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  十一章  「妹よ・・」


新たな得物を持ちいつもの13兵舎では絶好調なクラークがいた
「おいおい!どうしたんだ!?もうばてたか!?」
朝の訓練、まずは軽く兵舎周りをランニングするのだがすでにアルがばてている
クロムウェルも結構息が上がっており元気なのは
クラークの他にナタリーと上機嫌に庭でそれを見ているファラ
「はぁはぁ・・、全く、今日はヤケに機嫌いいじゃんか!しょっぱなから飛ばし過ぎだ!」
「そうそう、馬鹿みたいに走っちゃって・・。
これって朝ファラと一緒に出てきた事が関係あるのかしらねぇ?ファラちゃん?」
「うふふ〜、さあね♪」
ナタリーの言葉にも笑って返す・・。
いつも険しい表情で朝練に参加しているのに太陽のような笑顔を見せているので
ナタリーは瞬時に理解した
「・・早速クローディアに報告しないとねぇ・・・。でっ?アル、大丈夫?」
「は・・はい・・。入った頃よりかはなんとか・・」
「おっ、成長したな・・。じゃあ今日はチームタッグといきますか♪」
「チームタッグ?面白そうね〜、でも5人だからどうするの?」
「そうだな〜、俺とファラVSナタリー、クロムウェル、アルでいいんじゃないか?」
「おっ?よかったな、アル。このオーダーならまだ勝機があるぞ」
座りこんでいるアルにクロムウェルが励ます・・。
「そうですね・・、いくら隊長でもナタリーさんとクロムウェルさんの二人だとそうもいかないでしょうし」
「チッ♪チッ♪チッ♪それはどうかな?じゃあ少し休んでからはじめるか」


アルの息切れが回復した時点でクラーク提案の2VS3のタッグマッチが開始
クラークは斬鉄剣『無銘』を持ち、刃を抜いて軽く構える
隣ではファラが杖を軽く振っていつでもOKっと言った感じ

対しナタリーは二振りの刀を抜き仲が良さそうなクラークとファラをマジマジと見ている
クロムウェルは今度こそクラークを倒す!っとやる気十分
アルは隊員同士でははじめての本格的な訓練なので少し顔が強張っているようだ

「・・ねぇ?貴方達なんでお揃いの首輪をしているの?」
クラークとファラの首に飾られている羽十字のネックレスを見ながらナタリーが聞く
・・っというよりも茶化す?
「ペアルックっていうの?まぁいいじゃない♪」
「・・・あらあら、野暮天の骨頂のクラークも成長したわねぇ。こんな子供に手を出すなんて・・」
「人聞きの悪いことを言うな!俺は・・・、ただこいつの想いに応えようとしてだなぁ・・」
「はいはい、ラブコメは後にして・・コテンパンにするわよ!
我が妹クローディアの無念を晴らすためにもね!」
「なんでそこでクローディアの名前が出てくるんだよ!」
「自分の胸に聞きなさい!いざ!!」
そう言うと一気に突っ込むナタリー!
手に持つ『雪月花』と『紫電』を振りかざしクラークをなぎ払う!
「おっとぉ!!全く妹の話がでると本気だな!」
鋭い斬撃を『無銘』で捌きながら応戦。
同じ流派とはいえナタリーは二本の刀を巧みに使い斬撃主体なスタイルであり
対しクラークは居合を得意とし体術を主体するスタイルだ
「流石に刀があると動きも違うわね!クロムウェル!連携で仕留めるわよ!」
「仕留めるって姉御!」
そう言いながらもクロムウェルはナタリーと並びクラークに襲いかかる
「うおっ!流石にキツイな!」
ナタリーの斬撃を刀で、クロムウェルの攻撃を足で捌くクラーク。
それでもダメージを受けていないのは流石というかなんというか・・
「行きます!」
そんな二人を後方から援護するアル、命中率抜群の一矢が二人の間を抜けクラークの元へ・・
しかし
「甘い!私がいるのをお忘れなく♪」
タイミング良くクラークが飛び退いたかと思うとそこへ黒い火柱が・・
木製の矢は火柱に入った瞬間消し炭と化した
「今度はこっちからね〜、いっくわよ!」
ファラが前衛に出て魔方陣を展開しながら黒炎を連発!
「うひゃ!クロムウェル!当たったら承知しないわよ!」
「っうかこんな至近距離じゃ・・!」
すぐそこから発せられる炎弾をギリギリ回避するクロムウェル・・
そこへ
「頭上注意だ!」

ゴン!

「ぐえ・・」

炎弾に気を取られていたクロムウェルの脳天に鞘でゴツンと叩くクラーク
そのまま倒れるクロムウェルを見向きもせずにアルのほうへ駆ける
「あらっ!私は無視!?上等じゃない!」
炎弾に慣れてきて、クラークを追おうとするが

轟!

「無視じゃなくて、足止め♪先にアルを叩くのよ」
「あぁら、息の合った連携ね・・ったく!」
流石に絶え間なく魔法を連発するファラにはナタリーもそうそう攻撃を仕掛けられなく
間合いを計りながら回避している
その間にも
「くそっ!当たれ!」
素早く接近するクラークにアルはなんとしても止めようと必死で弦を引いている
鋭い矢がクラークを捕らえているがそれを最小限の動きで回避し接近・・・!
「弓使いでも!接近戦を想定するもんだぜ!」
「うわぁ!」
目にも止まらぬ動きでアルを掴み投げ飛ばす・・。
アルは天地がひっくり返ったように見えてそのまま頭から着地している
・・彼の頭に星が浮んだ・・

「連携では俺達の勝ち、だな♪よし、今日の訓練おしまい〜」
「・・ちっ、悔しいけど私の負けね。全く、貴方達話もしてないのに随分と連携が上手ね」
悔しそうに刀をしまうナタリー
流石に一人でクラークとファラに立ち向かえないので負けを認めたようだ
「そっか?」
「まぁなんとなくよ、ねぇ?」
「・・だな」
もはや以心伝心状態・・
「ちっ、イチャイチャしちゃって感じ悪い!ほらっ、クロムウェル!起きなさい!」

ゴス!

「いでっ・・姉御、もっと優しく・・」
「馬鹿、さっさとしなさい!」
そう言いながらナタリーは不機嫌そのもので兵舎へ戻っていった。
「・・・なんだ?ナタリーの奴」
「珍しく不機嫌ね・・。なんかあったのかしら?」
「ううん、あいつが不機嫌になることなんてほとんどなかったからな。クロムウェル、心当たりあるか?」
「・・いやっ、全然・・」
頭をさすりながら起きあがるクロムウェル
「ふぅん。じゃあお前が話をしてくれないか?なんとなく俺が聞くのはまずい気がする」
「・・わかった。まぁ姉御のことだからそんなに気にすることもないだろっ」
軽い気持ちでクロムウェルは立ちあがりナタリーを追うように走っていく
「・・でもなんなんだろうな?」
尻餅ついたアルを助け起こしながら首をかしげる
「さっき言ってた『クローディア』って人が関係しているんじゃないの?」
「あいつが・・かぁ?う〜ん」
「でも誰よ?クローディアって?」
突然ムッとした顔になるファラ
「妹だよ、あいつとはだな・・」
軽く説明し出すクラーク。
外はようやく日が昇り、爽やかな風が吹いてきたところだ・・


コンコン

少し気まずい空気の中、クロムウェルがナタリーの部屋をノックする
「開いているわ、クロムウェルでしょ?」
「あ・・ああ。じゃあ入るぜ」
緊張しながら中に入る・・。
女性の部屋に入る事じたい今まであまりないクロムウェル。
ついついナタリーの部屋に入りしだいキョロキョロしてしまうのだが・・。
ナタリーの部屋は質素なもので机の上に沢山の手紙が置かれている以外は特に何もない
他に目に付くのは壁にかけられた飾り用の刃物ぐらいだ
ナタリーはベットに腰かけて手紙を読んでいた
「何で俺だってわかったんだ?」
「う〜ん、だってあいつが来る事なんてまずないからね。
たぶんあなたにお願いするだろうと思ったから」
「・・・でも何で機嫌が悪いんだ?姉御がそんなんになるなんてはじめてだし・・」
「別に月のモノでもなんでもないわよ?」
「それはわかっている。だいたい後1週間くらいは・・」
「・・ちょっとクロムウェル!なんで私の周期知っているのよ!さてはお風呂覗いていたな!」
怒りながら首を締めるナタリー・・、女性ながら剣術をしているだけあって
クロムウェルの首に見事に食い込んでいる・・
「ギブギブ・・!!姉御、あの期間中無口になるじゃんか!それで推測したんだよ!」
「なんだ・・。そうなんだ」
「覗くのはちゃんと別の日に・・あっ・・」

うっかり口をすべらすクロムウェル。
人それを、やぶ蛇という

「ほほぉ〜、結局この私の裸体を密かに拝んでいたわけね(ボキボキ)」
「まっ、まぁ落ちついて!でもなんで機嫌悪いんだよ?あんたらしくない」
「・・私も大人気ないと思っているわよ。ただあの子のことを思うとやりきれなくてね」
軽くため息をつきながら呟く
「あの子・・?」
「妹よ。私には実の妹がいるのよ。私達とクラークは同じ道場で育ってね」
「ああっ、クラークさんに聞いたことがある。それが・・?」
「そう・・じゃあこれを見なさい。」
ベットに置かれた手紙をクロムウェルに手渡す
それを拝見したクロムウェル
内容は謙虚ながらもクラークの事を気にかけているのがはっきりわかる・・
「姉御、妹さんって・・」
「そっ、私の妹クローディアはあいつの事が好きなのよ。
あいつがファラと出会うず〜・・・・っと前からね。」
「・・・」
「でもあの馬鹿、ただでさえ恋愛感情皆無な上にあの子を妹としてか見ていないからね。
良く可愛がっていたけどそれだけ。想いが届くことなく私達は旅だったのよ」
「そうなんだ・・、でもそれで気を使っているなんて妹思いなんだな、姉御は」
そう言いながら手紙を返し椅子に座る
「そりゃあ肉親だもの。あの子と私はね。親から売られたの。あの子には秘密にしてあるんだけどね・・私が生まれた村は飢饉に見まわれていてね。
子供を売ったり交換して殺して食べるなんてことは珍しくなかったのよ」
「・・」
「こんな事、複雑な環境とはいえ貴族育ちの貴方にはわかりかねないでしょうけど」
「姉御、なんで俺のことを・・」
「クラークから、ね。まぁ半分は私の推測だったんだけど。
・・それで私は殺される手前で村を逃げ出した。まだ物心ついていないクローディアを引っ張ってね。
それからは孤児として各地をさ迷ったわ・・・いつも空腹と戦っていた。
何か手に入ると妹に優先して渡したから」
「・・・・」
「そんなことして数年、ある日私達は山賊に襲われたの。
女を売りさばくって事で殺すつもりはなかったんでしょうけど、
妹が騒いじゃってナイフで右目をつぶされたの・・私の目の前で・・」
「姉御・・」
「あの時ほど自分が無力だと感じたことはなかったわ。私もあの子も死を覚悟した。
その時急に一人の少年とたくましい剣士が割って入ってきて山賊を切り払ったの、
それがクラークとお師さんよ・・。
あいつは近くの山で鍛錬している時にクローディアの悲鳴を聞いて助けにきたのよ。
それからあいつはクローディアを抱きかかえ急いでお師さんの家へ連れていったわ」
「そうなんだ・・・」
「そっ、妹の右目は完全に失明、さらにはショックで言語障害になって
どうしようもない状態なところお師さんは自分の世話をしないかって言ってくれて
私達はあの人達のところで暮らすことになった・・・幸せな日々よ?
畑仕事は辛かったけど食事にありつけたんだもの」
「・・・・・」
「それであの子はお師さんの身の周りの世話をしていたんだけどある日、
クラークの隣で棍棒を振る真似をしだしてね、少しずつクラークに心を開いていったの。
私もあの子のやりたいようにさせようと思ってあの子を助けるために剣を習い始めたわ・・。
後はあの子の気持ちがクラークに伝わらずに奥義を皆伝、道場を出ていったってわけ」
「じゃあ出ていく時にクローディアは言えなかったのか?自分の気持ちをさ」
「無理よ、それができれば長年想いを募らせなかったわよ。
あの子のために私だってあいつの傍にいたんだし・・」
「そうだったんだ・・。でも姉御の人生って妹のために費やしているな・・」
「そうね〜、あの子の事が済んだらやりたいことでも探したいけど・・。
あっ、でも私があの子にできることももう終わりか」
「そうだよ、クローディアだってもう自分で歩けるんだから姉御だって自分の事で生きないと」
「・・じゃあ・・燃えるような恋がしたいな〜、まっ、相手がいないから探さないといけないけどね♪」
「相手・・、姉御の男が勤まる男なんているのか?」
「しっつれいね!まぁ・・あんたにも素質はあるんだけどねぇ・・」
「おっ、俺・・・?」
「・・でも力不足。私をモノにしたいなら精進しなさい!」
「へいへい・・じゃあクラークさんにはもう大丈夫って言っておいていいのか?」
「ええっ、悪かったって言っておいて?」
「わかった。でもなんでクラークさんとはそういう会話しないんだ?」
「付き合いが長い分男と女ってそういうの言いにくいもんよ?
ましてはクラークみたいな口下手にはとてもできるもんじゃないよ」
「なるほど・・」
「さっ、そう言う事。少し一人にしてくれる?色々考えることがあるから。
貴方にいられたら・・甘えちゃいそうだし・・」
「・・・・・・、俺でよかったら・・いいぜ・・?」
「クロムウェル・・?」
「まっ、まぁ力不足だけど・・さ」
「・・生意気言っちゃって」
そう言い微笑むナタリー。昼の陽射しの中、二人だけの時間が流れた


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