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十五章  「神に憑り付かれし愚者」


宗教国ビルバオと神聖国シュッツバルケルの因縁は生半なものではない
その歴史は深く、それぞれの国の宗教色の強さが関係している
ビルバオ国での宗教での唯一神としている神ファーラムと
シュッツバルケル国での国教とされている神ラムウ。
そのニ神が衝突して始まったニ神戦争といわれる戦いで
勝ち残ったとされる地が双方が聖地とされている『ゼダン』である
何故双方が聖地として崇めていかというと
ビルバオ側はニ神戦争で自神のファーラムが勝利したと確信し
シュッツバルケル側も同様にラムウが勝利して世を定めたと信じられている
・・お互い正反対な主張をしており、
またニ神戦争の真実はどういう事か全くわかっていないのでどちらが正しいというのが全くわからない
そういう背景もあり、ゼダンでは近年まで両宗教信者による衝突が絶えなく
その結果とし巨大な軍事力を持つシュッツバルケル側が無理やり聖地を占拠をしたのだ

・・今回のビルバオの勝ち目のない宣戦布告はそうした背景の元、行われた・・
因縁こそあろうが無茶と言わざるを得ないのだ・・

・・・・・・・
・・・・・
・・・
ビルバオ国の代表が治めている街・・
この国は王が治めていなく、唯一神ファーラムの啓示により選ばれたものが治めている
それに反対する者はいなく正しく国民全員が信者なのだ
ともあれ、街に到着し、代表者へと面会するのだが
「傭兵公社の人間が協力してくれるとは意外だ・・」
石で出来た質素な宮殿、その広間らしく場に鎮座する男
代表者らしく、妙な法衣に頭にはターバンのようなものが・・
その後の壁にも神様のような絵画が描かれている
「まぁ、上の決定だ。詳しい事情は俺にもわからん」
代表者に話すクラーク、隣にはファラがいる
他の面々は宮殿前で待機している
いかに助っ人と言えども面会が許されたのは代表者のみ・・っということだ
「ほう・・では君達もファーラム神を信仰するものか?」
「・・??、生憎俺の部隊は全員無宗教だ。」
「・・、話が違うな。我々が公社に願い出たのは我等と同じ神を信仰する聖戦士のみだ・・」
(・・そんな都合の良い事があるかよ・・)
内心かなり呆れているクラーク、隣のファラも黙っていたが目つきからしてもう呆れきっている
「話が違うかどうかは俺達は知らない。ただ行けといわれただけだからな・・。
どうする?話はなしにするか?」
「・・・まぁ、いいだろう。君達には『ゼダン』奪還のシンガリをお願いしたい」
不満があるようだがあえてなにも言わず率直に言い放つ代表者
「それはわかった・・だが、この戦力で奪還できるのか?
シュッツバルケル勢はわからんわけでもないだろう?」
「心配するな、我等国民全員が祈りをささげ勇敢に戦う!
さすれば偉大なる神ファーラムは必ずや下衆な異教どもを焼き払ってくれるであろう!!」
流石は宗教指導者、切り札は神頼み・・っということで
クラークとファラも完全に呆れている
「・・・・・・・・、ならば俺達は俺達の手段でやらせてもらう。
どうせ無宗教者がきた以上期待もしていていないだろう?」
「・・・・、いいだろう。公社に我等が理想を解する者がいない以上は仕方あるまい。
ただ契約がある以上はゼダン奪回はしてもらうぞ?」
「はいはい、じゃあ後は勝手にやるよ・・、連絡等は第三者でも使ってくれ。
こちらから経費を請求する気もないから」
手をヒラヒラしながらその場を後にするクラーク、ファラも黙ったまま後に続く・・
代表者は小ばかにしたように鼻で笑い壁に描かれた神に祈祷をはじめた


・・・・
宮殿外の庭地
街全体が荒野に建てられたようで道も荒れているがここだけは緑が生い茂っている。
その中13部隊の面々がクラーク達が出てくるのを静かに待っている
「・・・なんか埃っぽいところだな・・」
宮殿の壁にもたれるクロムウェルが言う
「この地は乾燥しているために砂が舞いやすい・・。
公社があるグラディウスも荒野だがここは一層激しい。
北のシュッツバルケルとの小競り合いが昔から続けられているから
植物が生える余裕すらないのだよ」
マント姿のフロスが説明、この地での戦いが決まってから情報を素早く仕入れた結果だ
「そこまで戦いまみれなの?・・全く、無宗教者にはわからんものね・・」
「全くですね・・。でもそれだと今までにも公社に依頼とかこなかったのですか?」
「ああっ、何度かあるらしいがいずれも拒否。この2国の争いは周辺諸国でも有名だ。
とばっちりはご免というのところだろう」
「じゃあなんで今回依頼受けたんだよ?しかも全面戦争だぜ?」
「さぁな、正直、総師の考えは理解できない・・。わかるだろう?」
「そうよね〜、まぁ私にしてみれば自分が住む場所があるのに
他国へ攻める連中だってよくわかんないわ・・」


「まったくだ・・」
ため息とともにクラークが入り口から出てくる


「クラーク、終わったの?」
「ああっ、まぁな。助力は全くなし。後は俺達でなんとかしようってことで・・」
「!!マジで!?」
「本当よ。ここの代表者。自分達と同じ信者の派遣を公社にお願いしていたの。
『崇高な我等の神ファーラムが導いた者は傭兵公社にもいるはず・・』
ってな気持ちで依頼したんですって」
「・・馬鹿?」
ナタリー、二言で感想を述べる
「口を慎め、ナタリー。住民に聞かれたら襲われるぞ?」
「まぁ俺もナタリーと同じ気持ちだけどな。
ともあれ、この国の住民全員を聖地ゼダン奪回へ向けて戦闘させるらしい。
何でも自分達の必死な行いに必ずしやファーラム様が手を貸して
にっくきシュッツバルケルを殺してくれる〜・・だそうな」
「・・・馬鹿?」
クロムウェル、二言で気持ちを述べる
「クロムウェルも止めろ・・」
「でっ、ですがそれでは余りにも無謀ですよ!?」
「そう、この国の連中は最初っから死ぬ気だ」
「・・・・・・、だが我等には依頼をこなせ・・っと」
それまで静かに目を閉じていたシグマが呟く
「ああっ、物資の支援も当てにはならないから断った。こいつらの目は普通じゃない」
「・・・、じゃあ拠点も私達で作れっての?」
「そういうことだ、とりあえずは郊外にでようぜ?ここだと話も碌にできねぇや」
「・・・そうだな。では街から離れたところに移動しよう。兆度来る時にオアシスがあった・・。
そこをうまく利用すればいい・・」

フロスの提案で一同郊外のオアシスへ・・
途中の街の大通りには「我等が死を持ってシュッツバルケルに裁きを」だの
「ファーラム神降臨に血を捧げよ」などの張り紙がされており住民の表情もどこか常軌を逸していた・・



そんな異常な街から出た一行
街より少し離れたところに木々が生い茂るオアシスがある・・。
周りに余り草木がない分貴重な場所のはずだが不思議と人はいない
「・・街には井戸があったから水の心配はないでしょうけど・・、
こんなところに誰もいないってのはどういう事?」
異常とも言える静けさの中、ナタリーが驚く・・
「普通ならば行商人もいるだろうが、物騒になってきたんだろう・・。
ともあれ、ここで野宿をする気か?クラーク。」
「まさか。ちょいと木々を切りとって小屋を造る・・。
どうせ戦争になればここも焼き払われるだろうしな・・」
そういうとクラークは荷物の袋からケースを取り出す
中を開いて見せると良く切れそうな鋸や鉋、
さらには金槌から釘まで一通りの大具道具が揃っている・・・・
「・・・あんた、本職なんだよ・・?」
見事なセットにクロムウェルが思わず突っ込む
「こいつは日曜大工が趣味なの。家具から大きい小屋までお手の物ってね。
じゃあさっそく拠点造りましょうよ。」
「ああっ、じゃあ木々を切り倒して運ぶのはシグマとクロムウェル。アルは周囲に敵がないか確認。
俺は材木を整えて建てる作業をする。フロスは周囲の地形を調べてくれ。
女性陣はフロスの護衛・・よろしい?」
「了解、日が暮れるまでに何とかしてよね?」
「まぁ、なんとかなるよ。シグマ、力仕事は頼むぜ?」
「・・・・了解」
「クロムウェルもがんばって〜♪」
「うるせ〜、さっさとやろうぜ?シグマさん」
ぶつぶつ言いながら作業開始・・。
ともあれ、面々は外での野営の心得をよく理解しているために無駄がない動きであり、
通常なら数人がかりでの木材の運搬も巨漢のシグマが涼しい顔でこなしているので
見る見るうちに作業がすすみ
夕暮れまでには宣言とおり立派な小屋が建っていた・・・


その日の夜・・
小屋の中の大きなテーブルに座る面々

小屋自体は簡単な代物で作戦用の部屋と就寝用の広間のみ・・。
食事の支度や用を足すのは外で・・。ちょうど外にでたらすぐオアシスの湖がある・・

「さて、今日は一日おつかれさん。
まぁこんな小屋も簡単に出来あがったわけで今日からここを拠点とする」
あのコート姿のクラークがテーブルに肘をつきながら言う
「仮設にしては立派よね〜。ほんと本職にしたら?」
「まぁ、剣の道につまずいたらな・・。それよりも今後の事だ。
昼間から情報収集に当たったフロス君、どんなもん?」
マント姿のフロスに聞く、周囲が砂漠並の地形のために夜はかなり冷えるようだ
「ああっ、まずビルバオ側はすぐにでも戦闘を仕掛ける気だ・・・
っといっても戦闘経験があるものは本当おらず一部の過激派ぐらいしか
武器も手にした事がないらしい」
「・・・・・、それで戦争仕掛けるのか・・・狂っているな」
「ああっ、そうだ。すでにビルバオ側は覚悟を決めているらしい。
対しシュッツバルケル側も宣戦布告に伴いゼダンの外壁に警備員を強化しているらしい。
両国の国境に位置する谷を越えれば大部隊がこちらに睨みを効かせていた」
そういいながら地図を取り出す・・。地形的には荒野の先、大地を分ける様に不自然に割れた
谷の向こうがシュッツバルケル領でそこからは遮蔽物がほとんどない状態でゼダンまで続いている。
「見事に不利な状態ですね。この谷に橋はかかっているのですか?」
付近の警備に当たっていたので地形がよくわからないアル・・
「ああっ、聖職者達が造った木製のものがな。ただ移動中に橋を落とされたら一たまりもないがな」
「そうよね〜、おまけに橋の向こうは身を隠すところは全くなし。
ゼダン外壁からは絶好の狙撃ポイントってわけね」
「やれやれ、難題だらけだな。それでシュッツバルケル側の戦力はどんなもんかわかるのか?」
「いやっ、観察魔法で橋の手前から探ったがわからなかった・・。
ただ奴らにとっても聖地と崇められている土地だ。生半なものではないことは確かだな」
「これじゃあ、13部隊は壊滅したって噂も立つわな・・」
頭を掻くクロムウェル・・。確かに状況はいいとは言えないのだ
「まぁ、そうだな・・。ともあれ、この状態でつっこむのは危険だ。
何て言ったってたった7人なんだからな。
ビルバオから進軍の通達があるまでは偵察しつつ活路を見出すってところか?」
「・・活路があればな。見つからなければ矢の雨が降りしきる荒野を突っ走る事になる。
その覚悟はしておいてくれ」
ため息まじりのフロス、作戦の立てようもない・・っといった顔だ
「了解、じゃあ今日はもう休もうぜ。シュッツバルケル側もわざわざ攻めていくることもないだろうしな」
笑いながらクラークが言いその場は解散。
後は各々の得物の手入れのはじめたりしている

一人作戦室に残ったクラークだが目つきは真剣で宙を見ている・・
「・・・・・どう出るか・・」
っとしずかに呟き、手元の刀を抜き、刀身をじっと見つめ続けた・・




宣戦布告をしたもののビルバオ側からの動きはすぐにはない・・
対しシュッツバルケル側も神に祈祷することにしか能がなくやるといえば自滅な特攻ばかりという
ビルバオ側の行動を読んでおり、余計なことは仕掛けないと決めて防衛に力を入れているようだ
13部隊がオアシスに拠点を構えて一週間・・
その日も変化なし・・
「ねぇ、本当に宣戦布告したの?ビルバオの連中明後日の方向見て祈祷ばっかりしているわよ?」
オアシスの前で日光浴しているクラークにファラが覗きこむように視界にはいる
余りに変化がないのでクラーク達も少し気が抜けてきたようだ
「案外それがあいつらの戦争かもな。神様へのお祈りが自分らの指名。
それにて神様降臨にがんばって〜っと」
「・・・あり得るわね・・。でもこんなに馬鹿らしいんだったらその現状を総師に伝えて撤退したら?」
「それが通れば苦労しないっての・・。それに総師の事だ。
この事態を承知で俺達に押し付けてきたんじゃないか?」
寝転びながらも真剣な目つきになるクラーク・・
「・・・、あり得るわね。」
「まぁ撤退は死を意味するってことと考えておいたほうがいいな・・それと・・」
「それと・・?」
「見えてるぜ?戦場でその下着は頂けないな・・」
クラークがにやけばがら忠告・・・、彼の視界には兆度ファラを下から見上げる形になっていたのだ・・
「・・・・・・、ていっ」
対しファラ、驚きもせずに膝を折りクラークへと・・・
「ぐえっ!喉を狙うな!喉を!!」
「おほほほほ♪」
戦場ながらにしてほのぼのな二人・・、しかしそれを最初から見ていた者が・・
「・・・・・・・。」
クラークより少し離れたところで座禅していたシグマがなにやら気まずそうにしているのだ
「シッ、シグマ!いたのか!?」
「えっ!?うわっ!ちょっと何覗いているのよ!!」
思わず慌てる二人・・。
第3者が見れば寝転んでいるクラークの顔にファラが股間を埋めている様に見えるのからだ・・
急いで立ち上がるファラ、クラークも思わず起き上がっている・・
「・・・・、最初からここにいました・・」
「あ・・そう・・」
「で・・でも、シグマもそんな黙祷をばっかりしていたら退屈でしょ?
強いんだから女の子の一人や〜二人〜」
シドロモドロなファラさん、変なことを聞いてしまう。
自分でも変なことを聞いているな〜って思ってしまっちゃってたり
「・・・、妻ならいます・・」
「「ええっ!!」」
「・・・・・・・?」
「お前みたいな無表情無口な奴にか!」
「・・・・・・・」
そう言われても・・っと言った顔のシグマ・・
「・・・信じられない・・・。どんな人なの?」
「・・・・・、小柄で気立ての良い女です。
私が傭兵で働くことにも何も言わず今もハイデルベルクの片隅で帰りを待っています・・」
「ほぇ・・、俺の部隊で唯一の既婚者だったんだな・・・」
「・・・・・・・、それほど騒ぐ事でも・・」
「貴方だからこそ騒いじゃうわよ・・」
しばし唖然となるクラークとファラ、そこへクロムウェルが駆けて来る!
「おい!クラークさん!シュツバルケルが動き始めた!」
「なんだって!」
三人の表情は一気に変わり急いで作戦室へ駆けた・・




「どういう状況なんだ!」
作戦室にはすでに他の面々も集まっていており地図を見つめて何やら話している
「ああっ、ゼダンの外に一部隊出てきた。まだ攻めにくるつもりはないらしくて待機している」
フロスが静かに報告・・
「あいつら待ち構えるつもりじゃないの?何だって・・」
「痺れを切らした・・っというのか。
もしくはシュッツバルケル国教の宗教儀式が行われるために
邪魔なビルバオを一気に殲滅しようとしたのか・・」
「ちっ、ビルバオの方よりもこっちが動くなんてな・・。ってことはフロス、ビルバオに連絡は・・」
「私がつけてきたわよ。でも代表者こみで祈祷を捧げている大事な時だから面会遮断。
一応は事態は言ってあげたけど・・、無意味ね。何かあったのか目がさらに異常だったわよ?」
ナタリーが機嫌わるそ〜に・・肘を机につけて言う
「チッ、迎撃する気はないか・・。ここでビルバオを攻められたら一たまりもない・・。
橋付近まで出張って様子を見て迎撃するぞ!!」
「「「「「了解!」」」」」
「今回のシュッツバルケルの動きは妙だ。各員気をつけろ」
フロスが一喝。彼にも今回の動きはよくわからないらしい・・・




ビルバオとシュッツバルケルとの現国境定められている
(・・っと言ってもビルバオ側は認めていないのだが・・)のがフロスも偵察で気になった絶壁の谷・・。
そこに架けられた大橋の先に13部隊は展開した
「いいか、ここを抜けられるとビルバオまでは一直線だ。なんとか退けるぞ!」
薄碧のコート姿のクラーク、斬鉄剣『無銘』を振りかざし士気を高める
「なんとかってどういう風に!確かに道はここしかなさそうだけどそれだけ押し寄せるってことよ!」
革鎧の傭兵姿のナタリー、二刀を振りかざし長い黒髪のダブルポニテが風に揺れている
「なんとかだ。奇襲を考えていたがこうとなっては仕方ない」
公社制服にマント姿のフロス・・、手には鉄の棍を持っている
彼も軍師とは言え公社の人間。武術の心得は並の兵士よりかは上だ
・・それでも周りにいる化け物達と比べたら段違いなのでかなり後退した位置にいる
「後はなるように・・ってことだな。前衛は俺と姉御とシグマさんか・・。シグマの旦那!がんばって!」
自身は公社制服に手甲を装備した軽量スタイルのクロムウェル。
体術のキレを良くするために防具は最小限で留めており耐刃能力のあるシャツを着ている程度だ
「・・・・・、任せてもらおう」
巨漢の戦士シグマ。前剣聖帝の風格十分に大戦斧を地面に刺し腕を組んでいる
彼の巨体には公社支給の革鎧はサイズが合わず
鋼鉄の胸当てと急所を守る防具を少々・・っといった軽装
それでも彼には「鋼鉄の肉体」がある。矢だろうが刃だろうがはね返さんと言わんがばかりの・・
「では僕達は後方援護ですね。」
木の弓を持ち、動きやすさ重視の制服姿なアル、
背中には矢を収めた筒を背負っており撃ちまくれる状態だ
「そうね、でもアルは少し前にでなさい。砂漠地形なんだから風で矢が流されるわ」
アルの隣で魔杖を地面につける魔術師ファラ・・。黒に銀縁の法衣を纏っており
今日もいつもの丸い伊達眼鏡に蒼髪ポニーテールだ
「よし・・。じゃあ前衛はシグマ、ナタリー、クロムウェル、そして俺だ。
アルとファラは援護、フロスは状況を見極めてくれ」
「りょ〜かい!きたわよ!!」
ナタリーが怒鳴る・・。眼前には一個隊の騎士団が押し寄せているのだ
どれも重厚装備・・、騎馬兵は馬まで甲冑を着せている。
そして部隊後方には乗馬しながら弓をかまえる騎士達・・ホースメンと呼ばれる遊牧騎兵さえいる
「遊牧騎兵まで・・、こいつはちょいと異常だな・・!」
元より宗教信者のみのビルバオ相手に間接的攻撃が売りのホースメンなど必要はない
・・っということは・・
「俺達用ってことか・・迎撃!いくぜ!!」
いっせいに飛んでくる矢の雨・・。
対しシグマを先行に13部隊は真っ向からそれに立ち向かっていった!!

・・・・・・
・・・・
・・


シュッツバルケルの一個騎士団VS13部隊・・
弓矢の雨はシグマの強靭な肉体と、ナタリーの二刀の捌きその間に押し寄せる
騎士達はクロムウェルとクラークがなぎ払い彼らの隙をアルの矢とファラの黒炎が埋めている
大人数ながらも押し寄せるシュッツバルケル騎士団はほぼ壊滅・・。
戦術的にも押し寄せる騎士をなぎ払えば後方の遊牧騎兵はもはや手が出せずに仕留められていく
「・・よし!これで終りか!?」
シンガリとなり最後の騎士を切り倒すクラーク、動作としては簡単な物だが
相手もかなりの手だれであり、今の戦闘で前衛の4人は少なからず負傷している
「まったく!馬に乗ってやってくるなんて卑怯じゃない!!フロス!馬ちょうだい!!」
「あるなら支給している!腕に自信があるなら連中の暴れている馬を使え!」
「血を見て暴れている馬に乗れるわけないでしょう!!全くきっついわね!!」
かなりぼやくナタリー、それもそのはず。
戦いにおいて頭上が自分より高い位置からの攻撃というのはかなり対処が難しい
それゆえ普通の兵と騎馬兵では話にならないのだ・・
それでも一個隊を撃破したのはやはり彼らがツワモノだからか

「ぼやくな!シグマを見ろ!落ちついているじゃないか!」
「こいつは無口なだけよ!何とか追い払えたからいいけど・・」
「・・・・、まだだ!!」
急に叫ぶシグマ・・。いつも無口な男の大活声だけに一同驚く・・
「あっ・・。またきますよ!!」
風に舞う砂塵の向こうに騎兵のシルエットと地響きが・・
「なんてこった・・。時間差攻撃・・?」
「各員、動きは最小限に留めろ!数では向こうが多いのはわかっているだろう!」
珍しいフロスの狼狽・・。冷静な軍師もこの状況には落ち着き払ってもいられないようだ
「消耗戦は覚悟していたが・・・な。来るぞ!!」
また始まる矢の雨・・。流石に連続しての捌きはきつくナタリーは回避に専念・・。
シグマも前線に立ち矢を大戦斧で防ぐが・・
「・・・・ぐっ!」
身体中に突き刺さる矢、流石に少し唸ってしまう
「・・ちっ、こうなったら仕方ない!この部隊片付けて一旦ビルバオ側まで退く!
そこで橋を斬り落として侵入を防ぐぞ!!」
クラークが襲いかかる騎馬兵の槍を受けとめながら叫ぶ・・
斬り落とすとは言えどもそこにあるのは大の大人数人が横並びで歩けるほどの幅がある
橋だ・・。通常の人間なら思いつきもしないだろうがそこは無鉄砲な13部隊の面々、
「じゃあフロス!時を見計らって!でかい花火を一発かましてよろめかすわ!」
後方支援で中々でかい炎弾を出せないファラが叫ぶ
今まで前衛で好き放題焼いてきたのだ。急に援護に入るとしてもやりにくいのだろう

疾!

そんな中、退却に気をとられてしまい騎馬兵の一人がクロムウェルの頭上を乗り越えてしまった
「!!突破・・ファラ!」
「こんな近くだと魔法は無理よ!!」
しかし騎馬兵の狙いはファラにあらず、弓使いのアルのほうへ・・
「え・・うわっ!!」
まっすぐ突進してくる兵士、至近距離ゆえにアルはどうしようもなく・・

キィン・・

刃が何かに当たる、アルは衝撃による激痛を覚悟したが・・
「・・・っう・・」
「た・・隊長?」
斬りかかる兵とアルの間に割って入るクラーク、魔法強化にて突進したのだが
兵を倒すには間に合わず篭手で受けとめた・・
それも無理な体勢のために少しよろめいてしまう
「間一髪だった・・な!!」
そのまま篭手で騎馬兵の剣を流し斬鉄剣にて首をはねる!
「すみません、隊長・・」
「反省は後にしろ!お前等下がるぞ!!」
「「「了解!!」」」
前衛三人が交代する敵の勢いを何とか抑えたので橋を破壊するためにビルバオ側に後退する
「よし、後は黒炎弾で牽制すれば・・」
「任せて!いっくわよ〜!」
魔方陣を展開しなお向かってくる騎馬兵達に向けて撃ち放とうとする
そして・・!

轟!!

地を駆ける黒炎が橋を抜け騎士達に炸裂!
大橋は燃え上がりシュッツバルケル勢も自慢の馬に火が燃え移り戦闘どころではないようだ
「これでひとまずは・・」
「・・、クラークさん!上!」
その中突如アルが叫ぶ!
彼らの頭上には飛竜(ワイバーン)に乗った騎士が突進してくる!
「竜騎士!?んなもんまで用意しているのかよ!!アル、打ち落とせ!」
「わ・・わかりました!!けど・・間に合わない!?」
急いで矢をかまえる・・がそれよりも竜騎士がはやく槍を構え突進する!
「ぬぅん!!!!」
その槍へシグマの大戦斧が回転して襲う!
元より重量としては戦斧の方が巨大であり遠心力が加えられていることもあり
竜騎士の槍は見事に粉砕された
「今だ!」
「シグマさん・・はい!!」
アルの渾身の一矢が竜騎士の胸を見事に射抜く!
操作を失ったワイバーンは13部隊の前に倒れ騎士も放り出された・・
「流石は軍事大国・・、ワイバーン種なんてものがいるとはな・・!」
のたうちまわるワイバーンに止めを刺すクラーク
「これほどまで戦力が違うとは・・」
フロスもどうすればいいかと言った顔だ
「ほんと、逃げ出したいもんね・・・!!・・ってクラーク!!後!!」
ファラが思いっきり叫ぶ・・クラークの後ろで絶命したはずの竜騎士が起きあがり
火がついた箱をワイバーンに向けて投げる・・
ワイバーンよりも離れた位置にファラ達が・
そして竜騎士を仕留めるために前に出たアルとクラーク、シグマは倒れた竜騎士と
ワイバーンの間にいるのだ
ともあれ、投げられた箱がワイバーンへとぶつかろうとした時にフロスが気付き叫ぶ・・
「・・!!爆薬だ!!伏せろ!!」

ドォォォォォン!!!

近くにいた面々は咄嗟に伏せれたが前衛に出た3人は間に合わずに爆発に巻き込まれる!

・・・・

炎をが収まった時には彼らがいた所には誰もいなく・・
「ク・・クラーク!?吹き飛ばされたの!?」
「じょ・・冗談だろ!あの爆風で吹き飛ばされたら谷に落ちるぜ!!」
急いで谷を覗くクロムウェル・・そこは見通しは良いものの底までは見えない
「でもそうとしか考えられない・・・」
「嘘・・、こんなところから落ちたらいくらクラークでも・・・・」
涙目になるファラ・・突然の事態にどうすればいいかわからないようだ

パン!

そんなファラの頬をナタリーが無表情に叩く
「・・・ナタリー」
「結論を言うのはまだ早いわよ・・。あいつらだって簡単にくたばるたまじゃない・・
とりあえずは橋は大破したことだから地上勢の侵攻は防げるわ、
後は竜騎士に対する対策を練りましょう・・。アルも落っこちたようだしね」
淡々とのべるナタリー、戦闘時の無慈悲さがそこに出ている
「・・そうだな。とりあえずは拠点に戻り体勢を立て直す。竜騎士は貴重なものだ。
そう大部隊で出てくることはない・・しばらくは大丈夫だろう・・」
「・・・副隊長・・」
「士気が下がるのはわかるが我々4人でやらねばならぬことがある。
クラーク達と合流した時にすぐ行動できるようにしておく事だ・・いくぞ」
フロスが静かに言う。
それに無言に応え谷に背を向けるクロムウェルとナタリー・・
ファラは最後まで谷を覗きこんでいた


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