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第十節  「運命の妹」


そこはかび臭い神殿の石広間・・
おおよそ人が使用していたとは思えないくらい黒カビや
薄気味悪い植物が生い茂っていり至る所で亀裂が走っている
・・だがそれでも不思議と建物は倒壊していない
石の広間の先には階段がありその先には巨大な悪魔の像が鋭い牙を見せて鎮座している
そして階段の前には小さな祭壇があり
そこにフレイアは地味なスーツ姿のまま4股を拘束されていた
「く・・、こんな処まで連れて何をするつもり!!?」
拘束されつつもまだ抵抗するフレイア・・
内心は自分の不甲斐なさに涙が出そうなのだがそうも言ってはいられない
そして声を投げかけるは彼女の前に立つ黒マントの男・・
頭も漆黒のターバンのようなものを巻いており目も隠れている。
「何・・君には生贄になってもらう。それだけだ」
男がそう言う・・低い中年の声・・しかしそれに感情はなく薄ら寒い何かを感じる
「生贄・・ですって!?」
「そうだ。何も辱めを与えるつもりはない・・安心したか?」
「どこが!そんな事をしたって・・騎士団に討たれるだけよ!」
「どうかな・・、今回は以前のとは訳が違う。なんせお前を用意したのだからな」
「・・?」
男の余裕ふりと不可解な言葉にフレイアは思わず首をかしげる
「運命の娘・・。よもや騎士団の人間だとは思いもよらなかった。
・・まぁ準備をかければ同じ事だったが・・」
「くっ・・」
「だが、予想外の事もある。ユトレヒト隊とか言ったか・・。
貴様の兄がお前を助けに向かってきたらしい」
「兄・・?ふん!あんな奴・・兄弟でも何でもないわ!大体何よ、運命の娘って!!」
「・・そうか・・知らなかったか・・」
愉快そうに笑う男、狂気じみた声が広い空間に木霊する
「な・・何よ!?何がそんなにおかしいの!?」
「いいだろう、説明してやる・・・そもそもお前はこの世にいるはずのない存在だ。」
「存在しない・・?」
訳のわからないっと言った表情のフレイア
「ああっ、そうだとも。
本来の歴史の筋ではお前の父セイレーズと母ミュンの間では子は産まれなかった。
・・しかし、その流れを変えた人間がいた」
「・・・・」
「それがお前が忌み嫌っている男・・ロカルノだ。
どういう理由でか知らないが時空転移し過去の二人に接触しお前を産むように手を加えた
・・・ここまで調べるのに骨がかかったが実に有力な情報だ」
「う・・嘘よ!」
「信じたくなければそれでいい。だがお前には常に世の流れとは違う気を持っているのは確かだ。
・・話はこのぐらいでいいだろう・・」
押し黙るフレイアに男は軽く鼻で笑い祭壇の前に魔方陣を描き出す
その時・・

ドォォン!!

神殿が揺れるくらいの巨大な爆発が起こる!
「何事だ・・?」
かなりの揺れだが臆することなく男は静かに声をかける
「報告します。ユトレヒト隊が神殿内に侵入しました」
人の姿はない・・が声が響く
「ここを嗅ぎつけたか・・。森に配備した者は?」
「全滅です」
「そうか・・、ではまず奴らの始末を優先する。御神降臨の儀はそれからだ」
「・・では・・」
「総員、連中の排除に向かえ。・・うるさければ儀式の妨げにもなろう・・」
「御意・・」
そう言うと声は静かに消えていく
「・・どうやらお前の兄が我等の計画の最大の障害になりそうだな。
待っていろ・・首だけ残して対面させてやる」
そう言うと男は静かに去っていった
「ロカルノ・・兄さん・・」
身動きのできないフレイア・・だが自然と彼の身を案じる気持ちが溢れていった・・


一方
神殿の中、薄暗い回廊を突き進むユトレヒト隊・・
待ち伏せをしていた戦闘員を物ともせずに切りまくる
「ちっ!カビ臭い湿気臭い血生臭い!これだから裏宗教事ってや〜なのよ!!」
うっとおしそうに突っ込み鬼が逃げ出すくらい凄惨な攻撃をかますセシル
最初は苦戦した戦闘員だったがもはや攻撃は見切ったようで事もなげに相手をしている
それはクラークやクローディアも同じで普通の戦闘員では足止めにならない
「構造的にゃ換気ができてねぇ!建築した奴の面が見たいな!」
「そういう問題でもないのではないですか・・?兄上?」
「・・雑談しながら殺戮を繰り広げないで下さいよ・・」
つくづくたくましい前線3人に呆れるキルケ・・
本来ならばそれにフォローを入れるロカルノだが今回は流石に口数が少ない・・
「まっ、わかりやすい構造ね。この先が目標っぽいし〜・・」
「そうだな・・、面倒な迷宮じゃない分奴さんも見さかえなくなるぜ・・」
呑気に話す二人だが急にクローディアの目が鋭くなる
「・・・、兄上、私は入り口を確保しておきます」
「クローディア・・後方から何か感じたか・・?」
心眼を開いているクローディアだけに周辺の気配を探るのは面々の中でも一番強いようだ
「ええっ・・かすかですが・・」
「わかった。俺達の背中はお前に託すぜ・・。」
「まっ、クローディアの言うことに間違いないしね。私達で突っ切るわ!」
「クローディアさん!御武運を!」
「任せるぞ・・」
一同軽く声をかけ薄暗い回廊の奥に進みクローディアだけがそこに立ち止まった
奥からは刃が肉を刻む音だけが響きそれを除くとひどく静寂に思える奇妙な雰囲気だ

・・・・・

「そろそろ出てきたらどうですか?
戦闘員でも正面から襲いかかるのに貴方一人は背後から・・おおよそ良い趣味とは言えませんよ」
クローディアの呼び声に音もなく前に現れる一人の黒マント・・
身長は低く、深く顔を隠しているが瞳の光がかすかに見える
「・・・・」
「まぁ、不意打ちも戦術ですが・・。兄上達の邪魔をさせるわけにもいきません。」
そう言うと歩幅を空け少し腰を落とし得物に手をかけるクローディア
黒袴に白道着の姿は凛々しく黒い布の襷をかけ気合は十分だ
対し黒マントは静かに動いたかと思いきや音もなく宙をかけクローディアに飛び掛る!
「・・・」
無言のままマントの中から飛び出す幾つもの影・・
「・・疾!」
それにクローディアは素早く反応し抜刀で対抗する!

キィン!!

飛びかかる物をクローディアは叩き落す
・・飛来したのは鋭いクナイであり柄にはワイヤーのようなものが括られており
落とされたかと思いきや引っ張られ黒マントに戻っていく
その間にも黒マントはクローディアの眼前に迫り短剣を取りだし斬りかかる!

シッ!!

鋭く空を斬る音がしたかと思うと攻撃をしたはずの黒マントが無理な姿勢で飛びのく
「踏みこみが甘いですよ・・。アリーさん」
その場からは一歩も動いていないクローディア、感情のない瞳が黒マントを見つめる
「・・、流石ですね」
クローディアの目にも止まらぬ一撃でマントは切られそこに素顔が見えている
・・ハイデルベルク騎士団情報部副隊長アリー、その人が・・
「・・貴方が、フレイアさん誘拐の実行犯でしたか」
「・・・・、そうです。城に薬を捲いたのは私です。・・気付いてましたか?」
「いえ、内通者がいることは間違いないと思っていましたが貴方とは思いませんでしたよ
・・今の今まで・・」
「・・・ならば何故・・、気配は消したはずです」
いつもの彼女とは思えないくらい無表情のアリー・・
元が愛らしい童顔なだけに一層不気味さが出ている
「ここに来てかすかに気配が感じました。
それがどこかで会ったことのある人のモノとわかりましたので・・。
私がハイデルベルクに滞在して姿を見たのは重役と一部の兵のみ。
可能性として上げられるのならば一人しかいません」
「見事・・っとしか言いようがないですね」
軽くため息をつきマントを脱ぎ捨てる・・、そこには黒い戦闘服
腰には色々なポーチをつけており所々なめし革で補強されている
栗色の髪は動き回るのに邪魔にならないように括られており
手には曲線を描く短剣、ワイヤーのついたクナイを持っている
「それだけの地位を持ちフレイアさんとも親しかったという貴方が何故裏切りをしたのですか?」
「裏切り・・違いますよ。私は最初からこちらの人間です」
「・・・なるほど。最初から騎士団とは無関係というわけですか」
「ええっ・・できれば知られたくなかったのですが・・ね」
そう言うとアリーは静かに短剣を構える
「ならば何故骸旅団の存在をセシルさん達に教えたのですか・・
それにそれだけフレイアさんの傍にいたのならば彼女を攫うのに戦闘員を使わなくてもいいはず」
「・・・・、主任が目標じゃなかったら・・こんなことにならなかった・・」
一転、苦々しい顔をするアリー・・、それをクローディアは静かに見てやる
「・・、どうやらフレイアさんの狙って騎士団に入ったわけでもなさそうですね」
「そうよ、私の目的はハイデルベルク内に潜んでいた『運命の娘』の拉致だった・・
けど・・それが主任だとは・・思わなかった。
あの人がそうだったのならば私はこの任務を放棄したい・・だけどこれは我々の悲願・・
拒否することはできないのよ!」
そう言いアリーはキッと鋭く目を尖らせる。濃密な殺気が回廊に溢れ出した・・
「だから私達に正体をほのめかすような事を言ったわけですね」
「淡い希望だったけどまさかここまで来るとは思わなかった・・。
だけど私は骸旅団の一員、こうするしか・・ないのよ!」
そう言い疾風の如く飛びかかる!
「ならばその枷・・私が断ち切ってあげましょう」
殺気でなく寒気すら感じてしまう剣気を放つクローディア・・どっしりと構え迎撃の姿勢をとる
「くっ・・」
静かに構えるクローディアに思わず身構える。
距離はあけども肌を伝う凍るような剣気に呑まれていったのだ。
身長として大して差がないはずなのにそこにいるクローディアは自分よりも何倍も大きく見える
「・・・・」
対し全く落ちついたクローディア、曇りのない瞳でアリーを見つめる
「私を・・私を見るなぁ!!」
焦って飛び出すアリー、片手からワイヤーのクナイを投げる!
それは魔導を使ったのか蛇腹に動き軌道を変えてクローディアへと向かう!!
「迷いのまま・・動きますか」
ゆらりと動いたかと思うとクナイは次々と切り払われる・・
超高速の抜刀で片っ端からワイヤーを切断したのだ
「きょ・・強化加工したはずなのに!」
自慢の暗器が玩具のように叩かれるのを見て唖然となるアリー・・
そのまま相打ち覚悟で短剣を構え特攻する!
「破!!」

キィン!!

相打ち狙いのアリーに神速の居合いが襲ったが彼女は咄嗟に短剣でそれを受けとめた・・
「くぅ・・こんなくらいで!!」
凄まじい衝撃に耐えつつも相手の攻撃を受け隙ができたのを勝機と見たかさらに手に忍ばせていたクナイで斬りかかる!
「・・・アイゼン二刀流・・『影討』」
直も冷静なクローディア、身体をひねったかと思うと

ドス・・!

鈍い音をしてアリーのみぞおちに鞘が刺さっている・・
抜刀の際に手をかけていた鞘を直接鈍器として使用したのだ
「あう・・・あ・・」
「斬!!」
うなだれるアリーにクローディアはカッと目を見開き刃を走らせた・・
手に持っていた剣は弾き飛ばされもはや戦闘不能
彼女もその衝撃をまともに受け吹き飛ばされた
「こ・・殺して・・」
「・・・・、それで済むのですか?」
「もう・・隊長の元へは戻れない・・、貴様にも負けた・・私の居場所はもうどこにもないのよ」
「・・、まだ帰る場所はありますよ」
うなだれるアリーに静かにクローディアは言う
「え・・?」
「ですがそのためには死んでもらわないといけませんね」
唖然とするアリーの首目掛けてクローディアの『月華美人』が鋭く走った


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