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終節  「潮風の秘宝」


ダコンの一部と化しそれを乗っ取っていたアンザルサンであったが
ソシエの手により完全に消滅させられた
念のためということもあり戦闘後に付近の偵察を出させたがその海域にはもはや何もなく
ただ静かな海だったという・・

そしてソシエ達はシーラとともに彼女が住んでいたあの地へと戻っていた
船が到着した頃にはすでに日は昇っておりそれが今回の一件の終焉を知らしているかのようだった
「・・よいしょっと、ふぅ〜久々に暴れたねぇ」
上機嫌なソシエ、預かった得物のそのままに岸へと上がる
「あの化け物相手によくやるわよ・・大体私の得物なんだし・・」
「はんっ、ちまちま罠みたいな手を使うあんたにもっと有効な使い方を見せてやっただけだよ」
不機嫌なセシルに対してソシエは軽く笑い氷狼刹を投げ渡す
「あの人も・・もっと正攻法だったけどね・・・っと、ロカルノ君のも返しておくよ。中々面白いものだけど・・少し壊したかもね」
バツが悪そうにディ・ヴァインをロカルノに返す、だが本人はあまり気にしていない様子で
「元々は魔力があまりない私のために造ったものです、あんな状態になるまでに使用すれば支障もきたすでしょう」
っと軽く言いながら鞘へと納める
正しく威風堂々、彼の隣にいる娘ならばまず弁償しろとわめくことは間違いない
それはともかく、島には鉄十字艦隊のクルー達が昨晩から犠牲者の弔いをしており
集落があった方向には煙が静かに昇っている

「やぁれやれ・・、あんたも化け物だぜ・・アイアンローズ」
「あ・・、大丈夫ですか?ほらっ・・」

ソシエ達の後からゆっくりと現れるウィッグとシーラ
傷がまだ癒えていないウィッグを気遣ってシーラが肩をかついで介護してあげているのだ
「大丈夫かい、色男?」
「へへっ、海の漢がこのくらいの傷・・あだだだだ!!」
「ああっ、大変!」
「船で大人しく寝ておいたほうがいいんじゃないの〜?」
「怪我人扱いすんじゃねぇ!俺は大丈夫だ!ほらっ、シーラちゃんも別に心配しなくてもいいから!」
誰がどう見てもやせ我慢なウィッグ・・
そんな事を言い出すものだからシーラがさらに心配そうな顔になる
「で・・でも深いところまで切れておりましたし・・」
「はっはっは!俺はお宝のためならどんなところでも行く男だぜ?こんな傷なんて掠り(コツ)んがぁぁぁ!!」
「格好つけるには成立してないわよぉ・・」
ウイッグのやせ我慢にセシルが何気に苛立っており柄で傷口を小突いたのだ
だがそんな愚行を見逃すソシエではなく

バキャ!

「もげぇ!!」
綺麗にアッパーが顎に入りセシル、宙を華麗かつ儚く舞った・・
「怪我人いじめてんじゃないわよ、この馬鹿娘」
「・・ぐ・・ふふ・・ウィッグ、これが本当の傷ってもんよ・・」
「・・シーラちゃん・・こんな馬鹿の傷よりかはだいぶマシだから安心してくれよ、なっ?」
阿呆な女騎士に呆れながらもそれと比較してシーラを安心させようとするウィッグであった・・
「あ・・はい、すみません」
「まぁシーラはウィッグに付き添ってあげな。もう犠牲者の供養もすんだだろうし・・」
「・・・はい・・」
浮かない顔をするシーラ、そんな彼女を気遣うようにウィッグが無言で彼女の肩を叩いてあげる
「それはそうと、あのダコンの眼が秘宝じゃなかったのですね・・」
ロカルノの傍で静かに茶番を見ていたアミルが呟く
この島に寄った目的は鉄十字艦隊の合流とシーラがこの島に本当の秘宝が隠されていると言ったからなのだ
「はい、ダコンの眼はあくまであの怪物が暴れ出さないように封印するのと島の平穏を維持するための物です
それ以外にも本当の宝があるようです」
「・・ふぅん・・、じゃあ報酬にそれはウィッグにあげることにするかい?」
「・・俺?」
「まぁそれなりにがんばったからね。クレイゼングッズはおまけにしてここの宝も必要ならもっていきなよ?
なんてったってシーラを救ったナイトなんだからね」
茶化すソシエだがその一言にシーラの顔は真っ赤になる
・・どうやら本当に彼がナイトになってしまったようである
「・・まぁ、そういうなら遠慮はしないけど・・実物見てからだな・・、いいのかい?シーラちゃん?」
「わ・・私もどういうものかはまだ良く分からないので何とも言えませんが・・ウィッグさんなら・・いいと思います」
「・・やれやれ、知らない間に良い仲?良い気なもんねぇ・・」
嫌な笑みを浮かべるセシル・・なのだが・・
「人の情というものはわからん。・・そういうものさ・・なぁ、アミル?」
「・・えっ・・あ・・・そう・・ですね・・」
ロカルノの一言に口ごもるアミル、その姿をセシルはこれでもかってくらい嫌な眼差しで見つめている
「ほらっ!ロカ!行くわよ!!」
「っ・・全く、落ち着きがない・・」
これ以上やらせないとロカルノの腕を掴み走り出すセシル、それを見てアミルは非常に気まずそうにうつむき
ソシエは豪快に笑うのだった・・

・・・・・・・・

無事、艦隊のメイド達と合流した後シーラのためを思って犠牲になった者に対して黙祷を捧げることになった
この時ばかりはシーラも涙を流し亡き者達の冥福を願っていた
そんな彼女をウィッグも何気に気遣いながらも柄にもなく祈りを捧げたとか・・
全員が静まり返る中、死者を弔う炎だけが静かに燃えその煙は魂とともに天へと向かい消えていった

・・・・・・・・

「それで、お宝ってのは石室にあったのねぇ・・」
感傷に浸るのもそこそこに一行は族長の家にあるあの地下室へと向かっていた
シーラが落ち着くのを全員静かに見守っていたのだが思いのほか彼女もすぐに立ち直り
彼らを案内すると言ったのだ。
「はい、石室の文字の中に一部だけ良く読み取れない不明な部分がありました。
それこそが本当の秘宝のありかを示しているものだと思います」
「・・・ダコンの眼よりも価値があるもの・・か。興味があるが・・」
「物騒な気もしますね」
「まぁ、またあんな海ダンゴ蟲みたいなのが出てくるような代物だったらその場で処分すればいいさ」
こともなく言ってのけるソシエ、昨夜の暴れっぷりを見る限りそれをするのは造作もないことは明白・・
そしてあの石室に到着、ロカルノがここにたまっていた海賊達を始末した時の血がまだ床に残っているが
それ以外は破壊された箇所もない
「・・ここです。」
ゆっくりと文字が描かれている石壁の前に立つシーラ
じっくりと解読できなかった箇所を読み取るや否や無言のままおもむろに壁に手を当て眼を閉じる
何かを念じているようなその姿にそれに応えるように分厚い石壁に亀裂が入り、途端に脆く崩れ去った
そしてその先には真っ暗闇ながらも通路が見える
「・・どういう原理だ・・?」
その現象を見てウィッグは首をかしげる
「私がここの一族の人間だということを認められた証・・ですね。未解読箇所には『島の民を率いる者が秘宝を解放する
意志の元に壁に念ずれば道は開く』とありました・・さぁ、この先に秘宝があるはずです」
にこりと笑いながら先を進むシーラ、不思議な事に彼女が歩くたびに壁がほのかに光り道を照らし出す
どうやらさらに階段があり奥へと続いていくようだ。
「ふぅん・・下から潮風が吹いているみたいだけど・・・何かあるのかしらね?」
「さてな、シーラに呼応するように発光する仕掛けといい・・相当高い文明だったようだ
こうなると推測もたたん」
「・・・地形的には・・もうすでにだいぶ下がっているねぇ・・地下深くに何があるのやら」
・・・・
再び同じような階段を下る事数分、
屋敷からだいぶ下ったかと思った頃に階段の終わりが見えた・・
そこからは日の光のようなものが見えている
そこにいる全員は奇妙な感覚にとらわれながらも長かった階段を下り終えそこへたどり着いた

「・・・こいつは・・」
「・・すごいわね・・」
「この一帯に不思議な力場が働いています・・それがこの現象を引き起こしているのでしょう」

呆然とする面々、なぜならそこあるのは正しく庭園
但し頭上には水が蠢いており日の光がさしている・・つまりここは海中である・・っと
そして遥か彼方まで広がる静かな空間、神話に出てくるような宮殿風のテラスや小さな花壇
一体どれほどまえに使われたか不明な優雅な椅子も置かれいるが
それらは全て半壊状態・・まるで遺跡のような姿のままで時が止まっている
「これが・・『潮風の秘宝』です。かつて私達が住むよりも前にこの地にいた者達の楽園だった場所
絶対なる静寂と母なる海に抱かれるこの空間を私達は宝としてこの姿に手を加えないように封印したのでしょう」
「・・なるほどな、確かに学者っぽい言い方だと歴史的に価値があるってやつだろうけど・・
まぁ、手につけなくそっとしておいたほうが良い場所だね」
「そうねぇ。何時までも変わらない事に価値があるんだし・・」
「・・この景色を守り続けた私達一族は滅びました。・・ウィッグさん、この秘宝を貴方に譲ります」
真剣な眼差しでウィッグを見つめるシーラ、対しウィッグは・・
「シーラちゃん、海の漢ってのを良くわかっていないな」
「・・えっ・・?」
「こういう美しい場所を穢すような事はしちゃいけない。俺達は海で生きているんじゃない、海に生かされているんだ
それに牙を向けちゃいけないのさ」
頭を掻きながら笑うウィッグ
「はははっ!それでこそエンちゃんの息子だよ!」
「で・・ですがそれだと・・」
「まっ、それじゃ記念に・・」
ゆっくりと足元にある石を取る。石灰石かなにかか穴が無数に空いている・・どこにでもありそうな石だが・・
「こいつをもらっておくよ・・、『潮風の秘宝』としてな」
「・・・いいのですか?」
「まっ、秘境を見つけた記念・・みたいなもんさ。俺にはこの光景を見れたことのほうが宝だからな」
二コリと笑うウィッグ、対しシーラは無言のまま深々と頭を下げるのだった
「・・さて、お宝も拝めたし後は今後の事だね。ウィッグ、私の船を一隻やるよ
・・まぁ色々と試作な代物だが役に立つだろう」
「うええっ!おいおいソシエさん!そんな簡単に船を・・」
「何言ってんだよ、元々あんたの船を沈めたのは私だ。弁償代と思えばいいさ」
「・・助かる。ついでだが・・」
「あん?」
「船室のベットを少々上等な物にしておいてくれないか?あいつら、あんたの屋敷で体験して病み付きになっちまったらしい・・」
「そんくらい安いもんさ。あんた好みにカスタマイズしてやるよ。・・それで、この島はどうする?
シーラ・・」
ゆっくりとシーラに尋ねるソシエ、変わり果てたと言えどもここは彼女の故郷、良く知った地なのだ
「・・・・・、私一人だけここに残っても・・仕方ありません。この地を離れることにします」
「そうかい・・わかったよ・・」
「その代わり、この地が荒らされないようにソシエさんが管理してくれませんか?」
「お安いご用さ。・・ちょうどもう一箇所ぐらい別荘が欲しかったところだったんだよ。・・色々とね・・」
ニヤリと笑うソシエ、その理由は彼女の現在の屋敷周りの環境にあり・・
「ふっ、まぁそれもすぐに解決するだろうがな。それでは屋敷に戻ろう・・『草』もそろそろ戻ってくる頃だろう」
「・・そうだね。それでは、全員屋敷に還ろうか・・ここはこのままに残しておこう」
楽園に背を向き、彼らは再びこの地を離れる
潮風の秘宝はこれからも人知れずひっそりとこの地で、この場所で眠り続けるだろう

・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

数日後
鉄十字艦隊は無事屋敷へと帰還し事後の処理を行っていた
戦闘船を2隻失い屋敷も修復にも大金がかかるのだがもともと資産が溢れているソシエにとっては蚊がさした程度らしく
さほど気にしていなかった
そして約束通りウィッグに対しての報酬として船を一隻譲る手はずが今日整ったのだ

「・・どうだい?色々と好みに合わせたんだけど気に入ってくれたかい?」

地下ドッグエリアにて完成してウィッグ海賊船を披露する
ソシエの船の特徴である白いカラーを灰色に塗装しており帆には大きな鷹の紋章
かつて彼らが愛用していた船に比べたら一周りは大きい
「内装は他のとほとんど同じだが医務室を小さくして船員室を増やしておいたよ。
まぁ・・魔導ブースターもあるが・・あまり使用するんじゃないよ?後処理が面倒だからね」
「・・あ・・ああ・・」
呆然としながらそれを見つめるウィッグ・・
「・・どした?」
「本当にもらっていいのかよ・・?なんかここまで要望通りに立派になったら・・」

「そうですね・・おいら達が使うのにしたらなんか・・」
「んだんだ・・」

海賊団総員呆然と・・、まぁ今まで自分の母艦であったボロ船とはあまりに違うものだから仕方がない
「遠慮するんじゃないよ。報酬さ、報酬・・」
「あ・・ありがとよ・・」
未だに実感がわかない様子のウィッグ、そこに・・

「ほぉ・・流石に良い仕事をしているな」
「ほんとほんと、ママの船だったとは思えないわねぇ」

ロカルノとセシルがドッグに入ってくる。
二人とももう仕事が終わったのだがソシエがもう少しゆっくりしていけという事で軟禁されている状態なのだ
「ああっ、この船なら・・もっと遠くにも行けるぜ・・」
「ふっ・・だが、もう一つお前に必要なものがある」
「・・えっ?なんだって?」
ロカルノの言葉に呆然とするウィッグ、そして彼の後ろからアミルがシーラの手を握ってやってきた
屋敷に戻って以来再びウサミミ達とメイド職を行っていたのだが今は白ワンピースに黒スカートの私服姿で荷物を持っている
「・・シーラちゃん、ここでメイドとして働くんじゃ・・」
「ウィッグさん・・私・・貴方と一緒に・・旅をしたいんです」
ゆっくり、静かに言うシーラ、緊張で手が震えているのをアミルが優しく握り返し励ましてあげている
「・・な、なんだって!?」
「ここでの生活を送ろうとも考えていたんだけど貴方の傍にいたいってわけよ?ねぇシーラ?」
セシルが軽く言うがシーラは顔を赤くしてうつむく
「・・・、シーラちゃん。俺達はただ旅をしているんじゃない。秘境といわれる場所に行ったりもする
・・危険なもんなんだぜ?」
「それでも・・貴方とともにいたいです。そして色んな景色を見てみたい・・。ダメですか・・」
「・・・・・」
真剣な眼差しにウィッグは押し黙ってしまう
しばらく腕を組み悩んでいた彼だが・・
「・・いいぜ」
「本当ですか!?」
「ああっ、男だらけの所帯でむさぐるしいがそれでよかったらな♪」
「・・ウイッグさん!」
嬉しさのあまりシーラは駆け出し彼に抱きつく、女慣れしていない彼は目を白黒しながらも彼女を受け止め静かに笑う
「はははっ、今度も彼女をしっかりと守ってやんなよ?ヘマしたらまた船沈めるよ?」
「ソシエさん・・もう勘弁してください・・」
軽く言うソシエにウィッグは身震いをする
たとえ船が同じレベルでも白兵戦になろうものなら物の5秒で沈まされる事間違いなし・・
「まぁそれはいいだろう。何かあれば尋ねてくればいい・・協力しよう」
「あんたにゃ敵わないぜ・・まぁセシルの野郎が一緒だってことになるから・・極力自力でなんとかするよ」
「ああん?襲撃するわよ?」
ほとほと恐ろしい母子である
「冗談だよ!!だが・・シーラちゃん、俺とともに来てくれるというならば・・君は俺が守るよ」
「ウィッグさん・・」
「さぁ、行こうぜ。もう出航の準備はできている」
静かに笑うウィッグにシーラも頷く
「もう家財や食料も一通り積み込んでいるからね。このまま処女航海ってのもいいね!」
「・・何から何までありがとよ、ソシエさん」
「いいってことだよ・・おっと、忘れていた。念願のクレイゼングッズだよ」
ニヤリと笑いながら水晶球を投げ渡すソシエ、
最愛の夫との思い出の品のわりには結構乱暴な扱いである
「うおっと・・記憶球・・?どれどれ・・」
魔力を込めて発動させるとそこには半壊した教会の前に立つ凛々しき金髪の騎士とそれに良く似合う金髪の美女が・・
女性は露出の激しい鎧を纏い臍などは丸出し、殆ど鎧としての役目を持っていないが不思議とこの女性には良く似合っている
「クレイゼンさんだ・・で・・隣のこの女戦士は?セシルに良く似ているんだが・・」
「私だよ」
「・・・マジ?」
「嘘言ってどうする・・ってそんなに驚くことかい?」
「いあ・・露出狂に近い姿だけど・・べっぴんさんだったから・・」
「ああっ?じゃあ今の私はべっぴんじゃない・・っと?(ゴキゴキ・・)」
「嘘です!今でも美女塾女です!」
「・・ふん、記念の品を別の水晶にコピーしたもんだ。コレクションにゃちょうどいいだろう?」
「ああ・・大事にするよ!」
やはりコレクターとしては嬉しい逸品、ホクホク顔でそれをしまいながら礼をする
「・・さぁ、いきなよ。二人で色々と話す事もあるだろう?」
「え・・ああ・・わかったよ。それじゃ・・行こうか」
「はい・・」
まるで新婚のように照れながら二人はゆっくりと新たなる拠点へと入っていく
後に続くように部下もそれに続いて船に乗り込みウィッグ船を繋いでいたはしごは静かに取りはずられた

それと同時にメンテ班以外のメイド達全てがドッグエリアへと押しかけてきた
その先導をきっていたのはウィンク、完璧主義者故に見送りも完璧に・・
「「シーラちゃぁぁぁん!!」」
先頭きって叫ぶは同じ兎人のウサミミと親しく話していたポチ
「!!、皆さん!」
甲板から身体を乗り出すシーラ・・
「「「「「「「「「「「「がんばってぇぇぇぇ!!!」」」」」」」」」」」」
メイド全員のエール、短い期間の中だったがそれでも彼女達には絆というものが出来上がっていた
それにシーラは目に涙を浮かべて・・
「皆もがんばってくださぁい!!!」
大きく手を振って応える
船はゆっくりと動き出し大海原に向かって進み出すのだが彼女達の見送りは船が水平線に消えるまで続いていった

・・・・・・・・

祝うはずの出迎えだったがその姿が見えなくなったら泣き出す者も出てきており
それをメイド達はお互いに励ましあっている
「・・ふっ、さて・・それでは私達もそろそろお暇しようか・・」
そんな風景を見ながらロカルノが静かに言う
「えっ・・もういいの?」
「仕事は終わった。後はウィッグとシーラの見送りだけだった・・そうでしょう?ソシエさん」
「・・ああっ、そうだよ。まぁこのぐらい・・ねぇ」
「そうだったの・・てっきりまだ厄介事があるのかと思ってたわ」
「まぁあるにはあるのだがな・・ソシエさん、これを・・」
懐からメモを取り出すロカルノ、ソシエもそれが何かわかっているようでニヤリと笑いながら受け取る
「・・なるほどね。まぁ要はほぼ全員ってことだったかい・・」
かるく目を通しただけで状況を把握するソシエ、目には不気味な炎が灯り出している
「ええっ、警備兵がでなかったことからもそのようです」
「・・何の事?」
「屋敷襲撃の際に貴族達の動きが妙だったから草に調べさせていた・・結果、ここら一帯の全ての貴族が
海賊と裏でつながって屋敷に毒をまいたことが明らかになった
獣人を雇い好き勝手やっているソシエさんが気に食わなかったのだろう
『聖礼都市』とまで定めて住民を追い出したくらいだからな」
「なんですってぇぇぇぇ!?・・だったらぁぁ!!!」
今すぐぶっ殺したると腕をまくるセシルの首筋をソシエが掴みながら静止させる
「あんたの手を借りなくてもいいよ。これは私がけじめをつけるさ・・」
「でもぉ・・」
「さっさと帰りたかったんだろ。後は私がなんとかするから・・元の生活にもどりな・・」
母親の優しい言葉に珍しくセシルがしおらしく頷く
「やれやれ・・、それではここらでお暇する。皆、達者でな」
ロカルノの一言でメイド達はきちんと整列して敬礼をする
・・それはまるで隊長と部下のような関係に見えたり・・
「ふっ、さぁアミル・・帰ろうか」
「はい・・ロカルノさん」
一礼してロカルノと隣に付き添うアミル・・
「ちょっと待ってよ!アミルよりも私に声をかけるのが恋人としての常識でしょうがぁ!」
どこまでも騒がしい女セシル、もはやアミルを完全な嫉妬の対象にいれながらも屋敷へと続く階段を上っていった
彼らの姿が見えなくなったころにソシエは腕をふりながら・・
「よぅし・・そんじゃここいらでこの一帯も静かにさせようか。・・ウィンク、私に喧嘩売った馬鹿な貴族に奇襲かけて
おっぱらうよ?」
「畏まりました、早速編成と奇襲作戦を計画します」
冷静に敬礼するウィンク
・・この後、ロカルノ達がユトレヒト隊館に到着する間にウィンヒルの貴族屋敷全てから突然発火が行い
一つ残らず焼け落ちることになった
直接の原因こそわかってはいないのだが当事者達は事の真相を知っており
さらには彼らの仕事場に警告文を送りつけられたこともありすぐにソシエの目の届かないところに
尻尾を巻いて逃げるのだった

・・・・・・・・・

一方
「まっ、結局はシーラも無事だったし仕事は終わったし〜・・万事おっけいね」
ウィンヒルからゆっくりと徒歩での帰宅、アミルが竜になれば瞬く間であったのだが
休暇もかねてのんびり帰ることになったのだ
・・とは言え、面々はすでにプラハに到着しておりもうすぐそこに館が見えているのだが・・
「そうだな。ディ・ヴァインの再調整も必要だが・・」
「ですが・・報酬がなくてよかったのですか?何かと大変でしたし・・」
「あっ・・そういえば貰うの忘れていた!」
回れ右するセシルだがロカルノが首を掴んでストップ、・・もはや条件反射で止まってしまうようだ
「それだが・・後々連絡があるそうだ。貴族達への報復が終わったら何か考える・・っとな」
「ふぅん・・、まぁお金が一番なんだけどねぇ」
「違いない、さぁ・・到着だ」
久々の我が家に帰ってきて安堵の息を漏らすロカルノ、ゆっくりと扉を開き中へと入る
そこには・・

「お帰りなさい・・あにう・・えっ!!?」

「「ク・・クローディア!?」」
玄関先にいたのはクローディア・・だがそこにいる全員が固まる
・・何故ならいつも着物を着込んでいた彼女が何故か裸に白エプロンをつけた状態だったから・・
「あ・・そ・・の・・すみませんっ!!!」
思考回路の90%がショート状態のクローディア、とにかくその場から緊急脱出と厨房の方へ向けて走り出した
「・・・クラークの仕業ねぇ・・あのエロ眼鏡・・」
「あの・・セシルさん・・クローディアさんは・・なんであんな格好を・・
お料理するにはあれほどの露出は逆に危険では・・」
「漢の浪漫よ・・アミル・・」
「は・・はぁ・・」
竜人には俗っぽい知識は苦手の様子で納得できないもよう・・まぁ納得しないほうがいいことには違いないのだが・・
そこに
「お〜!お前達帰ってきたのかぁ・・思ったよりも長かったなぁ♪」
何も知らないクラークが庭師の格好で後ろから登場
「・・そっちこそ私達がいない事を良い事にクローディアに裸エプロンとはねぇ・・」
「!!・・・お前・・」
「・・ふっ、クラーク。
・・・場所を考えろ」
「クラークさん・・」
ロカルノとアミルの冷ややかな視線にエロ眼鏡、タジタジ・・
「俺が悪いんじゃない!帰ってくるのに手紙をよこさなかったお前達の責任だぁぁ!」
「うっせい!エロ眼鏡!」
「・・見なかったことにするからさっさと厨房に行け、クローディアがかなり動揺しているだろう」
「お・・・おう・・!」
大急ぎで厨房に向かうクラーク、結局、この館はいつも通りであった・・


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