第4節 クラーク編 「消えぬ想い」


「よう、じいさん。ひさしぶりだな!」
朽ち果てた感じの漂う店の中にいた白髪じいさんに俺が叫ぶ。
「なんだ・・、お前か」
相変わらずの無愛想、まぁこの顔で愛想がよかったら返って不気味なんだけど・・・
「ちょっと情報が欲しいんだけど?」
「・・・なにが知りたい?」

このじいさんはここいらの町の事情に詳しい。っというのも彼はこの一帯の
浮浪者仲間のドンであり、
表に流れないような情報をたくさん持っている
浮浪者関係から仕入れる情報なので位の高い貴族の内部情報は期待できないけど・・
それでも貴重な情報が手に入るからアテにはできるかな?
まっ、ここで手に入りにくい高位の貴族情報はロカルノにまかせたからよしとしよう・・

「最近、異端審問会で一つの家族が異端扱いになったの知っているかな?」
「ああ・・、あのことか。知っているよ。馬鹿な貴族どもの仕業だろうからな。
浮浪者どもも息巻いておったわ。」
「その異端扱いになった家系のことについて色々と知りたいんだ」
「家系・・、確かサルトル家だったかな?
そんなことはあの仮面にまかせたほうがいいんじゃないか?」
じいさんもロカルノと面識がある。
お互い無愛想なので直接話をしたことはないんだけどね
「あいつには他のことを調べてもらっているんだ。それに世間一般の情報も欲しい、
それにはあんたが一番だからな・・」
「ふん・・、サルトル家に関することを調べたらいいんだな」
「ああっ、頼む」
「わかった・・、情報を仕入れたらそっちに伝えに行こう・・。いつもの酒場でいいんだな?」
「かまわない、いつも助かるよ。じいさん」
「報酬は弾んでもらうぞ」
「へいへい・・」

手短に話を終え、俺は店を後にした。すでに日も暮れている・・
久々にでかい一件になりそうだな〜、俺の冒険者としての血がそう言っている。
こういうことになるとまずセシルが愚痴るんだけど今回はやたらと大人しかったな・・
あいつちょっとレズっ気あるからな〜、キルケに惚れたか?
口に出したら半殺されるから黙っておこ・・




町の通りに出た時、すっかり辺りは真っ暗になっていた・・
「もし・・」
ふいに女性の声が聞こえた、周りに人気はない・・
「俺になにか用かい・・?」
気配で探るがやはり、誰もいない・・、なんか不気味だな、おい・・・
「貴方は・・、キルケゴールを守ってくれている方ですか・・」
俺の事を知っている・・?
「・・話をする時はちゃん姿を見せるもんだぜ・・?」
そう言うとふいに俺の目の前に霧が集まってくる・・
霧はやがて人の形になってくる・・・・人間ができる芸当じゃないな
「これで・・いいですか・・?」
「ああっ、結構。確かに俺は成り行きだけどキルケの面倒を見ているよ。あんたは?」
「私は・・、あの子の母です・・」
冗談・・ではなさそうだな。っということは幽霊ってやつ?
「あの子の母親は処刑されたと聞いているが?」
「はい・・、確かに私の肉体は処刑されました・・」
「ということは、俗にいう幽霊ってやつ?」
「・・そうですね。似たようなものです」
似たようなものって他にもなんかあるのかな?
「ふぅん、なるほど・・・ね」
「信じてもらえますか・・?」
「商売柄、アンデットとかはよく見るからな、あんたの言うことを信じるよ」
「ありがとう・・」
「でっ、俺に用があるのかい?」
「はい・・、おそらく今あの子はまだ命を狙われています」
「ああっ、確かにそんな感じだよ。なぜ狙われているのかはわからないがね」
「その訳を説明します・・」
「知っているのか?」
「ええっ・・、あなたにならお話しておいたほうがよろしいでしょう・・」
幽霊の話に信憑性があるかはおいといて聞いてみる価値はありそうだな・・・
「ああっ、それじゃ聞かせてくれ・・」
寂しげな雰囲気の幽霊が説明を始める・・、相変わらず周りに人気はなかった


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