亡扱いされてますしね」
「・・そうだな、どうするんだ?隊長に副隊長?」
決断を迫るクロムウェル、撤退するなら今しかないのだ
「・・・・・、よし!13部隊はこれより聖地ゼダンへ強襲をかける!!」
「・・・・・・・・、やはり・・」
そう答えるとはじめからわかっていたかのようなシグマだ
「そうだな。今シュッツバルケルはあの巨人に目を奪われているだろう。
おまけに我々は恐らく死亡しているものと考えているだろうしな・・。
一気にゼダンへと侵攻もできるだろうが・・
それでも壁は厚いぞ?」
「真正面から突撃するよりかはましだ。一時でもゼダンを制圧する、
それができたなら後はあの巨人に任せてさっさととんずらする
・・野郎ども!覚悟はいいか!!」
「上等!斬りこみがいがあるわ!クロムウェル!死力を尽くしなさい!」
「了解だぜ姉御!俺達の突撃が誰にも止められねぇ事を証明してやらぁ!!」
テンションMAXのナタリーとクロムウェル・・。
「竜騎士相手なら僕に任せてください!何体こようが打ち落としてやりますよ!」
「・・・、だが上ばかり見るな。地上の敵もその刀で払うのだ」
「シグマさん・・了解です!」
「・・・・・・・、ふっ、だが今のお前には早いか。私はお前とファラさんの盾となろう・・」
静かに言い放つ逞しい巨体の戦士シグマ。
彼が盾となってくれることはかなり心強い
「そういえばアル、腰に刀を下げているが・・」
フロスが怪訝な顔をする
彼が持っているのは明らかにクラークの斬鉄剣
「はい、クラークさんから頂きました。接近戦で身を守るために・・」
「ふぅん・・いいの?クラーク?お師さんからの大切な一振りじゃなかったの?」
「その気持ちはよくわかっているさ。だがこれは『守るために譲る』ってことでもらったものだ。
家族を守るためにあえてアルに託す。アル、そん代わり死ぬなよ?」
「クラークさん・・はい!!」
一礼するアル、それほどまでに温かみのあるクラークの言葉なのだ
「では、これで少しはアルの使い方も広がったな・・。今回は作戦はなしだ。
囮はあの巨人がやってくれる・・・各員死力と尽くしてゼダンに攻めろ。私からは以上だ!」
フロスは叫び、マント姿に荷物袋・・。そして鉄棒を持つ
軍師ながらにして戦闘に参加する者は珍しいのだが彼にも迷いはない
「ようし!準備してすぐ攻めるぞ!!」
クラークの号令とともに13部隊の面々は気合い十分に作戦室を出ていく・・
作戦室はクラークとファラだけになり

「・・どうした?」
「本当にいいの?アルに刀渡して?」
ファラにはそれが心配なようだ
「ああっ、またあのブレードに世話になるさ。多少使いにくくても問題ない」
「問題ないってあんだけぼやいてたじゃない?」
「問題ないさ・・。その分はお前が補うんだからな・・」
ニヤリと笑うクラーク・・
「私が・・」
「頼りにしているぜ?『黒い炎の魔女』さん♪」
「・・もう!いつもは後衛に回しているくせに♪」
「ははっ、耳が痛いな・・じゃあ行くか!」
「ええっ!任せて!!」
死地に赴くのに不安など微塵もない・・


所変わって聖地『ゼダン』
ビルバオ側から見えるあの巨大な城壁の中は意外に殺伐としており
軍隊のテントが立ち並んでいるだけで後は崩れかけの神殿と廃墟のみだ
一番神殿に近いテントにシュッツバルケル国の国旗が雄々しく立てられている
・・・その中で・・
「あの化け物を仕留めることはできんのか?」
豪華な椅子に横たわる白髪の老人、身なりからしてかなりの地位の人間と思える
「・・申し訳有りません。小隊レベルでは相手にならずに・・」
老人の前に頭を下げて座る兵士達・・
「・・むぅ、傭兵公社の部隊は始末できたものの・・。あんなものが出てくるとはな・・」
「いかがなされます?提督?」
「・・・・・、このゼダンは我等シュッツバルケルのモノだ。
戦力となっていた公社は尊い犠牲とともに谷底に消えた・・。
あの化け物さえ殺せばこのゼダンは完全に我等のモノとなる・・・。
・・総力戦だ・・。総員あるだけの馳走を振舞え、
屍の山を築こうとも必ずやあの化け物を仕留めるのだ!!」
「「「はっ!!」」」
老人・・提督の言葉に兵士の士気も高まり緊張の面持ちでテントを後にする
・・・・
「・・ぬぅ、このような事態になるとは・・・」
ワナワナと腕を振るわせる提督・・、
忌々しげに胸元にしまっていた一通の書類を見てさらに唸った・・
そこへ・・
「提督!!」
突如テントに入ってくる兵士
「なんだ!?急に!」
「て・・敵襲です!!」
「何だと!!?」
敵襲等あるはずがない、いやっ「あってはならない」・・
提督にもはや冷静さをなかった



「いかなる敵がこようとも突っ切れ!立ち止まっては囲まれてしまうぞ!」
城壁前1キロといった地点・・。
そこまで押し寄せてきた13部隊・・・斬りこんでいるクラーク達に後方よりフロスが叫ぶ
「わかってらぁ!っうか立ち止まれねぇ!!」
敵襲に察知したシュッツバルケル勢をバッタバッタとなぎ倒すクロムウェル。
その見事な手並みは入ってきた時の乱暴な動きではなくすでに一人前の拳闘士だ
「そうそう!足止めたら私が跳ね飛ばすわよ!ここまできたら斬りまくるのみ!!」
クロムウェルが捌ききれないのを補ってあげるように舞う二刀剣士ナタリー
銘刀『雪月花』と妖刀『紫電』による正しく雷光の斬撃によりばっさばっさとなぎ払う!
「まだ城塞前だ!ちょっとは加減しとけよ!」
暴れまくる二人に珍しく注意するクラーク、
あのブレードを持ち体術と強烈な斬撃で道を開く無駄のない動きだ・・
「わかってるわよ!」「わかっている!!」
押し寄せる兵達に余裕がないようで乱暴に答える二人・・
「全く!しかしキリがないな!」
「そういうと思った、ちょっと時間稼いでくれる?」
クラークの背中を守るが如く彼につく女魔術師ファラ・・。
小柄の身体からは想像もつかない強烈な魔法を放ち、兵達を倒している
「お・・?おう・・」
「さぁて・・、出番よ!!・・・・・・・、わかった!」
心内での会話をするファラ、キッと顔を引き締めた「もう一人のファラ」が現れる・・
「お前が戦闘か、派手に頼むぜ!」
そう言うとクラークはファラに敵が押し寄せないように雑魚をなぎ払いはじめる
「ああっ、いくよ・・
  『煌々たりし 天の恵み 牙となりて裁きを与えよ! 極光!!』」

ファラの鋭い詠唱とともに彼女から広がる光の粒子。
それがシュッツバルケルの兵に触れるとともに・・

ジュッ!!

あっと言う間に焼き尽くした・・
光はどんどん広がっていき兵達を文字通り『消滅』させていく
「す・・すげぇ・・」
「光を集めた超高温の光だ・・。魔法の体勢のない人間なんて一発で消し炭よ」
目つきの鋭い気の強いファラ、魔杖を肩でポンポンしながら事もなげに言う
「だ・・だけどよく俺達触れても無事なんだな?」
一気に敵が消滅したのでクロムウェルも唖然としている
「あたしの意思で消滅しているんだ。あなた達は味方だからね・・・でも・・疲れた・・。
後はファラにお願いするね・・」
急にふらつくファラ
「相当消耗する術なんだな・・、ありがとう。少し休んでくれ・・」
「ああ・・、起きた時にはみんな無事でいろよ・・・・・・・・、タッチ完了!」
疲れてうなだれると思ったら急に元気になり立ちあがるファラ。
まぁ隊員は事情を知っているから普通に接しているのだが・・
「おうっ・・、ファラが頑張ったからこの戦力差でも進めたか」
周りの兵士はあらかたファラの『極光』にて散りも残さず消滅し、城塞までの道がはっきり見えた。
強固な壁はしっかりと閉じられている
「あれをどうするか・・だな」
フロスが顎をさすりながら悩む・・。
そんな中・・
「・・・・・・、アル・・・」
「・・・わかってます。みなさん、頭上に注意してください!」
アルが鋭く声をかける。
それと共に城塞から飛び立つ数体の竜・・
「総力戦か!アル!空の敵ならお前に任せるぞ!」
「はい!いけっ!!」
丈夫に作られた弓を引き矢を放つアル!
矢は空を切り裂く流星の如く突き進み竜騎士達へ命中する!
翼を貫かれた飛竜はバランスを失いあらぬ方向へ墜落していく
「・・・、加勢する。うおおおおおおおおおおおお!!!」
それを静かに見ていたシグマ、どうやらアルとフロスのお守りには少し物足りないらしく
咆哮とともに大戦斧を投げ飛ばす!
大戦斧は寸分の狂いなく飛竜へ直撃し、
固い鱗を持つ飛竜が両断されて戦斧はまっすぐシグマへ戻る
「・・・クラークって、あんなの避けたのね・・」
「ほんと、剣聖帝に選ばれる奴って人間じゃねぇな・・」
ぽかんと頭上を見るナタリーとクロムウェル
上空高く飛行する竜へ地上から、
しかも人間が投げた斧が威力を失うことなく切断したのだ、
ものすごい強肩でなければ到底不可能な芸当
ともあれ、対空攻撃が担当のアルと助太刀のシグマの活躍にて世に貴重とされている
大空を駆ける騎士は見る見る地へと落とされた・・
「へっ、これで後はあの分厚い壁をぶっ壊したら大将首まで一直線だな!」
「だけどどうするんです?ノックしても開けてくれませんよ?」
「もちろんたたっ切るのよ!クラーク!いっちょやるわよ!」
「おう!!」
周囲に敵が誰もいなくなった中城塞の前に立つアイゼン流剣士の二人・・
「・・・鋭!!」
「応!!」
気合いとともにバツ字に刃を滑らせる・・。
業物の剣と剣士の気合いにて鋼鉄の壁をも豆腐を切るかの如くにやってのけたのだ
「・・・はい、ご開帳〜!!」

ドカッ!っとバツの中心点を蹴り飛ばす!
「・・・マジ?」
クラークの無謀とも言える行為に飽きれるクロムウェル
・・しかし・・

ゴゴゴゴ・・

鋼鉄の壁はクラークの蹴りにより倒れゼダンへの道を開いた・・
「人間じゃないでしょ?貴方・・」
ファラも開いた口がふさがらない・・・・
「あのな・・良く見ろ!バツ字以外にも切れ込みいれたんだ!
切った後ならアルが蹴っても崩れるわい!」
「喧嘩は後にしろ!一気に突っ込むぞ!」
こんな時にもいつものクラーク達・・。ともあれ、城塞の穴から一気に13部隊は侵攻した


ゼダンに入った彼らだがそこでは大層な出迎えもなくシン・・っと静まりかえっている・・
辺りは廃墟と誰もいないテントのみで
夜の闇を消す松明だけがひっそりと明かりを発している
「・・何だ?誰もいない・・?」
完全にのれんに腕押し状態なクラーク。
「・・・大方、あのビルバオの巨人へ兵力を注いだのだろう・・。大将がいる確認するぞ?」
「ああっ、わかった。じゃあ少し班分けするか。ナタリーとクロムウェル、シグマとアル。
俺とファラとフロスで潜んでいる奴がいないか確認する。」
「「「「「了解!」」」」」
各自警戒しながらも辺りを探る・・。
彼らの遥か後方・・ビルバオからはあの巨人の雄叫びと兵士の叫びが聞こえている
「・・・・、こう静かだと不気味だな。あの巨人の叫びも大分大きくなってきたし・・。」
「早くしないとここに来るんじゃないの?あんなの相手にできないわよ?」
「最もだ。誰もいなければ全門開放してあの宮殿らしきものに公社の旗でも掲げてやれば
私達の勝ちになるだろう・・」
フロスが目をやるはこの集落で唯一キチンとした建造物である宮殿・・。
その近くに旗つきのテントを見つけた
「シュッツバルケルの国旗・・?クラーク、あそこを調べるぞ?」
「あ・・ああっ。わかった・・」
他に変わった物もなく、人の気配もないので三人は国旗のついたテントに入って行った。
・・・・
テント前・・、中から人の気配がするのがわかる・・
「・・一気に行くか・・。神妙にしろ!」
逃げられるわけにもいかないので一気にテントへ入る・・
「!!・・なっ、なんだと!」
テント内にいた白髪の老騎士、突然入ってきたクラークに驚く・・。
自勢にはない薄碧のコート姿の男がきたのだ、敵襲だとはすぐわかる
「傭兵公社13部隊隊長、クラークだ。見るからに御大だな?」
「ぬ・・いかにも・・」
「ビルバオ側の要請によりこのゼダンを制圧する・・、いいかな?」
「ふん・・・、そういうわけにはいかぬだろう?」
「まっ、それもそうだがな。だがこれ以上の殺生は俺達もやりたくないんでな」
「・・・・・」
聞く耳持たないようで剣を抜く老騎士
「やれやれ・・、大方俺達が死亡したと思って全兵士をあの化け物討伐に出したのだろうが・・
迂闊だったな」
和解は無理と察知したクラーク、口惜しながらブレードを構える
「迂闊なのは貴様らだ。確かに貴様達傭兵公社の人間が生きているとは思っていなかった。
だがただ我等も全兵力を投入したわけではない・・。後一刻しないうちに本国から援軍が来る・・
貴様達もそれで終わりだ!」
「!!、それであの巨人に対抗するつもりか!」
「・・貴方達!どれだけ血を流せば気が済むの!?
こんな寂れた廃墟のために!」
クラークの隣にいたファラ、この後に及んでまだ戦争を続けようとしている男に
強く憤りを感じているようだ
「・・貴様らにはわかるまい、神にすがりつかなければ何もできん民もいるということもな・・」
「だがそのために血が流れることは許されることではない。神の名を騙る外道にすぎん」
「好きなだけいうがいい!傭兵という非情な職につく貴様らにはわかることもあるまい!
それにあの化け物も貴様らの仕業ではないのか!戦争を起こすクズが!!
おおおおお!!」
必死の形相で剣を立て、クラークへ突っ込む・・
しかしいくら一軍隊の長とはいえ老いた戦士・・・
クラークはその攻撃をいとも簡単に回避し物言わず老騎士の首を跳ねた。
「・・・・これが、戦争か・・」
物言わぬ老人の死体を見つめながらクラークが呟いてしまう
「感傷に浸っている暇はない。この男の言う事が事実とするならばもう直大軍が押し寄せる。
さらにはあの巨人もこちらに向かってきている、あの宮殿に公社の旗を差してさっさと撤退するぞ」
「旗なんて差している余裕あるの?うかうかしていると危ないじゃない!?」
「だがこのまま引き下がったら私達がゼダンへの道を開いた事を証明する事ができなくなる。
ここで国旗を立てておけば少なくともシュッツバルケル勢は
傭兵公社の兵がゼダンを占拠したことに気付く。後は自滅しあえばいい」
「わかった!全員集めて速攻でズラかるぞ!!」
返り血を浴びながらも急いで指示を出すクラーク
敵国の御大を倒しても彼らの行動は休まる事はなかった。

・・それから13部隊はゼダンの宮殿に巨大なテントの生地で乱雑に書いた灰色の獅子・・
つまり公社の旗を作り宮殿に掲げ、一目散へ安全地帯へと脱していった
1時間後・・・、ゼダンへと到着する大規模な騎馬兵隊
そしてビルバオから押し寄せた謎の白い肉巨人・・・
夜が明けた頃にはゼダンは全て消滅しており
あの灰色の獅子の旗だけが空しく地面に突き刺さり揺れていた。





それより一週間ほど後・・
「総師、13部隊が帰還したようです」
公社本部の総師の部屋、いつも無口な秘書が静かに報告した。
それに対し総師は目に通していた書類を机に置きにやける
「そうか・・、でっ、イレギュラー達の監視をさせていただろうが任務はどうだったか?」
「ほんの一時でしたがゼダンの占拠を果たし撤退しました。
後はビルバオ側の巨人とシュッツバルケル勢の衝突中に不意に爆発が起こり
全てが消滅したようです」
淡々と報告書を読み上げる秘書・・・。生気が全然感じられない
「なるほど、不可能な任務をこなしたか・・・。それでこそワシが選んだだけの事がある」
「・・、ですが今回ビルバオのあの巨人でイレギュラー数人が犠牲になりました・・あれは・・」
「人造神・・だ。信仰に溺れた者達が自らの肉体を使い神となった・・っといったところだ。
その証拠にあの巨人が街を離れた後、ビルバオに人間は一人もいなかっただろう?
・・彼らに渡したあの古文書通りに・・。爆発はその肉体が耐えられなかったということだ」
「わかりました。シュッツバルケル軍も総師の脅迫通りに全軍の70%をゼダンに配備し、
全滅したようです」
「ふっ、70%・・か。まぁ13部隊はそれでもゼダンに侵攻したようだがな・・。彼らは?」
「兵舎に戻り休憩しております。詳しい報告は後ほど隊長と補佐が来ると・・」
「・・まぁいいだろう。では・・、そろそろ動くか・・」
「準備はできております。いつでもご判断を」
長い沈黙が訪れる、その中で総師の顔は人間とは思えないほど狂気に満ちた笑みを浮かべていた


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