第一節  「師の文」




薄暗い広間がある。
壁や床は頑丈な木製で飾り気はなくどこかの宮殿を思わせる広さを持っていた
人が幾人も集まり会議が出来そうな大広間なのだが灯りはほとんどない
さらには空気が澱んでおり広間の奥には異様な物が聳えていた
それはまるで床を突き破って成長した大木・・しかし肉質は植物のそれではなく生物のそれ
ヌラヌラと濡れており至る処から触手が生えている
そして触手が伸びる先には・・

「んんっ!!んんっ!!」

「はぁ!はぁ!・・んぁ!!」

数人の若い女・・装束のような物を身に纏っていたのだろうがその原型は留めておらず
白い肌にどす黒い紫色をした触手が絡みつき、弄んでいた
絶え間なく触手の先端から放たれる白濁液、それは女の美しい黒髪を穢しドロリと床に溜まっていく
「んっ!んっ!んっ!」
口と秘部は触手に深々と犯され、触手の動きに合わせ女の体は人形のように動く
目は虚ろであり腹部は風船のように膨れあがっていた
乳房には別の触手がへばりついており女から乳を強引に吸い取っていた
それは周りにいる女達も同様であり全員触手に犯され、孕まされ、乳を搾られている
しかし、抵抗する素振りはなく寧ろ嬉々として白濁に塗れていた
そこへ・・

「んー!んー!!」

四肢を拘束され口を塞がれながらも抵抗する一人の女性がどこからともなく触手に引きずられてきた
白い装束、美しい黒髪は周りの女性達と同じ物であり瞳は鋭くその大木を睨み付けている
突然の訪問者に犯されていた女の一人が解放されフラリと立ち上がり彼女へと近づいてくる
「ん・・はぁ!ミコト姉様!これは一体・・!」
「遅かったわね・・」
口を解放された彼女、妊娠されられている目の前の女に対して呼びかけるもその相手は静かに笑っていた
「気を確かに!今私がお助けします!」
「大丈夫よ、クスキ・・それよりも、貴女も・・」
白濁に塗れた体で拘束されている女性クスキに抱きつく
そして
「姉様!?・・んむ!!?」
もがく彼女の唇を奪い舌を潜り込ませる、
生臭い液体が彼女の頬を穢すのだがそれを気にする間もなく異変が起こる

ズリュズリュ!!

「んぐ・・!!?んーーーーーー!!!」
ミコトと呼ばれた女の喉の奥から何かが走り、クスキの喉へと入り込んでいった
「ふふふ・・」
「かはっ!おぇ・・!姉・・様!?」
「さぁ・・貴女も体を差し出しなさい・・」
「何を・・っ!?な・・に・・!?」
突如体が勝手に震え出す・・それとともに白く美しい肌がボコボコと膨れあがるような感覚に襲われた
「根を下ろしていくわ・・ふふ・・」
「いやぁ!!!やだ!やだぁ!!!」
見れば彼女の細腕や首元に木の根のような不気味な管が浮き上がり全身へと広がっていく
それが広がりきったところで管はフッと彼女の体に消えていった
「わ・・私、どうなっちゃったの・・?」
「ふふふ・・」
ニコリと笑ったその瞬間、付近の触手が一斉に蠢き彼女を捕らえていく
「いやぁぁ!姉様!助け・・・!!」
恐怖に顔を歪ませるも一瞬、無数の触手が体にまとわりつき、
後は快楽の地獄が彼女を待っていた






──────




その出来事が起こった地から遠く離れた大国ハイデルベルクの田舎町プラハ
その町外れにある冒険者チーム、ユトレヒト隊の居城である館では今日も一日が始まろうとしていた

「ふぁあ・・、ふぅ」

自室にてゆっくり半身を起こし起床するはリーダーであるクラーク
朝には滅法強く時間通りに目が醒める
日がまだ姿を見せず外では微かに朝の気配を漂わせている
上半身細く鍛え抜かれた裸体を晒し時間の確認をする
やや長めに髪、顔つきは穏やかなものでやや眠気眼である
「ん〜・・今日はちと早かったか・・」
窓の外を見て時間を確認、見た感じわからないのだが同じ様な時間帯に何時も起きている彼には大体わかるらしい
そのままもうひと眠りしようかとも頬を掻くクラーク、
そこへ・・
「ん・・んぅ・・」
彼の隣で寝返りを打つ美しい女性の姿が・・
彼の義理の妹にして恋人でもあるクローディア。
兄が裸ならば妹も当然裸、くびれた腰形の良い胸が少し震えた
普段兄の前以外だと感情を余り表に出さないクローディア
だが寝顔は実に穏やかであり幸せそうに寝息を立てている
「すぅ・・すぅ・・」
外気に触れ少し寒そうながらも起きる素振りは見せない
っというのもこの妹、実は朝が苦手だったりする。
加えて昨晩最愛の男に抱かれその胸の中で眠りについたのだ
早く目を醒ましたくはないのだろう
「う〜ん・・悪戯したくもなるが、流石に気持ちよさそうだから寝かしてやるか・・」
軽く妹の頭を撫で再びベッドに沈むクラーク
それとともに眠りながらも彼に抱きついてきたクローディア
「・・しょうがねぇな」
甘えてくる妹に苦笑しながらもしばらくは朝のまどろみは続きそうであった


・・・・・・・・・


数時間後、朝の訓練を終わらせて朝食を済ませたユトレヒト隊
そのまま一日の始まりという事で各々行動を開始させる。
仕事の依頼がある者は出発し、それがなければ基本自由・・
堅苦しい事はなく最低限の決まり事だけなのがこの館の生活である
その中でクローディアは自室にて刀の手入れを行っていた

「・・・・・」

こざっぱりとした和室、その中央にて正座をし拵えを分解した得物をジッと見つめる
その顔は今朝方兄のベッドの中で幸せに包まれた女のモノとは違い、正に剣士のそれとなる
そしてそのまま精神を集中させてゆっくりと刃を研ぐ
扱い慣れた磨ぎ石での研磨、こうした事は刀鍛冶の専売特許なのだが得物の管理として持ち手にも必要な技術故
クローディアも何もなくても月に一度の割合で刀の状態を確認する
一磨ぎに魂を込めてゆっくりと磨ぎ切っ先の見つめる
その動きは緩慢にも見えるのだが刃は確実に鋭さを増していく
それほどの作業ではないのだが彼女の額にはうっすらと汗が滲み丁寧に刃を磨ぎ続ける
張り詰めた空気、呼吸を整えただただその作業に没頭する
そこへ・・

コンコン

『クローディアさぁん〜、今大丈夫ですか?』

軽いノックと明るく柔らかい声が・・
それにより緊迫した空気は一瞬で消え去り、クローディアは軽く息をついた
「はい、開いてますよ・・キルケ」
「失礼します、あっ・・刀のお手入れ中でしたか・・」
ドアを開け入ってきたのは黒を基調としたメイド服を着た金髪のオサゲの少女キルケ
ユトレヒト隊の一員で後方支援を得意としているムードメーカー
そしてクローディアにとっては妹のような存在である
もっとも・・それだけの関係ではなく2人とも同じ男を愛し、愛されているという珍しい間柄ではあるのだが・・
「いえっ、ちょうど一息つこうと思っていたところです」
手に御盆を持ちティーセットを用意しているキルケに対しクローディアは静かに微笑み、手早く刀と磨ぎ道具を片付けた
「よかったです♪じゃあお邪魔しますね」
ニッコリと笑い畳部屋に上がるキルケ、そして手早くお茶を淹れる
こうした家事はお手の物、メイド服は伊達ではないのだ
「すみませんね、兄上は・・?キルケと一緒ではなかったのですか?」
「ああっ、クラークさんなら久々に買い物でもしてくると言って町に行きましたよ?」
「町に・・ですか・・」
「ええっ、町に・・です」
何とも言えない顔つきになる2人、
っというのもクラークという男、体質なのか何なのか、トラブルに巻き込まれる事がやたらと多いのだ
冒険者稼業をしている分それはある種ありがたいものなのかもしれないのだが
平穏な日々を送るにしてはいささか騒々しくはある。
「まぁ・・プラハでしたら・・大丈夫でしょう」
「そうですね・・」

同時刻クラークはプラハにて何故か迷子の親探しをしていたという・・

「あっ、そうだ。そう言えばクローディアさんにお手紙が届いてましたよ?」
「私に・・ですか?」
「はい。ツクヨという人からですね、どうぞ」
そう言い懐から綺麗に折りたたんだ手紙を取り出しクローディアに手渡す
「先生から・・」
その手紙を受け取り、書かれた字体に懐かしく微笑む
普段の彼女からしてみれは滅多に見られない表情にキルケも何やら興味が湧いていたようだ
「先生・・ですか?」
「ええっ、この手紙の主は私にとって師であり親でもあります」
「へぇ・・あっ、じゃあクラークさんもそうなのですか?」
「兄上は・・少し違いますね。先生は私に『心眼』を授け光をくれた御方です。
目の良い兄上は余り先生の元でお世話になる機会はありませんでした・・
まぁ、乱取りで骨を折られる事は何度もありましたが・・」
何ともなしに言うクローディアなのだが、キルケは目を丸くして驚いている
彼女にしてみればクラークがそこまで簡単に倒されるのが想像できないのだろう
「クラークさんが、ですかぁ・・。すごい人なんですね、その人は・・」
「そうですね・・。槍術の達人で東国最強の女傑とまで言われた御方です。
その一撃は雷の煌めき・・、避ける事もままならず例え防具で受け止めたとしても撃ち貫く・・
あの御方に比べたら私などまだまだです」
「も、ものすごく強い人なんですねぇ・・、その人と文通をしているのですか?」
「いえっ、一線は退きましたが先生も忙しい身ですので。何か用事があるのでしょう・・」
そう言いながら手紙の封を切り、中を文を確認しだすクローディア
しばらくは穏やかな顔つきであったが・・内容を確認するにつれてその表情は怪訝な物に変わっていくのであった





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