第二節  「深淵なる森へ」


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熱帯の森を突き進む一人の男性・・
肩には羊のぬいぐるみを乗せている・・
「・・・なんだか・・、黙りこんでどうしたの?レイブン?」
ぬいぐるみにむかって話しかける・・
「・・昔の事を思い出していまして・・」
「昔・・?天上界にいた時の?」
「・・天上にいた時の記憶は・・あまりないですね。命ずるがままに動いていたのですから」
「・・そうだったんだ、じゃあ何思い出したの?」
「・・アレスが死んで・・、あなたに出会った時の事ですよ、アル」
「・・・そう・・だったんだ。今でもよく思い出すのかい・・?」
「・・忘れようにも忘れられませんよ・・ふふっ」
自嘲気味に笑うレイブン・・
・・それ以降会話が続かなく二人(?)は道なき道を進んでいった・・


今彼らが向かっているのは秘境に存在すると言われている『パンデモニウム』と
呼ばれる神殿だ。
そこで人外の者を人に転生させる『人化の法』を行っているという情報を
以前知り合った孤高の悪魔サブノックに教えてもらったのだ
それまで人化の法についての情報は全くなかったので彼らの旅は半分レイブンの
傷心旅行のようになっていたがここにきて有力な情報が入ったのですぐに
その場に向かうことにした・・

「・・・熱帯の森って・・・・熱いね・・」
しばらく黙っていたが熱帯特有の熱さにうなだれるアル・・
「・・私には良くわからないですが・・」
霊体に近い存在であるレイブンは羊のぬいぐるみに憑依し動かしているのだが熱さなどは
全く感じない・・
「・・うらやましいよ。汗が噴き出してきた・・」
じめじめした熱さ・・、それは思ってる以上に体力を奪う・・
「がんばってください・・、んっ?」
ふぃに前方に真赤で大きな花が咲いているのに気づく・・
「・・・何だあれ?」
「・・・・・・ラフレシア・・?」
レイブンがふぃに呟く
「・・らふれしあん?」
「ラフレシアです。危険生物に指定されている食人植物。
獣人などを誘い消化させる習性をもっています」
「獣人以外は無害・・かな?」
そんな甘い考えをしているとふぃにラフレシアから触手が伸びアルを襲う・・
だがそれに当たるアルでもなく素早く回避する・・
「無害だと・・思いますか?」
「・・よくわかりました・・」
おもむろに背中から銀色の弓を取り出すアル
魔弓「カストロススター」、アルが作ったオリジナルの作品だ
「こういうのは焼却処分に限る!」
矢を引き魔力を込める、すぐさま矢尻が燃えだした・・
これが魔弓の由来、弓の中心につけてある炎の魔石『炎晶石』の効果だ。

一筋の流星と化した矢がラフレシアを直撃。
流石に植物だけあってすぐに燃えあがり炭と化した
「・・サブノックが言っていただけあって危険なとこですね」
「・・・全くだよ」
シュッ!
今度は後方から空を斬る音!
反射的に飛び去り確認すると
ラフレシアが数体後ろにひしめいている・・
濃い緑の森の中、この赤い花は不気味に目立つ・・
「・・相手していると日が暮れるね・・」
「同感です」
二人の意見は一致、すぐさま前方を走りぬけることにした・・・!!

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