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第十一節  「戦士 嵐の如く」


目には目を・・っということで敵船を事も無く乗っ取ったロカルノとアミル
ソシエとの連絡は取れないのでこの船も結局は攻撃対象
それゆえにさっさと孤島へと接近していき沖合いに近づいてから救命ボートに乗り換えて無事、上陸に成功した
それなりに大きな島には数隻停泊しており巡回している海賊も何人もおり
完全に占領させているのがわかる
そんな中、死角となっておいる切り立った崖の隙間に救命ボートを隠し周囲の様子を確認するロカルノ・・
「さて・・、停泊した数からして相当な警戒が予想されるが・・」
「どうします?」
「ふっ、基本的にはできるだけ見つからないように倒してシーラを探す。幸いアゼフが幹部に仕込んだ探知具がある」
そう言い懐からコインぐらいの大きさの鉱石を取り出す
「それはどういうものですか?」
「ダンケルクで開発された探索道具だ。2対の特殊鉱石が近づくほどこの石が振動する仕掛けだ」
「そんな物が開発されていたのですか・・」
「ふっ、あの国は軍事力は乏しいが情報収集能力はどこの国にも負けないからな・・
さて、手遅れにならないうちに行くか・・。アミルは私の後ろについてくれ、戦闘は私がこなそう」
「・・はい・・」
頼もしい戦士に憧れの眼差しを向けるアミル
当の本人はそれを知ってか知らずか、その心は仮面の内側にあるが如く
さっさと岩場の道を警戒して進んでいった

・・・・・・・・
・・・・・・

島は流石にシーラ達が生活していただけに道の整備もされている
さきほどの岩場も釣り用に作られたのかきちんとした道まで作られていた
島全体ではかなりの大きさであり小高い山も見える
そのために見張りは海岸線に集中しているようで先ほど数人倒してからは人の影もない
ただ・・・
「・・酷いことを・・・」
思わずアミルが唸る、逃げ回った後なのか兎人女性がうつぶせに倒れていた
背中から切りつけられたようですでに流れ出た血はそのままに乾いていた
「徹底的に略奪する、か。」
「・・・・せめて、安らかに眠ってください」
宗教事などない高位飛竜族なのだがキルケの真似をして無念の死を迎えた女性の冥福を祈るアミル
ロカルノも静かにそれを見守っていたのだが・・

”誰だ!”
”生き残りがまだいやがったか!”

見通しの良い平野なだけに人目がつきやすかったか数人の海賊が寄ってきた
「やれやれ・・・見つからずに目的地まで行くつもりだったが・・気が変わった」
そう言うや否や、無造作に愛槍を投げつける!
「ぐえっ!」
出鱈目に投げたかと思った槍だが的確に海賊の一人の首を貫く
「・・・今度は私が貴様達の命を略奪してやろう・・」
そう言うと重装鎧を着ているとは思えないくらいの速さで海賊達に襲い掛かった・・
・・・・・・
・・・・・・

一方
島内で唯一ある集落、かつてシーラ達が静かに暮らしていた跡地に海賊達が集まっていた
その中、集落の端にある大きな平屋な屋敷は特に物々しい空気に包まれていた
室内はすでに散々と荒らされており見るも無残の状態。床なども乱暴に破壊されている
だが最奥の間は彼らは何も破壊していなかった
・・何故ならそこは独特な儀式道具に包まれて床は岩肌がむき出し地下への階段があったからだ
ごつごつとした岩の階段、少し碧かかったモノで人一人通るのが精一杯な狭さだ
それが地下の倉庫行きならばまだしもそうとは感じない妙に冷たい空気が放たれている
そして階段を降りた先に彼らはいた
「・・・ふん、獣人にしちゃ大層なもんだな」
モジャモジャ髭でいかにも蛮人な男がめんどくさそうに室内を見る
四方を碧掛かった岩で囲まれた広間、壁には良く分からない現地文字でぎっしりと刻まれており
中央には祭壇がある。
だがその祭壇の上には小さい窪みこそあるがそこには何もなく男はその祭壇を蹴ってぼやいている
「お宝があるから協力したものの・・アンザルサンの野郎、獣人の女とちっさい宝石取って出て行くとはな・・」
「全くだ。ここで待っていたら財宝を持ってくるって行っているが・・信用できるか?」
「いいや、だからあのアイアンローズからふんだくった船に俺の部下も乗せておいた。裏切るような真似をしたら
あいつを殺って船ごと俺達の物にしようと思ってな」
数人の男が下衆な笑みを浮かべそう談笑をしている
服装からして一人一人が一組織を頭のようだ
「あの野郎、全く信用できねぇが・・あのアイアンローズをだましたぐらいだ。利用する価値はあるだろう」
「ああっ、何を考えてやがるのか知らねぇがああもうまく行くとはな・・」
「俺は計算高い野郎は好かねぇ。ここの玉持って行った時も契約だのなんだの何だの訳のわからん事を言っていたしな」
「・・ああっ、『潮風の秘宝』って言っていたな・・俺達には関係のないことだ。
財宝さえ手に入れればそれでいい」
目に浮かべる金銀財宝、再び男達はにやけ出すのだが

「たっ!大変です!!」

突如慌てて海賊の一人が降りてくる、顔色は真っ青で震えている
「どうした!?」
「ア・・アイアンローズです!艦隊が島を完全に囲んでます!!!」
「なんだと!?」
「動ける船は迎撃に向かいましたがことごとく轟沈しております、もはや残った船は数隻ほどです!」
「・・ちっ!急いで船に戻るぞ!停泊していて動ける船はどのくらい残っている!?」
「それが一斉に襲われ停泊していたものまで浸水しておりました!島内に上がった連中とも連絡が・・ぐあぁ!!」
必死で説明をしている途中で不意に口から血を噴出す男

「・・・逃げ場はない。この世のどこにもな」

男の胸を刃で貫き無造作で引き抜く戦士ロカルノ・・
「な・・なんだと!?」
「ふっ、言葉通りだ。・・だが死ぬ前に聞きたいことがあるのでな」
「何者だ!てめぇ!?」
「通りすがりの正義の味方・・っとでも言っておくか」
そう言うと有無を言わさず切りかかる!剛火の戦剣を振りかざした彼に一切の情はなく
罪を犯した無法者を切り裂いていく
対する男達はそれなりの戦闘経験を持っているが相手が悪かった
剣を抜く間を与えずに急所を切られ一人を残してあっという間に動かなくなったのだ
「・・・ほぅ、お前か・・」
残されたのはもじゃもじゃ髭の蛮人、一瞬の出来事に戦意を殺がれ壁に張り付きながら怯えている
「な・・な・・なんだてめぇ!!」
「アイアンローズの屋敷を襲撃したのはお前だな?」
「し・・しらねぇ!俺はただアンザルサンの野郎の話に乗っただけだ!!」
「嘘は身のためにならんぞ」
スッと無造作に刃を走らせ男の髭の一部を切り刎ねる
「嘘じゃねぇ!!アイアンローズ屋敷の襲撃はアンザルサンの野郎が指揮を執った!
俺達はこの島の襲撃をやっただけだ!!」
「・・ほぅ・・?」
そう言い男の首筋に刃を突きつけたまま彼が身に着けているマントの隅を見る
そこには小さな鉱石のピンがつけられておりそれに呼応するようにロカルノの胸にある鉱石が振動している
「・・そのマントはお前のか?」
「い・・いや!アンザルサンの部下のベリンダって女から貰ったもんだ!!」
怯える男の目、それを見てロカルノは軽く鼻で笑う
「・・いいだろう。ではアンザルサンとそのベリンダという者は何処に行った。そしてここに何があった?」
「あ・・・ああ、ここには獣人どもの秘宝である宝石があったんだ!
アンザルサンとベリンダの野郎はそれを持ちながら北に向けて出て行った!
北にしばらく行ったところに小さな無人島があってそこに財宝があるって!」
「・・シーラもそこか・・」
「あ・・ああ、あの獣人の女も一緒だ!この宝石を取ったら用無しのはずだったんだがあの野郎が連れて行きやがった!」
「・・・・なるほどな。お前が知っている事はそれが全てか?」
「そうだ!知っている事は全て言ったぞ!だから・・・」
「ああっ、命は助けてやろう・・・私は、な。」
剣を納めながら軽く言いやる、その口調は背筋が凍る何かが込められている
「な・・・それは・・どういう・・?」
「私が手を下さないということだ。お前が生きるか死ぬかはアイアンローズが決めることだ」
「っ・・て・・てめぇ!だましやがったな!!!!」
「ふんっ、貴様らの行いに比べたら些細な事だ。それに私はそう簡単に他人を信用しないのでな」
「ちくしょう!ふざけやがって!!!」
激怒する男、剣を納めたロカルノなら勝てると思い腰のカトラスに手をかけるのだが

トン!

それよりも早くロカルノの手刀が延髄に入る
「ぎ・・が・・」
唸りながら白目をむく男、その姿を確認もせずにロカルノは背を向き
「お前もアンザルサンに騙されたクチだろうが・・同情はせん。
これだけの事をやったのだからな」
冷たく言いながらその場を後にした

・・・・・・

地下室から上がり外に出た時には鉄十字艦隊の面々はすでに島の制圧を完了しているようで
ミリタリーなメイド達が慌しく走り回っていた
「あの・・どうでしたか?」
そんな中、屋敷の前で待機していたアミルがロカルノの無事を喜びつつも心配そうに聞いてきた
「一杯食わされた・・っと言ったところか。ここにいるのは全員アンザルサンに操られた捨て駒だ
探知用の石も見破られてここにいる男につけさせていた」
「・・そうですか・・」

”それで、当の張本人は私の船を奪ったままどこかに行ったって訳かい”

ふらりとソシエが姿を見せる
「・・ええ、そちらで捉えましたか?」
「いいや、綿密に陣形を整えたがそれよりも早くここから去ったみたいだね。
残った船は残らず沈めてやったよ」
「そうですか・・、奴らはここに納められていた宝石を手に北の小さな孤島に向かったようです
勢力を失ったはずですが・・シーラは未だ奴らの手の内です」
「ウィッグの言った通り、人質として生かしているんだね・・・。それで、宝石持ち出して何しようって言うんだい?」
「詳しい事は伝えられていませんでしたが・・おそらくは何かの儀式をするため・・でしょう」
「・・・ほぅ・・・」
「地下室には儀式用の独特な文字が敷き詰められていました。彼女達の文字なので詳しいところまでは解読はできませんでしたが・・
小さな絵のようなものがあり宝石を手に祈祷していました
・・それが何を呼ぶものかはわかりませんでしたが・・」
「どうせロクでもないことだろうけどね。・・さて、どうしたものかね・・」
軽く頭を掻くソシエ、シーラを無事に救出することが第一の目的
しかしこの島の占拠により彼らの勢力は大半は失ったはず
・・そうなると彼女を人質として使うことは目に見えているしそれだけ命の危険が伴う
「・・私に策があります」
「・・策?」
「・・・まぁ、そろそろ獣を檻の外に出そうかと思いまして(ニヤリ)」
「・・ああっ、なるほどね(ニヤリ)」
不適に笑う二人、視線の先には圧倒的な戦力差で出番がま〜ったくなく暇そうにうろうろしているセシルの姿だった

それより鉄十字艦隊は島に留まったままに惨殺された島人を手厚く葬ってやっている
そしてアンザルサンの追跡には・・
「そういや・・私がアミルの背中に乗るのも初めてかも・・」
『そうですねぇ・・いつもメルフィ様のほうですし・・』
「メルフィの方がお前向きだ」
「・・死ねるわ・・」
ロカルノとセシル、そしてアミルに任せている
「でもどうするの?シーラが人質のままでしょう?相手もそれなりに焦っているはず何だからさ」
「それはわかっている。だからこそお前の出番だ」
「私?」
てっきり自分の出番はもうないと思ったセシルなだけに呆気にとられている
「ああっ、草が仕掛けた探知具も見破られている。・・勘が良い奴だろう。
このまま飛竜で接近しても良い結果は得られん」
『どんなに早く飛行しても相手が警戒しているのなら私の姿はすぐ目についてしまいます』
「・・そうだ。そうなればすぐさまシーラの首筋には刃が突きつけられるだろう」
「だったらどうするのよ?シーラの安全考えていたら手のうちようがないじゃない」
「だからこそお前の出番だと言うんだ」
「・・まさか泳げっての?」
「・・大差はないか・・」
「うそん!」
大海を泳げ・・との事であからさまに顔を曇らすセシル
鎧装備にそれは苦行もいいところだ
「最後まで聞け。アミルもさっき言ったように飛竜の姿は目につく・・いやというほどにな・・
だからそれを利用する」
「ふんふん」
「相手が脅迫するのを見計らうまでひきつける。その間にお前は海に飛び降りて船に侵入しろ
・・後はシーラさえ無事ならば何をやってもいい」
「・・・ほんと?」
「ああっ、お前もフラストレーションがたまっているだろう。好きにしろ・・」
「ありがとう♪美味しく頂くわぁ(ニヤリ)」
爽やかに笑うセシル
しかしそれは最恐の獣が檻から放たれる合図でもありアミルも何気に悪寒を感じている
「大海の中の船は密室と同じだ・・奴らに教えてやれ、私達の怒りをな・・」
「むしろ恐怖を叩き込んであげるわ♪」
「叩き込んでも無様に散る運命だ・・意味は薄いが好きにしろ」
「やだん♪恐怖で錯乱させたほうが良い声で鳴くのよ?断末魔の叫び♪」
『あの・・お二人とも物騒な内容になっているのですがぁ・・』
「ふっ、それだけの事を奴らはした・・っということだ」
「そういう事、『目には目を、ボディーブローにはコークスクリューを』ってやつね
しょっぴいて国の騎士団に渡したところで苦痛を感じない斬首刑がせいぜいよ?
そんなので無抵抗に嬲られて殺されたりした島の人達が浮かばれると思う?」
顔を曇らせながらセシルが言う、ほとんどロカルノの活躍で出番がなかった分
被害者の姿はいやほど見れたのだ
『それはそうですが・・』
「まっ、死んだ人達がそれを望んでいるかどうかともかくそれを見て関わった
私としちゃそのぐらいしなきゃ腹の虫が治まらないってわけよ」
「同感だ、だからこそ私達は国には従わぬ身だ。法というもので治まらない感情もある・・
それを『野蛮』というのが今の社会なのだがな」
「・・事なかれ主義で事務的に仕事するようになったら国も終わりだしねぇ〜」
「ふっ、ヤスに良く言わなければならないかも・・な」
ニヤリと笑うロカルノ、まぁ最初から彼の弟であるヤスパールがそのような事をしないと信じきっているのだが・・
『っ、ロカルノさんセシルさん。前方に見えてきました!』
突如アミルが鋭い声で言う。
すでに日が傾きつつあり黄金色に染まる一帯の中、ソシエ邸で奪取された戦闘船がゆっくりと進んでいた
「・・・・、通常船と同じ速度ね。魔導ブースターは流石に使えないのかしら?」
「いやっ、ドックエリアの詰め所からマニュアルが盗まれている。・・これだけの事をしでかしたのなら
操作は多少荒くても使用可能だろう・・、島の脱出で使い果たしたか・・」
「死水ばらまくほど使いならしちゃいないでしょうねぇ・・でっ、どうするの?」
「襲撃するのさ。疑われないようにな・・アミル」
『了解です!』
ロカルノの一言で速度を上げる!甲板の様子が見えるぐらいになったところでそこから矢の雨が降ってくる
しかし巨体に似合わない巧みな動きでそれを回避しつつ

ドォンドォンドォンドォン!

強力な魔法弾を立て続けに放つ!
その狙いは寸分の狂いもなく、船をギリギリかすめ水面にぶつかり水しぶきを上げる
それは巧みなる芝居、矢に怯んだ竜が無理に魔法弾を出したかのように思わせる
「よし!いくぞ!」
「ぶげ!!」
セシルの頭を押さえつけながらロカルノは叫ぶ!!
『はい!』
水しぶきにより甲板で弓を引いていた海賊達は揃って怯む、そんな中
急加速して船に接近するアミル・・
だが・・
『!!』

ザァァァァ!!!

甲板から出てきた人物を見るや否やアミルは船の真横に進路を急変更する!
片方の翼を水面に叩きつけ水しぶきをあげながらそのまま船を通り過ぎる
「・・シーラ・・!」
苦い顔のロカルノ、甲板から出てきたのは褐色肌で金髪の女性、そして彼女に拘束され首元に短剣を突きつけられているシーラであった
一瞬ではあったが衰弱しながらも恐怖に震えるシーラの表情が彼には確認できた
・・そして勝ち誇ったかのようにニヤける女の表情も
「シー・・(ゴス!)ラんぎゃ!」
「顔を上げるな!・・お前の姿を見られるわけにはいかない・・」
『ですが・・どうあれまだ無事のようですね・・』
「ああ・・」
会話もそこまで、これ見よがしに恐怖に怯えるアミルを見せ付けながら再び一斉射撃がはじまる・・
「ふっ・・だが・・ここまでは予定通りだ・・アミル!」
『はい!』
再び翼より展開する虹色立体魔方陣、そこより放たれる魔法弾は船に向かって放つのではなく

ドォォォン!!!

真下の海面に叩きつける!!
それとともに巨大な水しぶきが巻き上がり一斉に放たれた幾つの矢の速度を殺し巻き込んでいく!
「・・よし!仕事だ、張り切っていって来い!」
「ふぇ・・ちょ・・まだ心の準備がぁぁぁぁ!!!」
水の壁が海賊達の視界を奪った瞬間、何のためらいもなくセシルを蹴飛ばし海へと叩き落すロカルノ
絶妙なタイミングだったがために彼女の悲鳴は水の爆音にかき消されそのまま大海原にダイブしていった!
「後は撤退だ・・アミル、急いで急旋回しろ」
『了解、加速します!』
水の壁が再び海に還る前に方向展開するアミル、水しぶきで射撃を遮られた海賊達はそれでもしつこく矢を放つのだが
その頃にはアミルはすでに矢が到底届くことのない距離まで飛んでいるのだった

「けっ!口ほどもねぇ!魔法使う竜も人質がいたら手も足もでねぇ!」
「ははははっ!全くだぜ!よし!今度きやがったら俺が打ち落として捌いてやるよ!」

アミルの後姿を見ながら勝ち誇る海賊達
・・しかし、それゆえ誰も気が付かなかった
自分達が乗船している船の船倉外壁付近に蒼い騎士剣が深々と突き刺さっており
それを底知れぬ殺意を放っている右腕がしっかりと握っている事を・・・


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