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十章  「甦る剣『無銘』」


大陸の北に位置するダンケルク。
他の国とは違い国土の規模は大きくなく周囲からは「田舎」と言われている国だ
これより北に国はなく見渡す限りの針葉樹林だけとなっている
南には大国『ハイデルベルク』、
南西にはどの国家も手をつけていないく様々な都市が点在する草原『フィン草原都市郡』、
さらにその南に軍事国家『グラディウス』があり
傭兵公社の兵舎はグラディウスの中でも南端に位置する
つまりダンケルクに向かうには大陸横断しかねない距離になるのだ。
歩きでは時間がかかりすぎるので今回クラーク達は馬を拝借(予算から)
草原を抜けるにはちょうどいい足となり思ったよりも早くダンケルクに向えた・・

「ファラに場所を教えてもらったが・・、結構な遠出だな・・。よく考えたら・・」
ダンケルク国に入ったところでクラークがぼやく
・・っと言っても国の境目を守る者もいなく草原を走っていたら知らない間に入った・・っという感じだが
「そういうのは最初から気付いているもんだぜ・・隊長」
意外に乗馬がうまいクロムウェル、マントを羽織っていつもよりも大人しい感じだ
「それでも、今まで魔物にも合わずに来れたっていうのもすごいですね・・」
「ああっ、そうだよな〜。なんか拍子抜けだよ」
兵舎を出発してから1度も魔物との戦闘にならなかった事に驚く二人
このご時世、外を歩いていたら魔物に合う確率は結構高い
それだけに二人とも旅に出る時から戦闘の連続になると腹をくくっていたらしい
まぁ、なぜ会わなかったかはクラークが常に剣気を放ち魔物の接近を阻止していたからなのだが・・
「安心するのはここまでだぜ?今のダンケルクは数年前の他国侵略に雇われたゴロツキ達が
貴族政治解体とともに追放されてあちらこちらに山賊化しているらしいからな」
「魔物に会わずに済んだと思ったら人間かよ・・」
「そんくらいなけりゃお前達連れてきた意味ないだろう?
因みにダンケルクからはどこの街にも寄らないからそのつもりで」
「「ええっ!!?」」
「野営のお勉強もかねてです♪」
「あう・・、これじゃ兵舎で姉御といたほうが楽だよ・・」
「そうですね・・・。」
「ぼやかないぼやかない、ってなことでちょうど良い感じに森があることだし。早速準備しましょう」
「へ〜い」
「わかりました」
時はすでに黄昏時、ダンケルクに入ったという事なので本日の移動はここまで
一斉に野営の準備をしだす・・
クラークが木の枝を寄せ布で括り雨風をしのげるように・・
クロムウェルは野営なんてした事がないというので焚き木をする木の枝拾い
そして意外なのがアル。馬をつないだり近くで水を探したりと驚くほどの早さでこなしていく
そんなアルの働きもあって日が沈むまでには一夜を過ごすに最適な環境が整った



「しかし意外だな、お前がこういうのが得意だなんて・・」
クロムウェルが驚きながら言う
「いえっ、僕は森で暮してましたから・・、ただ方向音痴で・・」
「ああっ、だからさっき水汲むのも馬の紐を身体に括っていたのか」
焚き木をし、夕飯を作りながらクラーク
「ええっ・・どうも数歩進むとわかんなくなって・・」
「長所短所激しいな・・おい」
「まっ、それは人それぞれ。
それよりも・・こんな星空の下野郎3人集まっているのも何だ、お互いの身の上話でもするか?」
「ええっ?身の上話・・ですか?隊長」
「そう、やかましい女性陣がいたらしゃべりにくいこともあるだろう。
アルはなんで傭兵なんかになろうとしたんだ?」
料理の手を休めアルに聞くクラーク
「僕は・・、住んでいた集落が魔物に襲われて一人になったんです・・。
それでどうしていいかわらずにさ迷っていて。
偶然傭兵公社の存在を知って志願しました。・・弓の腕には自信があったので」
「ふぅん・・結構大変だったんだな。でも・・、アル。お前・・ひょっとして亜種か?」
「えっ!?わかります!?」
「う〜ん、なんとなくだけどな・・」
「隊長、亜種ってドワーフとかああいうのだろ?アルがそうなのか?」
見たところ全く普通の人間なアル、気弱なところはそれ以上に人間臭い
「ああいうのは極端な例だ、亜種って言ったって色々あるんだぜ?」
「ええっ、僕はエルフ種と人間のハーフです
・・っと言ってもかなり血統が薄くてほとんど普通の人間なのですが・・」
「ほぇ・・。全然わかんねぇや・・。でも薄いって。何か普通の人間とは違うところはあるのか?」
「そうですね〜、血筋もあるようですが目がいい・・らしいです。
内面的に森の住民エルフの能力が残っていた・・みたいですね」
「なるほどな〜、そうともなれば援護も心強い。がんばってくれよ♪」
「はい!・・でも隊長、どうして僕が亜種だってわかったんですか・・?」
「え?・・ああっ、まぁ勘だ!勘!でっ、クロムウェルはどうなんだ?」
適当にお茶を濁すクラーク。自分でもよくわからない・・っというのが本音だ・・
「俺っ?・・言わなきゃ駄目?」
「おいおいクロムウェル、後輩がカミングアウトしているのに君は拒むのかい?」
「そうですよ!クロムウェルさん!」
「ぬ・・アルもノってきて・・。俺はハイデルベルクの港町生まれ、
下級貴族出身だけどちょっとゴタゴタしたことで家出したんだよ」
思い出すのも嫌・・っという顔のクロムウェル
「貴族のゴタゴタ・・?」
「・・・まっ、大体がわかるがな・・妾腹の息子・・ってとこか?」
「・・・・・よくわかるな?」
「そんな事でもなけりゃ貴族出身者がグレるかよ」
「うるせー、それで、家出した後は喧嘩にあけくれていて傭兵公社を知ったんだ。
あん時は自分の腕に自信があったから偉そうな傭兵達を全員叩きのめしてやる!
って勢いで入ったんだよ・・でも、13部隊にまわされてこの化け物にあっけなく・・だ」
「そうだったんですか・・、大変な過去だったのですね、クロムウェルさん」
意外に暗い過去なクロムウェルに目を丸くして驚くアル
「へっ・・まぁな。それで、そうこう言うあんたはどうなんだ?隊長?」
クロムウェルも内心化け物(=クラーク)の身の上に興味があるようだ
「俺か?俺は東国の島国カムイ出身だ。小さい時に村が疫病の猛威に全滅してな。
唯一生き残った俺をある剣士が引き取ったんだよ。それが俺のお師さんだったんだよ。
そっからは剣術まみれの生活だったな・・」
「・・・・」
「あっ、じゃあ姉御とかはその時に?」
「そうだ。俺がお師さんのところに来て数年経った時に孤児の姉妹が転がり込んできたんだよ
それがナタリーと妹のクローディアさ」
「姉御に妹がいたんだ・・」
「おやっ?知らなかったか?あいつ暇があるなら妹に手紙書いているんだぜ?」
「ナタリーさんの妹・・、なんか・・よくしゃべりそうですね」
「ところがどっこい、これが無口でな。まぁそこらへんはあいつに聞けばいいさ。
話し相手がいれば何時間でもしゃべってくれる・・」
「・・それは・・遠慮します・・」
「ははっ、それもそうだな!
・・・・・まぁ、・・・世間話はここくらいにしておくか」
急にクラークの口調が変わる
「・・囲まれてますね」
「・・わかるか?」
「これでも狩人ですから」
「なぁクラークさん、アル、何の話だ?」
「山賊・・だろうな、たぶん。まぁ野蛮人に囲まれているんだよ」
「ええっ!?そんな事が?・・どこだよ?」
クロムウェルが周囲をキョロキョロしながら言う
「視界に入ってたらもう動いているっての。
・・・アル、今から俺達がやらなければならないのは人殺しだ・・。
覚悟はできているだろうな」
「はい・・、はじめて皆さんに会った時にすでに腹は決まっています・・。
自分が進む道のためには、殺生も否めないと・・」
「・・いいだろう、じゃあその腕、見せてくれ。
クロムウェル、俺達はここで待ち構える・・いいな」
「ああ・・」
素早く得物のナックルグローブをつけるクロムウェル
クラークも荷物袋からブレードを取る
そうしている間にもアルは持参した木製を弓と取りだし矢を引く・・
「・・例え暗くても・・・てぇい!!」

ヒュッ!!

矢は闇を包み遠くで何かに当たる
「・・グエッ・・」
・・どうやら命中したようだ
「・・暗闇で命中させるとはな・・。まっ、姿が見えないんじゃ殺生を行った罪悪感も感じないか?」
焚き木の前でにやけるクラーク
声があったところから気配が消えたので殺したと断言したのだろう
「いえっ、弓っていうのは弦から矢を放つところで全て決まります・・。
弦を離した瞬間が僕にとっての殺生ですよ」
「そうか・・」
そうこうしている間にも矢を放つアル
一矢一矢が素早く顔つきもいつもの気弱そうなアルではなく一人の戦士を顔つきだ
アルの思った以上の腕に気配はドンドン減っていき
「・・全滅・・か。公社に入っただけのことはあるな」
「ええっ?俺・・出番なしかよ・・」
残念そうにグローブを外すクロムウェル
「まっ、出番はこれからいくらでもあるさ。ともあれ、おつかれさん。アル」
「ええっ、これで認めてもらえましたか?」
「もちろん、頼りにしているぜ」
クラークが親指立てて笑う
その日は功労者アルが一番良い寝床についた・・
逆に出番がないクロムウェルは一番風が強いところへ。
それに異議申立てをしたのだがクラークの一発で安眠したとさ・・。


それからも行く先々で山賊の襲撃があるものの
そこはツワモノ3人、強力な援護を手に入れた彼らにはいい運動相手にしかならなかった
ダンケルクに到着して数日・・
一行はついに目的地に辿りついた
「秘境ってのは言うだけのことはあるよな・・」
見た事もないような大木がそこら中にそびえている
ダンケルクの北国の寒さはそこにはなく妙に暖かくやわらかな日の光に包まれている
「神秘的・・っていうのでしょうかね?精霊達に守られていますよ」
アルも森育ちなだけに何かを感じ取っているようだ
「まぁ、人が住むような場所ではないが・・あれか?」
木々の隙間にかすかに見える一件屋が見え煙が出ているのがなんとかわかる
「そうですよね・・、違っていたらかなりの変人でしょう。連続殺人犯とか・・」
「そうだったら気絶してもらえばいいんじゃないか?」
「く・・クロムウェルさん・・」
「安心しろ、別に金目の物を奪うわけじゃない、行こうぜ」
「隊長まで・・」
オロオロするアルを余所に、山賊とあまり変わりのないことを言い出す二人はその家に走る
・・・・・・・
その家はできてから大分たっており所々痛んでいた
っといっても木の蔦がところどころ茂っており壁の材質がわからないようになっている

コンコン

「お〜い!誰かいるか〜!」
まるで森中に聞こえるくらいの大声でクラークが叫ぶ
近くにいた二人は耳をふさいで耐えていたり・・
しばらくすると
扉がゆっくりと開き中から褐色肌の老婆が出てくる
「そんだけ叫ばなくても聞こえる・・」
「あっ、わりぃ・・。ちょっと聞きたいんだけどあんたが女鍛冶師のミョルキルさん?」
「・・ああっ、そうだが・・何用だ?」
「ちょっと直してもらいたいもんがあるんだよ・・聞いてもらえるかな?」
「・・ふん。いいだろう・・入れ・・」
無愛想に招き入れるミョルキル、クラークは全く気にせず入るのだが
付き添いの二人はなんだか気まずそうだった・・。


「直してもらいたいものとはなんだ」
小さなテーブルに招きお茶も出さずに本題へはいるミョルキル
まぁ、突然押し入っているようなものだから仕方ないことだが・・
「これだ」
取り出すは例の木の杖。大事に包んでいた布を解きテーブルに置く
「仕込み杖か・・。どれ・・・」
試しに抜いて見るミョルキル、あの鋭い刃が姿を現す
「・・・・斬鉄剣・・か。これが折れる真似をするとはな」
「まぁ、無茶な技を使ってな・・」
「クラークさん、斬鉄剣って何だ?」
「小僧、教えてやろう・・っと言っても刃物を持った事のないお前に話しても意味がないかもしれんがな」
「なっ・・なんでわかるんだ!?」
「鍛冶師を舐めるな・・。斬鉄剣と言うのは東国の剣「刀」の中でも
特に優れたものに付けられる称号のようなものだ。
その切れ味は鉄をも斬りどんな事でも折れないと言う代物だ」
「・・折れてんじゃん・・」
「だから異常なんじゃよ。造り手の魂を凌駕する力が加えられた結果とでも言うか・・。
これを直して欲しいと・・」
「ああっ、そのためにわざわざグラディウスからきたんだからな・・」
「・・だが、こうなっては文字通りの付け焼刃にしかならんと思うがな。
切れ味は多少落ちるがいいか?」
「そうだな・・、まぁ刀が扱えるだけでもいいか・・な。頼む。金はこんだけある」
ドサッと金貨が入った袋を置く。
大きさからしてかなりの金額になるだろう
「金ならいらん。・・久々に面白い物を見せてもらったのだからな。
その代わりワシも刀を扱ったことが少ない。多少違うものになるかもしれないが我慢しろよ」
「もちろんだ!でっ?どんくらいでできそうだ?」
「一から造るわけではない・・っといえども色々なじませる必要もあるから・・な。
翌朝までには仕上げよう。今宵はここに泊まるといい」
「そうか!じゃあ何か手伝おうか?」
「素人に何ができる?しばらく外で遊んでいろ」
そう言うとぶっきらぼうに刀を持ち奥へと消えてしまった
「・・・・きつい人ですね」
「・・なぁ」
「でも直してくれるからいいじゃないか?変わり者だってのはよくわかったけど・・。
ともかく邪魔しちゃ悪いから外に出ようぜ?」
二人を軽く押して外にでるクラーク、荷物はそこに置いたままだ



「でもそんなに刀って使いやすいもんなんですか?隊長?」
外に出てぼ〜っと空を見ながらアルが言う
訓練しようともしたが神秘的な空気の中、それほど気合いもでないので雑談となった
「そうだなぁ。小さい頃から刀一筋だったからな。他のも普通に扱えるんだけど・・。
これも重いんだ・・ほらっ」
そう言うと自分のブレードを軽くアルへ放って渡す
「えっ?あ・・・・、おおおお!!重い!!」
アルがブレードを受け取ると同時にガクン!っと身体が傾く
両手が持たないととても持てるもんでもないようだ
「こ・・こんなもの振りまわしていたんですか!?隊長!」
「こんなもんっていうほど重くもないと思うけどなぁ・・」
「アルが非力なんだよ・・どれ・・・。!!、・・・・・・クラークさん、あんた化け物?」
試しにクロムウェルもブレードを持ってみる・・片手で持つがかなり重そう・・
「そんなに重いかぁ?ふむっ・・お前等、腕の筋力がまだまだだな。訓練に追加しよう」
「そっ、それは勘弁!でもそのたくましい腕でファラを抱いているわけか・・」
必死で話題を変えるクロムウェル、
訓練に追加ということはとんでもないメニューになりかねないことになるのだ
「馬鹿言え!俺とあいつはそんなんじゃ・・」
「でも隊長、この間隊長室でファラさんをおんぶしていたじゃないですか?」
「アル、あれは首を締められていたんだ。」
「それでも仲いいじゃん。サマルカンドの時だって大切な女とか言って・・。あいつ本気だぜ?」
「ファラは大事な仲間だってことで・・そう言うのは、だな・・」
「おいおい、クラークさん。このまま煮え切らない状態でずっと行くのか?
誰が見てもファラはクラークさんの事想っているって!なぁ、アル?」
「僕、そういうのちょっとわかんないです・・」
「俺も・・」
「カ〜!良い大人が二人して何言っているんだよ!」
「っうか俺、人と付き合ったことなんてないからさ。他人を愛するなんて事がよくわかんないんだよ。」
「ああっ、わかります。僕もそういうのがどうなのか・・」
「・・あんたら、病んでるよ・・」
「そうか?」「そうですか?」
「ともかく、こんな状態が続くとそのうちファラがキレてえらいことになりかねないからクラークさん!
告白しちゃいな!」
「おっ、おい・・。」
「絶対あいつもクラークさんからその言葉待っているって!
一緒にいたならそういうそぶり見せているんじゃないか?」
「・・まぁ、そう言われてみれば・・あったような気もするが・・」
「だろ?だからこの旅の土産にあいつが喜びそうな物を買って
『お前が好きだ!』って言えばうまくいく!俺が保障するよ!」
「・・・そうかぁ?まぁ・・日頃世話になっているし・・、感謝の言葉もかねてそうしてみるか」
「恋愛って言うのも大変ですね」
「馬鹿!良い女にめぐり合うかどうかが男の一生の中で一番大切な事だぞ!アル!」
「・・極端ですよ・・クロムウェルさん」
「そんなことない、まぁお前もいつかわかる日がくる・・女体の素晴らしさってのがな・・」
「・・・話、ずれてるぞ?」



翌日
昨晩からミョルキル宅で世話になったのだが早朝に彼女が工房からでてきた
クロムウェルとアルは旅先ということもありまだ毛布に包まって眠っている
「ほぅ、お前は起きているか」
「朝は早いんだ、それでどんな感じなんだ?」
「試してみろ」
今まで徹夜で打ち続けた剣をいとも簡単に放り投げる
クラークはそれを驚きもせずに受け取りぬいてみる

チャ・・

見事な刃が見える・・、以前折れていたものとは思えないくらいだ
「へぇ・・、ここまでできるんだな・・」
「ふんっ、元がよかった分うまい具合にできたが・・、半分は偶然だ。
この剣、銘はあるのか?」
「ああっ、名もない刀鍛冶が打ったらしくて一応『無銘』で通っているよ」
「・・・お前らしい得物の名だな」
「俺らしいって、まだ初対面だろ?」
「剣の痛み、それに動きからで人柄ぐらいわかるもんだ。
それに・・傭兵公社13部隊の噂はここまで届いている」
「あらあら・・」
「意外そうな顔だな?」
「いやだってさ。俺、そんなに活躍しているつもりないし・・」
「別に有名になるために剣を振っていない・・か?」
「まっ、そんなとこだ。こいつ等を守るため、そして自分を高めるために・・だな」
「ふんっ、いいだろう・・・。では試し斬りと行こうか?」
寝ているクロムウェルとアルを尻目に外に出ようとするミョルキル
「お・・おい、ばあさん相手に戦えっていうのか?」
「いいからこい」
「・・ああっ。」
年の功というものか、圧倒されながら老婆の後に続く

外はまだ朝の冷気に包まれており、大森林の中だけに寒い
その中、クラークと距離を置いてたたずむミョルキル
「・・本気でやる気か?」
「お前の相手をするのはこいつだ」

指をパチンと鳴らすと共にいきなり地面から何かが飛びあがる
ストーンゴーレムだ。
肩が鋼鉄のアーマーを装着しており強固の一言に尽きる外見だ
「わしの家の番犬・・っと言ったところだな」
「っうか番ゴーレム?随分いかついのを配置しているんだな」
「以前製造したのが弟子夫婦に潰されてな。改良を加えた結果だ」
「じゃあかなり厄介なもんだな・・ちょうどいい」
少し笑い斬鉄剣『無銘』を腰につけ構える
抜刀術の構えといわれる独特なものだ
それに応えるようにゴーレムが無言で突進する
勢いに物を言わせるショルダータックルだ
まともに食らうと例えグリズリーでも一たまりもないだろう・・。

そんな猛攻にただ構えのまま目を閉じるクラーク
そして・・

「アイゼン流一刀術!『霧拍子』!!」
目をカッと見開いた瞬間、クラークの姿が消えた・・
次の瞬間にはゴーレムの後にクラークが霧霞みのように現れる
『無銘』は抜かれており、輝く刀身が天を指している
ゴーレムはそのまま動きを停止した

「・・見事・・だな。」
「すまねぇな。壊しちまって」
「壊れたら造りなおす。それが改良というものだ」
「これ以上のモンを作るのか?これでも十分番ゴーレムにいいんじゃないか?」
「それではつまらんのでな・・。」
「まぁっ、物騒なもんにならなけりゃいいか」
軽く剣を振りパチンとしまう
その途端

ゴゴゴゴゴ・・・・

バラバラになって崩れるゴーレム、一瞬にして細切れになったようだ
その音にクロムウェルとアルも驚き窓から顔を出した
「何があったんだ!?隊長!?」
「ああっ、起こしちまったか。なぁに、ちょっと破壊活動をしただけだ」
「「???」」
何がなんだかわからない様子の二人
こうしてクラークの剣が甦った・・・・

「本当に金はいいのか?」
「くどいな。これでも得るものは得た。刀の知識やゴーレムの改良点やら・・な
それが代と思っておればいい」
「そっか・・、じゃあそう思うか。すまねぇな」
「ふん、これでも頑丈に造りなおしたつもりだ。もう折るなよ?」
「はははは・・はぁ」
折らない・・っと断定できないのが辛いところ・・

「結局俺達・・」
「ただ寝にきただけですねぇ」

「まっ、お前等の得物も気が向いたら造ってやろう
・・っと言っても今のお前達の腕には今の得物でちょうどいいだろう」
「耳が痛いな・・おい」
「まぁ、精進しなさい。じゃあ婆さん、またなんかあったら来るよ」
「ああっ、勝手にしろ」
そういうとミョルキルは最後まで無愛想に言いやり家の中に入ってしまった
・・・・
「変わった人・・ですね」
「だな・・」
「人間色々あるんだよ。じゃあ兵舎に帰ろうぜ?余り遅かったらファラやナタリーがうるさいし」
「「賛成です・・」」
得物を雄々しく持ち、3人は森を後にした・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
彼らが森の入り口に止めておいた馬に乗ってから30分ほど・・
ミョルキル宅へ現れる人影が一人
「庭にゴーレムの残骸がありましたが・・、魔物が襲ってきたのですか?」
朝までクロムウェルが寝ていた椅子に座る一人の男
銀髪に仮面をつけた青年・・・ロカルノ
マント姿の旅人スタイルだ
「いやっ、得物の試し斬りに使ったんだ」
「あのゴーレムを・・?誰か来ていたのですか」
「察しがいいな。そういうことだ。見たところお前と同格・・いやっ、それ以上の腕の持ち主だな」
「・・ほぅ」
「それよりも番犬がいなくて少し心もとない。
言われた鎧とゴーレムが出来上がるまで代わりになってくれ。最近は何かと物騒で・・な」
「いいですよ。ではゴーレムを片付けておきましょう」
そう言いながら外に出るロカルノ
・・・二人が出会うのはまだ先の話だ・・



それから数日
帰りは思ったよりもスムーズに進み、特に問題もなく兵舎に帰ることができた
13部隊兵舎ではナタリー、ファラ、フロスがいつものように仕事をしたのだが・・
「帰ったか・・。これで少しはゆっくりできるな」
うんざり顔で隊長室に座っているフロス
「悪いな、でも結果があったから安心してくれ」
帰ってくるなりソファに倒れるクラーク、流石に疲れているようだ
クロムウェル、アルは道中世話になった馬を兵舎の庭に
括りつけにいった。・・後で馬小屋を造り本格的に部隊のモノにしようというのだ
「でも、フロスのほうが書類仕上がるの早かったわよ?やっぱり貴方って駄目ね」
帰ってくるなり憎まれ口を叩くファラ、表情は嬉しそうなのだが・・
「ああっ、ファラ。後で話があるから俺の部屋まで来てくれ」
「えっ?・・・ええ」
いつもならここで口喧嘩になるのだが急に呼び出されるので唖然としている
クラークも特に表情を表していない
「じゃあ今日はもう休め。成果は明日聞こう・・。」
外はもう日が沈んでおり外は真っ暗なのだ
「ああっ、すまねぇ。じゃあまたな」
荷物を持ち隊長室を出るクラーク。
・・・・
「様子が変だな・・」
「そう・・ね」
「お前を部屋に呼んだのとつながりがあるようだが・・、心当たりはあるのか?」
「知らないわよ・・」
かなり不安そうな顔をするファラ・・
フロスは軽くため息をついて隊長室を後にした


クラークの部屋。
日中ほとんど隊長室にいるためにあまり荷物がない
あるといえばベット、机に趣味で持ってきてある大工用具ぐらいだ
「疲れた〜!!!」
ベットに倒れるクラーク。結構な距離の旅だったのでどうしても疲れてしまうのだ
ともあれ、荷物を放り投げる・・、片付けるのは明日のようだ

コンコン

「ああっ、開いているよ」
突然のノックに驚きもせずにクラークが言う。思ったよりも早くファラが来たよう・・なのだが
入ってきたのは
「邪魔をする」
いつもよりかはきつそうな表情のファラ
「・・・どしたんだ?お前が出てくるなんて・・」
「ファラがお前に会うのが恐いって言い出してあたしに交代させたんだ」
「俺が恐い・・?」
「ああっ、いつも憎まれ口ばかりだから不安がってな。今日のお前の反応に驚いたのだろう」
「会うたびに喧嘩しなきゃだめなのかい・・」
「さあな。・・・・でっ、何の用だ?」
「ああっ、お前に渡すものがあってな」
そう言うと荷袋から取り出したのは小さなネックレス
十字架に羽根が生えたデザインで中央に赤い宝石が入っている
「これは・・」
「土産・・っとでも言うのかな?俺も同じようなものを作ってもらったんだ」
もう一つ同じデザインで蒼い宝石が入ったモノを取り出す
「土産って・・、お前。こんな凝った装飾品、高いんじゃないのか?」
「まっ、そうでもなかったな。それで・・話というのは・・お前の事だ」
「・・・・」
クラークの言葉に思わず顔が引きつってしまうもう一人のファラ・・
彼女も内心かなり緊張しているようだ
「いつも一緒にいてくれてありがとな。旅先でクロムウェルに言われて気付いたんだが
俺は・・お前の気持ちに応えていなかったと思ってな」
「ちょっ、ちょっと待て!ファラが変わりたいって・・」
「・・えっ?まぁお前もファラなんだし・・」
「でもあいつがどうしてもって言うから・・・」
「わかった。でもお前にも言う事だから変わっても聞いていてくれよ」
「ああ・・」
そう言うとファラは一旦目を閉じる
次に目を開いた時にはいつもの彼女が・・
「・・横暴だな?ファラ」
「いっ、いいじゃない・・。あの子がいやがることをいつもやっているのだから・・」
「嫌がる事?」
「事務仕事、教官燃やしたとか前言ったのは彼女がしたの」
「さいですか・・」
「でっ、はっ、話って・・・何?」
「ああっ、そうだな。サマルカンドの時もいい加減なことをいっていたが・・
俺は人を愛することがよくわからない・・けれど・・」
「・・・」
「ファラ・・お前が好きだ」
「・・・・・・」
「・・・あの・・ノーリアクション?」
「・・・・・・・ありがと」
うつむきながらクラークに抱きつく
「まぁ、これからも頼む・・」
「うん・・私も・・貴方のことが好き・・」
静かに抱き締め会う二人
ファラは小さな身体をクラークへ預け、クラークはそんな彼女を優しく抱き締めた


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