三章  「北の地」


王国ハイデルベルクの最北ノースリヴァー
村の北を流れる川からこの名がつき、
その川を越えるとそこは緑の国ダンケルクだ。
ハイデルベルクとダンケルクは友好国であり国境沿いでも警備兵はそういない・・
「・・・寒い・・」
村の警備詰め所に入って第一声・・・
「・・・こんなところで警備なんてどうするのかしらね・・・」
防寒コートをまとったタイムが疑問に思う
詰め所自体がだいぶ使われていなくなんだか廃屋のようだ
「だいたい!隣国のダンケルクはうちらとは友好国でしょ!?
こんなとこ警備する意味ないじゃない!?」
「一応の位置決めじゃない・・?ブレイブハーツは5本に見たて国に
五芒星を描くように配置されるって聞いた事あるし・・」
「へぇ、そうなんですか・・・。でも・・・ここって使われてませんよね」
廃屋な詰め所にクリスも唖然
「・・・騙された・・・。絶対騙された!!あの禿げ親父残った髪も凍らしちゃる!!!」
「・・今から王都に行く気・・?諦めて今後のことを考えましょう」
「・・とりあえずここの隊員は3人、セシル先輩、タイム先輩、私の3人ですね」
暖炉に火をくべながらクリス・・。
冷え性のようでガタガタ震えている
「そうね・、たった3人でも一応はこの村を支えるわけだし、
ブレイブハーツの使い手のセシルが団長ってことね」
タイムが机に腕をつきながら唸る
「ああ・・・、減給処分がこんなことになるなんて・・・・・・・」
予想を大きく覆した事態にセシルも唸る・・・

そこへ村長らしき人物が挨拶しにきた
「どうもっ、まさかブレイブハーツの使い手様がここに訪れるとは・・」
神にでも拝むかのようにセシルを崇めるじいさん
「ここは代々『氷狼刹』の使い手が治める場所になっているんだったのね・・?」
「さよです。前使い手が亡くなられてから随分荒れて申し訳なく・・」
「まあ、いいわよ。貴方はここの村長さん?」
「はい・・、そう言われております」
「そんなにかしこまらなくて良いわよ・・。私が一応ブレイブハーツのセシル。
まぁ困った事があったらお願いね」
「はは〜!!!」
くそ丁寧な村長に唖然とする女3人
「まっ、まぁいいわ。でも派遣されたのは私達3人だけなの、
人手が必要なときは色々お願いするね」
「はっ、それなら今ここに駐在している傭兵さんにも話しかけてみてください。
きっと力になってくれます」
「傭兵・・さん?」
首をかしげるクリス
「はい、「傭兵公社」の方がしばらくこの村に滞在してるのですよ。」
「タイム、傭兵公社って・・?」
「軍事国家グラディウスの国営傭兵ギルド・・っと言ったとこね。
傭兵のエリートが隊をなして
金額に応じて様々な国に派遣されているわけよ。」
「・・変わった試みですね〜」
「騎士という形にこだわらず国を潤し最強の兵隊を作る・・、その試作行為ね」
「まぁ、用は便利屋ってことね」
難しいことはわからないセシルなので簡単に考える
「ありがとう、村長さん。後で挨拶しにいくわ」
「へへっ、では私はこれで・・・」
そう言うと村長は静かに去っていった
・・・・・・
「傭兵公社の部隊が駐在・・か。問題にならなければいいんだけど」
「・・・・よし!ではここはリーダーのこのセシル様が挨拶しにいってくるわ!」
「いよっ!待ってました!!」
何気にあおるクリス
「・・・暴動起こさないでね・・」
「わ〜ってるわよ!待ってなさい!!」
そういうと一人詰め所を飛び出すセシル
・・・・・・
「・・場所・・わかるんでしょうか?」
「・・・知らないでしょうけどセシルの事だから勘で何とかなるでしょう」
「そうですか〜」
改めて先輩を尊敬するクリス
「さっ、今のうちに詰め所の整理しておきましょう・・・。
せめて寝室に暖房が利くぐらいにしておかないと夜が辛いわ」
「わかりました。それと掃除もですね・・」
リーダーをさしおいて二人はテキパキと新天地での支度を始めた



タイムの予言通りセシルは道に迷い、勘で怪しいテントを発見した
辺りは針葉樹が生い茂る林・・、村からは少し離れているようだ・・。
木々のすり抜けるように風がうなりそれがまた寒い・・
「ちわ〜!!!ハイデルベルク騎士団だけど誰かいる〜!!」
テント前で大声を上げる・・
「あっ、は〜い!!」
出てきたのは緑の長髪をしたひ弱そうな男
(・・・クリスみたいな男ね・・)
「あの・・っ、騎士団の方ですよ・・ね?」
「・・あっ、そうそう。今日付けでそこの村に駐在することになったセシル=ローズよ。
貴方達は傭公兵社の人間・・だっけ?」
「傭兵公社ですよ。セシルさんですね。僕は13部隊のアルフォードと言います。」
「うんっ、素直に名乗ってくれてありがたい・・。貴方一人なの?」
「後一人いますけど今狩り中で留守でして・・・。でも何用ですか?」
「ああっ、駐在することになったのはいいけど騎士団の人間3人しかいないのよ・・。
何かあったら相談してみろって村長に言われたのでね。まっ、挨拶変わりよ♪」
「わかりました、でも3人って・・大変そうですね・・」
他人の心配するアルフォード
「なんか傭兵に心配されるのも・・・。」

「あっ!アル〜!!何っ!?ナンパ!?やるじゃな〜い♪」
林から声が聞こえた
見ればそこには野うさぎの数匹つかんだ黒髪の女性が・・
両腰に刀を差し動きやすいレザープレート。髪もダブルポニテといった感じだ
「違いますよ、ナタリーさん。こちらはセシルさん。
ハイデルベルクの騎士で今日から村に勤務になったそうです」
「・・あっ、セシルよ。よろしく」
「へぇ、騎士さん。私ナタリー。ナタリー=グレイスって言うの。
いやっ、お互いこんな寒いとこに勤務なんてやってられないわよね〜、
まっ、一つよろしく!今度飲みに行きましょ♪」
凄い活舌のよさでしゃべりまくるナタリー・・
「ボソボソ(・・この人、なんだかしゃべりまくっているんけど・・)」
「ボソボソ(気にしないで下さい。これが普通なもので・・)」
「な〜にぼそぼそしゃべっているのよ?さては、セシルさん!この野うさぎが欲しいのねえ!?
残念だけどこれは獲った私の一人占めよ♪」
「なっ、ナタリーさん!!じゃあ僕の分は?」
「あんた弓使いでしょ〜!?夕飯くらい自分で用意しなさい!」
無慈悲な一言にアルフォード轟沈・・
「まっ、まぁ・・にぎやかなのは結構ね。でもおたくらなんでこの村に来たの?」
「「ん〜・・」」
その一言に悩む二人
「すみません、公社の決まりで任務について第3者に話すのはタブーなんです・・」
「まぁ村に危害を加えたりしないから安心して!
ほんとは喉のここまで出かかっているんだけどね〜、違反するとアイツがうるさいのよ〜」
「わかった・・けど、アイツ・・?」
「ああっ、僕達の隊長のクラークさんのことです。ナタリーさんしょうがないですよ。
隊長が一番責任重いのですから・・・」
「はぁ、しょうがないね・・。そんなわけよ。今度飲みましょうね♪」
感情の切り替えが激早いナタリーさん・・
「(・・・変な奴ら)いいわね!まぁ私達はちょっと詰め所の掃除とか忙しいから
落ち着いたら・・ね。じゃっ、今日はこの辺で〜!」
挨拶もそこそこ、セシルは詰め所に戻ることにした

「いや〜、こんなとこで勤務なんてほんっと大変そうですね」
「そうね〜、でもあの腰の剣・・気にならない?」
「あのディフェンダーですか?僕は・・さっぱり・・」
「ううん・・、まぁ私達の任務の邪魔にならなけゃそれでいいわね♪」
テント前で傭兵達が談話・・。
はたから見たらそうには見えないのがこの部隊のお方々・・・


「ただいま〜・・・って、うわっ!」
詰め所に戻って驚くセシル
そこら中綺麗に磨かれておりクリスが汗だくで寝転んでいる
「あ・・、セシル先輩・・おかえり・・・なさい・・」
「・・どしたの?」
「掃除には力み過ぎたみたいね・・」
奥から鍋を持ってくるタイム・・・
「へぇ、がんばったじゃない!後でなでなでしてあげる♪」
「それよりもどうだったの?傭兵公社の人間は?」
「そうね・・・、良くしゃべる女とひ弱そうな男の二人組みみたいだけど両方ともかなりの腕ね。
人数からして・・何かを監視しているみたい」
「・・・こちらと敵対しそう・・?」
「んんにゃ、結構友好的よ?今度飲む約束しちゃったし・・」
初対面で飲む約束までした同僚に呆れるタイム・・
「まっ、何かあったら協力願おうかしら・・。クリス、食事にしましょう」
「は・・はい・・」
クタクタなクリスを起こさせるタイム・・・
「バテバテね・・。今度私がスタミナドリンクを作ってあげる♪」
「先輩・・、私のために・・」
後輩想いのセシルに感激・・なのだが
「やめなさい!これ以上被害者を出す気!!?」
鬼の如く怒り出すタイム・・、普段の彼女とは思えない形相だ・・
「タ、タイム先輩・・?」
「いいっ、クリス・・。命を粗末にしちゃいけないの・・」
「しっつれいね〜、前回はちょっと失敗しただけじゃない〜」
ブータレ口調なセシル
「そのちょっとの失敗で男性騎士の味覚が完全破壊されたのよ」
「・・・・・・・」
「今度は失敗しないって!ね〜!クリスちゃん♪」
「わ・・・、私・・、遠慮しときます♪」
丁重に断るクリス・・
「ちっ・・・、何時かこの口に私の手料理流し込んでやるわ!見てなさい!!」
「あう・・、タイムせんぱ〜い・・」
「大丈夫よ、寝たら忘れるのがセシルだから・・」
今にも泣きそうなクリスをタイムがあやす・・。
こうして3人だけの騎士団が誕生した・・


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