第2節 クラーク、キルケ編 「忌まわしき過去」


見晴らしのいい海岸線・・・
どこまでも地平線まで広がる蒼い運河・・・。
すぐそこは崖になっており周りは森だ。
そして海を見渡すように建てられた小さな墓標、これが『黒い炎の魔女』と恐れられてきた
女術士ファラ=ハミルトンの墓だ・・・・・

「・・・寂しいところに建てられているんですね・・」
隣でキルケが呟く。本当なら俺一人でくる予定だったのだが
どうしても・・っということで同行することになった・・
心配・・・かけてんのかな?・・情けない
「あいつは海が好きだった。それに、あいつには家族はいないんだ」
「ファラさんが・・ですか・・?」
「ああっ、戦争孤児ってやつでな。魔法都市レイヤードの物好きに拾われたんだそうだ」
「レイヤード・・って、じゃあそこに葬って上げなかったんですか?」
「そこでの扱いは・・、・・・酷かったらしい。俺にも詳しいことは教えず終いだったからな・・
何でも精神を二つに裂かれたこともあるらしい・・」
「精神を・・・・・?」
「多くの術を学ぶため、人格を無理やり二つにされたそうだ。
たまに人格が変わったからそれだけは教えてもらったんだよ」
「・・・・・・・・」
壮絶な過去を聞き唖然とするキルケ・・、無理もない。
あいつは普通の女の子には耐えられない苦痛を味わったはずだからな・・・
「だから、あいつは町を捨てた。その物好きを殺してな。
そいつも人体実験目当てだったから彼女にためらいはなかったそうだ。
そして、当時俺も所属していた傭兵達のギルド『傭兵公社』に入隊したって経歴さ。
だから彼女の帰る場所はなかったんだ」
「・・・クラークさんは・・・ファラさんを救ってあげたのですか?」
「・・・どうだろう?結局は、助けられなかったのかもしれない。
・・もっと奴を警戒しておけば、死なずに済んだかもしれなかったし・・・・・」
「・・・・?」
「いやっ、なんでもない。」
途中で買った葡萄酒を墓標にかける・・・。
あいつは変に酒が好きだった。
何かを忘れたがるようにガブガブ飲んだのでよく俺が止めたもんだ・・
「すまないな、ファラ。今でもあまりかまってやれなくて。
久々なのに済まないが少し、地面を掘らせてもらうぜ・・?」
詫びながら地面を掘る・・・、もしあの情報が嘘なら
赤い法衣をきた骸骨があるはずだ・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・

「ありません・・・・・ね」
「やはりか・・・・、くそっ!!」
埋めていた個所には何もなかった。シグマの情報は本当だった・・・・
「クラークさん・・・、大丈夫ですか・・?」
「・・・・ああっ、すまない。気をつかわして・・」
「いえっ、いいんです。誰だって辛いでしょうし・・」
そっと俺の手を握るキルケ・・・・・・
「・・・ありがとう。少しは落ちついたよ」
「どういたしまして・・・。あれっ、あそこに何かありません?」
ふぃに指差す・・、そこには土に埋もれているが何か光る物があった
「んっ?何だ・・・?」
掘り起こしてみるとそれは小さな指輪だった。髑髏の形が彫られた銀製だ。
あいつはこんなものは持っていないはずだ。
っということは・・・
「盗んだ奴が持っていた物か!」
「これは・・、ネクロマンサーが愛用している呪術用の指輪ですね・・」
「呪術用・・、何のために?」
「え〜っと、書物でしか見たことないんですが、確か・・・・・・・・・、あっ!
クラークさん!捨ててください!!!」
急に叫ぶキルケ。反射的に指輪を投げる・・
それと同時に指輪が発光し、小柄の悪魔グレムリンが現れた・・・・
・・・・・ブービートラップ用の指輪ってわけだ。
「舐めた真似を・・・・!はぁ!!!」
物言わず腰の得物『紫電』を抜きグレムリンを切り裂く・・!
・・奇怪な声を出してグレムリンは消滅していった・・

「大丈夫でしたか?」
「ああっ、大丈夫だ。俺達がここの墓を調べることを予想してこんなモンを置いていったのか」
「そうみたいですね・・・」
「ちっ、胸くそ悪い。とりあえず教会に戻ろう。ここは・・・、あまり長くいたくない・・」
「わかりました・・」
墓の土を戻し綺麗にしてからこの場を離れる。
どこの誰の仕業だろうが・・、これ以上あいつを傷つける奴は俺が許さない・・・・

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