第一節  「焔の記憶」


どんよりとした曇り空・・・
辺りからは炎が立ち上っており黒煙が空をさらに暗く覆う
家だったと思われる物は炭の塊と化している。
・・・動くものはすでになくただ横たわる人だったモノ・・・
・・・・・戦争という悲劇が生み出す生き地獄だ・・・・

「アレス!しっかりして!!」
横たわる男に話しかける銀髪の女性・・、黒い翼を持ち男を抱きしめようとするが
すりぬけてしまいどうすることもできない・・
「レイ・・ブン・・」
「アレス!」
目に涙を浮かべ必死に男性・・、アレスに呼びかける・・
男はすでに深手を負って虫の息だ・・
「アレス!いるのか!」
ふぃに彼らに近づく一人の青年・・
緑髪をしており全身血まみれだ
「アル・・、ここだ・・」
「アレス!今傷の手当てを!」
自分も傷を負っているがそれでもアレスを助けようとする・・
「いい、僕はもう・・駄目らしい・・」
「・・嫌っ!」
翼の女性・・レイブンがこらえきれず叫ぶ・・
「あきらめるな!なんとかなるかもしれない!」
「・・いやっ、もう指一つ動かせれないよ・・それよりも彼女・・レイブンの事を頼む」
「彼女・・?有翼人か・・?」
女性を見ながら聞く
「僕の天使だよ、っといっても僕のためにそれを捨てたんだけど・・」
「・・・・・」
「アル・・、僕は彼女を人間にしてあげようと思っていた。それもどうやらかなわないようだ・・
あつかましいけどこの願い・・、引き継いではくれないかな・・?」
「・・ああっ、僕達は親友だろ?遠慮するな」
「・・ありがとう、・・・ごめん、レイブン・・もう一度君と出会ったあの丘に行きたかった・・・・」
「アレス・・・!!」
「ごめ・・ん・・・」
そう言うとアレスは静かに息を引き取った・・
「アレ・・・ス?アレス!・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
天使の叫びは暗転の空に高く響いた・・


森に囲まれた小高い丘・・
そこにアレスの遺体は埋められた・・
元天使レイブンはあれから黙りきったままでうつむいている・・
「・・大丈夫かい・・」
青年アルがレイブンを気遣う・・
「・・・・・・」
「すまない、僕がもう少し早くあの場所に来ていたらもっと違う結果になっていたはずだ・・」
「・・・あなたのせいではありませんよ・・」
かすれた声で応える・・
「・・そうか・・、とにかく僕はアレスから君のことを頼まれた。
どこまで彼の気持ちに応えれるかわからないけど・・」
「・・ありがとう、でももう少しここにいさせてもらいませんか・・。私・・まだ・・・・」
「・・・わかった・・」
アレスの墓にうずくまるレイブンをアルはただ静かに見守った・・・

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