十四章  「最大の任務」


武技会が終了して数日・・
新たな隊員を補充しての生活がはじまる
高額の給料の影響とクラークの怪我によりしばらく朝練を中止していたのだ

「さっ、そんなわけで今日から朝練復活するぞ〜。シグマは静かにやっていたようだけど」
まだ日が昇りきっていない朝の13兵舎庭
準備運動を終わらせてクラークが説明する
流石にシグマも歴戦の戦士なだけに13部隊メニューに普通についていってる
っといってもこのごろになるとアルとクロムウェルもがんばっており
クロムウェルは乱取りなでもこなすようになってき
手加減しているとはいえナタリーと渡り合っている程だ
アルもフロスのアドバイスにより基本的な体力強化はでき、個別に強化訓練をしているのだ
「・・シグマさんに相手に対抗できるんでしょかね・・
なんだか矢を弾き返してしまいそうですが・・」
「全く、俺の拳でも全く通用しなさそうな肉体・・」
訓練用の軽いシャツ越しに見えるシグマの鋼鉄の筋肉にクロムウェルも感嘆・・
「・・・・・・」
そんな二人を静かに見るシグマ・・
「なんかからみづらいわね〜、しゃべれないの?」
彼より遥かに背の低いファラが偉そうに・・。小さい者ほど気が強い・・っということか
「・・・・・無口・・らしいです・・」
謙虚に応えるシグマ、自覚はあるらしい
自分と並べたら本当に親と子供に見えるシグマとファラだ・・
「そうみたいだな、とりあえずはびしばしやってくれ♪
ナタリーとアル、クロムウェルは毎朝1回はシグマと対決してもらう!」
「「「ええっ!!!」」」

「ちょい待て隊長!前剣聖帝の男と戦えって言うのかい!あんな攻撃俺、受けきれねぇぞ!」
「受けきられなかったら回避しなさい」
「あの・・隊長。僕とシグマさんだと話にならないと思うんですが・・」
「話になりなさい。っうか強敵相手にどう移動して弓を放てばいいか勉強しなさい」
「私の太刀だとこんな筋肉ダルマ、傷つかないわよ!」
「つけるようにがんばりましょう」
「「「ぬぅぅぅぅぅ!!」」」
「落ちつけ、お前等いつも俺の相手しているだろう?
要は俺と戦っているのと同じだっての!俺も剣聖帝だし・・」
「あれはまぐれでしょ?ファラの声に『火事場の馬鹿力』が作動したのよ。
でなきゃシグマの攻撃を払いのけれるわけないでしょうに・・」
「それ以前に敗北をした人はお静かに♪とにかくはじめるぞ〜。陣形はフロス、頼む」
「了解だ。流石に一対一では無謀と言える。そこでナタリーを隊長に三人でシグマに挑め。
シグマ、それでいいか?」
最近は毎朝部隊の訓練に顔を見せるフロス・・
的確に提案し効率的な訓練を行う
「・・・御意・・」

「・・・やれやれ、じゃあクロムウェル!アル!いくわよ!『3人よれば文殊の知恵』ってね!!」
「わ〜ったよ!全力でいくぜ!シグマさんよ!」
「できる限りの援護はします・・勝負!」

正しく獅子奮迅の勢いで仕掛ける三人、対しシグマは雄雄しく立ち迎え受ける!
・・ツワモノが増えたことで皆が皆、訓練に目標を見出していったようだ

因みにこの勝負はシグマの辛勝、思ったよりもアルの弓が効いたようだ





公社の部隊間での交流とされるのは武技会を除いては
部隊長での定例会議のみとなる
それ以外には交流はほとんどないのだ
・・・・・
「ではっ、会議を開く」
またも本部の会議室、何時もの如く何を考えているのか
全く想像もつかない総師の一言にはじまる
「・・・先日だが・・。西の小国ビルバオから特別な依頼を受けた。
・・宗教的な聖地である地域を北の大国シュッツバルケルが占領したことにより
聖地奪回を目標とする宣戦布告を発表した・・。
その聖地奪回に公社の力を貸して欲しい・・っという依頼がきたのだ」
総師が淡々と述べていくが各部隊長の顔には汗が・・
それもそのはず、ビルバオは軍隊などは皆無の国であり宗教国家として存在している。
対しシュッツバルケルはここグラディウスと並ぶほどの軍事国家。
最初から勝算などありはしない
「・・・それで、総師はその御依頼を・・」
「引き受けた」
この一言で周囲はざわめきだつ
「・・騒ぐな。先も言ったように目的は聖地奪回、それができればすぐに撤退だ。
後は国同士で共食いをすればいい・・」
それだけでもかなりの困難、何故ならそのビルバオ国が聖地として崇めている処は
シュッツバルケル国もまた別宗教の聖地として定めており非常に複雑な事情になっているからだ。
守りは半端ではないと見て間違いない
「この作戦については参加者は遺言をかく事は必要だろう・・。だがその分の報酬は保障する
・・・我こそはと名乗りでる者はおらぬか・・」
総師の言葉にも流石に名乗りをあげる者はいない・・
「ふっ・・ならば・・。わしが決めよう・・13部隊長クラーク」
「おえっ!?」
「・・お前の部隊に頼もう・・」
相変わらずの狂気じみた笑顔の総師・・
「ちょっと待て!!いくら隊員が立て続けに増えたからって言ってもたった7人の極小部隊だぞ!?
そんなんで戦争できるのか!」
「ふっ、重要拠点を叩けば可能・・だろう。それにお前は公社一の戦士『剣聖帝』の二つ名を持つ。
さらには前剣聖帝シグマが参加し、隊員のナタリーは惜しくも敗れたが
『帝者』に選ばれてもおかしくない実力。
7人という人数で物を考えるレベルではない」
「ぐっ・・、しかし・・」
「18部隊を壊滅し、武技会に勝ち残ったお前の腕を見込んでいるのだ・・わしを失望させるな」
「・・・・了解した。ただ相当危険な任務だ、隊員たちの覚悟が決まってからの出発にさせてもらうぜ」
「・・いいだろう、今回に限り作戦の予算を先払いにする・・万全の準備で挑め・・
以上で会議は終了する・・。解散だ!」
他の連絡等は一切なし・・・。
敬礼をしながらも各隊長の目にはクラークに同情と別れの眼差しを向けていた



その日のうちに13部隊は全員作戦会議室に集合
入ってくるまではいつもの隊員達であったが
入った途端に表情が固まる
正装姿のクラークとファラが静かにたたずんでただならぬ空気を放っていたからだ・・
・・・・・・
「全員きたな・・。早速だが、今日隊長会議にて総師直々に指令が下った。
内容は西の国ビルバオの聖地奪還の手伝い・・。相手はシュッツバルケルだ」
「!!!」
諸外国の事情など興味がない隊員達だがフロスだけは顔色を変える
「・・この間みたいなレジスタンツをタスケロってことかしら?」
「ううん、でも相変わらずこの極少数でよく言うな〜」
ナタリー&クロムウェルはいつもの通り、アルも何かわからない様子だし
シグマは無表情のまま・・だが
「今までとはレベルが違う・・クラーク、何故断らなかった?」
「総師直々って言ったろ?最初から拒否権はなし・・だ」
「・・・・そうか・・・」
「フロス副隊長、そんなに難しい命令なんですか?」
「難しいも何も・・。この面々だけで大国に喧嘩を売るようなものだ」
「「「!!!!!」」」
フロスの投げ槍気味な言葉に凍りつく三人・・
「・・・そう、ビルバオはすでに宣戦布告をしたらしい・・が負けるのは目に見えている
だけど。俺達も目標はその聖地とやらの奪還のみだ。それが一時でも成功できれば終了
泥沼になるまえに帰還する・・って事だ。・・それでも、凄まじく危険なのはわかっているが・・な」
「「「・・・・・・・・」」」
「この作戦は特別よ。参加者は遺書を書いておいて。
そして特別予算がおりたから万全の準備を整えていいって・・」
「出発は翌々日の早朝だ・・。それまで覚悟を決めておいてくれ・・しかし・・
誰一人死なすつもりはない。俺達が毎朝汗を流したのはこの時のためだ」
「・・・・・・・・・、了解。初陣にはうってつけだ」
一番早く返答したのはシグマ、流石は元剣聖帝だけあって余裕の表情・・っというか無表情・・
「・・・上等ね、私達に敵なしってことを証明しましょう!」
「姉御・・よっしゃ!せいぜい暴れようじゃねぇか!ちょうどつまんねぇ任務で退屈していたところだ!」
「クロムウェルさんまで・・ですが、弱気になっていたら駄目ですね。隊長、僕の命、お預けします・・」
「ああ・・、すまんな、アル」
「・・全く、盛りあがって・・。だが全員がその意気ならば最良の法を考えよう・・」
「フロス・・、頼むぜ!副隊長!」
「期待はするな、ふんばりどころはいくらでもあるぞ?」
「へ〜い、じゃあ解散だ。」
・・・・・
大口叩いた割には神妙な顔つきで一同出て行く
そして残るはクラークとファラ
「・・・勝算・・あると思う?」
「さあな、こんな商売してりゃいつか直面する事態だ・・。覚悟はしていたさ」
「割りきっているのね」
「・・・だけど・・誰一人死なせはしない・・」
「クラーク・・」
「ほらっ!何やっているんだ!街で装備を整えるぞ!
俺は着替えてくるからお前はナタリー達に金渡してから来い」
「もう!勝手なんだから・・まぁいいわ。ちょっと待っていて」
クラークの調子に乗られて少し微笑むファラ
ともあれ任務を遂行するための装備を整えるために一同別行動にて街へと出ていった・・




「でも何買うのよ?得物はもうあるんでしょ?」
「う〜ん、代えのパンツ?」
「馬鹿!」
傭兵の街サウスヴァージニアの通りをクラークとファラが歩く
二人ともラフな姿でまるで兄妹のようだ
「まぁ冗談はさておき、防具かな〜・・」
「何?あの革の鎧じゃ間に合わないの?」
「まぁ、どちらかといえばアレが重すぎるんだよ。刀使いって本来防具とか余りつけないんでな」
「ふぅん、じゃあ制服のままでいいんじゃあないの?」
「あのね・・、死地に赴くんだから装備はきちんとしたいんだよ」
そう言うといつも防具の手入れを頼んでいる店に入る。
中にはあまり物が置いていなく寂れているのだが・・

「・・お前か」

禿げあがった親父が静かに奥から出てきた
「ああっ、金に糸目はつけないからいいのを出してくれないか?」
「いいもの?いつもの鎧はどうした?」
「今回はあれは使用しないんだ。軽量で魔法にも強い代物を頼むよ」
「ほぅ・・。確か、13部隊に成功不可能な命令が下って死亡した
・・っと話が出まわっているが・・そう言うことか」
「・・・何!?誰がそんなこと言ってたの!?」
「街中の噂だ。のぼせあがった少数部隊の総師の裁きが下った・・っとな。
俺もカネヅルが少なくなったと思っていたところだ」
「街中・・って・・。クラーク?」
「う〜ん、鎧ってのは好きじゃないからな〜、どちらかといえば丈夫な服装が・・」
よろしくない噂が立っているのにクラークは自分の防具についての事で頭が一杯の様子だ・・
「馬鹿!そんな事よりも噂!」
「ああっ、どうせ会議に出ていた隊長さんが口を滑らしたんだろ?
それにそうならないようにこうして買い物をしにきたんじゃないか」
「そりゃあ・・そうだけど・・慌てなさいよ?」
「それはお前の役割♪親父、丈夫なマントのようなものと篭手はないか?」

「・・・・・ちょっと待て・・」
そういうと親父さんは店の奥へ姿を消した・・。展示している物は一つたりともないのだ
「やっぱり剣士にゃ重装備は合わないからな」
「あれでも十分軽装備よ、うちぐらいじゃない?
隊員に重戦士がいなくて使用しているのは革の鎧、板鎧なんて儀礼用しかないんだしねぇ。
これで死亡者がでないのは奇跡よね・・」
「そうならないための鍛錬だ。毎朝馬鹿みたいに身体動かしているのは俺達ぐらいだぜ?
みんな国営ギルドに入れたからってことでもう上せているんだよ」
そうこう言っているうちに店の親父が何か持ってきた
カウンターに置いたのは薄い碧のコートに、聖騎士が使用するような立派な金属篭手
「これでどうだ。二つとも家宝にしてもいいぐらいの代物だ」
「へえ、このコート・・防刃加工しているわね、でも普通の物と変わらない・・」
実際コートに触って驚くファラ、触った感触では刃を通さないとは思えない出来だ
「並の刃は弾き返せる。材質は不滅金オリハルコンと神聖銀ハルモニアを使用した特殊金属繊維だ。こちらの篭手は手の動きを最優先にし、軽量化加工されたフルメタル製、
お前の要望には応えてくれるだろう」
「おいおい、どれも高価な材質ばかりじゃないか・・」
「金に糸目はつけないんだろう?
それに、防具ってのは使わなければただの飾りだ・・。持っていけ」
「・・ああっ、わかった。じゃあ俺の有り金全部置いてくぜ・・またな!」
コートと篭手を持ち上機嫌で外に出るクラーク
ファラもクラークの取り出した金の量に目を白黒させて彼についていった・・
・・・・・・・
「ちょっと!いくらなんでもあの額は多すぎよ!」
「なっ、なんだよ・・。そんなに怒らなくても・・」
「わかっているの!?いくら特別予算っていっても限りがあるのよ!」
「まぁまぁ、金ってのは生きていてこそのものだろ?俺はお前を守りたいんだよ」
「・・・クラーク」
そう言いながらラフな服装の上にコートを羽織り、篭手をつける
「おおっ、ピッタリだ。こいつはいいな!」
「それじゃあ剣士っていうより冒険者ね」
「いいじゃねぇか。前にも話したけど冒険者になるもの悪くないしさ」
「その前に生き残らないとね。じゃあ次は私、魔力回復のための道具を買いましょう、
荷物持ちは頼むわよ!」
「へ〜い、あんまり長い買い物は勘弁してくれよ」
「わかっているわよ♪日が変わるまでは終わるわよ〜」
「・・・加減してくれよぉ・・」
結局二人が兵舎に戻ったのは暗くなってからだった・・・



その夜・・
兵舎外で空を見上げる人影が二人
「夜は冷えるわねぇ、まぁ星が綺麗なのを考えればチャラかしらぁ」
寝巻きに毛布を包んだナタリー、空を見上げながら笑う
括った髪を解いておりさらっと流しており違った印象を受ける
「・・姉御はいつも姉御だな・・」
対し動きやすい私服を着たクロムウェルはすこし不安そうだ
「なぁに?私はノーテンキで神経ずぶといお馬鹿さんだっての!?」
「そうじゃねぇけど・・、今度の戦闘、流石にやばいんだろ?よく笑って星なんて見ていられるな」
「あのねぇ、だからと言って嘆いていても仕方ないでしょ?」
「そりゃあ・・そうだけど・・」
「いい?あんたもいつかは他人を引き連れることが来るでしょう。
その時はどんなに辛い時でもどんなに厳しい時でも大口叩いて周りを安心させないと駄目なの」
「・・・・」
「でなきゃ、誰が引きつれて斬りこむの?そのくらいの器量がなければ勝負に勝つなんてできないわ。要は気合いよ、き・あ・い♪」
クロムウェルの額を指で突くナタリー。これから死地に向かうとは思えないくらい爽やかな笑みだ・・
「・・姉御は大人だな」
「あったりまえよ♪これでも小さい頃から地べた這いずり回っているのよ?
それに、この面々ならなんとかなる、そう思えるからね・・」
「・・確かに、シグマや隊長がいればなんとかなりそうな気はするけどなぁ」
「あらっ、私の名前が入ってないわね・・(ギュ!)」
「いだだだだ、頼りにしてるって!姉御!!」
「調子がいい子ね、あんた・・。ねぇ、クロムウェル・・。
もし戦いなんてなくなってここで働くことがなくなったら・・」
「・・?」
「・・・・・なんでもない。さぁ、そろそろ寝ましょう!いつまでもここにいたら風邪ひくわよ」
バン!っとクロムウェルの背中を叩き中に入る・・
「・・姉御・・?」
髪を下ろした彼女の後ろ姿はどこか寂しげだった


一方談笑室では・・
「眠れないか、アル」
談笑室で静かに本を読んでいるアル、それに気付いたのかフロスが静かに入ってくる
他にも薄暗い談笑室には黙祷をしているシグマが・・
「はい・・、どうも眠れなくて・・」
「まぁ仕方あるまい。クラークやファラでさえあの通りなのだからな」
「・・・、副隊長。今回の戦い・・。どうなるんでしょう?」
「激戦は必至、私も頭が痛いところだ」
苦笑いをするフロス・・
「その割には不安そうではないですが・・」
「ふっ、引きうけた以上な。正直、この部隊に入ってから私の予想は覆えされっぱなしなのでな。
あいつが誰一人殺さないと言えばそうなる気がしたのだよ」
「覆すって・・?」
「・・・こんな傭兵組織だと戦闘ごとに隊員が死んでいくのは当然の話だ。
私もなるべくそうはさせないように立案してきたが実際は仕方ないことだと思ってきた。
しかしクラーク達は見事誰一人死なせずここまで引きつれたんだ・・。
たった数人の部隊で・・な」
「・・・」
「本来精神論を云々言うのはらしくないのだが・・
あいつの力を信じればどんな作戦でもうまくこなす・・そんな気がするのだよ」
「・・・・・・、わかります」
静かに黙祷していたシグマが突如口を挟む
「ほぅ、お前にもわかるか・・」
「・・ええっ、この組織の隊長などは自分の生き残ることのみを考えているものです・・」
「シグマさん・・」
「確かにシグマの言うとおりだ。傭兵公社はエリートのみの最強部隊・・。
それは事実なのだが入ったのちはその名声に力を曇らせる。
隊長という肩書きなどは特にそうだ。
それ故に曇らせた力量のまま戦場に出て、死んでいくのがほとんどだ・・」
「そ・・そんな、じゃあなんで総師はその事態を・・」
「武技会でも見ただろう?総師は人一人の命をなんとも思っていない。関心があるのは力だけだ。
だからこそ私達が18部隊を壊滅させても何のおとがめもなかった・・」
「・・・・」
「・・・・・、自分の入った世界に驚いたか・・?」
「はい・・」
「心配するな、クラークは違う・・そうだろう?」
「・・そうですね。クラーク隊長は公社最高の戦士です。
それにシグマさんやフロス副隊長もいます・・、負けるはずはありませんよね!」
「・・ふっ、そうだな」
「・・・・うむ・・」
静かに微笑む大人二人、若い戦士のアルも落ちついてきたようだ・・
とにかく落ちついた三人は自室に戻り静かに眠りについた


・・それからもどことなしに緊張感が漂う13部隊兵舎・・
時の流れが遅く感じた一日も終わりいよいよ出発の刻
朝の兵舎前に集まる13部隊の面々
「ようし、それじゃあいっちょ行きますかい!」
「・・隊長、その服装なんなんだ?」
服装、防具関係には全くもって疎いクロムウェル、クラークの服装に驚く
彼は何時ものだらしがない緑色の公社制服姿・・
対しクラークは街で買ったあの薄緑のコートにフルメタルの篭手・・。
中も動きやすい服装なのだ
「ああっ、街で買った俺の戦闘服だ。いいだろう!」
「・・・、なんか公社の隊長のようには見えませんね」
「俺はそういうのは気にしないのさ♪さぁ野郎ども!覚悟はいいか!!」
「何の覚悟よ?まさか物騒な事を覚悟するんじゃないでしょうね?」
「水差すな、ナタリー。生きて帰ってくるための覚悟じゃ!泣き言は受けつけねぇぞ!」
「あったり前だ!っうか日頃の訓練でも受けつけたことないじゃないか!!」
「そうですね〜、吐いても平気で続けてきますし・・」
クロムウェルとアルが水を差す・・完全に気が抜けたクラークの掛け声・・
「うぬぬぬ・・オノレラ・・」
「まぁまぁ、ハイテンションになるのはいいけど私達はいつものままでいいじゃない」
クラークをなだめるファラ。死地におもむくのに不安などは微塵もない
「そうだ、テンションを高めるのは戦地で行うことだ・・。さぁ行くぞ」
「おい、フロス!仕切るなよ!」
「ふっ、私が言わないと何時までも漫才をしていそうだからな」
「「「「誰が漫才を!?」」」」
「お前達だ・・いくぞっ、シグマ」
「・・・・・」
シリアス二人は静かに出発、残りのお騒がせな面々(アルは除く?)も慌てて後について行った

天気は晴れ、風もなし・・
しかし彼らの心の中には暗雲が少なからず立ちこめていることは間違いない・・


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