第三節  「この世の果ての秘境」


熱帯の森を駆け抜けたら急に山道につながっていた
「・・・ここからいきなり木が生えてない・・?」
一定のラインで熱帯植物が全く生えていないことに気づく・・
「・・・・何かの力の影響ですね。・・・結界・・?」
山道はまっすぐのびており気温は涼しい・・
「・・・さっきまでの熱さが嘘のようだ」
「・・・気をつけましょう」
周囲の気配もなくとも慎重に先を進むことにした二人・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
山道はひっそりとしており動くものは何もない。所々人骨が転がっているのが
少し気になる程度だ・・
「骨・・・?パンデモニウムに向かう途中で襲われたのかな・・?」
「・・どうでしょう?有りうる話ではありますが・・」
人外の魔境では人が食われる事など珍しいことでもなんでもない・・
「ほんとっ、とんでもないところだね・・」
「矢の数には気をつけてくださいね。うかつに使いすぎると後で困るかもしれません」
こんな所では補充もできない・・、その点に関しては弓使いであるアルもよくわかっている・・
「こっから先は接近戦メインだな・・」
腰に下げている木の杖を握る。
これは仕込み刀となっており斬鉄剣といわれる銘刀だ・・
アルは刀にも多少心得がある、しかし弓ほど思い通りに扱えるわけでもなく
普段の戦闘はもっぱら距離をあけて弓で一掃しているのだ

「私も援護が出来れば・・」
「大丈夫だよ、レイブンは立派にサポートしてくれている」
「そうですか・・・、んっ」
不意に目の前に黒いマントの人間らしき者が立っているのに気づくレイブン・・
「こいつは・・?」
「熱源を感知できない・・?人間ではありませんね」
顔まで深くフードで覆われており暗くて見えない・・
しかし何かしかけて来るわけでもなくただこちらを見ているようだ
「・・・攻撃する意思はないようだ・・ね・・・・・」
黒マントは何をするわけでもなくやがて消えて行った・・
・・・・・・・・・・・
「・・・・何だ?あれ?」
「・・・わかりません・・、がっ・・どうやら私達を監視していたような感じですね・・」
「・・インスペクターって事?」
「・・おそらく・・ですが・・」
黒マントが去ったその先、白い朽ち果てた宮殿のようなものが姿を現す
「・・・どうやら、目的地に到着・・ってことのようだね・・・」
二人は警戒しながらも中に進むことにした・・・
・・・・・・・・・・

朽ち果てた宮殿の中は人気が全くなくうっすらと霧がかかっている・・
その先の祭壇・・、一人の女が立っていた
「ようこそ、旅のお方・・。人の気配がしたので確認しましたがよもやほんとにいたとは・・」
女は銀色の髪をなびかせ司祭の衣装をしている・・
「(確認?さっきの黒マントか・・)ここがパンデモニウムっていうところかな?」
アルが女性に聞いてみる
「そうです、それを承知のうえ参られたようですね・・」
無表情のまま応える・・
「ああっ、彼女を人間にしてもらいたいんだ」
「彼女・・?そこのぬいぐるみの方ですか・・」
「レイブンです、元天上の者でした」
「なるほど、ではっ・・堕天使ですか」
やはり無表情、そういうことには慣れているようだ・
「そう、『人化の法』を扱っているんだろ?できるかな?」
「少々荒っぽいこともしますが・・よろしいですか?」
にやける女性・・、ここまで来てその質問に拒否する者はいないという確信を持っているようだ
「まぁ・・いいでしょう」
アルのかわりにレイブンが答える
「それではレイブン、こちらへ」
女の手招きにレイブンは静かに祭壇に向かって行った


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