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第九節  「疾風怒濤 剛炎乱舞」


数日後
ユトレヒト隊は海の上にいた・・。
『草』からの報告によればフレイアの身体につけた魔導具の反応があったのは
ハイデルベルク本土から少し離れた無人島。
付近の住民からも怪しい情報が何度も聞かれるところだ
それを元にハイデルベルク騎士団から船を一隻チャーターし、自ら赴いている最中なのだ
いくら王に気に入られているといえども大した大判振るまいである

「付近の住民から恐れられている島・・か。臭いもんだな」
船に揺られながら船首にて前方に見えつつある島を見つめるクラーク
天候は曇りで嵐の予感すら感じる
波も決して緩やかではないが大国が誇る船は物ともせずに進んでいる・・。
甲板などに装飾こそされているがかなり実用的な代物ようだ
彼らが乗っている船は騎士団所有の小型軍事船で操縦しているのも
ハイデルベルクの海上保安に勤めている騎士達だ
彼らも危険な異教相手ということでかなり緊張した面持ち、
それでも的確に彼らを目的地に送り届けようとするのはプロだからか・・
「そうですね・・。しかしこの船・・天候の割には安定してますね」
クラークの隣に立つクローディアが言う
すでに決戦用の黒袴に白道着姿でいつでも刀を抜ける状態にしてある
「錬金技術がかなり施されていますね・・。
しかも船底に水神の護符が張られてますからこの船の周辺だけ波が幾分穏やかになるみたいです」
クローディアの腕にしがみついているキルケが説明する、
彼女はいつもの服装・・コスプレしようにもふざけている場合でもなさそうということで・・
「キルケ・・・、博識だなぁ」
「結構船酔いするほうなので真っ先に確認しましたよ・・」
「だったら酔うのは事が終わってからだな。おっ、・・・見えてきたぞ」
水平線に浮んでくる黒い島の影・・
不気味は雰囲気がここまで漂って来るのが肌でもわかる

「まぁまぁ、こりゃ邪な事をするのにはぴったりな場所ねぇ?」
船室からセシルが頭を掻きながら登場・・寝起きのようだ
「気配に起こされたか?」
「まぁね。もしくは武者震い?」
「惨撃の系譜ってやつですね?」
キルケが明るく言っちゃっている・・。まぁ間違いではないのだが・・
「違いないな・・」
同じ船室から静かに出てくるロカルノ。
何時もの姿とは違い白い羽根のついた羽根付き帽に黒い貴族服、
そして黒いマントをきた姿だ。
帽子の中から覗かせる緋色の瞳は静かに島を睨み腰には
この為に用意した剛火の戦剣『ディ・ヴァイン』を下げている
昔の人間がその姿を見たなら間違いなく『義賊セイレーズ』と叫びだすだろう
・・そのくらい今の彼は若かりし時のセイレーズに似ている
「仮装・・どころじゃないか。よく似合ってるな?」
「・・ふっ、お前に言われても仕方ない。だが・・流石はセイレーズが使用した物。
見た目以上に動きやすい・・」
「それで・・あのすばしっこいのに勝てる?手の貸しようないわよ?」
「手だし無用だ。奴を仕留め、フレイアを救う・・」
何時も以上に感情的なロカルノ・・、それこそが彼の真の顔・・

「だが、お出迎えもあるようだな?」
「その用ですね・・」
不意にクラークとクローディアが立ち上がる・・。
見れば遠くの島影から徐々にこちらに近づいてくる2隻の船が・・
「ひええ・・海上の戦いだなんてやったことないですよ?」
「なぁに、要は足場をなくせばさようなら・・だ。クローディア、久々にあれをやるぞ?」
「兄上・・承知です」
ニヤリと笑う剣術使い二人・・船首に立ちゆっくりと剣に手をかけ気を溜めている
そうこうしている内にも不審船はかなり近づいてきている・・
「「・・はぁぁぁぁ・・・・」」
微動だにしなかった二人が静かに深く息を吐く・・が
次の瞬間!

「大!」

「斬!!」

「「鉄!!!」」

気合い声とともに鋭く抜刀!
剣からは白い一閃が走りそれは巨大なカマイタチとなり波を切り船へと駆ける!

斬!!

強力な真空の巨刃は船を横一文字切断し上部を宙に浮かす・・・
そして時間差で放ったクローディアの巨刃が縦に切断し十字に裂かれた船は一気に残骸となった

ドォォォォォン!!!

それと同時に派手に爆発する!
「!?船に爆薬でも積んでいたか!?」
「クラークさん!もう一隻きますよ!あんなの食らったらこの船も沈んじゃいますぅ!」
「ちっ、もう一度練るには間に合わない!セシル!」
「まっかせなさい!炎で攻撃するなら氷で対処するまでよ!!」
迫りくる爆弾と化した船にセシルは不敵に笑い『氷狼刹』を振りかざす・・
「愛しのロカルノのために人肌脱いであげるわ・・『氷装十連撃』!!」
鋭い氷のつららが10発浮び凄まじい速さで船に突き刺さる!
それと同時に刺さった箇所から氷が伸び船を覆っていく・・
「普通なら結構魔力を使ってしまうんだけど海上だと水が沢山あるから楽ね」
氷の塊と化した船はその重みに耐えきれず静かに水中へ沈んでいく
途中水圧で船がひしゃげたのか水中で爆発が起こりその衝撃がクラーク達に伝わった・・

「船を爆弾代わりにな・・随分と贅沢な連中だぜ」
「挨拶代わり・・だろう・・。だが舐めた代償は高くつかせてもらう・・」
船はそのまま直進しその後船爆弾による襲来がくることなく島へと上陸した

・・・・

島は正しく無人島を思わす風貌であり原生林がそびえたっている
これだけを見るとまさか不審者達が潜んでいるとは思えない・・のだが
「・・感じるか?」
周囲をザッと見渡したクラークが他の面々に声をかける
「・・ええっ、どす黒い・・って言えばいいのかしら?瘴気ね」
すでに氷狼刹を抜き戦闘態勢に入っている
「ですがこの地形での戦闘ともなれば不意打ちは必至
・・姿を表さないところを見ると少々厄介ですね」
気配を探ろうにも瘴気以外には何も感じない・・殺気なども消し去っているようだ
だがそれに構うことなく一歩前に出るロカルノ。
「時間が惜しい。一気に行くぞ・・セシル」
「え・・一気にって・・ちょ・・ちょっと!」
いきなりセシルの肩を手で掴みもう片方の手でディ・ヴァインを抜く・・
「ふっ・・初陣がこいつの力を借りて放つことになるとはな。リュート君には少し悪いか・・」
そう言いながら剣に魔力を込め出す(出元はセシル)

ボゥ!!

ディ・ヴァインから出現する巨大な炎刃・・それは彼の身長の5倍を越えるまで伸びた
「ロ・・ロカルノ〜・・なんだか私の身体から力が抜けていっているような感じがするんだけれども〜・・」
「少し借りている・・黙っていろ」
そう言うとぶっきらぼうに横一文字に切り裂く!!

斬!!

巻き起こる炎刃がうっそうとした木々をまとめて切り払い木は瞬く間に燃え出す・・
「ぎゃあ!!」
「う・・・うわぁあ!!」
その中で身体を真っ二つにされた戦闘員や炎に巻きこまれ火達磨になる戦闘員が何人もいた
「さっすがは剛火の戦剣だな。こいつはいい」
「・・ロカルノさんにしては乱暴ですよ・・」
「綺麗事では済まない。
それに私としても今回は虫の居所が悪いからな。
セシル、このままこの島の全ての木を焼き払う気でいくぞ。
・・お前の魔力だ、そのくらい平気だろう?」
「・・自分のを使いなさいよ」
「なら、お前に譲った分に利子を付けた分を使用させてもらう・・行くぞ」
そういいながら静かに進み出すロカルノ
・・セシルを強引に引っ張るように歩を進め次から次へと木をなぎ払う
これには潜んでいた戦闘員もたまったもんではなく切り払われる前に飛び出し一気に仕掛けて来る
「来たな・・、よし、クローディア。やるぞ、ロカルノは道造るのに専念しとけ!」
姿を見せる獲物に目を光らせるクラーク
「頼む・・」
そう言うと焼けた大地の上で開始される戦闘・・
クラークとクローディアはそれをもろともせず
駆け浮き足立っている戦闘員を片っ端から切り倒す。
生半可に手を抜いて気絶させたとしても爆薬を使って相打ちを狙う・・
そのことはハイデルベルクの襲撃時によく知っているためにためらうことなく切りまくる
キルケは戦闘は程々に後方で体力を消耗させた仲間の回復をし援護を主体としている
その間にもロカルノはセシルの莫大な魔力を利用して炎の道を作っていく・・

・・・・・

森をあらかた焼き払った時についに天候は雨になり炎を収める
だが森に潜んでいた戦闘員はまとめて始末したらしく襲いかかる敵は何もない
ただ・・森の終わりから地面が石畳となりその先に古びた神殿が存在している
「随分派手にやったが・・まだ大丈夫か?ロカルノ?」
「私は全く問題ない。セシルもまだまだ元気だ」
シレっと言ってのけるロカルノだがセシルはそうでもなさそう
「無限じゃないんだから少しは遠慮してよね〜!」
「まぁまぁ、でもあの神殿が怪しいですね〜。」
石でできた古い神殿・・表面は植物がおいしげっており不気味さが満載だ
「瘴気はあそこから・・ですね。フレイアさんもそこでしょう・・」
「よし・・一気にいくぞ。奴らもこの事態に気付いている・・・気を引き締めろ!」
珍しくロカルノが吠えて走り出す
「・・俺の台詞ねぇや・・。じゃあいくか!船の皆はいつでも出せるようにしてくれ!」
クラークは乗船の騎士達に声をかける
彼らはユトレヒト隊の戦い振りに呆然としている
「戦場で呆然とするな!任務はきちんとこなせよ!」
「「「「は・・・はい!」」」」
ロカルノの剣幕にやや圧されるたが騎士達は気合を入れなおし敬礼をする
それを見ながらも全員神殿に向かって駆け出した


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