終節  「天使に微笑みを」


くずれ果てた宮殿のガレキの中・・
アルとレイブンは倒れている・・
「うっ・・・、つつつ・・・」
なんとか起き上がるアル、融合の効果か悪魔にやられた傷は癒えている・・が
落下した傷は融合後なので決して調子は良好とは言えない
「なんとかなったか・・、レイブン!」
「私もなんとか・・、でもっ、そろそろ時間のようですね・・・」
ふぃに倒れているレイブンの足が消えかけているのが目に入る・・・・・
「石の効果が切れる・・?」
「そのようです、そして私の魂も・・」
「・・・・・駄目だ、レイブン」
「・・そんな顔をしないでください。これでも・・満足しているのですから」
「・・・・・」
「アレスが死んだ時、私は絶望の淵にいました・・。でもアル、あなたがいてくれたから
私はもう一度歩もうと思えたのです。結果としてはこのようになりましたが・・・・・
後悔はしてません」
「・・レイブン・・」
目を閉じながら微笑むレイブン、すでに片足が消滅している・・
「・・最後にお願いします・・。逝くまで、抱きしめてくれませんか?」
「・・・・・、わかった」
静かにレイブンを抱きしめ、口付けを交わすアル・・。
「・・・・・ありがとう、あなたに会えて・・よかった・・・」
アルの頬を一筋の涙が伝う・・・、それでも彼はレイブンを離さない・・

”天上を脱し者よ・・”

ふぃに周囲に声が響く・・
「なっ、何だ・・?」
「・・この声は・・」

”汝は天上の禁忌を犯し自らその世界を離れた。この罪は抗う事かなわず・・”

「・・天上・・王・・?」
レイブンが驚きの声をあげる・・

”だが、苦難に立ち向かい人と地上人の垣根を越える汝の心、しかと拝見した”

「・・誰だか知らないけどこれ以上彼女を傷つけようというなら僕が・・!!」
魔石を失った魔弓を持ち立ち向かおうとするアル・・

”静まれ青年。我、天上を司りし天空の神、その者の行いに免じ今ここに奇跡を起こそう・・”

空に響く声とともにレイブンの体が赤く光る・・
「・・レイブン!大丈夫か!!」
「これは・・・・」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
赤い光が消えた時、そこには黒い髪をした女性がいた。
羽は・・ない・・

”特例だが人化を施した。汝はもはや天上とは無縁の者・・後は自分の意思で進むが良い”

「天上王・・、ありがとうございます・・」
天に響く声はそれきり返答することはなかった・・・

「レイブン・・、大丈夫か・・?」
「ええっ、どうやら私は・・ただの女になったようですね・・」
「それでもいいさ。生きていれば・・、生きていてくれれば・・」
静かにレイブンを起こすアル
「・・、ふふっ、先ほどは焦っていたので感じませんでしたが。実体で地を立つのは
久しぶり・・。少し体が重たいですね」
「これから慣れたらいいさ。」
「・・・・・ありがとう、アル・・・」
「これで、僕の旅の結果が出たよ・・。アレスにも申し訳が立つ」
「そんな事考えていたのですか?何も考えず旅していたのに・・」
「それは言わない約束だろ〜?」
「・・ぷっ、ふふふふふ」
いつも静かなレイブンがまぶしい笑顔で笑った・・
それを見て、アルも自分がなした事が正しかったと確信が持てた・・


「さあ、行こう。レイブン」
「行くってどこへですか?」
「ニース村だよ。セリアさんとサブノックが僕達を待っているだろう。それに・・マリーも・・」
以前に別れた友人を思い浮かべるアル・・
「・・そうでしたね。それでは行きましょう。ああっ、それと・・その刀は私が持ちます」
「えっ・・?」
「毎回あなたの戦闘を見ていましたが・・やはりあなたには弓が似合っていますから。
それに・・あなたの背中を守るくらいの腕は、私にもあります」
そういい。アルの腰にさしてある斬鉄拳を抜き取る・・
「・・わかった。よろしく頼むよ。ちょうどいい!僕もそんなに器用じゃないと思っていたところだよ」
「・・ふふっ、では行きましょう・・あっ!」
「・・どうしたの・レイブン・・」
「・・もうあなたの肩には乗れませんね・・、ふふっ」
「そりゃそうだよ、はははは!」
笑いながら宮殿を後にする二人・・・
夕日の明かりが彼らの影を長く伸ばしている・・・・・

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