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第二節「東国へ」






「それで、東国に行くのか・・?」


「はい・・」



手紙を読んだその日の夕食後、お茶を飲みながらクローディアがその話を持ち出した
ロカルノやセシルも何事かと興味深げではあったのだが個人的な用事であるとわかったら
口を挟もうとはせず優雅に茶を楽しんでいる
「ツクヨ先生がわざわざクローディアを呼ぶとはなぁ・・でっ、どんな用事なんだ?」
「いえっ、中身については深くは触れていませんでした・・・。ただ私に助力を求める旨のみで・・」
「ふぅん〜・・その割には嫌に深刻そうねぇ、クローディア」
多少興味があるのかお茶を啜りながらセシルが口を挟む
白シャツにデニム短パンとだらしのない格好なのだが実に彼女らしい
「はい、先生の事です。相当な事情があると見て間違いないでしょう」
「ふむ・・それほどまでの人物・・か」
今度はロカルノ、仮面の下に覗かせる緋色の瞳もまたツクヨという女性の興味に満ちていたようだ
「ああっ、『烈槍のツクヨ』今のカムイを形作った英雄でもあり王にも顔が利く
その気になれば国直轄の部隊を指揮する事もできる・・
しかしクローディアに頼んでいるって事は、それなりの事なんだろうさ
連中よりもクローディアの方が優秀なのは俺も認めるしな」
「そんなっ、護帝衆(ごていしゅう)の方々の中には私など足下にも及ばない方もいらっしゃいますよ」
「その護帝衆の総大将がツクヨ先生の弟子なんだぜ?お前ももっと自信持てよ」
「兄上・・・はい・・」
兄のお褒めの言葉に頬を染めるクローディア
「全くもってあっついわね〜・・でっ、お呼び出しはクローディア一人なの?」
それに対し冷ややかな眼差しのセシルなのだが
内心では羨ましがっている事は間違いない
「ええ、私一人との事ですので・・」
「身内に用件も告げずに助力を求めるんだ、目立たない行動が必要となる
カムイでは私達が同行しても目立つだけだ」
っとある種一番目立つ男ロカルノが言う。
「じゃあ、クラークさんだと大丈夫なんじゃないですか?」
「クラークは別の理由だろう。・・・ことある事に面倒事に巻き込まれては隠密どころではないからな」
あきれ顔で毒を吐く仮面の貴公子なのだが、その理由に一同深く納得している
体質とは言えども、それで一同面倒事に巻き込まれた事は一度や二度では利かないのだ
「・・うるせぇ・・、でっ、一人で大丈夫なのか?」
「ご心配無用です、兄上。こちらで世話になる前は諸国を渡り歩いておりました。
それに・・例えカムイで難儀に巻き込まれても先生やお師さんがいらっしゃいますので・・」
ニコリと笑って見せるクローディア、華奢そうに見えても一騎当千の実力は持っている
だからこそ、遠方よりも助力の申し出もあったのであろう
「じゃあしばらくはカムイに滞在する事になりそうですか?」
「そう・・ですね。長くはならないとは思いますが少しの間向こうで過ごす事になりそうです。
キルケ、その間兄上の事をお願いしますよ」
「はい♪任せてください!精一杯面倒を見ますよ♪」
ニッコリとキルケが笑う、清楚で爽やかな笑みなのだがどこか毒がある気もする

「・・ふっ、頼もしい事だな?クラーク」

「・・だからうるせぇって・・」

茶化すロカルノに不機嫌そうにクラークが返している
そこへ
「・・ですが、火急の用なら船旅は大変でしょう?よろしければ近くまで送りますよ?」
気遣いながらクローディアに提案するは漆黒のドレスを身に纏った紫髪の淑女アミル
一見すると献身的な美女なのだがそれだけではなくその本性は飛竜
海を渡る事など朝飯前だったりする
「それはありがたいのですが、余り目立たない方が良いと思いますので・・」
「その心配は無用だ。竜が飛ぶ姿は目立つからな、姿を攪乱させる術をアミルに教えた。
よほど魔術に長けた者でない限り気付く事はないだろう」
「ふぅん〜、そんなの覚えたんだ。でもアミル達って魔術詳しかったよね?そんな術とかなかったの?」
「あんな秘境じゃ。人目を気にして飛行する事などほとんどなかったからの。
必要性のない術などあったとしても忘れていくもんじゃよ」
大いばりで食後のミルクティー(砂糖山盛り)を飲むは巫女服姿のおかっぱ桃色髪角娘ことメルフィ
お子様ながらも飛竜であり非常に偏った知識の持ち主であり自分の知っている事に関しては自信満々でしゃべりだす
「日の光を遮って影を作ればどうしても地上で暮らす人に気付かれますからね、
恐らくは誰も気付かれずにカムイまで送れると思います」
「わかりました・・では、恐れ入りますがお願いしてもよろしいですか?」
「ええっ、悦んで。それでは出発は明朝でよろしいですか?」
「そうですね、ある程度の準備はしておきたいので明日お願いします」
「ふ〜ん♪準備・・ねぇ、しばしの別れにお腹一杯にしておきたいのぉ?」
悪戯っぽく笑うセシルさんなのだが・・
「お腹一杯・・?カムイの食事は確かに豪勢ではありませんが十分ですけど・・?」
当の本人は何のことかまるでわかっていない
・・まぁそれがわかるほど『汚れて』はいないのだ
「違いますよクローディアさん♪下のお口を濃厚なミルクでお腹一杯にしておきたいのかって事です♪」
「えっ!!」
同じく悪戯っぽく笑うキルケに今まで涼しい顔であったクローディアの頬に一気に朱が乗る
毎日のように肌を重ね、その仲は身内にもわかりきっているのだが
いきなりそんな話を振られるとやはり恥ずかしいらしい
「んっ?昨日の3回だけじゃ未だ足りなかったか?」
「い、いえ!そんな事はありません!ですが・・今夜はキルケの番ですし・・」
顔を染めながらもキルケに気を使う、
仲が良いこの2人は愛する男もきちんと分け合っている
故に邪魔する事に気が引けてしまうのだ
「気にしなくても大丈夫ですよ♪クローディアさんが留守中毎日頂いちゃう訳ですし♪」
それに対しキルケはうっとりと手を組み妄想に頭を巡らせている
童顔で純情そうなのだがその若さにして性経験は中々のものであり
前も後ろもクラークに捧げている、それだけではなく色んなプレイにも挑戦中で
クローディアが留守ともなると存分に冒険できる訳で・・
「・・あ〜・・まぁ・・ほどほどにな。でっ、どうすんだ?クローディア?」
「え・・あ・・そ、その・・。今回は先生の元へ参りますので・・遠慮して・・おき・・ます・・」
「ん〜、そっか。まぁツクヨ先生の事だもんな・・『ふしだらですよ』と説教されたら適わないか」
「はい、すみません・・」
シュンっと落ち込むクローディア、礼儀を重んじていてもそこは年頃の娘
男に愛してもらえない事は残念で仕方がないらしい
「う〜ん、じゃあ今日は久しぶりに清く暮らしますか」
対しキルケもクローディアが我慢しているのも目の前に肌を交える気はないようである
ここらがこの三角関係を成立させている要因と言える
「・・ってかそれが普通なんじゃない?ねぇ、ロカ?」
「さてな、男と女の関係を自分の杓子定規で計るもんじゃない・・」
達観している仮面貴公子、そしてそれを熱い眼差しで見つめる漆黒淑女
多少妙な話題にはなったものの今日のユトレヒト隊も濃密な空気に包まれているのであった





・・・・・・・・
・・・・・・・・




数日後

クローディアは東国の地に無事到着していた
動きやすいように最低限の道具を纏め腰には刀を差した着流し姿。
竜に跨るには少々動きにくいのだがそこはアミル、クローディアに気遣いながらも見事な飛行にてカムイの地へと送り届けた
・・因みに帰路がわからなくならないようにとロカルノも同行。
帰りは2人っきりという事で出発前にそれを理解したセシルが「やられた!」っと狼狽していたという・・
そしてクローディアはそのままツクヨの家に・・ではなく少し寄り道をしていた
飛竜で移動しているとは流石のツクヨも想像してはいないと思い立ち寄ったのだ
本来規律には厳しいクローディア、時間に余裕を持たせて行動を心がけているのだが・・



「・・・・姉上・・」



肉親の墓参りとなるとそれはまた別。
時間の余裕を見て彼女は姉であるナタリーの墓の前に立っていた
ナタリーの墓は山の中腹にある古びた寺の隅にある質素な物・・であったのだが今はそれが見違える程の物となっており
高価そうな石材を使った綺麗な物に変わっていた
それはナタリーを慕っていた男クロムウェルからの提案・・
彼とクローディアでナタリーの墓を立派な物にしようという事でそれをクロムウェルに頼んだのだ
しかし、完成した実物を見るのは今回が初めて
予想以上に立派な物にクローディアも自然と笑みがこぼれた
そして・・

「クロムウェルさん・・」

墓に添えられている花束、まだ添えられてから日が浅いようであり枯れてはいない
そして墓前に置かれているは蒸留酒・・
島国では余り見かけない種類の物であり、それが意味する事は一つ
その事にクローディアから自然と笑みがこぼれた
そこへ・・

『おや・・もう来ていたのですか・・クローディア』

落ち着き払い、凜とした女性の声が・・
振り向いてみればそこにいるは赤い着流しを着て髪は艶のある長髪、
両目には包帯のような布が覆われており一種独特な雰囲気と妖艶さを醸し出している
「先生・・」
「文を送ってからの日数を考えるといささか早いようですが・・、ご苦労様ですクローディア」
フッと口角が上がる、それとともにクローディアも頬を弛ませ一礼をする
彼女こそがツクヨ、東国最強の女傑と呼ばれた女戦士である
「いえっ、こちらこそご無沙汰して申し訳ありません」
「大陸にいるのでしたらばそれも仕方ありませんよ、それに・・腕も上げたようですね・・」
目は見えずとも弟子の成長を感じるツクヨ、
心眼を体得している彼女にしてみればそのぐらいは朝飯前のようだ
「は、はい・・、ですがまだまだ未熟、また稽古をお願いします」
「わかりました。・・それで、ナタリーの墓参りを先に済ましにきたのですね」
「はい、たまさかに手を合わせたいと・・、先生もですか?」
「そのようなものです。少々、気になっていましてね」
「気になる・・?」
「その花を添えた人物・・ですよ。ここの僧に来たら私にその事を伝えるように頼んでいたのです」
アイゼンと同じくここの寺の僧を使いっ走りにしていたらしいツクヨ・・
だが、当然その報酬は渡しており、弟子であるナタリーの墓の管理も彼女が一枚噛んでいるのだ
「クロムウェルさんの事・・ですか。気になると言うと何かに憑かれているという事ですか?」
「──いえっ、純粋な興味です。あのジャジャ馬娘をここまで慕い年に数度海を渡って来る男を・・ね」
「先生がそこまで興味を持たれるとは・・」
「まぁ、アイゼンが余計な事を言った事もあるのですがね・・。彼もその男を気に入っていたようですし・・
クロムウェル=ハット、現貿易都市ルザリア領主・・。
あの暗殺拳『闇手闘舞』を交えた独自の格闘スタイルを確立した格闘家。
そしてナタリーに光を与えた男・・、ふふふっ、会う機会があれば手合わせを願いたいものですね」
静かに笑うツクヨなのだが何やら物騒な気配も漂っている
落ち着き払えども中々に好戦的なようでありクローディアも苦笑を浮かべている
「せ、先生・・?」
「・・っと、すみません。血が高ぶってしまいました・・あのナタリーが鍛えた男がどれほどの物なのか・・興味がありましてね」
「素晴らしい御方ですよ。・・それよりも、この度私を呼んだ理由とは・・」
「・・・、そうですね。今はそちらの方が大切でした。
ですがここで話すのも野暮なものです・・。
まずは彼女に手を合わせて、私の家に向かいましょう」
そう言い2人の女傑は静かに墓前で手を合わす
そして訪れる無音、1秒のようでもあり10分のようでもある祈りの時間が済みクローディアは息をつく
「また・・来ます、姉上。では先生、参りましょう」
「そうですね。ですが・・クローディア・・」
「??・・何ですか?」

「『男の匂い』がします・・・ふしだらですよ」

真剣な顔つきでそう言うツクヨ・・、
数日間禁欲生活を送ったはずのクローディアはその言葉に目を白黒させるのであった

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