第11節  「君を忘れない・・」


キルケが女術師ヘルテイトと戦っているのと同時間・・・
城の屋根に降り立ったクラークと甦った彼の恋人ファラ・・
その目はやはり光を失っておりただ障害を排除しようとしている
月が城から上る黒煙で霞み風が出てきている。
足場の悪い屋根の上でさらに風が吹き荒れ
戦闘を難しくさせる状態にさせる・・・



「ファラ・・・。俺はお前を救ってやれなかった・・」
クラークの静かな一言にファラの動きが止まる・・・
「そのあげく死んだお前を無理やり蘇生させようとする企みも阻止できずまたお前を
傷つけてしまった・・・・」
「・・・・・・・・」
「だから・・・、・・・・・今度こそお前を救う!!」
「・・・・・」
その言葉にファラは無表情のまま涙を流す・・

肉人形の流す涙・・、彼女の魂の鼓動だ・・

「・・ファラ・・くっ・・!」
それでも肉体に刻まれた命令には逆らえず
黒炎の弾を放つファラ
「来い!『九骸皇』!!」
右手をかざし紅炎とともに出現する鬼神剣『九骸皇』
そのまま黒炎弾を避けつつファラに接近する・・!
「・・・・!!」
ファラは無表情のままさらに別の魔法を発動する
手から放たれる白い光・・・
「・・極光!?本気を出したか・・・!」
光に触れるや否やクラークの皮膚が焼け血が噴き出す・・
「・・ちっ!」
これ以上の接近は厳しいと判断したクラークは一旦距離をあける・・
が、光は形を変えてクラークに向かい疾走する・・!
「魔殺しの剣・・、とくと味わえ!」
光の疾走に対しクラークが気合いと共に九骸皇を振る・・!

パァン!!

剣に触れると同時に音を立てて消滅する極なる光
「・・・・!!」
それを見て連続して極光を放つファラ
光がクラークを取り巻く・・
「・・・捌ききれない・・?くっ!!」
鞭と化した光がクラーク襲う・・・・!!
薄緑のコートが焼け血が飛び散る
「ぐぉ、・・・このぉ!」
気合いと共に九骸皇で極光をかき消す!
自分に取り巻いていただけあってまとめて光を消滅することができた・・が
たった数秒、光に触れただけなのにすでに彼の体はボロ雑巾のようになっている・・
「・・・・、やれやれ・・流石は『魔女』と言われた女・・。
だけど・・今思い出したよ・・」
そういうと手から放つ光・・
「ファラ、お前から教わったこの極の光をな!!」
「!!!」
今度はファラに襲いかかる極光
ファラも同じく極光を放ち相殺する・・
しかし
その瞬間目の前に現れるクラーク・・!!

ドス・・

胸に突き刺さる九骸皇・・・
「・・・あるべき所に帰れ!!もうこれ以上・・・苦しむな・・」
そのまま操り魔女を抱きしめる・・
彼女はそのまま動きが止まった・・・
「・ご・・めん・・なさい・・」
不意に口を開くファラ
「・・!!?ファラ・・?」
「ごめんなさい・・、貴方に辛い思いをさせて・・」
「・・・正気・・に戻ったのか・・」
流石に驚くクラーク・・
「あの術師が倒れたから少し話せるようになったの・・・。でも・・もう逝かなきゃ・・」
「ファラ・・」
「・・ありがとう、クラーク・・、私を救ってくれて・・。
貴方に会えた事が私にとっての唯一の幸せだった・・」
頬に涙を伝わせながら愛する男に微笑む・・
「・・・・・」
「こんな形になったけど・・、もう一度貴方を見れてよかった・・。立派になった貴方を・・」
「・・俺は・・立派じゃない・・、お前を死なせてしまった・・」
「ううん・・、それでも貴方は私を救ってくれた・・、それで十分よ。
でも、もう私のことは忘れて・・。あなたを思っているあの娘に応えてあげて」
「・・わかった・・・。だが、お前のことは忘れない。忘れようにも・・忘れられないさ」
「・・・・ふふっ、・・ありがとう・・。もう行かなきゃ・・・・。さようなら・・クラーク」
そう言うとファラの体から蒼い炎が発し彼女を包んでいく・・
蒼炎の中彼女は消えるその時まで笑顔だった・・
・・やがてそこには何もなくなりただ静寂が広がった・・
「・・さようなら・・ファラ」
しばらくうなだれていたクラークだがそう呟き彼女がいた所から背を向いた・・・



王の間に飛び移ったクラーク、
そこにはいまだ目が覚めぬ王と座りこみ泣いているキルケがいた・・
「キルケ・・」
王のことは二の次で泣いてるキルケに声をかける・・
「クラークさん・・、私・・私・・」
クラークに飛びつき胸に顔をうずめるキルケ・・
「ごめんなさい・・、私・・クラークさんを傷つけた・・」
悲痛な声でそう言うキルケ。
何の事かわからないが静かにキルケの頭を撫でるクラーク
「大丈夫だよ。俺はここにいる。ほらっ、足だってちゃんとあるだろ?」
「・・・・・」
「だから・・もう泣くな。」
「・・・はい」
赤くなった目でクラークを見るキルケ
「・・良い娘だ」
そんな彼女に優しく抱きしめるクラーク
「・・ずっと・・、傍にいてください・・」
「・・ああっ、俺はキルケの傍にいる・・これからも・・」


「う・・むっ・・・」
二人がそんなこんなしているうちに目を醒ますカーディナル王・・
「むっ・・曲者は・・んっ!!」
さっきまで自分を襲っていた曲者を探そうとするが目の前にいるのは
何故か抱き合っている一組の男女・・
「貴様等、何をしている!?」
自分の城の中でいかがわしいことしまくりな二人に怒りをあらわにする王・・
「・・うぇ!王さん、目が覚めたのか・・」
「・・と、言うより生きていたのですね・・」
一国の主にひどい言いようだ
「質問に答えろ!!」
「・・いやっ、無事に再会できたので抱擁しているんだけど・・」
「そうか・・なら仕方ない・・ってそう言うことじゃなくて
なんでここにいるかって事を聞いているんだ!」
「王様なのにノリツッコミ・・・」
キルケも意外にノリの良い王に唖然
「まぁ、順を追って説明するよ・・」
事情がわからない王に説明するクラーク、
キルケは邪魔をされた王をひそかに睨んでいた・・


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