第10節  「少女は戦う」


ホールからさらに階段を上り王の間へ急ぐ・・
「キルケ、ファラとヘルテイトは俺が相手をする、援護はまかせるぞ?」
「いえっ、クラークさんはファラさんの相手に専念してください。ヘルテイトは私が・・」
ピンクの法衣を着たキルケを見るクラーク
長めのスリットが入っておりなんだか大人っぽい・・腰にはかつて彼がキルケに上げた
2本の剣がさしてある・・
「・・任して大丈夫か?」
「・・ええっ、伊達に貴方についていてませんよ」
「その衣装で気合いたっぷりというわけか・・・。ミョルキルばあさんにもらったのか?」
「・・ええっ、土産ということで頂きました・・。それより今は・・」
「わかってるって!」
勢いよく王の間に入る2人・・・

王の間
一般人の所見もしてるだけあり豪華な城の中でも特に目を引く
高そうな赤絨毯が叱れており剛健な作りの玉座が・・
しかしそこに座っているはずの王は蒼髪の少女によって首を絞められている
何かの魔法を使っているのかかなりの体格差なのに軽々と王を持ち上げているファラ
そしてそれを見ているは女術師ヘルテイト・・

「キルケ!まかせたぞ!」

それを見たクラークは一気に突っ込みファラに体当たり・・!

「!!」
「お前の相手は俺だぁぁぁぁ!!!」


そのまま壁を破壊し外へ飛び出した・・


「剣聖帝・・、無茶をしますね・・」
驚きながらもそれを追おうとするヘルテイト・・
しかし
「貴方の相手は私です!」
光の矢を放ちつつキルケがヘルテイトを足止めする
「これはこれは・・。可愛らしいお嬢さん・・」
矢はヘルテイトに当たらず消滅していく
「クラークさんを悲しませて、さらには王を襲う・・・貴方という人は・・・!」
走りながらさらに詠唱・・
「大事の前の小事・・、一人の人間の感情に左右されては何もできませんよ」
「一人の人間の気持ちも無視するような事に意味などありません!『ペインフルスピア』!」
気合い声とともに宙から七色に光る槍がヘルテイトに降り注ぐ・・
「中級浄化術を詠唱なしに・・、中々やるようですが・・」
ヘルテイトが手をかざすと結界が赤く輝き、光の槍を防いでいく・・・
「・・強固な結界・・、どうすれば・・」
「どうやらあなたは剣聖帝のことを想っているようですね・・、ならば・・」
邪悪な笑みを浮かべつつ何かを詠唱するヘルテイト・・

徐々に彼女の姿が歪んでいく・・
そして現れたのは丸眼鏡をかけ、薄緑のコートを着た青年クラーク・・

「・・・クラーク・・さん・・?」
「そうだよキルケ、俺に刃を向けるとはいけない娘だね・・」
声もクラークの声色そのものだ・・
「・・違う!あなたはクラークさんじゃない!」
そう言い腰にさしてあるレイピアを抜く
「ひどいな。その剣だって俺があげたじゃないか・・」
「!!!」
その一言で動揺が走る・・
「さぁ・・・」
ゆっくりとキルケに歩み寄るクラーク・・。
しかし・・手にはキルケには見えない角度で短剣が・・・・
「・・クラーク・・さん・・・」
「そうだ、俺だよ・・ふふふ・・」
そういうと静かに短剣をキルケに突き出す

「!!!」

動揺した彼女は正しく判断できずにいた・・しかし
普段からクラークに訓練してもらっているため考えるより先に体が反応し
その短剣をマンゴーシュで捌き、レイピアをクラークの肩に刺した・・
「ぐぅ・・・!」
苦痛に歪むクラークの顔・・それはやがてヘルテイトに戻っていった・・
「・・私が・・・クラークさんを・・刺した・・?」
「おのれ・・、小娘が!」
怒りをあらわにするヘルテイト、光の矢を連続して放つ・・
「貴方が・・、貴方が私にクラークさんを傷つけさせた・・・」
うつむき顔に影がさしたキルケは避けようともせずそう言い放つ
瞬間光の矢は消滅・・
「私の結界を真似た・・!?」
無造作に結界を張ったキルケに驚く・・

『絶望の鎌を振るう者よ、不条理の翼を広げ
                 虚無へ帰さん・・・・ギフトオブデットエンド!』

目に涙を浮かべたキルケが気合い声とともに呪文を詠唱する・・
「!?・・どんな魔法だろうと私の結界には・・」
自分の知らない魔法にさらに結界の強度を強めるヘルテイト・・
・・・しかし・・・

斬!

刹那として彼女の右腕は切り落とされた・・
「・・・馬鹿な!結界の影響を受けずに・・何をした・・!!」
いきなり自分の腕が切り落とされたことに動揺する・・
「貴方を死に誘う使者を呼んだだけです・・・・」
その瞬間にも『何か』に体を切断されるヘルテイト・・
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
絶叫が王の間に広がる・・、そして姿を見せる『何か』
・・血の滴る鎌を持った半身の骸骨・・、黒い布キレを纏い目は無気味に
青白い炎が灯っている
「・・・デス・・!暗黒神を召還しただと・・!!」
「還りなさい・・、ここは貴方がいていい場所ではない・・貴方には煉獄が相応しい・・」
キルケが静かにそう呟くとデスがヘルテイトを掴み
突如開かれた暗黒の空間へと引きずり込む・・

「・・馬鹿な!私が・・!こんな小娘に・・!!!」

信じられない表情でヘルテイトが叫ぶ
やがてデスに暗黒空間へ引きこまれ、ヘルテイトは消滅していった・・・


空間はやがて元に戻り、そこにいるのは力なく座りこんだキルケと
倒れている王・・・・

「ごめんなさい・・、私、貴方を刺しちゃった・・・、貴方を傷つけた・・・」
例え偽りでも最愛の男を突き刺したショックは大きくただただ彼女はその場にうなだれ
泣き崩れた・・・・

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