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第五節  「動き出す影達」


城にてキルケとセシルが目を光らせている間、
何もクラーク達はあぐらかいて待っているわけでもなかった。
以前ロカルノが滞在した宿を貸し切りにし様子を伺っていたのである
一介の冒険者チームがやるにはおおげさだが今回は特別。
ロカルノが弟である現ダンケルク王、ヤスパールに願って軍資金を借りたのだ
ロカルノも縁は切ったとはなっているが王族でありそのくらいの金は勝手に使ったも
誰も咎めないのだがそこはロカルノの性分
計画を立てて返済するということで話をつけたようだ


そして宿の一階の店
表通りに位置する宿にしては落ちついたラウンジがあり
静かに酒が飲めるスペースとしてマスター一人だけが従業員の空間が造られてある
壁はミッドナイトなブルーの壁紙、広間のスペースには小さな丸テーブルが幾つも置かれて
中々に洒落ている
その一席に座り窓の外を見ているクラーク・・
ロカルノは定期的にセシルとの連絡をとりに行ったので留守、
最初にコンタクトをとった時、やたらとやつれていたのが気にかかるが
言っても話してくれなかったのでそのまま放っておくことにした
「やれやれ、前の一件でも感じたが・・この街は眠ることを知らないな」
もう夜遅いのに窓の外にはまだまだ人影がある・・。
どうやら勤めを終えたお父さんが酒を飲みまくっているようだ
「それだけの栄えがあるわけですね、その分あの人達の中に
不審な動きをする人がいたとしても見つけにくいわけですが・・」
クラークの前に座るクローディア・・、顔が赤いのは彼の傍だからか酒のせいか・・
二人はいつでも動けるようにと戦闘用の服装をしている。
クラークは毎度な薄碧のコート姿、クローディアは戦闘用に黒袴に白道着。
流石に襷はまだしていない
「まっ、長所と短所は紙一重ってな。ともあれ、久々の兄妹水入らず。もう少し飲むか?」
「・・・はい、お共させていただきます」
葡萄酒の酌をしてもらうクローディア、飲みなれない酒だが
兄が入れてくれるならばそれだけで美味になる。
だが彼女はどちらかと言えば下戸であり酒も自分から飲むことはほとんどない
「・・、そうだ。クローディア、お前にちょっと大事な話があるんだ・・」
「!!・・は・・はは・・ははは・・はい!」
声が上ずり強張っている妹・・、もう頭が真っ白になっているのだろう
「っと言っても今仕事中だからな。この一件が終わったら伝える。
・・だから集中力を削ぐなよ?最近なんか落ちつきがないからな・・」
「兄上・・申し訳ありません・・」
兄の指摘はもっとも・・。戦場にて冷静さを失うことはどれだけ危険なことか・・
それを彼女はよくわかっているはず・・なのだ
「まっ、いいさ。ロカルノは・・、まだか。あいつも必死に動いているな・・。
妹と言えども傍にいた女性・・、深い想いをもつのも当然か」
「・・・・・」
「・・、どした?クローディア?」
「いえ・・、あ・・あの方は・・」
クローディアが窓越しに見なれた人間を見つけた、それが店に入りクラークの前に立つ
軽いマント姿で茶髪の顎鬚が特徴の優男

「まさか王都でお前と出くわすとはな〜・・」
驚く顎鬚の男・・、ややボサボサの髪はだらしなさそうに見えるが目はそれと違い意外と鋭い
「あんたは〜、確かジャスティンだっけ?」
「憶えてもらえたか?」
「まぁな。どしたんだ?確か聖騎士って決められた土地を守っているんだろ?」
「本来ならそうなんだがな・・座っていいか?」
意外にあつかましい聖騎士ジャスティン
「ああっ、どうぞ・・。酒も飲むか?」
「いやっ、これでも勤務中だ。飲むわけにもいかないさ」
笑いながらクラークとクローディアの間に座るジャスティン・・。剣も横に立てる
「意外に真面目だな・・でっ、どしたんだ?」
「何っ、俺がここにいるのは交代制だ。
フレイアを除く聖騎士は交代で王都の守りにつくことになっているんだ。
そんでたまたま俺が担当だったってことさ。それよりもどしたんだ?
まさかの『金獅子』復活で城内騒然だぜ?」
「そんなに騒いでいるのか?まぁあいつ危険人物だからな〜」
仲間内なのにひどい言われようだ・・、まぁそれも自業自得でもあるのだが・・
「ところがどっこい。あいつの猫かぶりは芸術的なもんがあるらしい・・、
凛々しく慎み深い騎士として男子騎士の憧れになってら。
俺も実際会うまでその虚像を信じていたからな」
「・・セシルさんが・・です・・か?」
おおよそ信じられないと言った感じのクローディアさん・・
「ああっ、しかし彼女が本気で騎士団に戻るとは思えない。
加えて表通りで酒飲んでいる二人ときた。・・何を企んでいる?」
言っているこそ疑惑の念だが顔つきはむしろ面白そうなジャスティン・・
「仕事さ。企むってのは人聞きが悪いぜ?前回だって王さんの陰謀だろう?ありゃ・」
誘拐犯呼ばわりにされたのを思い出し笑ってしまうクラーク
これにはジャスティンもバツの悪そうな顔をする
「それを言われると辛いな。しかし・・仕事・・か」
「兄上、ジャスティン殿は信頼できる御仁。
いざとなった時のためにいきさつを言っておいたほうが・・」
「ああっ、そだな。じゃあ簡単に説明するぜ。元々は・・・」

・・・・・・・・

クラークの説明が終わった時にはジャスティンは怪訝な顔をした
「なるほど・・、だからフレイアはロカルノに対してあれほど過敏に反応していたんだな・・。
あいつがあれだけ嫌悪感を出すこと自体なかったらおかしいとは思っていたんだよな」
「相手が情報通な分だけにうかつに動けないんだよな〜。
だからセシルとキルケがその警戒に当たっているわけだ」
「だけど間違いじゃないか?まがいなりにもブレイブハーツを扱う騎士だ。
それを脅迫して襲うっていうのも信じられないがなぁ・・」
「ロカルノの直感は外れたことがないぜ。まっ、何事もなければそれはそれでいいさ・・
ってなわけでゴタゴタが起きても俺達を攻撃するなよ?」
「まっ、セシルの一言で全員ひれ伏すと思うけどな〜。だが有事の際には俺達も協力する
・・ついでに兄妹の仲直りの手助けをしてもいいぜ?」
「それは俺達の出る幕じゃねぇや。まぁそうそう動くことないだろうがな・・」
呑気に酒を注ぐクラーク・・、これが剣士だとは誰も思えない

”・・ところがそういうわけにもいかなさそうだ・・”

そんな一行に何時の間にかラウンジ内にきていたロカルノが呟く
今度も仮面はとってある・・、隠密行動を主にしているので目立たないようにとの配慮だろう
それでもその緋色の瞳は特徴があるのだが・・
「よお、ダンケルクの御曹司・・、仮面の下は意外に美形面だな?」
「聖騎士ジャスティンか、こんな所で油を売っていていいのか・・」
ロカルノの一言でジャスティンの顔色が変わる
「っということは動きだしたか・・」
「ああっ、堀に怪しい船が数隻あった・・。
セシルにも連絡はしたが数が多ければ難儀な話になる・・。
用意をして侵入を阻止するぞ」
ロカルノが言い終わる前にジャスティンがテーブルから跳ね飛び出口に向かう
「ならば先に動いているよ。狙いはフレイアで間違いないんだな!」
返事を待たずして走り出すジャスティン・・
「元気だな・・。俺達の用意もできている、ジャスティンとは別ルートで城に向かおう。
それが陽動かもしれないからな。クローディア・・いくぜ」
「はい・・、ロカルノさんが準備が終わるまでには終わらせておきます」
刀を手にとり出て行く二人・・、ロカルノも無言のまま自分の装備を取りに行った

・・・・・・

夜間の城内

いくら夜とは言えども警備をしている兵は何人もいており
ホールも薄明るく錬金灯が灯っている
しかし今、兵士達は力なくうなだれており眠っている・・それも不自然な格好で・・。
そんな中、庭からの扉が静かに開き、黒いボディスーツに黒い覆面の男達が入ってきた
手には鋭い鉤爪が装備されておりどう見ても不審人物・・。どうやら何かの戦闘員のようだ
それが数人、音もなく警戒しながら歩き目指すは地下への階段・・
だがそれを妨げる様に氷の矢が数本階段の前に突き刺さった
「!!!」
不審人物達は一瞬驚くがすぐに警戒する

”よ〜こそ、不審人物さん。城内に眠り粉を捲くなんてやるじゃないの・・”

姿見せず辺りに響くセシルの声・・、しかしそれに応える戦闘員達ではなく無言で爪を伸ばした

”おしゃべりする気はないってわけ・・ね。いいわ・・、生け捕りよ・・”

そう言うと濃密な殺気がホールを包み戦闘員計6人は二人組みになり
互いに背中を守りつつ周囲の警戒を強める・・
しかし・・

ボコ!!

急に戦闘員の一人の地面が大きく割れ中から突き出す氷のドリル・・!
「「!!!!」」
それを回避しようとしたら元よりドリルは囮・・
気を取られた戦闘員の一人の足にセシルの手が伸び・・

ググググググ!!

ものすごい力で穴に引きこむ・・、注意を削いでしまった戦闘員は穴に引きこまれそれと同時に・・

ブシュ!!

「!!!!」
血しぶきを上げて動かなくなった。

・・少なくとも騎士の戦い方ではない・・。

しかし戦闘員は明らかに動揺しており地面を警戒しだす、それこそがセシルの思惑だ

ボコォ!!!

戦闘員達の間から勢いよくセシルが飛び出て戦闘員をそれを確認し、腰からナイフを取り出す
「おっそい!」
だがそれより早くセシルが氷雪の魔剣『氷狼刹』を振り先ほどの矢よりも
太いツララを発生させこちらに注目した戦闘員達に放つ!
「「「!!!」」」
これには咄嗟に回避した者もいたが3人の戦闘員が喉元に突き刺さりその場に倒れた
「後二人・・、どうする?まだやる?」
「・・・・」
「・・・・」
ジャキ!っと鉤爪を構え意思表示・・
「心意気は結構・・じゃっ続行ね!」
セシルも氷狼刹を構え再び殺気を放つ
神殿騎士のスカート姿ゆえ本来の構えはやや目にど毒なのだが全く気にせず足を広げている
そんなことに気を取られるわけでもなく戦闘員は
タイミングよく連携を取りながらセシルに飛びかかる!

シュッ!

鋭い爪がセシルを襲う!
「っと・・相当訓練されている・・!?」
後に下がって回避しようとしたがその動きを読んだのか
もう一人の戦闘員が先に攻撃した者を飛び越えてセシルに斬りかかる・・
これには回避に間に合わずガントレットで防ごうとした・・が

ズバッ!

「痛っ!・・随分切れ味のよろしいことね!!」
ガントレットを切りセシルの皮膚まで到達する鉤爪・・とっさに手を下げて流さなければ
腕を切断されていただろう・・、それでも傷は浅くはないようで血が噴き出ている
「・・・・」
仕留めそこなったが直も攻撃の姿勢を崩さない戦闘員・・だが・・
「私に手傷を負わせたわね、その度胸・・気に入ったわ・・」
自分の血を見て顔に影を差すセシル・・それと共に急にホールの温度がグンっと下がった・・
「・・・!?」
「天罰決定ぃ!!!」
不意に地面から生える巨大な氷刃の波・・、戦闘員はそれの回避に間に合わず刃を身に受けた。
後は・・言わずもかな。強烈な刃の嵐に受け正しくボロ雑巾状態だ
「ちっ、随分手強そうな敵じゃないの。・・雑魚でこのレベルとはね」
腕を押さえながら舌打ちする
その時ホールへ聖騎士ジャスティンが駆けながら入ってきた
「セシルか!どうしたこれは!」
「眠り粉を捲かれたみたいね、その内にこいつらが侵入してきたの・・。
城内の警備はほぼ機能していないわ。
とりあえずはキルケがカーディナル王の治療に向かっているわよ」
「そうか、外の寮から十数人騎士を引き連れた・・・俺は警戒に当たる!
お前はフレイアの元へ行ってくれ」
ジャスティンは平然と言うがセシルが眉をひそめる
「なんで・・フレイアのことを・・?」
「お前達のリーダーから話は聞いてある・・行け!」
「わかったわ・・。言っておくけどこいつら手強いわよ?
気をつけなさい!顎鬚リーダー!!」
少し笑いながらセシルは駆けだし地下へと降りていった・・


・・・

地下の情報部でも眠り粉は捲かれたようだ
錬金灯が照らす中、壁にもたれるように眠る情報部員が数人いた
だが奇妙なのは廊下に血が滴っていることだ・・。
そして斬殺された戦闘員が・・数人。
「こいつら・・、どうやって・・」
入り口は階段を降りるくらいしかないと思っていたセシル、
侵入を許してないと思っていたがそこに戦闘員がいたことに驚く
その間にも奥の方から鍔迫り合いの音がしたかと思うと
戦闘員がまた一人角から切り飛ばされて倒れる・・。
そこから現れたのは返り血か手傷か血のついた白道着の剣士クローディアが・・
「クローディア!どこから入ってきたの?」
「セシルさん、地下室の空気循環するための通気口からです。
ロカルノさんの調べで侵入ができると思ったので・・。それも当たりましたね」
落ちついたクローディア・・。流石に戦闘になると神経を研ぎ澄ましているようだ
「・・そうなんだ。あっ!それよりもフレイアは!?」
「今兄上が向かってます・・、こいつらの足止めはできたと思うのですが・・」
一応に剣を鞘に納めようとするクローディア
しかし

「ちっ!クローディア!!そっちに行ったぞ!!!」

奥から怒鳴るクラークの声・・、それが二人に届く前に・・

轟!!

クローディアとセシルの間を縫って横切った物体・・
それは正しく刹那の瞬間で二人は対応できなかった
「今の・・は・・」
「クローディア!」
やがて奥から走ってくるクラーク・・
「兄上、今のは・・」
「敵だ。とんでもない速さでフレイアを攫っていきやがった・・、その様子だとお前達も・・」
「え・・ええ・・指一本動かす間もなかったわ・・。なんなの・・あれ・・」
「わからん、マント姿の人らしき者がフレイアを抱きかかえていたのを見ただけだ・・。
助けようと思ったらあの様だよ。こうなったらロカルノに・・」

「残念だが・・期待には添えられないようだ・・」

口惜しげに響くロカルノの声・・
見れば階段を降りてくるロカルノの姿があったのだが・・着込んできた重厚な鎧はひしゃげ
胸元から首にかけては鋭い爪で裂かれた痕がある
「ロカルノ・・どうしたの?それ・・?」
「あの超高速で駆ける奴を止めようと思ってこの様だ・・。
目では追えたがこの装備だと碌に手も打てなかった・・。一矢報いたが・・」
無言で見せるは彼の得物である槍『戦女』。
以前フレイアとの戦いで細い罅が入っていたが
今回はそこからさらに深刻なまでに罅が走り刃こぼれが起こっている
「・・無理な体勢で使うべきではなかったな・・こいつはしばらくは再起不能だ」
「っうことは・・結果として俺達四人でも見切るには難しい相手が敵にはいるってことか・・」
「いやっ、重装備でなければそれなりに相手もできるだろう。・・次は負けん」
声の奥に深い怒りを秘めるロカルノ・・・、それに一同思わず息を呑む
「で・・でもどうするの?フレイアだって連れ攫われたし
あの戦闘員が簡単に口を割るとは思えないし・・」
「まだ手はある。フレイアの服には『草』が密かに場所を特定できる魔導具を仕込んだ。
それを特定できれば手はある」
「やれやれ、先手を取ったつもりが結局後手か・・。
とにかく城の様子を確認しようぜ・・俺達は見つかったら面倒だな。
一旦姿を消す、セシル頼むぞ!」
「え・・ああ・・でも早くこの生活終わりにしてねぇ!」
セシルを放っておき3人はさっさと城を離れていった・・

結局、眠り粉の効果が切れるまでにジャスティン率いる騎士団が
事の処理を終えて一応この襲撃は幕を閉じた
・・が結果は言うまでもなく重苦しい空気は夜が明けても続くこととなった


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