第十一話  「還らない理由」


イオの治療の甲斐あって腹部の出血は止められて一安心だ

ただチャリオッツの後遺症はどうにもならないので情けない話だがイオに肩を貸してもらいながら

ラキオス城内にある研究室へと招かれた

何度か兵士とすれ違ったがヨーティアが軽く


「業者だよ、責任は私が取るから安心しな」


っと言ってくれたので特に不審がる様子もない・・怪我人連れているのに怪しんでないって・・

普段どんな業者が出入りしているのか疑問だが

なんだか怖くて聞けなかった


・・・・・・


「さてと、前の住処に比べたらだいぶすっきりしているだろ?」

研究室はかなりの広さ。

テーブルの上には文献などが積まれているが以前のあの本の搭などの現象は起こっていない

確かにだいぶ片付いているな・・

それでも一般レベルじゃ十分散らかっているが・・

「そう・・なのか?」

「知識を欲する者の居城にしては綺麗な方よ?」

・・出たな、同類アンジェリカ・・

「おっ!わかっているねぇ・・、学者の性分としては後片付けをするよりも先に次の知識と結果を欲する

・・イオももう少し理解してくれたらねぇ・・」

「この部屋はレスティーナ女王も招く場所です。あまり不潔にするわけにはいけません」

この状態でも失礼なんじゃねぇのか?

まぁいいや。自由に歩きまわれるにはもう少し時間がかかりそうなので適当に地べたに座り込んで周りを見渡す

・・相も変わらず壁に貼り付けられているメモとかの内容は何の事かさっぱりわからん

・・字が読めないからねぇ・・



「それでぇ、マナ結晶体を奪って元の世界に還る計画はどうなんだい?」


「ああっ、詰め所のは頂いた。アンジェリカ、ほれっ」

懐から取り出して投げ渡す、事も無げにアンジェリカは受け取るが少し顔を曇らせた

「貴重品なんだから投げないでよ・・。

・・・・・、この大きさだと、術に必要な分は確保できそうね

でもこれは研究用に保管するはずの物だったんでしょう?

貴方が使わなくてよかったの?」

「あ〜、確かに研究用に使いたいと言って解放するのを止めさせたのは私だ。

だが、今は結晶体の研究以外に色々と忙しくてね・・。あんたらが必要だろうから保管しておくために嘘を言ったのさ」

・・なるほどな・・

「そりゃ助かるが・・、それでもラキオス国が所持している物だろう?

そんなことしてまずくないか?」

「盗むのはあんたらだからね、こっちには責任がない。

それに・・今から了承を得たらいいだろう?」

今・・から・・?

何か・・嫌な予感がする・・

「ちょい待て、ヨーティア。俺達は下手すればおたずね者なんだぞ?」

「わかっているわかっている。だがこのままでトンズラするほど狡猾でもないだろう?」

よくわかっていらっしゃる



コンコン



う・・誰か来た・・

”ヨーティア殿、用事があると聞いてきたのですが・・”

この声は・・間違いない

「ああ〜、開いているよ。入ってくれよ」

気軽に声をかけるヨーティア、それとともに研究室の扉が静かに開かれた

「失礼します、夜分に呼び出しとは緊急事態ですか・・?」

引き締まった顔つきの女王レスティーナ、まぁこの時間で呼び出し食らったら只事じゃないと思うだろう

・・っというか別に今呼ばなくてもええやん!

「あ〜、まっ、野暮用さ。緊急事態ではないよ」

「野暮用・・?あっ・・」

俺とアンジェリカの姿を見て目を丸くするレスティーナ

ん・・?

「ご機嫌麗しゅうございます。座ったままで失礼・・」

「同じく、お会いできて光栄ですわ、女王陛下」

「貴方達は・・」

少し微笑むレスティーナ・・、なんだ?

この姿では初対面、そして良い噂が届いたとは思えないのだが・・

「先ほど襲い掛かってきたサーギオスの奇襲部隊を退いた連中さ、

怪我をしているところをイオと私が介抱してやったんだ」

「奇襲部隊が・・また・・ですか?」

「昼間もあったみたいだねぇ・・まぁそっちも・・あんたらが鎮めたんだろう?」



「・・やっぱ、知っている奴にはバレバレか・・。目立ちたくなかったんだがな・・

そして、女王さん・・俺は以前の襲撃の際に・・」

「わかっていますよ、『スーパーラキオス兵』さん・・でしたか?」

あ・・ら・・?

悪戯っぽく笑うレスティーナ・・

正体がとっくにばれている?

「あ・・はは・・声でばれちゃったかな・・」

「まぁ、それ以外にも色々な情報がありますからね。そして・・貴方がマナ結晶体を盗む不審兵だと言うことも・・」

顔を曇らせて静かに言う・・

・・・・・この重い空気、ううむ・・苦手だ・・

「悪いな、あんたも図書室で探していた本やその後の異変から犯人が誰だかわかっていたみたいだな」

「あまり信じたくはありませんでしたがね。

私の命を助け、民衆の騒動を鎮めてくれた人物が国の希少品を盗むなんて・・」

「「・・・・・・・」」

騙したつもりはないんだが、やっぱ少し気まずいか

「それで・・そうまでして結晶体を盗んだ訳はなんでしょうか?

貴方達ならば悪用するとは思えません」

「元の世界に還るため・・よ、女王陛下。」

「元の・・世界に・・?」

呆然とするレスティーナ

「あ〜、レスティーナ殿。この二人も神剣を持っていないがユートと同じくエトランジェだ」

「神剣を持たないエトランジェ・・ですか・・」

「ま〜、ユートの妹も持っていなかったそうだから全くの例外というわけでもなさそうだけどね。

この二人はとある術の失敗でこの世界に飛ばされたんだ。

それで戻るのに多量のエネルギーが必要というわけでマナ結晶体を狙っていたわけさ」

説明痛み入ります、ヨーティアさん

「そうでした・・か。それで・・マナ結晶体があれば戻ることができるのですか?」

「改良を加えたから大丈夫ね、最も・・私達だけに有効な術であって『求め』のユート達には残念ながら使えない方法よ?」

「・・・そうですか・・」

レスティーナの言いたい事を把握しているアンジェリカ

元に戻る術があるならそりゃエトランジェ達も帰りたいだろうしな

「でもよ、何で俺達にだけ有効なんだ?」

「術により世界と世界を繋ぐ『道』を作るのだけど行き先は術者や受ける者が念じなければいけないの

つまり、私の術を使って行ける世界は私達の世界だけ。幾らエトランジェ達から彼らの世界の情報を聞いても

それを完璧に把握してその世界への道を広げることなんてできないからね」

・・なるほど、見たことも聞いたこともない世界をイメージするんじゃ無理だよな

「ふぅん・・まぁ、盗んだのは仕方ない事情ってことさ。悪いと思っているよ」

「いえ・・、そのような事情があるならばかまいません。

それに貴方は私の命を守ってくれた恩人です・・、マナ結晶体は貴方達に譲りましょう」

軽く微笑むレスティーナ、女王の度量は違うねぇ

「助かる・・そんで、『求め』達の還る手段はあるのかよ?」

「な〜に言っているんだ、この大天才の手にかかりゃ朝飯前だ!」

「・・ほんとか?」

「・・・もうちょっとで完成する・・。調整が中々難しくてねぇ」

長い朝飯前になりそうだな

「期待していますよ・・。

ではっ、クロムウェルにアンジェリカ・・お二人を客人として招きましょう」

・・・んっ?

「ちょっと待て、女王さん。・・自己紹介、したっけ?」

「えっ!?あ・・それは・・」

なんだ?レスティーナが『やってしまった』が如く目が泳いでいる

「あぁ・・、ヨーティアがあらかじめ教えていたのか?」

「いいやっ、詳しい事は伏せていたんだが〜、レスティーナ殿、この二人の事をどこで・・?」

「それは〜・・わっ、我が国の情報部からの報告です。

この国の情報収集能力は世界一ですので・・」

目が・・まだ泳いでますな

っというか情報収集力が高いのならばサーギオスの奇襲部隊の接近に気付けよ

「ふぅん、そうなんだ・・まぁいいや。でもあまり表立っての歓迎は遠慮させてもらうよ」

「そうね・・色々と悪さもしたみたいだし。

ここで一夜明かして明日術を使わせてもらうわ。

・・だけど・・」

俺の方を見て嫌な笑みを浮かべるアンジェリカ・・

「本当にそれでいいの?クロムウェル?」

・・・・・・

「んっ?還る準備は整ったんだ。今更確認することもないだろう?」

それに不思議そうに首を捻るヨーティア

まぁ普通ならそうだ。

この国に属したわけでもなく還る準備は整った


・・だが・・ねぇ・・


「・・・、まだ、還れねぇな」

「えっ?」「・・ふふふ・・」

驚くレスティーナに笑うアンジェリカ、

他にも怪訝な顔をしたヨーティア&イオがいます

「おいおいおい、せっかく苦労したんだろ?どういうつもりだい?」

「まだやることがあるんだよ・・、アンジェリカにゃ気付かれたみたいだけど・・」

「まあね、・・あのスピリットの決着をつけること。それ以外にもあるわね?」

「それ・・以外・・?」

「まぁ帝国のやり方が気に食わないってことだ。

決戦ともなりゃ・・人手はあったほうがいいだろ?」

「クロムウェル・・それはありがたいのですが・・貴方はこの国との関わりはありません。

無理に命を危険に晒さなくてもいいのですよ」

「関わりならもうあるぜ?」

「えっ・・?」

「ラキオスに協力しているヨーティアにも借りがある。

それに女王さんからマナ結晶体をもらった借りも・・な」

「・・その件は・・」

「まっ、個人的にゃあの一件は成り行きだからな。

それにこれで”はい、さようなら”ってのは後味悪いや」

「はは・・はははは!相も変わらずの大馬鹿みたいだねぇ!!」

「うるせっ!俺がそうしたいからやるだけだ。

命張るだけの理由だよ。アンジェリカ・・いいな?」

なんだかんだであのオウカの事も気になるからな

「わかっているわよ、それにここに来てしまったのは私のミスよ?

拒否権はないわ・・

それじゃレスティーナ女王、対帝国戦・・私とクロムウェルの二名が微力ながら協力するわ」

「・・貴方達・・、わかりました。ラキオスは貴方達を暖かく迎え入れましょう」

・・広い度胸だ。

あの時の王女さんがたくましくなったもんだぜ

「あ〜、ただ!裏で動かせてもらうよ?」

「・・はっ?」

「あっ、いやぁ・・スピリット隊と同行したら痛い目みそうだし・・」

「・・・??」

訳のわからないレスティーナ、対しヨーティアは嫌な笑みを浮かべている

そういやこいつにゃ情報いっているな・・

「そういえば、セリアやヒミカがすごい形相していたなぁ。クロムウェル、何したんだぁ?」

・・う・・わかっている・・こいつ・・わかった上で俺に聞いている・・

「クロムウェル、何をやったのですか?」

「・・セリアさんの胸やお尻を触ったり、ヒミカさんのかわいそうな胸を指摘して怒らせました・・」

「・・・・・」

無言のまま固まるレスティーナ、ひょっとして・・歓迎したこと後悔している?

「いやっ、あくまで油断を作るための手段だ!そこは理解しておくれ!」

「っとはいえ、それを証明する証拠がないわよ?

それに・・貴方ならイカガわしい理由でやりかねないしね」


アンジェリカ!俺を陥れる気か!?


「・・ま・・まぁ、それは当人同士で解決するしかありませんが・・。

女性の胸を指摘するのは感心できませんよ」

そういやレスティーナにも指摘しかけたな・・

「以後気をつけます・・」

「よろしい、では・・帝国戦に向けての行動は貴方達にお任せします。その方が動きやすいでしょう?」

「まぁな。スピリット隊には極少数に協力者がいる・・程度に伝えておいてくれたらいいよ」

「わかりました。改めてご協力感謝します・・」

深く礼をするレスティーナ、ううむ、不審人物に対してこの態度・・

全く持って感服すらぁ・・




翌日

あの後はもう深夜ということでレスティーナは眠ることにし

俺達は研究室の仮眠スペースで一夜を明かした

ヨーティアは何かの研究に没頭していたらしいが夜明け頃に仮眠を取るってことで俺と交替でベットに倒れた。

これでも朝は早いからな・・見つからない程度に体を動かすために起きた時に交替したわけだ

イオは・・夜食を作ったりしていたらしいが別室で休んだらしい

そんなわけで日が明けてから行動を開始する

とりあえずアンジェリカに昨日の戦闘の傷を完璧に癒してもらった後は・・俺は特にやることはない

アンジェリカは宿に置いた荷物を研究室に移動させるために色々忙しいみたいだ

因みにラキオスとサーギオスの戦闘はまだ始まらない。

まぁ準備は万端というわけでもないらしく後2,3日してからの行動開始になるらしい

ヨーティアは研究だの何だので忙しいしアンジェリカも研究室の資料に目を通したり

ヨーティアに色々と情報を聞いているらしく相手をしてくれない

そんなわけで邪魔になるから俺は城下町に出かけることに・・

まぁ金髪で黒服の男は目立つからヨーティアに頼んでここの一般的な服装と帽子を借りることにした

これでばれないだろうが・・俺って変装してばっかだな・・おい・・


「やれやれ・・、まぁ活気は戻ったか・・」



広場の活気はいつも通り・・しかし以前とは行き交う人々の表情が少し違う

まっ、戦争前の国民の顔ってのはこういうものだ

だがそれもすぐに終わるだろうさ・・、

どんなに長かろうが止まない雨ってのはないんだからな

・・にしても大してやることもないのにブラブラするのも飽きるな・・

昨日の夜も遅かったし・・高台で昼寝でもするか


・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

人の少ないところってのは寂しさを感じるもんだが今日は天気が良く

日の光が道を照らしそんな感じはしない

これだけ心地よかったらよく眠れそうだ・・

まぁ、今まで忙しかったしマナ結晶体に関してはとりあえずは解決したんだ

このぐらい羽根を伸ばしてもアンジェリカも怒らないだろう

・・ん?



”ふぁ・・あ・・”



”眠そうだな?レムリア・・”

”えっ?そう・・かな?ははは・・気のせいだよぉ!”

あら・・先客か・・

高台にはあの白服の少女紫紺眼のレムリアとボサボサ黒髪頭の青年がヨフアル食べながら話していた

この男・・、紺色の珍しい服を着ているが上から白い羽織のような物を着込んでいるな

「ありゃ・・今度は俺がお邪魔したか・・」

「あれ・・貴方・・?」

「・・レムリアの知り合いか?」

警戒する男・・まぁ、ここにはほとんど人こないからだし帽子被っているからなぁ・・

「・・俺だよ・・」

帽子を取るとともにレムリアが驚きの顔を見せる

「あっ、クロムウェルさんか〜、どうしたの!?あの格好じゃないよ?」

「・・昨日の一件でわかるだろ?目立ちたくないんだよ・・」

「昨日の一件?レムリア・・この人は?」

「ああっ、ユート君。

この人はクロムウェルさん!旅の大道芸さんなんだって!すごい人なんだよ!?」


ユート?・・ユート・・ユート・・


「・・ああ〜!ユートって事は『求めて』のユートか!」

「・・『求め』だよ」

「あぁ、悪い悪い、ニュアンスで捉える方だからさ。

・・ふぅん・・レムリアぁ・・今度は俺がデート現場を目撃しちゃったなぁ(エヘエヘ)」

「い・・いやだ!デートだなんてそんな・・♪」

あからさまに照れるレムリア・・、なるほどねぇ・・

レムリアの想いの人は『求め』のユートだったのか

「人気のないところで仲良くヨフアル食っていたら誰が見てもそう思うぜ?」

「もう、からかわないでよ!ねぇ、ユート君?」

「え・・ああ・・そうだな」

ユートの方は見られたのがよほど恥ずかしいのか目がかなり泳いでいる

・・青いな、青過ぎる!

「邪魔なら退散しようか?

国の英雄が女の子連れて城下町歩いちゃ冷やかしの嵐だろうしなぁ」

「そ・・そんなこと・・、あるよな・・。周りからの視線はいつも感じているものな」

その服装じゃあな・・俺も同じ経験をしたけど・・

「ところで、クロムウェルさんはどうしたの?一人でボ〜としにきたの?」

「まぁそんなところだ。

実は昨日は余り寝てなくてなぁ・・人気のないところで昼寝したかったんだよ」

「昨日・・か。そういや不審人物が出たりで大変だったからなぁ・・」


どうも皆さんこんにちわ、不審人物です


「そ・・そうだ、ユートだったか・・。お前の仲間に『コウイン』って奴いないか?」

「え・・?ああっ、いるにはいるよ・・。もう少しでいなくなるところだったけど・・」

・・その物言いなら・・生き延びたか・・

「・・無事だったか・・」

「・・あ・・あんた、何でホッとしているんだ?」

「えっ?ああ・・昨晩城の方から女の声で『コウイン殺す!』って凄まじい怒鳴り声が聞こえたから気になってな・・」

そう言って本気で殺す気なんだから怖いとしか言いようがない

あの凶暴女・・、危険だぜ・・

「・・・今日子だな、安心してくれ。

なんとか無事だ・・、それに勘違いで襲ったらしいから今日子の方も反省しているみたいだよ」

「・・反省・・できるんだ・・」

「えっ?」

「いやっ!なんでもない!あははは・・」

「・・???」

わからんほうがいいさ、ユート君・・

「それにしてももうすぐ決戦だってのに女の子とデートとは、流石に『求め』だなぁ」

「な・・、いやっ、『求め』は関係ないだろう・・。

レムリアとまた会ったのは偶然で・・これは・・成り行きというか・・」

「あ〜!ひっどい!運命だって言ったじゃない!」

なるほど、鈍感だ

「女性に対して『成り行き』って単語を使うのは感心できねぇぜ?ユート君」

「いやっ、決してそういうことじゃなくて・・なんというか・・偶然?」

「偶然?レムリアが言っているように運命じゃないのかぁ」

「ちゃ・・茶化さないでくれよ!」

「ははは、冗談だ。まぁ・・大事な戦いの前だからといって緊張するのも問題だ。

そのくらいの余裕があったもいいだろうな。

・・勝てよ・・、このお粗末な戦争はもう十分だ・・」

「あんた・・」

「まぁ、おたくはまだまだ青いから忠告しておくよ。

部下を従えるなら常に周囲に目を配って冷静でいろ、怒りや憎しみの感情に流されるなよ」

「クロムウェルさん・・」

「・・・どうしてそんなことを言うんだ?」

「これでも色々経験していてな。・・昔、大切な人を守ってやれなかった。

その時もっと冷静になっていたら別の結果にもなっていた・・

完全な後の祭りだが・・・そんな事を思う時もあるんだよ・・」

「「・・・・・」」

「感情に走るのは悪いことじゃないがそれが良い結果を生むとは限らないんだ。

ただ、お前の内に溜まった怒りなどを全てぶつける時は必ずある・・

その時まで取っておくのがいいんだよ」

「・・肝に命じておくよ」

「へっ、悪いな・・せっかくのデートの途中に・・。

あっ、そうだ♪おいおいユート君♪」

肩を組んでスキンシップ〜、怪訝な顔されても気にしない気にしない♪

「な・・なんだよ・・?」

「ゴニョゴニョ・・(レムリアはなぁ・・実は胸が小さいのを気にしているんだ。お前さんがたくさん揉んで大きくしてやんなよ♪

レムリアもそれを待ち望んでいるはずだ!)」

耳打ちでマル秘情報伝授!!

「ぶっ!な・・何をそんな!!」

「『求め』ろよ♪このこの!」

「・・クロムウェルさん、なんだかとてつもなくイヤラシイ顔をしているよ・・?」

君のためだよ!レムリア君!

「あははは!レムリア!もう一つ教えてやろう!

男ってのはなぁ・・み〜〜んな獣なのさ♪では〜、ごゆっくり〜!」

「クロムウェルさん!?」

「お・・・おい!言う事言ってさっさと立ち去るなよ!」

若い人達の営みは邪魔しちゃ悪い・・

お楽しみに〜♪


一組の恋人の営みを奨励しつつホクホク顔のまま俺は城へと戻ることにした

あそこまで言ってやったからにはもう今頃燃え上がっているに相違ない

・・否、これで手を出さなければ漢じゃねぇ・・

「まぁあそこならば人も来ない・・ふっ、がんばれよ」

家屋に挟まれた細い路地を歩きながらレムリアの祝福を願う・・良い事をした後は気分がいいもんだ

眠いしチャリオッツの後遺症がまだ治りきっていないのだが

非常にすがすがしい。

「恋のキューピットってのも悪くはないなぁ・・」

思えばいつも妬んでいたからねぇ・・

ん・・っ?


シュ!


鋭く空を切る音・・

ちっ!

キィン!

咄嗟に後ろに飛びのいた瞬間、レンガの壁に短剣が突き刺さっていた

「誰だ!?」

建物の隙間を縫うような通路なために上から狙ったのは間違いない・・

だが気配や殺気は全くない

何よりも屋根までかなり高さがあるから暗殺目的にするにゃ少々間抜けだ

何なんだ?

・・・・?短剣の握りに何か結ばれている

「・・なるほど、矢文の代わりみたいなもんか・・」

短剣を引っこ抜きながら結ばれている紙を解く、

綺麗に折りたたまれたそれには思ったとおり、文字が書かれていた

何ともなぁ、知り合いでもないのに粋な挨拶だ

どれ・・

・・・・・・・
・・・・・・・・


こ・・これは・・!?

・・・まったくわからん・・。

っというか俺、字が読めないんだった・・

俺宛なのは間違いなさそうだし、戻ってアンジェリカとヨーティアに解読してもらうか・・


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