第5節 「継がれるロザリオ」


酒場・・・
無事店に到着したセシルとキルケが酒を飲んでいる(キルケはオレンジジュースだが・・)
「おっそいわね〜!あいつら、どこほっつき歩いているのよ!」
少し顔が赤い、どうやらほろ酔い状態のようだ・・
「まぁまぁ・・色々あるんでしょう」
キルケがしきりになだめている・・

因みに店は閉店しており彼女達しかいない、マスターはすでに自室で就寝
二人しかいないしあたりが静まり返っているので退屈気味なのだ・・
そこへ、ふいに店の扉が開く・・
「んっ?まだ起きていたのか・・」
ロカルノだ。二人が起きていると思ってなかったようだ・・
「おっそーい!ど〜こほっつき歩いてたのよ!?」
「情報収集だ、文句を言うな」
「とかなんとか言っちゃってほんとは愛人と密会〜♪じゃなくて!?」
ハイテンションのセシル、酔うと笑い上戸いなるようだ
「お前・・酔ってるな?」
「この程度で失礼な!?あたしを誰だと思っているのよ!?」
「・・大変だったな、キルケ」
「あっ、あはははは」
呆れ口調のロカルノにキルケは笑うしかなかった・・
「そういえばクラークはまだなのか?」
「ええっ、まだ帰ってきてません・・」
「ふむっ・・では先に話をはじめた方がいいかな?
「もう待っていられないわ!さっさと寝ましょうよ?」
「寝るな、話がある」
ほろ酔いからできあがり気味に移行したセシルを冷たくあしらうロカルノ
そんなこんなしている間にクラークが店に帰ってきた
「あら・・、みんなもう帰ってたのか」
「お前が遅いからセシルがもう出来上がってしまったぞ?」
「おうっ、帰ったなクラーク!?」
「・・・大変だったな、二人とも・・」
メンバーがそろったところでとりあえずセシルに水を飲ませ酔いを醒ましてから
各自情報を話す・・
「まず私からだ、とりあえず今入っている情報の中でグレゴリウス家に関するものはない」
「「おいおい・・」」
「まぁ聞け。だが興味深い事を一つ耳にした。
どうやら、貴族の中で悪魔降ろしを使ようとしている輩がいるらしい・・」
「悪魔降ろし・・ね」
セシルが渋い顔する。
元王国騎士である彼女は過去に悪魔降ろしを目撃したことがあるのだ・・
「それがグレゴリウス家と関わりがあるとはまだ断定できんが
私の勘では何らかのつながりはありそうだ」
「わかった。ちょっと私からもいいかしら?」
「んっ?何かあったのか?」
珍しく深刻な顔になるセシル・・
「ええっ、この店に帰る途中チンピラに襲われたの」
「なんだ、そのくらいのこと珍しくも・・」
「話は最後まで聞く!
そいつらは料理してやったけどその後に黒魔術師風の男に出くわしてね
・・キルケを狙っているようだったわ」
「・・・そいつとやりあったのか?」
「顔合わせとかいって何もしないまま消えたわ。でもかなりの使い手よ」
「ロカルノもセシルも黒魔術の情報を手に入れた訳か・・」
「お前はなにか収穫はあったのか?」
「そうだな、基本的には今収集中。でもちょっと変わった出来事があってね」
「変わった出来事?」
セシルが怪訝そうな顔をする
「まぁ驚かないで聞いてくれ、特にキルケ」
「わっ、わかりました・・」
「実はここに帰る途中一人の精神体・・・っというか幽霊に会ってな」
「幽霊!!?そ、そんなものいるわけな、ないじゃない!!」
セシルはこの手の話に弱い・・・
「・・続けてくれ」
「ああっ、そいつは自分はキルケの母だと名乗った」
「!!??、お母・・様・・?」
驚きのあまり目を大きく開き口を押さえるキルケ
「ちょっと待て、クラーク。もしかしてお前はそいつの言うことを信じたのか?」
「ああっ、最初は疑ったのだが邪念のかけらもなかったからな・・。
それに幽霊と会話するなんて滅多にないことだぜ?」
「・・酔狂な奴だ・・」
のんきなクラークの返答に微笑むロカルノ・・
この時点でセシルは幽霊話に絶えられなくなって店の隅で
話が聞こえないように耳に手を押させてお祈りをはじめている

この女、悪魔の存在も神の存在も信じるが何故か霊の存在は認めない・・
過去に何かあったのか・・?

「それで・・お母様は何て言ったのですか?」
「ああっ、お前が狙われているおおよその訳ってやつを・・な」
「えっ・・?」
「キルケの家系・・サルトル家だっけ?
そこには代々受け継がれているロザリオがあるって聞いたのだが・・?」
「ああっ、はい。お守りみたいなものですが・・」
「お守りなんてとんでもない。
そのロザリオには先祖から代々魔力を封印してきたらしいんだ。
見た目は普通のロザリオだがとんでもない魔力が宿っているらしい」
「あれが・・ですか?」
「そっ、ここでロカルノの話を思い出してくれ。悪魔降ろしに必要なものは!?
はいっ、セシル君!!」
隅で怯えているセシルを指名・・
「えっ・・?儀式に必要な魔力の媒体と生贄・・かしら?」
「ご名答、その媒体としてロザリオを狙っているのだろうな。
まぁあくまで推測、なんだけどな」
にやけながらクラーク
「神聖なロザリオで悪魔降ろし・・か。
ふっ、皮肉なことこの上ないな。でっそのロザリオは今持っているのか、キルケ?」
「いいえっ、異端審問会に捕まる少し前に知り合いの神父様に預けました」
「へぇ、どうして預けたの?」
「なんだか、あのロザリオから得体の知れない力を感じて・・、
不気味だったので一応浄化してもらおうと・・」
「ふぅん・・、その神父さんは無事なのかい?」
「・・だと思います。異端者になってからは迷惑をかけるだろうと思って行ってませんし・・」
「なるほど、ならばとりあえず情報がそろうまでにそのロザリオを回収した方がいいな」
「そうだな、じゃあ明日その神父の居所まで案内してくれよ?キルケ」
「はい・・わかりました・・」
「お前もそれでいいな!?セシル?」
「・・・お化けとか・・でない・・?」
「・・知るかよ・・」


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