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第五節  「想い」



村長宅の書庫に二人が篭る事数日・・
ロカルノは膨大なる文字を読み、クラークは読み終わった本を片付けたりなど云々・・
徹夜の作業が続いているのだが疲れているのはむしろクラーク
黙々と読むロカルノに比べてやることもさほど多くないので退屈しているのだ

そして・・
「・・!これだ!」
ここ数日黙りこくって本を読んでいたロカルノが急に叫ぶ
窓はすでに夜明けの光が差し、クラークは分厚い辞書を枕に仮眠をとっていた
「・・見つかったか?」
「ああ・・、この部分だ」
静かに本をクラークに見せる
「え〜っと・・『呪詛の中には様々な種類がありその中でも悪魔種によるものは特に強い。
呪いの力が宿りやすい血液を使用するからだ。
私が知る限り助かったものは一人か二人程度だ。
この呪いに打ち勝つには精霊など、高位の霊による加護が必要とされる
・・がその詳細はわからない。
結果としては悪魔に呪われて生き残るのは不可能に近いだろう』
・・・・・絶望的?」
「悲観的になるな。どうやら精霊がいればなんとかなるのだろう・・」
「精霊の知り合いなんぞいるかよ。せっかく解決法がわかりかけたけど・・」
「急くな。精霊を連れてこればいいのだろう?私に心当たりがある」
「・・・、お前、顔広いんだな・・。変な仮面しているくせに・・」
「仮面は余計だ。ともあれ、少し出かける・・、2、3日すれば戻ってくるだろう。
お前はそれまでここを片付けて宿で待っていてくれ」
善は急げ・・なのかさっさと出ていくロカルノ・・、
彼のペースにクラークも唖然と本だらけの書庫に取り残された




「それで・・、ロカルノはどっかに行っちゃったの・・」
宿の二階、ベットに横たわるセシルがつぶやく・・。頬はこけており見るからに病人・・
あれからクラークは本を片付け村長に声をかけすぐ宿に向かったようだ
「ああっ、精霊連れてくるんだってよ・・。大丈夫か?やつれているぞ?」
「ここまでは以前にも経験済みよ・・。まだ身体がきしんでいるけどね」
元気がなさそうなセシル、出会った時の勝気な女性はそこにはいなかった
「まぁ、それも後少しだろう?あいつ、変な奴だけどやっていることは的外れじゃない」
「その分貴方の無能ぶりが目立つけど・・」
「うっせ!俺は戦闘専門なんだよ・・。ったく、元騎士のくせして口が悪いな・・。
何でもこんな村でもみんなお前のこと知っているぜ?有名だったんだろ?」
「有名かどうかは知らないわよ。別に名声のために剣を持ったわけでもないし」
「だけど、少なくてもそんだけ偉い騎士だったんなら
呪いなんて騎士団のツテを使えばよかったんじゃないか?
よもや抜ける必要なんて・・」
「あるわ。今は改善されたでしょうけど・・、
ハイデルベルク騎士団の元団長、怪しい宗教団体とつるんでいたの。
それでなくてもこの村の騎士団の連中の様子を見ればわかるでしょう?
今この国を守っている騎士達でまともに動いているのは主要都市の警備をしている騎士団、
もしくは聖剣を持つ聖騎士が従えさせている一部の部隊だけよ・・。
私はそんなゴテゴテな組織とは手を切って考えてみたいのよ。
本当の騎士はどういうものか・・ってね」
「・・思った以上に腐っているんだな・・」
「そっ、だからあの騎士達の世話にだけは死んでもなりたくないの・・。
まぁ一部協力してもいいところもあるけどね。貴方はどうなの?
『不死身の13部隊』の声、この耳まで聞こえてるわ。
そんだけ高い地位にいるのになんでこんな辺鄙なところで冒険者やっているのよ?」
「前にも言ったけど・・、ナタリーや・・大事な仲間を死なせちゃったからな。
有名云々は関係ない。俺は自分に何ができるか・・その為にこうしているんだ。」
クラークも静かに応える・・、彼もまた心に傷を持つ一人
「そう、貴方も苦労しているのね?」
「お前もな、たぶん、ロカルノも似たような感じじゃねぇか?」
椅子に持たれるようにして話すクラーク、
詳しいことはわからないのだがロカルノも自分やセシルと似た境遇にあっていると思っているようだ
「かもね。まぁ・・頼りにしているわ、元気になったら恩返しでもしてあげよっか?身体を張って♪」
「断る」
「こ〜んな美人が身体で支払ってあげるっていっているのに!?」
確かに誰もが振りかえるほどの美貌を持つセシルなのだが・・
性格がアレなのでクラーク即答でお断り
「俺は惚れた女しか抱かないんだよ」
「だれが奉仕するって言った!このシタゴコラーめ!」
「勝手に言葉を作るな!なんだよ『シタゴコラー』って!?」
「下心を持つ男、人、それを・・『シタゴコラー』と言う・・」
「馬鹿なこと言ってないでとっとと寝ろ!病人!」
「あらあら、寝こみを襲うつもり?いや〜ん、変態〜♪」

ゴン!

騒がしいセシルの額めがけ、村長宅から持ってきた本を叩く
「あだっ!・・暴力男〜!」
「自分の身の事も考えろ。ロカルノが帰ってきてからさらに大変な事になるかも知れないんだぞ?」
「・・へ〜い」
なんだかんだ言ったって自分の事を心配してくれているクラークやロカルノをありがたく思うセシル
すこし微笑み身体を休む事にした・・

・・・・・・

それからもクラークはそれなりにセシルの看病をし、セシルもお姫様気分でそれに甘えていた

「貴方さ〜、四六時中一緒にいてもうありがた迷惑なんだけど・・」
深夜・・、クラークは未だにベット横の椅子に腰掛け本を呼んでいる
因みに持ってきた本は『大工道具百選』と『世界武器全集』っというマニアっくに分厚い本・・
「しょうがないじゃないか、やることないんだし・・」
「全く・・、いい年してナンパもしないの?不潔ねぇ・・」
「そういうの、よくわからねぇからな。
まぁ邪魔だと言うなら仕方ない・・少し酒場でも行って来るか」
「そうそう。ごゆっくり〜♪」
元気そうに手を振るセシル・・だが、額には少し汗が・・
「・・、ああっ、じゃあまた来るぜ?」
それに気付いてか気付かずかクラークは部屋を出ていった
・・・・・・・
しばらくして堪えられなくうずくまるセシル・・
「全く・・、見られていちゃ・・、苦しむわけにもいかないじゃない・・」
クラークに憎まれ口を叩きつつも密かに呪いの痛みが出てきたようだ
それを必死に隠してきたセシル・・。
迷惑はかけまいと気丈に振舞っていたようだ
「はぁはぁ・・、こんなことで・・負けちゃ駄目だよね・・、クリス・・・。ぐっん・・!!」
必死に堪えるセシル・・
しかし目にはかつての自暴自棄さはなくこの痛みに耐える覚悟が見て取れた


セシルが苦しみに耐えている時、クラークは酒場には行かず宿の前で静かに立っていた
・・2階からはかすかだがセシルのうめき声が聞こえる
「・・・・・、やせ我慢しやがって・・」
セシルは騙せたと思いきやクラークは全てを察していたようだ
ともあれ、例え彼女が目の前で苦しみ出しても自分は何もできないのでこうして席を外したのだ。
「こうなったらあいつ頼みだな・・」
窓を見上げながら口惜しげに呟く

「ならば、ちょうどいいタイミング・・だな」

それに応えるように闇から現れる男・・、ロカルノ
非戦闘状態のジャケット姿であるが腰には美しい彫刻がされたレイピアを下げている
「そうかもな・・、収穫は?」
「さて、やってみないとわからん。一応用意はした」
そう言うとレイピアの鞘を軽く叩く
「なら、お手並み拝見と行こうか」
「ふっ・・」
軽く笑いながら宿に入る二人・・、漠然な不安を抱えつつも一人の女性を救うために・・





ガチャ・・

「ど・・どうしたの・・?酒場に行くんじゃ・・」
クラークが部屋に入ってくるなりセシルは痛みに耐えながらも笑って見せる
顔は汗でびっしょり・・
「・・強がるな、苦しいなら遠慮なく苦しめ・・」
クラークの後からロカルノが登場、静かに言ってのける
「人が気遣っているのにずいぶんね・・痛っ・・」
「お前にそう言うものは似合わん。とにかく横になれ」
「・・うん・・」
心強い男に言われ、彼の言うと通りに横たわる・・。
腕には奇妙な斑点が浮きあがっている
しばらく緊張していたセシルだが、痛みがこみ上げるうち昏倒していった
「だが、どうするんだ?そんなレイピアで・・」
「この剣には精霊の加護が受けてある。その精霊を呼び出すのだ・・・。いくぞ」
そう言うと鞘からレイピアを抜く
細身の刃は黄金で見るからに儀礼用に見えるのだが・・
「派手だが、業物だな・・」
瞬時にそれがどのような切れ味なのかクラークは理解した
「ふっ、剣に宿りし精霊よ・・。この声が聞こえるならば姿を現せ・・!」
ロカルノの声と共に剣から光が放たれる!

光は霧のように散らばり一人の女性の姿へ代わっていく
羽衣を纏った姿は正しく天女・・
『話はあの方から聞いておりますよ、彼の息子ロカルノさん・・』
その声は軟らかで全てを癒すかのようだ
「そうか・・、私達に協力してくれるか?」
『ええっ、この女性の呪いを解くのですね・・』
そういうとスゥ・・っとセシルに寄りかかる精霊・・
セシルは陣痛が始まった妊婦のように
荒い息使いをしはじめ精霊はそんな彼女を静かに見つめている
「で・・どうなんだ?」
『・・体の髄まで蝕まれています・・。呪詛を取り除くのは・・・不可能です』
「「・・・・・・」」
『ですが、彼女を助ける手はあります』
「取り除くのは無理でも助けるって・・」
『この悪魔の呪詛自体を支配する事です。
彼女は元々魔力は強いようで一般の人よりも呪いを抑えれていたようです・・。
彼女の根源の魔力を増幅すればこの呪詛を抑えこみ自分の物とヘできるはずです』
「では・・、どうする?魔力増強なんぞ山に篭るぐらいの事をしなければ効果がでない・・。
こいつの症状を見る限りは不可能だ」
『私の気も人体には負荷が強すぎます・・、かくなる上は・・』
「上は・・?」
『貴方達も少々・・、危険ですが・・』
「かまわない。対策は?」
『お二人の根源魔力をこの女性に譲るのです・・。
それで彼女の魔力を増幅し呪詛を克服させる・・それしか方法はないようです』
「根源・・魔力?」
クラークにはピンとこないようだ
「要は自分の魔力の使用限界量・・っと言ったところだ。
それを差し出すという事は私達が魔法を使うのが難しくなる・・っということだな」
『全てというわけではありません。
魔力というものは人体に多大な影響を与えます。全ての魔力を取ったら生きていられないのです』
「・・まぁ、そんくらいならくれてやるよ。
俺は魔法補助はしてもそれがメインってわけじゃないんだし・・」
「・・私も異議はない。どうすればいいのだ」
『彼女に手を当ててください・・後は私が力の流れを変えてます・・。がんばって・・』
そういうと精霊はフッと姿を消した
「・・準備はいいか?」
「ああっ、構わない。じゃあ・・やろうぜ」
二人が並び、セシルの腹部に手を添える・・、
それと同時に

ジジジジジ・・!!

電気が流れるように手から光がほとばしりセシルの全身を伝っていく・・
「ぐ・・、まるで身体の力が抜けるようだな・・!!」
「急激な魔力の低下は・・身体の負担も大きいということか・・!」
苦悶の表情を浮べる二人、対しセシルは少しずつ息が整っていく・・
『大丈夫ですか・・、今の状態がしばらく続きます・・。
気を失ったら魔力のバランスが崩れて危険ですよ』
姿は見えないが二人を気遣う精霊の声が響いている
「じょ・・上等だ。こんくらいの痛み・・幾度も経験しているってんだよ!」
「私もだ・・。確かに・・セシルの表情が落ち着いてきている・・」
なおも流れる光・・、やがてセシルは気を取り戻し汗まみれの二人に気付く
「あ・・なた達・・」

「気がついたか・・、流石に効果はあるな!」
「ふっ・・、だが・・これからのようだ・・」

「何を、しているの・・?」
『二人の魔力を貴方に注いでいるのです・・。
貴方の魔力は以前よりも強力になり呪詛に打ち勝てるだけの力にさせるのです』
「だ・・だれ?」
「精霊・・だ。それよりも大人しくしていろ、まだ途中だ・・!!」
「わかった・・けど・・大丈夫なの・・」
減らず口を叩く二人だが明らかに苦しそう・・、
自分の身体が楽になるにつれ二人の苦悶の表情が強まるのが少し歯痒い・・
「大丈夫・・っと言いたいんだけど・・流石に辛いもんだな・・。身体が悲鳴をあげてやがる・・!」
『がんばって・・後少しです』
「・・・、クラーク、お前はこのくらいにしろ。お前の戦法は魔法強化してこそ・・だろ」
「・・いいのか?一人になれば負荷も強まるぞ?」
「ふっ・・、これ以上、やかましい女が苦しむのは見たくないのでな」

「やかましいは余計よ・・、・・・馬鹿」

「・・わかった・・じゃあお言葉に甘えて倒れさせれ・・・もらう・・ぜ?」
そう言うとクラークは力を使い果たしたようにフッと床に倒れた
「・・やはり・・すでに限界を超えていたか・・。大丈夫か、セシル・・、もうすぐだ・・」
「ロカルノ・・、無理しないで。貴方だって・・」
心配そうにロカルノを見るセシル、血の気は失せ、口からは血が垂れてきている
「・・ふっ、身体の機能が落ちてきたか・・。だが・・、まだ意識はある」
「無茶よ、もういい、止めて!これ以上私の為に・・」
「少しは黙れ、セシル。気が散る・・」
「ロカ・・・・」
「これは私の意思でやっていることだ。何も気にする事はない」
「馬鹿・・、馬鹿よ、貴方・・」
「ふっ・・、そうかもな。ならばお前が完全に元気になれば相応の礼をしてもらうとしようか・・
精霊、まだか・・、もう持たんぞ・・」
『・・・、もう・・大丈夫です。休んでください・・』
「・・わかった・・、後は・・お前しだいだ・・セシ・・ル・・」
手をかざすのを止めそのままセシルの上に倒れるロカルノ・・
仮面をしているのだが完全に気を失っているのがわかる・・
「・・二人揃って・・馬鹿な男達・・」
そう言いながらも目に涙を浮かべるセシル

『二人の力は確実に貴方へ移りました・・。呪詛に打ち勝つだけの力はあるはずです
・・とにかく、今日は休んでください・・』

「わかった・・、貴方もありがとね・・」
『いえ・・、では・・私も一時消えます・・』
姿形こそ見えないが精霊の気配は静かに消えていった
一人、静かになった部屋で寝るセシル
「・・みんな・・私の為に・・ありがとう・・」
いつも強がりばっかりの彼女だが素直に感謝の言葉をする・・
しかしそれを聞く者はいなく、
彼女も急激な魔力の増幅に身体が対応するべく強烈な眠気がさしてき
すぐに深い眠りについていった




・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・


オノレ・・邪魔ヲシヨッテ・・

残念ね・・、今まで好き勝手やってくれた落とし前・・10倍・・いいえ、100倍にして返してあげるわ

フン・・、魔力ガ増エタダケデイイ気ニナルナ!

いい気になっているのはあんたよ!!

!!・・ナンダ・ト・・・?

これからは私の力の一部となってせいぜいこき使ってあげるわ。
呪詛の解除はできないみたいだし・・私が死ぬまで永遠に尽くして頂戴!

キ・・サマ・・!コレホドマデトハ・・ヌアアアアアアアア!!!

・・・・・・

これで、忌々しい一件も終わりね・・。クリス・・、ようやく貴方の仇を取れたわ。
私も・・・やっと・・

・・・・
・・


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