第十二話  「振るう拳は不殺の雷」


不審な短剣と文を手にしてから寄り道もせずに城へと戻った

兵達にはヨーティアから説明があったのか別に何も言われなかった

以前忍び込んだ城に堂々と帰るというのも何だか変な気分だぜ・・

だが、サーギオスとの決戦が近づいているわけだから

兵士達の顔も緊張感が高まっている、まっ、直接戦うわけでもないだろうけど・・な

・・・・・・・

まだ昼下がりなだけに城内も静かなものだ

昨日騒動があったのもあるが帝国戦への方針が決まったらしく今日は全体的に休息を取ることになっているらしい

まっ、スピリット達の仕事も一般兵が変わってやっているらしいから兵士以外は

それぞれの戦争に向けて精神を整えているんだろう

そうともなればレスティーナも今日はおやすみか・・・、女王様ってのは考えてみりゃ城に軟禁されているもんだろうから

こんな休日があっても逆に落ち着かなさそうだな

・・うし、ここだ・・

ヨーティア研究室・・っと書かれているであろう看板、俺は形で覚えている

なんだか凄く恥ずかしい・・

「帰ったぞ〜い」

・・研究室はいつもの如くの散らかり様・・、

俺が出て行く時に確かイオが整理していたような気がしたんだが・・

「よう、思ったよりも早かったじゃないか」

椅子に座りながら本を読んでいたヨーティア、そして同じテーブルに本を広げて黙読しているアンジェリカがいる

・・イオはどっかに行ったか・・

「高台に先客がいてな・・他に用事もなかったからここで昼寝しようか・・と・・」

あ・・二人から非難の眼差しが・・

「寝るなら中庭にしておくれ、あくまで仮眠用のベットなんだ」

「・・へいへい・・」

「それにしても昼間っから寝るとは感心できないぞぉ?脳が活発に働いている時間を無駄にしているとしか思えない」

・・そもそも、脳を活発に使う機会がないのでな・・

「まぁこれは日課に近いからなぁ・・」

「だらしがないなぁ・・ほれっ、一服してシャキっとしろ」

そう言うと煙草を一本俺に向けて差し出すが・・

「俺は吸わねぇよ」

昔吸っていたが体力造りに悪いということである時期に止めた、っというか止めさされた

まぁ倒すべき目標があったからその後は見向きもしなかったな

「ほぉ・・意外だねぇ・・」

っというかヨーティア、あんたは四六時中吸いすぎだ

「ふふっ、どうせキスの味が悪くなるって止められているのでしょう?」

「んなわけあるか!元々吸わないんだよ!・・体力を削る毒にゃ興味がねぇ」

「意外に真面目だなぁ・・ん・・?それよりも手に何ナイフ握っているんだ?」

「あ〜、そうだった。裏路地を歩いていたら急に投げつけられてな・・柄に文が結ばれていたんだが・・

何書いているかわからんから読んで欲しかったんだよ」

そういうとナイフと文を一緒にヨーティアに渡す、アンジェリカも何事かと本を読む手を止めて剣を見つめ出す

「その柄の部分の紋章・・帝国の物ではなくて?」

「ああっ、その通りさ。サーギオスの一般兵に支給される物だね・・・」

ふぅん・・、まぁ国内でそんなことをする奴がいるとは思えないけどさ

「で・・内容は?」

「急かすな・・これは・・」

ヨーティアの眉間の皺がよる、不可解そうな表情だな

「・・どうだ?」

「・・サーギオス領リレルラエルにエーテル変換施設が設置されている。

ラキオスのスピリット隊がリレルラエルに接近するとともに施設を暴走させて

マナ消失を起こさせる計画が実行されるから気をつけろって」

・・なんだと・・?

「・・身内の情報をあかすとはね・・、面白い事してくれるじゃないか・・」

「本当ね、敵に流しても戯言としか見られないでしょうし・・。・・それで、差出人さんは匿名かしら?」

「ドレーパー隊オウカ、それだけ書かれている・・」


何!?


「あいつが・・だと・・?」

「ああっ、お前と妙に縁がある黒スピリットのオウカだ。

私が帝国にいた頃からその力は有名だったがねぇ・・

まぁ変わり者として・・でもあるがね」

んっ?ヨーティアって・・

「帝国にいたことあるのか?」

「もう随分前になるけどね・・。

それよりも・・態々城下町に紛れ込んでまでこんな忠告とは・・

クロムウェル、どう見る?」

大天才やまともな人間からしてみりゃ『罠』って見方が強いだろうが・・

「・・・、信じる価値はあるだろうな。リレルラエル・・だったか?

地図を見る限り帝国に辿り着くには必ず通らなければいけないルートだ。

両刃の剣とは言え相手に打撃与えるならばそのくらいの事はしでかすんじゃねぇのか?」

真意は・・見えないがな

ってか住民巻き添えか?・・それほど切羽詰っている状況でもないだろうに・・

・・・

そうか、あのおっさんだけが切羽詰っているって事も考えられるな・・

スピリットの扱いってのは大変らしい。貴重な戦力だからな

それが一度に十数人以上失ったとなれば隊長としての面目丸つぶれなのは間違いない

・・まぁ、スピリットの扱い方に対しては帝国の考え方はわからんが・・

「だけど・・」

「罠の可能性・・だろ?まぁそんなこと丸分かりなんだぜ?

それに真剣に考えた工作にしちゃお粗末な子供騙しだ。それを渡すのに城下町に潜伏することができるならば

昨日みたいに騒動起こした方が現実的だよ」

あのおっさんがオウカの名前を使って俺をおびき出す・・って線も考えられるが・・

どの道そうもいってられないだろう

「それで、先に行くのか?確証もないのに動くなんて度胸があるねぇ・・」

「直感だよ、直感。まぁデートのお誘いは断らないタイプなんでな・・

それよりもヨーティア、オウカについてそれなりに知っているんだな?

・・聞かせてくれないか?」

「・・ああ、オウカ=ブラックスピリット。サーギオスの黒スピリットの中でトップクラスとも言える剣の使い手だ

・・だが、周りに従うわけでもなくただ剣の腕の上達にのみ没頭する変わり者でな・・それが原因で

ドレーパーって馬鹿の元に異動になったらしい。

後は・・ドレーパー本人としては上手く手懐けたと周辺にもらしているらしいな」

・・帝国の情報もそれなりに詳しいんだな・・ヨーティアって・・

「ただ、詳細は不明だ。私も帝国を捨てたんでね・、まぁあんな小物に懐く気質でもないことは間違いないだろう」

「それだけど・・、予測の範囲内でオウカがドレーパーについている理由がわかったわ」

流石はアンジェリカ、何もしていなさそうで結構何かしている

「・・・それはなんだよ?」

「毒・・ね。

私の世界で知っている物と同じような効果を持つ物この世界でも見つけたの・・それを使用したと思われるわ」

あっさりと言うアンジェリカ、だがそれにヨーティアは顔を曇らせる

「スピリットに毒を使うのか・・?元々人間に逆らえないように教育しているはずのスピリットに・・」

「可能性よ。まぁ変わり者のスピリットにはその教育が届かなかったのかもしれないし万が一の場合を見越してあのドレーパーが

盛ったのかもしれない・・それはわからないけど、あの皮膚の色からして・・ね・・」

「その毒の効果ってどんなんだよ?」

「結構強力よ?皮膚の色がくすんで来て頬がこけて来るんだけど頬のほうはマスクでわからないわね。

自然治癒は不可能、それ専用の解毒薬を飲まなければいけないのだけど・・きちんと服用しないと完治できないのよ

だから・・服従させるために定期的に必要量より少ない解毒薬を渡して逃げ出さないようにしている・・」

「「・・・・・・・」」

腐った手だ・・胸クソ悪い・・

「あくまで推測よ?真相は本人に聞くといいわ・・」

「お前がそう言う時って大抵それが大当たりなんけどな」

「ふふふ・・」

「だが、まったくもって腹立たしいねぇ・・、私の一番嫌いな方法だよ」

「まっ、臆病な小利口野郎が考え付きそうな手だな。だが・・高くつくぜ?下の下の手はな・・」

あれほどの腕前を持ちながらそんな拘束をされるのは全くに不幸なもんだ

戦争の被害者とはいえ・・な


コンコン



「ヨーティア様、訓練が終わりました」

「おおっ、イオ・・おつかれ・・悪いねぇ・・色々手伝わせて」

いつもの涼しげな顔つきでイオが戻ってくる、

ただ俺達の顔色を見ながら何かよからぬことが起こったのだと直感したらしく

すぐに顔つきが変わった

「・・いえ、帝国との戦争も近いのであれば皆さんの実力を上げるのは急務でしょう」

いつもながら謙虚だねぇ・・

「あ〜、イオ。戻ってきたところ悪いんだけど・・レスティーナを呼んで来てもらえるかな?

これからの事を報告しておきたんだよ」

「・・決心がついたのか?クロムウェル?」

「そんなもんとっくについているよ・・」

「・・わかりました。

ですが・・先ほどからレスティーナ様の姿が見えないと少し騒ぎがありまして・・」

・・何?

「こんな時に行方不明か?・・ううん・・まずくないか?」

「そうね、どこにサーギオス兵がいるのかわからないんだし・・

どうしても見つからなかったのならばスピリット達と連携して探索したほうがいいかもしれないわね」


”それには及びません・・”


むっ?

「レスティーナ様・・」

ゆっくりと優雅に研究室に入ってくるはいつもの女王レスティーナ、何だよ、無事じゃないか

「騒がせてしまったようですね・・少し中庭を散歩していただけでしたが・・」

バツの悪そうな顔のレスティーナだが・・息が少し上がっていないか・・?

「左様でしたか・・では、兵士達にそう伝えておきましょう」

「助かります・・イオ殿」

ううん、知的よのぉ・・

俺なんかだと兵士なんてほったらかしにするんだが・・

「レスティーナ殿、走ってこられたのか?」

「え・・・ええ、何やら城が騒がしかったので急いで戻りまして・・走るのも久しぶりです」

「はははっ、まぁ無事で何よりだ。てっきりお忍びで城下町に遊びに出たのかと思ったよ」


ピシ!!


あれ・・?何かが割れる音がした・・

「・・・」

・・・・、何でレスティーナさんは僕を睨んでいるの?

「あっ、いや・・、俺の世界じゃ王さんが良く城下町の屋台で飯食っていたから例えだよ・・例え・・

やだなぁ・・女王様がこんな大変な時期に城下町で遊んでいるわけないぢゃん♪」

「・・そうです、そんな事に時間を費やすほど私は暇ではないのです。

・・口には気をつけてください」

・・何かすごく怒っているなぁ・・、

休日とはいえ色々悩んで苛立っていたのか・・な?

「まぁそれは置いておきましょう。レスティーナ様、少しこちらに動きがありまして呼びに行くところでしたの」

「動き・・?」

「ええっ、簡単に言うと・・」

軽くアンジェリカが説明しだす、それとともに見る見る内にレスティーナの顔つきが厳しいものへと変わっていった

・・・・・

「それで・・貴方達はリレルラエルに向かうわけですか・・」

「ああっ、連中に取っちゃ神剣の気配などを頼りに行うんだろう。

それを持たない俺達が接近して阻止したほうがそれなりに警戒されずに済む。

それだけ大掛かりな事をしでかすんだ・・

そうそうすぐには発動できないだろうしな」

にしても・・本当にリレルラエルの住民も巻き添えにする気なのだろうか・・

避難させた上で・・とか・・、いやっ、それだとばれるか・・・

まったくに無茶で幼稚な作戦なだけに先が見えないな

「二人で・・ですか?」

「その方が動きやすいわ。先行して帝国スピリットの数も減らしておきましょう・・

後発するスピリット隊の負担も軽減されるでしょう」

「・・わかりました。貴方達がそうおっしゃるならば私は何も言いません

ただ・・」

「わかっている、この程度の戦闘で死ねるかよ・・」

「まったくに・・お前はいつも自分から危険に飛び込むんだな・・」

レスティーナと対照的にヨーティアは呆れ返っている

「そういう性分なのかもな。

それに・・その文・・率直に俺にリレルラエルに来て欲しい・・そう言っているようにも思えるんだよ・・」

わざわざ俺に渡しにきたようなもんだからな

「それも直感か?」

「ああっ、そうだ。知的なもんがない俺にゃその判断基準が丁度いいのさ」

「・・度し難いが・・そういう考え、嫌いじゃないねぇ」

「ははは・・、まぁ簡単に言えば適当なんだけどな・・。

おっと、レスティーナ・・それともう一つ頼みたいことがある」

「・・何でしょうか?」

「これから先帝国との戦闘に入る・・これが終わったらこの地に続く戦争は終わるだろう。

・・だから、これからの戦いで俺は神剣に飲まれていない帝国スピリットを気絶させるだけで後はラキオスに保護してもらおうと思う」

「・・クロムウェル・・」

「神剣に飲まれて人形と化しているのとか自分自身で帝国の駒として最後まで戦う覚悟がある奴ならどうにもならないんだがな・・。

これ以上無駄な血が流れるのはいいだろう」

「それはそうだが・・できるのかい?」

「元々、加減すりゃ数日昏倒させることはできるさ。

ただ今までの相手はほとんど剣に飲まれているか自分の意志で戦っている奴だったからなぁ・・」

「なるほどね、しばらく眠ってもらって起きた時に所属していた国はなくなって戦争が終わっていた・・

そうなれば剣は下げるしかないわけね」

「そういうこと、後は女王さんが説得してスピリットがより人らしい生活を送るようにする・・どうだ?」

「口で簡単に言うけどな・・クロムウェル、スピリットが人間に対してどんな感情を抱いているか・・

その底は計り知れないぞ?ましてや帝国の連中が今どんな仕打ちを彼女達にしているか・・」

「ですが、彼の言う通り無駄な血は流さない方がいいでしょう・・わかりました。

この戦争で生き残った帝国のスピリットは責任を持って保護し説得しましょう」

「ありがとよ、じゃ・・気絶したスピリットを保護する兵士を数人用意しておいてくれよ・・

どうせすぐに目が覚めない程度にゃ打ち込むからラキオススピリット隊が出発した後での編成でもいいさ」

「わかりました・・、ではっ、ユート達にも・・そのように・・」

「いやっ、連中も無駄な血は流したくないだろうから、それなりの行動は取るだろうが・・

剣使っての戦闘で不殺ってのは中々難しい・・

それにそこまで気を取られていると逆に不覚を取ってしまう恐れもある・・わざわざ注文をしないほうがいい」

「そうね・・この話もラキオスが帝国に勝たなければ意味がないことだし・・」

「・・結局彼らは・・最後までスピリットを倒さなければならないのですか・・」

「できる限りの事をすればいいさ・・今はな。

まぁ道端で気絶している帝国スピリットに止めさすような真似をしなきゃいいんじゃねぇか?」

「・・わかりました。ですが・・これも貴方が言う『後味が悪いから』・・やることなのですか?」

「まぁそうだが・・それだけじゃない」

「ほぅ、他にも理由があるのか・・珍しいねぇ・・」

「うるせ、ヨーティア。帝国のスピリットを助ける事は・・

今まで殺したスピリットに対しての贖罪みたいなもんさ」

「・・お前・・」

「まっ、それで許してもらおうってほどやったことは軽くはないんだけどな♪

ただ、散っていった奴達の願いの中にそんな思いをした奴もいただろう・・だから、やるのさ・・」

自らハードル上げているようなもんだが・・・

これをやらずして元の世界にゃ戻れない、俺自身のけじめって奴だ・・


・・・・・・・・・・・・・・・


とりあえずは準備を整えて出発は明日することにした

ルートはスピリット隊と同じくケムセラウトからの南下、警戒はされているだろうから

敵に出会わずにそのままリレルラエルに到着はできないだろう

まっ、そこまで楽させてもらおうとは思っちゃいないが・・な

ただ、ケムセラウトからは無補給に近い状態になるから・・戦闘は長引かずにすぐに終わりたいもんだ


「・・・だが、相手も手ごわいはず・・。結構大変だぜ・・」

夜になって中庭に一人突っ立って月を見つめながらぼやく

自分で決めたことなんだけど・・なぁ・・

まぁオウカとの決着もつけたいところだ。

あいつを倒せないであの人に勝つことなんて無理だろうからな

「だけど・・タイム、心配しているだろうなぁ・・」

それだけが頭に引っかかる・・、駆け落ち状態での行方不明・・

ここと時間の流れが一緒なのかどうなのか知らないが

もし一緒ならもうかなり経つ・・

元の世界に戻れるのはいいが・・

「待っているのはタイムさんの私刑・・かしら?」

そう、怒っている場合ならば俺をワイヤーで体をグルグル巻きにして湖に投げ込むぐらいのことはやるだろう

・・そういう奴なんだよ・・

「・・・っというか、頭の中読んでないか?アンジェリカさん?」

「気のせいよ・・」

気付けばアンジェリカが近くに置かれている石のベンチに座ってこっちを見ていた

「・・悪いな、面倒な事につき合わせて」

「だから気にしなくていいってば。貴方ならそう言うと思っていたから・・ね」

「単純だからなぁ〜、俺って。・・ほんっと・・」

「だけど、だからこその貴方なのよ・・。小利口になっちゃ魅力なくなるわよ?」

「そんなことは世界が変わってもならなかったから安心してくれ・・」

「ふふっ、そうね・・。貴方は貴方だから・・」

小馬鹿にしよってからに・・

「だが今回はきついよなぁ・・。生傷耐えないかも・・」

「私の魔力も無限じゃないわよ?攻撃は受けないようにしなさい」

「できるだけ回避してみせるさ・・、まぁオウカクラスになるともはや回避できないだろうが・・」

「そうね・・、そういえば彼女が扱ったあの破魔攻撃・・、中々興味深かったわね」

・・ああ、『封刃無音の太刀』・・だったか・・

「衝撃で攻撃を封じつつさらに魔法を使えなくする。意外に知的な技もってやがるもんだぜ」

「衝撃・・ね。魔法を封じるのは無理だけどあの技・・盗めるんじゃないの?」

・・はっ?

「手刀で吹っ飛ばすとか?」

「違うわよ、『ライトニングブレイカー』の出力を弱め手の平に手中するようにイメージして雷の網を手に作るの

それで相手の攻撃に合わせて網に触れさせた瞬間に出力を上げれば衝撃を与える事ができるはずよ・・」

なるほど・・防御の技か・・

考えてみればそんなん全くないな、俺・・

「・・うう〜ん・・こうか!?」


バリバリバリ!


試しに言われたようにやってみる・・、手に平には電流が流れまるで踊っているかのように動き回っている

「そうそう、できるじゃないの。」

「それで・・相手の神剣をこの手の平にぶつけるような感じにすればいいのか?」

「そうね・・刃を挟むような感じでいいんじゃないかしら・・

接触した瞬間に相手を弾くようにイメージしながら雷の出力をあげる

・・それで相手の武器を大きく弾くことができると思うわ」

なぁるほど・・、敵さんの軌道を見切るのは得意だ。それに合わせたらいいだけだしなんとか即興でも使えそうだな

「・・まぁ、失敗して軌道がずれたりしたら指が吹っ飛ぶでしょうけどね・・」

「・・痛い想像が浮かぶような事言うな・・、まぁ・・実用的な技になりそうだぜ・・ありがとよ」

「どういたしまして・・名前は・・簡単に『ディフレクト』ってことにしておきましょうか」

「・・返し技なら叫ばないと思うがそう決めておくか!」

思えばライトニングブレイカーから色々と派生するもんだな・・

一つの技を工夫すれば色々使えるわけか・・他の技も色々考えてみるのもいいかもな

「貴方にもしものことがあったらいけないからね」

「心配されなくても平気だっての!」

全く・・、そこまで暴走しないぜ・・

”ここにいましたか・・”

うん?おおっ、レスティーナ女王まできた・・

「よう、女王さん。確か会議だったっけ?」

少し疲れた顔のレスティーナだがキリっと凛々しい姿勢だ

「ええっ、帝国攻略に関してです・・ようやく終わりましたよ」

「ご苦労様・・夜風は毒よ?もう休んだほうがよろしくなくて?」

「そうですね、もう休みたいところですがその前に会議の熱を冷ましておこうと思いまして・・」

・・知恵熱か?

「クロムウェル、失礼よ?」

・・絶対俺の心覗いていやがる・・

「はっ?」

「気にしないでくれ・・。それよりもあんたも大変だな・・、その若さで責任者というのも・・」

「・・そうですね、私の手には余りある権力かもしれません・・ですが、

戦場に出てこの国のために戦っているスピリットやエトランジェのためにも

私はその重圧に負けるわけにはいきません」

・・ほんと、名君だな・・

「立派だ・・だが、重圧に打ち勝つにゃ覚悟以外にも生き抜きが必要だぜ?

スピリットやエトランジェだって休日にゃ自分の時間を過ごしているんだろう?」

「ご心配なく、息抜きはきちんとしておりますので・・」

「あらら、それは結構♪」

「ふふっ、気遣い感謝します。ですが・・、貴方達に戦争に協力してもらってほんと・・」

「待った・・それ以上は聞かないぜ」

「・・えっ?」

「これは俺の意思だ。あんたの理想とかこの国のためとかそういうのとはまた別問題。

だから気にしなくてもいい、いや・・気にしちゃだめだ」

それなったら今度は俺が気を使ってしまう・・

「ですが・・そのために死ぬ危険もあるのですよ・・」

呟くように言うレスティーナ・・、命令を出す人間にも相応の重圧がある

まだ若い彼女にはそれは辛い事だろう

「女王さん・・、これは俺の意思でやる戦いだ。

それに・・例え死ぬほど危険な事が立ちふさがっても曲げちゃいけないものがあるんだよ」

「曲げてはいけないもの・・?」

「それは信念・・自分の心の中にある信念を曲げちゃいけないんだよ・・例えそのせいで死を迎えることになろうともな」

「・・貴方の信念・・」

「まっ、俺はそれがただ単に後味が悪いからってことだけどな♪」

難しいことは後で考えるタイプですから・・

「この男は結局は単純なのよ、女王様」

「いえ・・とても立派です。うらやましいくらい・・」

「褒めても何もでないぜ♪

それに死ぬわけにはいかない・・俺の帰りを待っている(・・であろう)女のためにもな」

「ふふっ、きっと素敵な女性でしょうね」

「もちろん♪レスティーナに負けないぐらいの美人だ・・、きっと俺の帰りを待ってくれているよ(モミモミモミモミ)」

思い浮かぶはあの優しき乳房・・嗚呼・・タイム〜・・

「クロムウェル・・素振りで胸を揉む仕草は止めなさい・・」

「・・・」

あっ・・っといけねぇ!女王様の前で胸揉みシャドーをやってしまった!

固まっていらっしゃる・・

「いや・・あ・・ははは・・、悪い悪い♪」

「忠実に胸の大きさは手に覚えているみたいね・・?」

「あったりまえだ!っというか、俺の手に合うように成長させたんだからな!」

「・・・・、・・・・・・・・・・羨ましい」

「えっ?女王さん何か言ったか?」

「なっ、何でもありません。では・・頼りにしています・・二人とも・・」

「任せておけ、そんかわり良い世界を作りなよ」

「もちろんです。貴方達が再びこの地に訪れたいような世を築いてみせますよ」

・・ううむ・・、時空越えた旅は繰り返したくないところなんだが・・

「・・た・・楽しみにしているよ。それじゃ・・もうそろそろ休んだほうがいい。

俺達も朝一番で出発するからそろそろ休むよ」

「わかりました・・ではっ、今日はこれで失礼します」

深々と頭を下げるレスティーナ

異世界のゴロツキ相手に大したもんだ・・

「・・良い人ね、貴方が気になるのもわかるわ」

「馬鹿、応援したくなっただけだ。異性としては見ちゃいねぇよ」

「・・どうかしら?ふふふ・・」

嫌な笑みを・・

「俺はタイム一筋だっての!ほらっ、さっさと寝るぞ!」

「はいはい・・そういうことにしておいてあげるわ」

全く、会話に参加しないと思ったらあれこれと妄想を膨らましおってからに・・




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