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第四節  「勲士帰城」




王都カムイ
島国である東国の中心であり一番の華やぎを見せている正に都
現カムイ王であるタケルが住まう王城を中心に掘を挟んで城下町は栄えている
大陸の大都市に比べてみれば賑わいはそれほどでもないもののそれでも都
通路も整備されており表通りには綺麗な店も並んでおり屋敷等も多数見受けられおり
正にカムイ国にあるありとあらゆる物と人が集まっていた

──その中──

「・・・ここに赴くのもあの時以来・・ですか・・」

眼前にはカムイ王城、城下町と城を繋ぐ木製の頑丈な大橋の前にクローディアは立っていた
城へ赴くという事で着ている物もきちんとしており
漆黒の袴に藍色の道着を着た剣士の出で立ちで腰には愛刀である「月華美人」を下げている
長い黒髪に右目を隠す眼帯が特徴の女武芸者は気品が漂っており
此処に来るまで道行く人全てが振り向いていたのだが
当人はそんな目を気にする事なく2人いる門番の元まで足を進める
常時城門の護衛付く門番も彼女が歩み寄ってくる姿に見取れていたのだが、
自身の職務を思い出し軽く咳をしてクローディアに声をかける

「ま、待たれよ。ここより先はカムイが主であるタケル王の居城である。貴殿は何ぞ御用か?」

「タケル王にお目通り願います。私はクローディア=グレイス」

その透き通った声に門番達は圧倒されるのだが・・
「王に面会されるには相応の方でなければまかり成らん。クローディア殿か・・そなたは我が主と何のご関係か?」
「関係・・ですか。こちらを授かった・・っと言えばご理解いただけますか?」
そう言い懐より見せるはあの勲章・・
「菊の御紋・・?確かに我が主の家紋ではあるが・・」
「・・ま、待て。これは・・『勲士章』では・・」
恐らくは見るのが初めてな門番達、その煌びやかな紋様に目を奪われている
「疑いがあるならば勲士名の中に私の名がないか、ご確認下さい」
「しょ、承知した!しばし待たれよ!!」
門番の一人慌てて城内へ走っていく・・、


数分後、青い顔をして戻ってきた門番はクローディアを手厚く城内へと招くのであった



・・・・・・・・・・・・・



そのままクローディアが通されたのは城の最上階にある大広間・・
それは謁見用の広間であり柱の作りからしても荘厳な雰囲気に包まれていた
そして本来ならばそこには地方の有力者達が多数集まる場所なのだが
彼女を待っていたのは若い男と年齢を感じさせる熟女、そして護衛と思われる男が数人のみ・・

「わざわざご苦労、よくきてくれた・・クローディア」

爽やかに、かつ重圧のある声を掛けるは若い男・・
着ている物は絢爛豪華であり只者ではない雰囲気を漂わせている
「いえ・・ご無沙汰しております、タケル王」
対しクローディアは深々と頭を下げる
今彼女の目の前にいる2人こそがこの国の要・・
粗相のなきようにきちんとした態度で接しているのだ
「ふふふ・・久しぶりですね、クローディア」
「イザナギ様・・」
タケルの隣で静かに微笑む熟女イザナギ
現カムイの平和を導いた名君でありその名を知らぬカムイの民はいない
「勲士を名乗る者がこの城に訪れたと聞き驚きましたよ・・、ツクヨから聞いたのですか?」
「はい、私自身そのような章を頂いたとは夢にも思っていませんでした」
「何をおっしゃるのですか、アイゼンが嫌がるから言いませんでしたが・・
本来ならば貴方達は護帝衆にするつもりだったのですよ?」
「・・そんな事が・・」
自身に用意されていた出世の道に言葉を失うクローディアなのだが
その様子にイザナギは頬を弛ましている
「まぁ、そのような事はアイゼンが許さないでしょうけどね・・。それにしても本当、久しぶりです。
しばらく会わないうちに、女性らしくなりましたね・・」
「・・そ、そうでしょう・・か・・?」
「ええっ、そうですとも。以前の貴方には女性の魅力が欠けてました。
自ら女を捨てていたのですからね・・。
しかし、今の貴方はとても綺麗・・、ふふっツクヨの話ではクラークと良い仲になったそうですね」
「は、はい・・。でも、そのような事を話していたの・・ですか・・」
「もちろんです。ああ見えてツクヨも貴方の行く末を気にしているのですよ?
子が授かれば声をかけなさい。アイゼンよりも喜ぶでしょう」
「承知・・しました・・」
子供の話に頬を軽く染めるも何とか平静を装うクローディアなのだがイザナギは実に楽しそうにその姿を見ている
「でも、ほんと良かったですね。貴方は何時もクラークに対して熱っぽい眼差しを向けていたのですから」
「っ!・・そ、そうでした・・か・・?」
「ええっ、そうですとも。ふふ・・今まで何度彼を想い慰めて・・」「そっ!それよりも!事態はどうなっているのですか!?」
あらぬ方向に話が進んでいきそうなのを察知して強引に割ってはいるクローディアさん
その姿にタケルは苦笑を浮かべている
「七天阿闍梨院からの連絡は未だありません。
使いを出しましたが連絡がつかなくなり、いよいよきな臭く感じてきたところです」
話を脱線しないようにタケル自ら説明をしだし、
イザナギは少し残念そうな顔をしながらも彼に説明を任すようであった
「きな臭い・・ですか」
「ええっ、まだ決まったわけでもないですのが・・七天阿闍梨院が謀反を起こそうとしているとの声まで出てきています」
「──謀反・・」
「もちろん確定した事ではありませんが、国内から阿闍梨の姿が一斉に消えた事がそれを臭わせているとの声も多いのです。
そこで、こちらの動きに悟られないように、かつ居合いの達人であるクローディアに事実の確認をお願いしようとした訳です」
「わかりました・・。では私は七天阿闍梨院に向かい内情の調査を行えばいいのですね」
「はい、道中何かあるかわかりません。準備も必要です・・、詳しい場所などは説明しますので今宵は城内に泊まって下さい」
「お心遣い感謝します、タケル王」
「頼みましたよ、クローディア。ああ・・後、説明はアルベルトが行いますので一息ついたら鍛錬場の方に向かいなさい」
「ア、アルベルトさんが戻られていたのですか?
確か産まれた国を見に行くと言ったきり行方不明になったと聞いてますが・・」
「・・アイゼンですね。
ふぅ・・確かに自国を見に行くと言って音沙汰がなくなってしまいましたが人助けのしていての事だったのです
それに定期的にツクヨに手紙を送ってましたよ」
「そうでしたか・・・」
「今でも総大将としての職を全うしてくれています。以後の行動は全て彼の指示にて行って下さい」
「わかりました、ではアルベルトさんの元にて以後の行動の相談をします」
「お願いします、クローディアさん」
静かに頭を下げるタケル王に対しクローディアも姿勢を正し深々と一礼をするのであった



・・・・・・・・・・




現在カムイという国には正式な軍隊は存在していない
戦乱が終わり平穏を取り戻した以上、必要以上の戦力は不必要と判断したからだ
しかし丸腰であれば他国からの脅威にも、国内の内乱にも対応できない
そこでタケル王は島毎に警護部隊を配属され非常時の戦力とする事に決定した
そしてそれを束ねるのが近衛部隊である『護帝衆』であり、
数ある警護部隊での指揮監督から王族の護衛まで担当している
護帝衆の歴史は古く、かつてカムイにて帝政が行われていた頃に発足され
王政に変わった今でも民が風習として王を「帝」と言う事からその名が使われている
それだけの歴史を持っているだけに護帝衆に選ばれた者は一流の武士として認められカムイ剣士の憧れの的となっている
だが、それだけに危険な任務も回ってくる事が多く、カムイ城には彼らが日々体を鍛える施設が設けられているのだ



────

「失礼します」

城内一角に設置広々とした純木製の道場、
壁には刀や槍が多数掛けられておりそのどれもがよく手入れされている。
道場の外は中庭となっておりそこも訓練に使われている
彼女もここで何度か鍛錬をした事もあり懐かしさを感じながらも場所が場所だけに気を引き締め中へと入る
するとそこには身なりを正した一人の青年がそこに立っていた
やや長めの黒髪に緋色の瞳、顔立ちが整った好青年であり
「久しぶりだね、クローディア」
声も実に穏やかでクローディアに対して微笑みかけている
「アルベルトさん・・ご無沙汰しております」
彼こそがアルベルト、カムイの戦士の頂点にたつ者でありツクヨの槍を受け継いだ一流の槍士である
「ははは、そうだね。でも、ユトレヒト隊の噂は大陸にいた頃は毎日のように聞こえてきたよ。
クラーク君も有名になったものだね。」
「そうでした・・か。そこまでとは存じませんでした」
「おやっ、そうなのかい?傭兵公社出身の腕の立つ剣士として名は轟いていたよ。
もちろん、隻眼の女剣士の名もね」
「私の事もですか?それほどの事は・・」
自分の名が知られている事に何やら歯がゆい気分になるクローディア
元々彼女は地位や名誉などには無頓着であり自身を鍛えるために冒険者としてユトレヒト隊に加わったのだ
それ故に自身が鍛えられ、クラークに愛されるだけで満足であり自分の名声など全く気にも止めてはいない
仕事の管理もロカルノとアミルが行っているために依頼の多さも彼女が知る機会がなかった。
「ははは、クローディアらしいな。クラーク君は元気かい?」
「はい、達者で過ごしております。アルベルトさんもお元気のようで何よりです」
「こう見えても体は頑丈だからね。さっ、余り長話をしてもいけない・・そろそろ本題に移ろうか。
タケル様やツクヨ師匠からある程度現状は聞いているよね」
「七天阿闍梨院の謀反・・ですね。その事実確認という事で極秘裏に行動をしろ・・と」
「その通り、事実調査ともしも不穏な動きがあるのならそれを阻止するのが目的・・
でも彼女達はこの国の内政に深く関わってきただけに僕達の動向を探られているかもしれない。
だから僕達はうかつには動けないんだけど支援はきちんとさせてもらうよ」
「・・支援、ですか?」
「ああっ、七天阿闍梨院の総本山は北島の秘境にあるらしい。
何かあってもすぐに連絡を取れるように一人、君と同行してもらうよ」
そう言いアルベルトが手招きをすると庭の方から女性が一人ゆっくりと入ってきてクローディアに一礼をした
鮮やかな紅と白の巫女装束を身に包み艶のある黒髪を後ろで軽く結った活発そうな女性であり
歳はクローディアよりもまだ若そうである
「この人は・・?」
「紹介するよ、僕の補佐として働いてもらっているミズチだ。」
「ミズチです、この度はクローディア様の支援という事で同行させていただきます」
元気そうな声なのだが大事な席という事で無理に礼儀正しくしているのが見て取れる
「よろしくお願いします、ですが・・具体的にはどのような・・?」
「彼女はかつて『火燐』に所属していた戦巫女だよ。単独戦闘は元より式神を使った援護や支援なども得意だ」
「式神の扱いは苦手ですけど、ガンバリマス!」
「・・は・・はぁ・・」
意気込むミズチなのだが間違った方向に向かっているようでクローディアも返答に困っている模様・・
「ま、まぁまだ荒削りなのだが筋の良さは僕もツクヨ師匠も認めている。大丈夫だよ」
「先生の?」
「ああっ、ミズチは一時期ツクヨ師匠の元で世話になっていた事があるんだ。その繋がりで今の僕の補佐にも就いているんだよ」
「は、はい。それもこれもツクヨ様のおかげです」
深々とアルベルトに頭を下げるミズチ、自分の地位が分不相応な事を気にしているようであるのだが・・

『はっはっは、いつものことながら謙遜のしすぎじゃぞ?ミズチ。お主が補佐の任につけているのはお主の実力込みでの判断じゃ』

不意に豪快な笑い声とともに彼女の不安を否定する言葉が・・・
そして廊下から姿を見せるは大柄の老人
鍛え抜かれた肉体に着物を包み短く揃えた白髪が誠実感を漂わすものの顔に付いた無数の傷痕が威圧感を出し目立っている
その姿正に武士、笑っているものの気配は鋭さを持っており自然と緊張感を引き出されてしまう
だが、それはクローディアにとっては懐かしいものであった
「ゲントウサイ様、お久しぶりです」
「おう、クローディアちゃん。しばらく見ぬ間にまた女らしくなったもんじゃな」
「っ・・ゲントウサイ様もお変わりのないようですね・・」
女として褒められる事が少なかった彼女なだけに軽い言葉でも動揺するのだが
何とか平静を保ち会話を続ける・・
その姿にアルベルトも静かに笑みを浮かべていた
「はははっ、このゲントウサイ、この歳で性格など変わりはせんわ。
ミズチ、臆することはない。お主は荒削りだが腕は一流じゃ。
アルベルトの補佐である事に異議を唱える者など一人もおらぬ、自信をもて」
「ありがとうございます・・ゲントウサイ様・・」
「それよりも、ゲントウサイ殿。どうしたのですか?
確か今日は定例の大稽古のはず・・。時間としてはちょうど真っ最中のはずですが・・」
「何っ、隻眼の女剣士が城を訪ねてきたと耳に挟んでな。ちょいと顔を覗きにきただけじゃ」
にんまり笑う老剣士に若き総大将は「やっぱりか」と言わんばかりにため息をついた
「・・ふぅ、余りクローディアが来ていることを表沙汰には出来ないんですが・・ね」
「安心せい。情報管理は徹底しておる、隻眼の女剣士が城に来ているなど儂やイザナギ様以外は知らんし
門番達も女武芸者が来ている程度の認識じゃろう」
「それならいいのですが、稽古を抜け出すのは周りに示しがつかないですよ?」
「硬い事を言うな、アルベルト。愛娘が来たようなもんじゃぞ?」
注意するアルベルトに対しゲントウサイは悪びれた様子もなくさも当然のように言っている
彼にとっては細かい規律は興味がないようだ
「ま・・まぁまぁ。それよりもアルベルトさんやゲントウサイ様の所見ではこの一件どう思われますか?」
「そうだね・・、この城にも阿闍梨は駐在していて今までその時の気象情報やご祈祷、病の治癒等を行ってきた。
何度か話をした事もあるけど・・、彼女達は厳格でありながらも心穏やかだ。正直なところ謀反を起こすとは考えにくい」
気を取り直し自身の考えを述べるアルベルト
ゲントウサイもさっきまでの好々爺の顔を一瞬で消し彼の言葉に顔を縦に振る
「儂も同じ意見じゃな。この国の重要な情報を持ちながらも突如として姿を消したという事で謀反の可能性と言われているが・・
何かの異常に巻き込まれたと考えている」
「異常・・、でも阿闍梨は優れた術力を持った僧です。彼女達で手に負えない事態だったら・・」
「それを確認するためにクローディアに頼んでいるんだよ、ミズチ。
はっきりとした事がわからない以上僕達はうかつに行動はできないが、状況がわかり次第援護はするよ」
「アルベルトさんの援護があれば心強いです」
「儂も暴れさせてもらおうかの。・・それよりもクローディア、総本山は北島の森林の中にあると聞く。
道中はあそこの原生林を通る事になるが大丈夫か?」
「ご安心を、大陸では移動が困難な地域も多数ありました。そこで一通りは鍛えてきたつもりです」
「なるほどのぉ・・、男を追って大陸に行ったと聞いたがきちんと修行はしていたようじゃな」

「・・なっ・・」

ニヤリと笑うゲントウサイ、対しクローディアは顔を真っ赤にして硬直する
「あ〜・・ははは・・、君が旅立ってからアイゼン様が『自分の慰めだけでは我慢できなくなって追って行きよった』とね・・」
「お師さん・・」
だからイザナギがあんな事を言ったのかと脳天気な師に軽い憎悪の念を抱くクローディア
だが結果としては最愛の男と再会できたのだが大陸に渡る理由は武者修行以外の何物ではない
「はっはっは!そう怖い顔をするな。本当に男に溺れておればそのような剣気も出せぬわ。
お主がきちんと自身を鍛えてきた事は皆承知しておる」
「その通りだよ。だからこそツクヨ師匠も君に託したんだ。
・・さて、余り長話をしてもいけないな。今日は城の客間で休むと良い
明日は準備が整い次第出発し総本山への潜入を頼む」
「・・わかりました・・」
何とも言えない顔のクローディアなのだがそこで反論する訳にもいかず
気持ちを切り替えながらその日は王城にて一夜を明かす事になった・・

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