第3節  「知将フロスの頼み」


騎士団の面々は朝食を取っていた。
アルもフロスの好意に甘えて朝食を貰うことにしたんだが
場違いなため食堂の隅に座った・・
「泊まるのも食事代もただなのはいいけど・・なんというか、居辛いね・・」
「そもそも場違いですしね」
確かにぬいぐるみを肩に乗せているアルは硬派バリバリの騎士団の中では浮いている・・
そんな中で先ほどアルに勝負を挑んだ青年キースが食事を持ってアルに近づいた
「先ほどは失礼しました!!」
打って変わったように礼儀正しくなるキース。色んな意味で熱い男だ・・
「いっ、いやっ、別にいいよ。もっとリラックスして、ね?ね?」
あまりの態度の変わり様にアルもタジタジ・・
「いえっ、そうもいきません。これはアルさんの食事です。どうぞ!」
「ぼそぼそ(・・・どうしよ、レイブン・・僕こういうの苦手だよ・・)」
「ぼそぼそ(しょうがないでしょう、たまにはいいんじゃないですか?)」
冷たく言い放つレイブン。気まずい食事は最高潮を迎えた・・・

「食事まで頂いてありがとうございます、副隊長」
「いやっ、かまわないよ。それよりも今後の旅の予定はあるのか?」
「いいえ、特には・・・」
食事が終わり、再び応接室で話をする二人。
「そうか、君さえよかったら少しつきあってくれないか?」
「・・何かあったのですか?」
「うむ、この町でちょっと厄介そうな事件が起こったんだ。うちのメンバーに担当させようとしたが全員埋まっていてな、空いているのはキースぐらいしかいないんだ」
この町での騎士団の仕事は多岐に渡る。貿易港なだけに普通の町とは違い不審船などの
船に関することまで仕事がある。今いるメンバーでも手が周らないこともあるのだ
「キースだけでは手に余る・・ということですか?」
「私の勘ではな、それに彼は単独で任務をこなすことはあまりないから余計に心配なんだ」
「そうですか、・・・・泊めてもらった事ですし僕は構いませんよ。」
「そうか、助かる!」
「でっ、どんな事件なんですか?」
「うむっ、実はこの町にある空家が問題なのだが・・・・・・」
フロスは真剣な顔で話始める・・・

その内容はこうだ。
最近町で奇妙な動物を目撃することが増えたらしい。いずれも夜に目撃されたので
詳しい外見はわからなかったが普通じゃないということは確かなようだ。
以前担当していた騎士団員は必死の追跡でその化け物の居場所を発見。
一軒の空家の中に入っていったらしい
普通ならすぐ人数を集めて原因究明に乗り出すのだが騎士団の人手不足や実際に
その動物の被害者がいないということからなかなか動けなかったのだ
っといってもいつまでも手を焼いているわけにもいかないのでフロスにとっては
頭を悩ます問題であった・・

「・・で僕の出番になったって訳だね」
疑惑の空家の前でアルが呟く・・
この事件を担当するのはアル、レイブン、キースの3人(?)だ。
未確認の動物相手にするにしてはいささか心持たない人数だが
傭兵公社出身、さらに「不死身の第13部隊」所属していた
アルなら大丈夫とフロスは判断したのであろう・・
「指示をお願いします、なんなりと言ってください!」
キースもやる気満々、緊張しているのかどうなのか顔を真赤にしている
「まぁまぁ、落ち着いて。レイブン、ここからだと何か感じるかい」
キースを落ち着かせレイブンに状況の解析を聞くアル。
彼女のサポートは信憑性が高いのだ
「・・・地下から、何か感じますが・・ここからだとはっきりとしたことはわかりませんね」
「そっか、じゃあとりあえず中に入ろう。キース、無理しないでね」
「はい!!」
空家の門は重く開かれ一行は中に入っていった・・。


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