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第ニ節  「災いの影 届かない声」


王都ハイデルベルク・・
大国の中心部に位置するだけにその規模は大きく城壁に囲まれた巨大円形都市だ。
中央に建てられた白く美しい城を中心とし幾つかのブロックに別れる
詠歌を象徴するように大道芸人がその腕を競う通りや
王が治める都市としては異例とも言える闘技場まで置かれている
商業、工業、住宅、観光そして治安・・・全てに置いて高い基準でまとまった大都市だ
お祭りのような華やかさだがその光が強ければ闇もまた強くなる
以前も貴族主義による統治に異議を唱える者達が城を襲撃したこともある。
だがそんなことも人々は忘れ、この栄えに酔っているようだ

そんな中、ロカルノは表と通りの手ごろな宿を借り、馬を預けた。
そして身なりを整え城へと赴く・・

・・・
城の兵達に王との謁見を依頼したロカルノ。
本来ならば怪しい仮面男が王に会わせろと言っている事に不審に思うのだが、
ユトレヒト隊の一員にして王の命を救った人物として
知れ渡っているので快く中に通された

・・・・・

赤絨毯に包まれた王の間、謁見などの行事にはこれほど相応しい場は他にないといった
造りの中、豪勢な謁見用の法衣を着たハイデルベルクの王、カーディナルが座っている
金髪を整え、金ぴかの冠をし、金色の顎鬚が特徴なのだが・・
人相だけで言うならば王というよりかは親しい酒場のおっさんだ
「久しいな、ロカルノ。直接会うのは襲撃事件以来か」
「はっ、ご無沙汰を致しておりまして・・」
形式では王と一般の民、その実は同等の地位なのだが二人は敢えてこうして接しているようだ
・・故にロカルノは仮面を取り膝をついて礼をしている
「かまわん。先日は愚娘が迷惑をかけたな・・。
報告によるとクラーク達もかなりまいったそうじゃないか」
「・・いえ、口に出すほどのことではありません」
そうは言ったものの実際は寝ているクローディアの胸元に猫を入れたり
キルケのコスプレ衣装を勝手に着てそれをメチャクチャにしたりと大迷惑をこうむったのだ
まぁそれも声を大にして言うことではないのだが・・
「して、何用だ?先日の訓練の謝礼金は今検討して使いで贈らそうと思っていたのだが・・」
「いえっ、実はハイデルベルクのブレイブハーツ使い
聖騎士フレイアとの面会がしたくて参上しました」
「フレイア・・、ふむっ、何用か?」
「はい、実は彼女は私の義理の妹でして家を飛び出して行方知れずでしたのです。
それでゆっくりと話をしてみたいと思って・・」
「ほう!そうだったか!!世の中狭いものだな、何も私に声をかけずともよい!
情報部はこの城の地下にありフレイアもそこだ。ゆっくりと話をするがいい」
「ありがたき幸せ・・」
深く礼をしてロカルノは王の間を後にした

それからロカルノは広い城内を迷うことなく地下へと向かう・・
妹がいつも見ている光景に少し情が湧いて来ているのだがそうも言っておられず
すぐに地下へと階段を降りていった

城の地下と言っても錬金灯があちこちに設置され天井も高く
窓がないのさえ気にしなければそれとは気付かないぐらいだ。
地下は一階への階段を中心に通路がまっすぐ伸びており幾つもの扉が設置されている
どうやら国の地区事での情報担当を分けて重点的に行っているようで
扉の前にプレートを貼りどこの担当かわかるようにされている
そして通路の前で立っている栗毛の女性・・、物腰穏やかそうでスーツ姿がやけに似合わない
肩で切りそろえた髪、そして童顔であることからかなり幼く見えてしまう
「君は・・」
「情報部、副隊長を勤めさせていただいておりますアリーと申します。
先ほど兵の伝言を受け貴方様をお待ちしておりました」
声もその顔と合った穏やかなものでおおよそ国の機密を管理する
組織の上職についているものとは思えない・・
「そうか・・、わざわざすまない。私はロカルノだ。フレイアとの面会がしたいのだが・・」
「存じてます・・が・・。今日は隊長・・フレイアは非番で自室で休養をとっておりまして・・、
ロカルノ様が来た事を告げたらお引取り願えと言われ部屋の鍵もかけられてしまいました」
「・・・・・、そうか・・。その様子だと何をしても会ってはくれないだろうな」
仮面をつけていれども深刻そうな表情のロカルノ・・
「あの・・、よろしければ事情をお話してくださってもよろしいでしょうか?
先日から隊長はどこか暗く、他人をあんなに拒絶したことがないので我々も心配しているのです」
「そうか・・、わかった。どこか落ち着いたところで話そうか・・」
「ありがとうございます。それではこちらにどうぞ」
アリーが笑顔でロカルノを案内しだす・・、廊下を歩いているのは彼らだけだった・・


・・彼女が案内したのは小さめの応接室・・
っと言っても本来極秘裏で活動する組織だけに半分は倉庫のような状態になっている。
広い部屋だが半分くらいは木箱が積まれており後あるのは小さなテーブルとソファが二つ・・。
それでも雰囲気を出すためか小洒落た錬金灯と外の空気を取り入れる循環口が
数個あるために不快感は少ない
ソファに持たれたロカルノに、アリーは微笑みながら珈琲を入れてきた
「どうぞ、砂糖とミルクは・・」
「いやっ、私はブラックで・・」
軽く会釈をして珈琲を頂く・・、アリーは彼の対面に座り彼を真剣に見つめる
「隊長の元気がなくなったのは貴方達、ユトレヒト隊との「姫救出」を目的とした訓練の後からです」
「・・・、流石は情報部、そこまで知っていたか」
「これでも重要事の情報の管理をしています。さらには隊長は聖剣の扱いを誤ったらしいので」
「そうだな、剣の怨霊に憑かれたのか憎悪で溢れていた。なんとか助けてやれたが・・」
「相手は貴方でしたか・・。私もあの一件の結果は知らなかったので・・
それで、ロカルノ様は隊長とはどういう関係なのですか?」
「・・・・、詳しく説明しよう・・」
一口珈琲をすすり、ゆっくりと説明しだす。
・・ロカルノの生い立ち、セイレーズとの出会い、母親であるミュンの死、そして別離・・。
アリーもそれほどまでの事情を知っているわけでもなかったのでその事で愕然とする
「まさか・・ダンケルクの第一王子でいらっしゃいましたか・・」
なによりも驚いたのが彼が王子だということらしい・・
「身分は捨てた。余りかしこまらないでくれ・・。
それよりもフレイアからは素性を明らかにすることはなかったのか」
「はい、普段は明るいのですが自分のことはしゃべらない方ですので・・」
・・違いない。言わば過去を捨てて騎士団に入ったようなものなのだ
「そうか・・、やはりフレイアにとってはそれほどの決意だった・・か」
「ロカルノ様、私達も元気な隊長の帰りを待っています・・。
できることがあるならば協力いたしますので」
「ありがとう、しかしこうした事情は細工をしては逆効果だ。こちらの声に応えるのを待つしかない」
「・・・」
「しばらく王都には滞在する予定だ。
すんなり会ってくれるとは思えないが・・、声だけでもかけさせてくれないか?」
「わかりました・・こちらへどうぞ」
ロカルノを招くアリー、彼女にとってもロカルノは信用のおける人物だということを感じ取ったのだろう

・・・・・

アリーが案内したのは情報部の仮眠室エリアと思える空間の奥にある重厚な扉・・。
細い通路の先にあり、その途中には空室を表しているのか
扉が開け放たれておりベットが数台置かれている
「ここです・・。隊長!ロカルノ様が会いたいと・・」

”!!・・帰って・・・!!”

中から狼狽に似た声が響く・・
「フレイア・・・、私だ。会って話がしたい」
”・・・・・・・・”
「・・・、拒絶・・ですね。申し訳ないです」
「いやっ、仕方ない。また来る、すこし考えてくれ」
部屋の中に声をかけ、ロカルノは静かに部屋の前を立ち去った

廊下に出た時、情報部の人間がアリーに向かってすごい勢いで走ってきた・・
「副隊長、例の脅迫文、また来ました」
相当慌てている様子で紙切れをアリーに渡す
「・・また・・、ですか。わかりました。それと只今接客中です。もっと騎士らしい態度でいなさい」
「も・・申し訳ありません。ではっ・・」
仮面の男がそこにいたとこと今気付き一礼をして立ち去っていく男・・
「ふっ、流石に激務が続いていると余裕もなくなるか」
「申し訳ないです・・」
ロカルノの言葉に苦笑いをするアリー・・。しかし紙を見て渋い顔をしだす
「・・、脅迫文・・か。大国の人間がそれほど慌てるものか?」
「いえっ・・。ロカルノ様は王と親しいので言いますけれども・・。内容が不明なのです。
”時を歪めて存在し運命の娘を我等に差し出せ、さもないと実力行使を行う”っと・・
我々としても意味がわからないのでどうしていいのかわからないのですよ。
一応警備を強化しているんですが・・」
呆れ顔のアリー、しかしロカルノは何かを思い出したように
仮面の下の目をカッと見開いている
「・・・、そうか。すまない、急用を思い出した。また明日にでもフレイアに声をかけてみる・・失礼」
一礼してロカルノは早足で階段を上がっていった
「・・・??ロカルノ様・・?」
変わったお方だとアリーは首をかしげたが
意味不明の脅迫文の解析をすべく仕事へと戻っていった・・・


それよりロカルノは一旦宿へとお戻りとある男を自室に招く
流石に王都の宿だけに他の店と対抗しているのか中々手入れが行き届いている
そんな中で男は入ってきた
着ている物は一般人が着ているかるいシャツとズボンなのだが
ボサボサに伸びた黒髪の中から覗かせる瞳は鋭い・・
「お前を同行させて正解だったようだ・・。調べてほしい事がある」
「はっ・・、なんなりと」
ロカルノに深く頭を下げる男・・、彼はダンケルク情報部に所属する者で
ロカルノ専門に行動をする『草』と呼ばれるエリートだ
「最近ハイデルベルクに対して奇妙な脅迫文が送られて来ている。
ハイデルベルクの情報部はそれがどんなものかわからんようだが
間違いなく情報部の長フレイアに対してのものだ
・・そのことで可能な限りの情報を集めてくれ。」
「御意」
「それと・・、一応彼らも警戒を強めているらしい。
お前のことだ、まさかの事態にはならないが気をつけろ」
「ご安心を。どうやら任務に忙しいのか情報部も周りが見えていないようで・・・」
「・・・?」
「副隊長のアリー様、情報を司る機関を取り仕切るには少し甘いようですね」
ニヤリと笑って見せる草・・それにロカルノも思わず苦笑する
「・・・、ふっ、気付かれずに近くにいたか。・・頼むぞ」
「はっ!」
そう言い草は音もなく外へと出ていった

「・・フレイア・・、私が原因でお前に迷惑をかけるかもしれないが・・許してくれ」
一人残った部屋の中、ロカルノは唸るように呟き、仮面を静かに脱ぐ
仮面を取った緋色の瞳は彼女がいる城をずっと見つめていた



それより数日、ロカルノは王都へと滞在しつつ、何度かフレイアとの面会を求めた。
しかし、非番でもないがフレイアはロカルノに会おうとはしなく、
地下に下りると共にどこへとなく姿を消すという事態がいくつも続いた・・。
最後の方になるとロカルノも情報部の仕事の邪魔になると思い城へ向かうこともやらなくなった
しかしそうだと言っても館に帰るわけにもいかない、
『草』の調査の結果を待たなければならないからだ。
『草』は情報収集、隠密活動ではそれこそ大陸を1,2を争うほどの実力を持つのだが
しかしそこは一人、情報収集にもおのずと限界がある。
隠密性を高めかつ深い情報を得るには時間はかかろうとも優秀な情報員が必要となってくるのだ

・・やがて週が変わろうとした時に、『草』はひょっこりと宿へ戻ってきた
偶然部屋にいたロカルノはようやく戻ってきた草を座らせ早速情報を聞き出す
「・・ご苦労、一国の機密を盗むような行為だ。大変だっただろう・・?」
「いえっ、それがそうでもなさそうで・・・。
意味のわからない脅迫文にはあまり見向きもしなかったようです。
他にもやるべき事が山ほどあるようですからね、それも仕方ないのでしょう」
「・・ダンケルクはこうはなって欲しくないな」
「尽力を注ぎます。
・・ですがフレイア様、流石・・っといいますがロカルノさんが会いにきた瞬間に
身を隠す術は見事なものでした」
「・・見たのか?」
これにはロカルノもまた驚く・・
「はい、危うくこちらが見つかるところでした。焦っていたようなのでやり過ごせましたが・・」
「あれは遺伝だろう・・。それこそ俊敏さは天才だ。・・それで、結果は・・」
「色々と調べてみましたがどうやら出所は城内部からのようです」
「・・なんだ・・と・・」
「今までその一件の脅迫文は城壁に突き刺すなどではなく
ホールに設置された意見箱に入れられたことがわかりました。
しかもそれが回収されたのは早朝。
それより前夜の回収からそれまで、謁見などで城内に入る者も少ないです。」
「なるほど・・、しかし、それだと情報部や発見者もそうは思わないのか?」
「どうも、待遇に嫌気が差した者のいやがらせ・・っと見ているようです。
それでなくても前夜の取り残しなどの線を重視していて
内部の者が真剣に策謀を練っているなどとは思ってもみないようですね。
・・残念ながら情報はそこまでですが・・」
「・・身内には甘い・・か。まぁ、気付かなければそれはそれで結構だ。
対策を練る、お前はもう少しここで情報を集めてくれ。
私は一旦館に戻って他の連中を連れてこよう」
「御意」
「ただ先が見えない。危険だとわかればすぐに手を引け。
無理をすれば全てが水の泡ともなるだろう」
「勿体ないお言葉です・・では・・」
報告が終わるとすぐに仕事を再開する『草』
プロ意識の塊のようでプライベートというものが存在しないようだ
対しロカルノもすぐに行動を起こし、宿を出て馬に乗り一目散に王都を去っていった


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