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第十話  「桜花は闇夜に舞う」


背中の傷が治ったのと同時に、にわかに気配が漂い出した

どうやら俺は森でスピリットと対峙する機会が多いらしい・・

「数は、14・・。そこそこいるわね」

流石に結界内だけあってアンジェリカさんにゃ状況把握はできているらしい

羨ましいんだが・・

「結界内だろう自動的に迎撃できないのか?もしくは相手の動きを封じるとか・・」

「応急処置的に張ったものだからね。

それにそういう高度な結界はそれなりの時間と準備が必要なのよ」

魔法って便利な代物って言葉じゃ片付けられない物なんですな・・

「しゃあねぇ、地道に潰すか・・」

「まぁ私もいるから・・ケムセラウトの時よりかは楽よ

それに位置が知られているだけでも相手にとっては相当不利な状態よ」

まぁな、流石に俺よりも対多数戦にゃ長けているわけだ

・・それにしても、ケムセラウトか・・

あの時と似ているが・・ひょっとして・・

「おでましよ」

軽くアンジェリカが笑う、その瞬間木々を縫って現れるはサーギオスのスピリット数名

黒スピリット2人に対し緑スピリットが1人

防御を担当するのはやはり緑なんだろうな

「やれやれ、前よりかは編成にゃ気を使っているらしいな」

「ふぅん・・スピリットと戦うのは初めてだけど・・、大したことなさそうね」

「「「・・・」」」

無言でアンジェリカを睨みつける妖精達

剣に飲み込まれていても小馬鹿にされていることはわかるらしい

敵意むき出しだぜ

「今ので狙いそっちにいきそうだぜ・・アンジェリカ」

「それは嬉しい限り、一度妖精と踊ってみたかったの・・それに・・」

ゆっくりと取り出すは魔導書、アンジェリカさんの武器だ

因みに直接角で叩くという凶器じゃない、それだけでも痛そうだけどね♪

「貴方ばかり血生臭いことさせちゃ悪いでしょう?」

本を開きつつ地に白い魔方陣を地に展開させる

あの書物には自動的に魔法を発動させる特殊な魔導回路が仕組まれている

回路に力を込めた者に守護的な働きを起こし術者の詠唱補助などを行う

つまりは強力な術でも比較的素早く発動できるわけだ

その代わり連射できる分消耗も激しいわけだから短期決戦向きだのなんだの説明してもらった事がある

でも詳しい原理は未だにわからんだぜ

「それではお言葉に甘えます」

「良い子ね。それじゃ、『疾空』」


轟!



いつも使用する『疾空』よりも2周り大きな風の弾丸の数々、書の補助もあって威力を割り増しさせたか

「!?」

「・・ちっ・・」

「・・・・!」

見たこともない現象にスピリット達の顔色が少し変わる

無理もない、ありゃ一発当たっただけでもかなりの手傷を負う

それがおよそ20、まるで意志を持つが如く蛇腹を描いて襲い掛かっているんだ

なんとか回避しようとある者はウィングハイロゥを楯代わりに展開し、ある者は防御壁を作り出し、ある者は飛びあがる

だが・・・甘い。

疾空はアンジェリカの制御にて駆ける、しっかり防御を固めておかないと・・


ドン!ドンドン!!!


「「!!!?」」

ハイロゥで防ごうとしたの飛んで逃げようとした黒スピリット2人にそれぞれ10発、

風の弾丸が体に深く突き刺さった

神剣の力を使って防御壁を作り出した緑スピリットを無視して守りが弱い奴から仕留めたんだ

・・この冷静かつエグいところがアンジェリカさんの真骨頂・・

そしていつもよりも凶悪な風の弾丸はスピリット達の体を吹き飛ばし再び地につかせることなく黄金の霧へと還していった

「神剣の力を得ても脆いものは脆いのね。

さて、防御担当さん。貴方は何発で絶命してくれるのかしら?」

あはは・・これじゃどっちが悪党なのかわからんぜ・・

「・・・・」

対し生き残った緑スピリット、無表情ながらも焦りを感じる

そりゃそうだ・・完全な異常事態だものな

「逃げるならこの色魔も見逃してくれるかもしれないぜ?まぁ向かうならあの風の弾丸をまともに浴びるだろうが・・」

「・・・・・」

チャキっと乾いた金属音とともに槍を構える

これがこいつらの返答、止めときゃいいのに・・

「言っておくけど・・私は残酷よ・・?」

今ので相手もわかってますよ

人体実験マンセーな学校卒業したんだから折り紙付きだし

「・・・・・・・!」

その刹那、渾身の力で槍を投げる緑スピリット。

槍には白い光が纏っており普通に投げているのではないことはわかる

緑スピリットが良く行う戦法だ。

・・防御役を主体としているから援護攻撃みたいなもんなのかな

まぁそれはどうでもいいんだが・・投げつける相手が悪すぎだぜ?

「ふふふ・・」

ニヤリと笑い軽く手を前に出し、印を切ったかと思うと

グン!っとスピリットの槍は進路を変更させて明後日の方向に飛び木に深く突き刺さった

風を操る術師なんだ、飛来物の軌道を返ることなんて動作もない

ここが厄介なところだ。

火の玉だろうが槍だろうが鎌だろうがグニグニ避けられてしまう

それによほど強力な攻撃じゃなきゃこの障壁は崩せないらしい

遠距離戦にゃとことんなのが風の術師なわけさね

「・・・」

得物を失い歯を噛み締めてアンジェリカを睨む緑スピリット

流石に頼りの神剣がなければこいつも終わりか

「良い夢みなさい・・醒める事のない夢を・・ね」

優雅にスピリットの方目掛け手を広げる

その瞬間


ドォン!



緑スピリットの体は大きく吹き飛ばされ木に叩きつけられる・・

強烈な衝撃にスピリットは目を見開いたまま動かなくなり消滅していった

「手加減なしだな・・アンジェリカさん・・」

「どこが?手加減したら相手に失礼でしょう?向こうは私を殺す気満々なんだし」

サラリと言う・・、

確かに相手さんは最初っから殺す気でもあるし死ぬ気でもある

下手に手加減したらこっちが危ないもんだが・・

・・ねぇ・・?

「やれやれ、かなわねぇな」

「そうかしらね?戦場に出て相手に手加減するほうがよほど危険な行為よ?

さぁ・・もう少し数を減らしておきましょうか。『疾空』!!」


轟!轟!轟!!


『疾空』を三連続発動、ええっと、1回約20発だから3回だと・・

・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・

60か?

「60発よ、お馬鹿」

・・・ツッコむんじゃないやい!!

いいもん!どうせ俺って義務的な教育受けてないし!

・・いじけるのは後にして、放たれた疾空は木々の間をすり抜けて獲物に向かって駆ける

流石に制御しているだけに意志を持つが如く風の弾丸が視界から消えていく

ラキオスに向かって侵攻しているスピリット達に取っては突然襲い掛かるそれは正しく脅威だろう

結界のおかげで連中の位置はアンジェリカにはわかるんだし

「・・逆にこっちから奇襲か・・、

おまけに見たこともない魔法が突然襲い掛かるんだ・・

切り抜ける奴なんてそうはいないだろう」

「11・・8・・6・・4・・。

流石に闇夜からの風の凶器には帝国のスピリットも対応しきれなかったみたいね」

「それでも4人は切り抜けたか・・やるな・・」

「二人は咄嗟に防御姿勢取ったから当てなかっただけよ、確実に減らしたかったからね。

後の二人は一人が庇って上手く回避したわ、曲者ね」

何・・?仲間を庇いながら『疾空』を回避した・・?

「・・どんな奴だ?」

「一人は指揮官、無能丸出しね。もう一人は口にマスクを付けた黒スピリット」

なるほどな・・

「後ろ髪結っているだろ?」

「ええっ、そうね・・生き残りと合流して慎重にこちらに向かっているわ。

発動した私の場所も把握したみたい・・切れ者ね」

「だろうな・・、代わるよ。

そいつがいるならば遠距離からの狙撃ももはや通用しないだろう」

「・・『無音』のオウカ・・ね」

「ああっ、縁があるらしい・・」

俺を狙うのはわかるのだがこうした偶然で対峙するとはな・・

「それじゃ、お任せしましょうか。馬鹿な指揮官が暴走しないようにこちらは様子見でもしておくわ」

・・あはは・・抜け目ねぇな・・

「頼む、それじゃ・・招きますかな」

大きく息を吸い込む、最近よく叫ぶな・・


「オウカ=ブラックスピリット!俺はここだ!狙撃はしないからとっとと来な!!」


大声でかすかに感じる気配のほうに叫ぶ!

当然の事ながら返事はないが木々の向こうから感じる気配に変化が生じたのははっきりとわかる

名前は名乗っていないが声と気配で誰だかすぐわかるだろう・・

「・・やれやれ、貴方らしいわね」

「俺なりのやり方でやらせてもうらよ。どうせあいつ相手なら小細工は通用しないだろうな」

あの動きなら至近距離から魔法放たれても回避できるだけの動きを見せるだろう

「せいぜい見学させてもらうわ・・っと、邪魔ね・・いつまで寝ているのかしら・・」

そう言うともはや忘れ去られた工作員の遺体を適当に風で吹き飛ばすアンジェリカさん

こうしたところは容赦がないんです・・ほんと・・

まぁおかげで足場は安定するんだけどね



・・どうやらおいでなすったようだな


「ふんっ、卑怯な手を使いながらも我らを叫ぶか?やはりよくわからん男だな

まぁ、ケムセラウトの一件から多少の縁はあるか・・」

青スピリット、赤スピリットに囲まれて姿を現すは・・

現すは〜・・・

・・・・

・・

誰だっけ?

「・・誰だ?お前?お呼びじゃねぇから失せろ、ボケ」

俺に用事があるのはオウカだけだ

「ふ・・ふん、このドレーパー様の名を忘れたというか・・下らん嘘だ

よもや奇襲の邪魔をするとは思わなかった・・ここで死んでもらう」

ドレーパー・・ドレー・・ドレー・・ああっ!

「・・・・・、そんなんいたっけ?アンジェリカさん」

「報告だとそんな名前言っていたわよ、

まぁこちらも忙しいから小物の名前なんていちいち覚えていられなかったでしょうけど」

「・・ふざけた連中だ。卑怯者には相応しいな」

おいおい

「奇襲や騒動起こすのは卑怯じゃないのかい?」

「我らがなすことは正しいのだよ、愚か者が」

意味不明な解釈ですな、まぁいいや

相手にするだけ時間の無駄だ

「そんなことよりオウカはどこだ?」


”・・お久しぶりです、クロムウェル殿・・”


俺の呼びかけに応えるように暗闇の中から姿を見せるオウカ

漆黒の翼を持ち口元をマスクで隠した姿は相変わらずだが瞳の光が少しくすんでいるような気がする

「とりあえずは剣に飲み込まれなかったか」

「・・・・・・」

問いかけに無言で目を瞑るオウカ・・、様子が少しおかしい。

「なるほど、確かに力量は高いわね・・。私の攻撃が避けられたのも無理はないか」

木にもたれながら冷静にオウカを観察しているアンジェリカ

まぁ、ああいう風にしていてもいつでも攻撃を放てるんだからすごいんだけどな

「・・あの風の礫は貴方が行ったものでしたか・・」

「正解よ、他の二人は見逃してあげたんだけど貴方は仕留めるつもりで撃った。それを避けきる技量は中々よ?

それもそんな小物をも庇ってねぇ・・」

「・・・恐縮です」

「失礼な女だな、卑怯な手を使った割には態度もでかい・・。この私の手で殺してくれよう」

「スピリットの手・・の間違いでしょう?

まぁ卑怯なのかどうなのかは知らないけれどいくら指揮官気取りの勘違い馬鹿でもわかるでしょう?

・・最後に立っていればいいのよ・・お間抜けさん」

挑発的に笑うアンジェリカさん

これじゃどっちが悪人なのかわかりません!

「貴様・・、その黒服の男は後回しだ!まずは女を殺せ!」

おっさんの言葉にスピリット達が構えるのだが・・

生憎そっちのペースに付き合うつもりもない

「ま〜てよ、俺が前に出ているんだぜ?そりゃ失礼だろう・・それに、お前達じゃ無理だ」

「「・・!?」」

「大体あの攻撃を回避できるのか?

それ以外にもあの姉さんにゃえげつな〜・・・い術がたくさんあるしな、

お兄さんが相手になってあげるから満足しなさい♪」

全身の骨という骨を砕かれるよりかは急所一突きで絶命するほうが苦しみも少ないだろう

「貴様ら!そんな男など無視していい!女を殺せ!」

お〜お〜、激情してら・・プライドだけはイッチョ前だな

「・・ドレーパー様、相手はどちらもかなりの手練。立ちふさがるあの男を確実に仕留めた方がよろしいと思います

無理に突っ込むのは危険です」

そんな中、オウカが静かにドレーパーに諭す

おっと・・



パァン!



いきなり感情に任せたままオウカの頬を引っ叩きやがった、

まぁあんなひょろひょろな腕じゃ・・音だけだろうな

「貴様!上官に向かって文句を言うのか!」

「・・申し訳ありません・・」

「人形は黙って私の言う事を聞いていればいい!」

「・・・」

無言のままおっさんを見つめるオウカ

いやはや、内輪もめですかい・・

「何だ、その態度は・・。あれだけ辱めを受けてまだわかっていないようだな!この・」「『狂風』」

腕を上げおっさんが殴ろうとした瞬間に俺の後ろから

アンジェリカさんが無機質な声で呟いた

瞬間・・



ゴゥ!



俺の耳の横を凄まじい風音がした、軌道からして見えない凶器は真っ直ぐおっさんの脳天目掛けて駆けている

・・脳みそ、ぶちまけちゃえ♪


「・・はぁ!」


オウカの手が動いたかと思うと次の瞬間には腰の刃を抜いており

音もなく凶器は普通の風へと戻され何が起こったかわからないおっさんの顔を撫でた

『狂風』を見切って居合いで斬った

・・やっぱ只者じゃねぇな・・

「お見事、馬鹿な上司でも守るのがお仕事みたいね」

「・・・・、それが任務です」

「貴様・・な・・何を・・?」

何が起こったのか理解できていないおっさん、

まぁ三下にゃそんなもんさ

「ピーピーうるさいから黙ってもらおうと思って術を放っただけよ。

頭がこなごなになるレベルの威力だったんだけどその子が防いじゃってね。

・・助けてもらったんだから感謝でもしたら?」

「・・・・・、不要です」

あ〜らら、嫌われていら

「まぁ、ここは大人しくしてあげるわ。クロムウェルも貴方と戦いたいみたいだし」

「あれ見切られりゃアンジェリカさんも辛いところだろうからな・・」

正直、『狂風』を見切ってさらにそれを潰すなんてはじめて見た

ああいう態度なアンジェリカだが内心かなり驚いているはずだ。

「・・承知、では・・私が出ます。それでよろしいでしょうか?」

「・・・ふん、勝手にしろ!だが、それは貴様自身の判断だ・・負ければ責任は取るようにしろ!」

小物が・・・部下の生死の責任はてめぇが取れっての

「・・かしこまりました」

「おっさん、指揮官の資格ないわ・・転職でも考えたら?」

「うるさい!貴様如きに私の才能など理解できるはずもあるまい!」

「小物根性丸出しなのはわかるがな・・、とにかく・・他のスピリットはそのド腐れ隊長さん守っていな。

お姉さんがいつ物騒なモンで攻撃するかわからないけど♪」

「・・ふふふ・・」

俺の一言とアンジェリカの笑みがスピリット二人の心を動揺させたのか、大人しくおっさんの周りに立つ

「相手は私一人で十分、参ります」

「ああっ、いいぜ。

それよりもお前も転職考えたら?馬鹿な奴の下って辛いんじゃないか?」

「・・・・」

少し目を細め何も言わないオウカ、何か抜け出せない理由でもあるのか・・?

「まっ、相応の理由があるなら仕方ないが・・な。」

「気遣いは結構、参ります」

ゆっくりと構える、足幅を広げ刀に手を添える居合いの型。

あの体勢から一瞬で高速の居合いを放つ・・だが・・

一度見ているんだ、前のようにはいかんさ

「悪いな、これでも結構お節介なんだよ・・いくぜ・・」

とりあえずはおさらいから、腕に雷を纏わせる

「先ずはこっちからだ!『ライトニングブレイカー』!」

先制攻撃!

ちまちましていたら後ろからラキオスのスピリットも来るかもしれないしな!

「・・・」

ぬっ、オウカが目を閉じ集中しだした。

その場を動かず迎撃する気か・・、いいだろう・・!

真っ向勝負だ!


「闇に沈みに混沌を纏いていざ抜かん、破の刃・・『封刃無音の太刀』」


迎え撃つオウカ、目を見開き居合いを放つ!

いやっ、普通の居合いじゃねぇ・・刃に黒い霧が掛かっている!

ちっ、おまけに抜刀速度も以前より増している!

だが退けない・・先に俺の一撃をお前に・・


パァン!


何・・!?

オウカの刃に纏った黒霧が俺に接触した!

その瞬間軽く触れたのとは思えない衝撃が俺を遅いそのまま吹き飛ばす・・

居合いの速さが突然上がりやがった・・、変速の居合いか・・?

「・・っく!衝撃を与える特殊な居合いか!?」

だが・・あの技、真っ直ぐ突っ込んだ俺ごと吹き飛ばすとはなんつぅ力だ。

なんとか体を捻って着地できたが大抵の奴はそのまま転げまわって隙を見せてしまうだろう

しかし、まともに食らったのに切り傷はない・・あの黒霧は切れ味を増すための物ではないらしい・・

衝撃だけの技・・か?

「・・、倒れないのは流石・・ですが貴方を纏う力はもう使えません」

なんだ・・と?

うお・・、いつのまにか俺の腕を纏っていた雷が消滅している!?

「・・・破魔攻撃ね。

衝撃とともに魔法まで砕く・・普通の青スピリットや黒スピリットにも見ない技・・

やはり只者じゃないわね」

・・冷静に言うなよ・・アンジェリカさん。。

「ってことは雷は使えないのか!?んなアホな!ライトニングブレイカー!!」


・・シーン・・


・・・だ・・ダメだ・・

うまく雷が出せない、青のバニッシュスキルとは違いしばらく効果が続くみたいだ・・

こんな隠し玉を用意していたとはな

「・・・、雷がなければ貴方の武器はその手甲のみ・・一気に決着をつけましょう」

あくまで冷静なオウカ、優位に立っても慢心しない

だが、俺とて手の内を全て見せているわけじゃない

「・・はっ・・ははは!所詮はその程度だ!オウカ!殺ってしまえ!」

・・うるせーな、クソ野郎・・

アンジェリカ、『疾空』で殺ってしまえ!

「残念ながらそれをやるとオウカが動くわ。真剣勝負に水を差しちゃうでしょ?」

「・・いやっ、だから何で俺の思っていることわかるんだよ?」

「以前言ったことと同じ理由よ」

単純だから・・?

・・うるさいやい!

「けっ!・・気を取り直して、俺の雷を封じるとは流石だ・・

だが、それだけじゃないぜ?

それにそもそも雷の力がなくてもこの拳はお前を仕留めるだけの力がある」

「承知しております・・だからこそこうして手合わせしているのです」

ゆっくりと漆黒の翼を広げるオウカ、・・突っ込むか

いいねぇ・・その気迫・・

「ならばいいだろう。今日はこっちも味方がいる・・とっておきを見せてやるよ」


コォォォォォ・・


特殊な呼吸法で息を整える、それと同時に精神を集中・・

「・・・・・」

「・・・・、ふっ・・」

静かに笑うオウカ、俺から放たれるそれに気付きだしたか

気功術、

魔法と体術の中間に位置する体に宿った陽の気を扱う独特な術だ

特殊な呼吸をし精神を集中してそれを練る事でその力を何倍にも引き出すことができる

そしてそれにより身体能力を格段に高める・・

「それが・・『ヴァイタルチャリオッツ』」

発動と同時に俺の体を白い膜が包まれる、ここまで陽の気を使えるようになったのは最近だ

基本的な使用法以外は後は慣れだって教えてくれた僧も言っていたしな

「この力・・」

「ネタバレだが言ってやるよ。

身体能力を底上げした・・、時間制限付だがな。

じゃあいくぜ!」

「・・マナよ、我が血を糧に力と貸せ・・殺戮の血潮・・ブラッドラスト」

俺のヴァイタルチャリオッツに応えるようにオウカも神剣魔法を詠唱する

同時に体に赤い不気味な光を纏い出した

放つ殺気も格段に鋭くなったな・・攻撃補助の神剣魔法と見て間違いないだろう

「へっ、手の内はお互いまだまだあったようだな!」

そう言うと一気に駆け出す!

「いざ・・勝負!」

向こうも応えるように駆ける!

踏み込みの速度は互角、先手に俺が突きを放つがそれを間一髪で裂ける

身体能力を割増したのに回避するのは見事としか言いようがない

だが居合いを放つにしては密着しすぎているがためにオウカは距離を開けるため

鞘に収めた刀の柄を突き出し俺のわき腹を狙う!


しかし


ゴン!


「・・っ!?これは・・」

今の俺は陽気放出しながら限界以上の力を引き出している。

並みの攻撃じゃビクともしねぇ!

「もらったぜ!」

怯んだ一瞬を見逃さない!

渾身の正拳を食らいやがれ!


ドゴ・・!


「!!っう・・不覚・・!!」

見事にオウカの腹に入りオウカはそこを片手で押さえながら地を滑らし飛ばされる

「まだだ!」

体勢を立て直す隙も与えない!

この術の制限時間を過ぎたら俺は戦闘をこなせるだけの力も残っていないだろう

そこらの極端さが使いどころに迷わせるんだよな・・

んなわけだからオウカを倒す機会はこの一瞬のみ!

決める!

「っ・・『月輪の太刀』」

・・急所に入っているのに体勢を瞬時に立て直してまだ向かってくる!?

・・大したガッツだ!

だが負けられない!

音速に放たれるオウカの居合い、同時に打ち込む俺の拳・・

それが一瞬で交差する・・

以前にもこんな事あったな。



「うおおおおおお!」

「はぁぁぁぁぁぁ!」



間髪入れず拳と刃が再び交差する!

そのまま飛びさり一旦距離を空ける俺とオウカ

拳には手ごたえが確かにある・・

が・・

「・・やっぱ強いな・・」

わき腹を斬られた、チャリオッツ発動中の鋼が如く硬度を増した腹筋ですらたやすく切れるか

「貴方も、流石ですね・・」

右肩を抑えるオウカ、

そう・・あの手ごたえは骨を砕く感覚・・

肩の骨を頂いた。

居合いを得意とする黒スピリットには利き腕を潰されるのは致命的な傷だ

「右肩を砕いた。戦闘続行は無理なんじゃないか?」

「・左手が動ければ剣は振れます。それに貴方の傷も浅くはないはず・・」

まぁ、結構血がどくどく出てるがな

チャリオッツ中だから痛みの感覚はほとんどない

「お前ほどじゃないさ・・さぁ・・決めるぜ!」

「・・承知!」

キッと顔を引き締めるオウカ、腹の一撃も肩の一撃も相当に効いているはず

左手に持ち替えて迎え撃つも俺の一撃よりも早く切れないだろう

・・まぁ、俺もそろそろ時間切れに加えてわき腹の傷が少しずつ痛みだしてきている

それでもオウカを倒すだけの力は残っている

そしてそれはあいつにもわかるはずだ

「・・うおおおおおおお!」

ならばこれで終わらす!

「・・・・っ!」

その場で構えて左手の剣撃を放つオウカ・・

やはり剣速はだいぶ落ちている、俺のほうが先に届く・・!

今回は俺の勝ちだ!



「っ!クロムウェル!避けて!」



何っ!?



「アークフレア!」



瞬間、天より赤い光が俺を襲う!

タイマン中にいきなり不意打ちかぁ!?

「んなくそぉ!!」

咄嗟にふんばりバックステップ!

今のでわき腹がかなり痛むが直撃すればそれこそまずい・・、

血が出る不快感を堪えながら地を蹴り安全地点まで下がる

次の瞬間には炎の光が目の前の地を焼き払った・・

高位の神剣魔法・・赤スピリットか・・

・・・やったのはおっさんの護衛をしていた奴じゃない、増援か?

「ちっ、仕留めそこなったか・・」

ゆっくりと暗闇から姿を見せる帝国の赤スピリット・・神剣に心を奪われていないのか

流暢なしゃべりだ

「きっ、貴様は・・?」

いきなり割り込んできたスピリットに対しておっさんが驚く

「ドレーパー様、任務は失敗です。直ちに引き上げソーマ様と合流してください」

「ふ・・ふざけるな!あの二人だけでも仕留めなければ私の顔が・・」

「目的はあくまでラキオススピリット隊、それの相手もせずに半数のスピリットを失っておいてまだ無駄な事をするつもりですか?」

赤スピリットの言葉には殺意が込められている

拒否すればこの場でおっさんを処刑するつもりだろうな

「くっ・・いいだろう!」

「では生き残りを連れて下がってください。この者の相手は私がしましょう」

・・勝手な事を・・

「・・ふん!」

まぁおっさんは任務のことなぞどうでもよく尻尾を巻いて逃げ出した

「・・オウカ、決着は次になりそうだな・・」

「・・・そのよう・・ですね」

「その命、預けておくぜ。・・・・またな」

「・・、承知です」

深く目を瞑りさっさと逃げ出しているおっさんの後に続くオウカ

かなりふらついてら・・

「さて、いきなり割り込んできて引っ掛けまわしやがって・・覚悟はできているだろうな?」

真剣勝負に水を差すのは俺が一番嫌うことだ

「・・・、あのオウカを追いつめる腕は見事だがその慢心創痍の体では虚勢にしか見えぬな」

確かに、もうチャリオッツの効果は切れる。

その瞬間にただの役立たずにはなるだろうが・・

「俺一人で戦っているんじゃねぇよ。アンジェリカ?」

「了解、タイマン邪魔するなんてね・・帝国のスピリットは礼儀も知らないのかしら?」

「それはそちらとあのオウカで勝手に行った事、私が関することではない」

・・可愛げもねぇ、っと・・

「っく・・!」

急に体中の力が抜ける、膝を地につけて座り込んでしまう

「時間切れね、後は私に任せなさい」

「・・すまね・・」

息も絶え絶え・・、まぁ限界以上の力を出している分きついわ・・

しばらくは立てそうにもないや

とりあえず斬られた腹を押さえないと・・

「ふん・・、どうやら相手をするのはお前一人でいいらしいな」

「そうね、彼は今子供相手でも勝てないでしょう。ただ、私を倒すのは貴方では無理ね」

「・・何?」

「火を扱い攻撃神剣魔法に優れている赤スピリット、でもこちらも魔法戦は得意なのよね」

不敵に笑うアンジェリカ、いやぁ・・この態度、相手に取ってはさぞ威圧感があるだろう

「・・神剣をもたぬ者がスピリットに敵うはずがなかろう」

「そう思ってお仲間さん達は散って逝ったのよ?

さて、クロムウェル・・ちょっとどいていて?」


フゥ・・・!


ぬ・・?うおおおお・・?

か・・風で俺をどかすなぁぁ!

「怪我人はもっと丁寧に扱え!こんちきしょう!」

風で転げまわったから余計に体が悲鳴を上げている

おまけに間抜けに寝転んだ姿のまんま動けない・・、

うぅ・・、チャリオッツ使うんじゃなかった・・

「丁寧に介護してあげたら後ろから攻撃されるでしょう?大人しくしておいてね」

「・・余裕な態度だな、まぁドレーパーの部隊を退けるだけのことはあろう」

「あんなの追っ払ったところで自慢にもならないわよ?

さて、失礼な妖精さんにはおしおきが必要みたいね」

相も変わらず見下したような態度のアンジェリカ、

それが気に入らないのかサーギオス赤スピリットは殺気立ってスフィアハイロゥを展開させる

う〜ん・・、なんというか赤スピリットって感情の起伏が激しいほうなのかな?

「・・後悔させてやる!」

「貴方にそれができるならね」

軽く言うアンジェリカ、

殺気立ちながら突っ込む赤スピリットに顔色一つ変えず涼しいご様子

まぁ・・ねぇ、冷静なのがアンジェリカなんだし

「切り刻んでやる!」

大きくダブルセイバーを振り上げる、

赤スピリットってのは魔法以外にも接近戦が得意だったな

「風よ、集え・・堅牢なる壁となりて刃を拒め・・『集風壁』」


ゴォ!


アンジェリカの声とともに風が集まり出す、

そして振り下ろした赤スピリットの動きがピタリと止まった

風が止めたんだ、信じられない顔をしている

「な・・に・・、そんな・・」

「無防備な女と思い込んで切りかかった・・・貴方が悪いのよ?」

邪笑を浮かべるアンジェリカさん、

ううむ・・なんだかあの赤スピリットが蜘蛛の巣にかかった蝶に見えてきたな

「ふざけるな!くっ・・動きが・・!?」

風が赤スピリット全体を包んでいる

砂埃が巻き起こりだしている・・

「ふふっ、素直に神剣魔法で戦っていればよかったのにね・・『風翔』」

「うあっ!!」

瞬間、宙高く飛ばされる赤スピリット、集まった風を一気に打ち上げたんだ・・

上昇風により身動きが上手く取れないだろう

青や黒スピリットならばまだしも・・な

「さようなら・・『疾空』」

そして無情にも発動する風の凶器の群・・

「う・・・あああああ・・・!!!」

不安定な状態で撃ち込まれる風の弾丸を避けれるはずもない

・・悲鳴を上げながら赤スピリットは黄金の霧と化していった


「物足りないわね・・。欲求が満たされないわ」

「性欲を殺人欲に変えないでください・・」

「相手をしない貴方が悪いのよ。

それに・・あのドレーパーって馬鹿を見ていたら苛々してね・・。

少しは晴れたけど・・」

まっ、何もできない馬鹿のくせに大いばりだからな

実力が物を言う世界に生きていた人間にゃ虫唾が走るわけだ

「ちっ、でも結局はオウカとの決着はつけず終いか・・」

何とか体を起こして座り込む、腹の切り傷もさることながらやっぱ

ヴァイタルチャリオッツの後遺症の方がきついな。

「あの娘、様子が変だったわね・・帝国につく気もなさそうだったし・・あの顔・・」

「・・マスクしているがどうかしたのか?」

「・・この世界の事だからよくわからないけど、

何かの毒物による症状のようなものが出ているかもしれないわね」

・・何・・?

「そんなことわかるのか?」

「目の色とか肌の様子である程度はわかるんだけど、この世界の毒物には詳しくないからなんともいえないわ

・・ただ、普通のスピリットに比べたら具合が悪いのは間違いないでしょうね」

「・・・それが、あいつが帝国にいる理由・・?」

「さてね、本人に聞くのが一番でしょう。・・全員すでに森から抜けたみたいだけどね」

ちっ、後味悪いな。

「まぁいいや、とりあえず宿に戻ろうぜ・・。

後、応急処置をしてくれよ・・いい加減フラフラしてくらぁ・・」


”そんじゃ、手伝ってやろうか〜?”



!!?

「誰だ!?」

後ろから女の声・・!?

ラキオスの方からのお客さんか!?

ちっ、手傷を負っちゃ注意力も散漫になるか

それにしても・・この声・・、どこかで・・


「よぅ、どうやら派手に暴れたみたいだねぇ」


暗闇の中から姿を見せるは見覚えのあるボサボサ髪の白衣女

「・・ヨ・・ヨーティア!?」

「久しぶりだなぁ、クロムウェルにアンジェリカ。元気そうでなりよりだ」

マロリガン近くの山奥で研究していたヨーティアがラキオスに・・?

何でだ・・?

「・・いやっ、俺元気そうに見えるか・・?

それよりもどうしてこんなところにいるんだよ」

「はぁ?・・情報ぐらい仕入れておけよ。

私はマロリガン戦からラキオスの協力者としてここに住んでいるんだ。

もちろん、イオもね」

チラっと後ろを見ると白ローブの知的なスピリット、イオがこれまた別れた時のままの姿でそこにいた

「お久しぶりです・・」

「・・マロリガン戦から、・・っということは噂の大天才『ハーミット』が貴方?」

「あ〜、そうだよ。ハーミットの方で覚えていたか・・その割には失礼だな!

この大地に私以外の天才がいるわけがないだろう?」

その理由を俺にもわかりやすく説明してほしいもんだ

「まぁそれは置いておいて。

ラキオスに協力しているんならスピリット隊の動きはわかるだろう?

騒動に気付かれたか?」

「ここでの戦闘はまだ気付いていません。

第1、第2スピリット隊詰め所の騒動に気を取られていますから・・」

あのキョウコって凶暴女と俺が起こしたやつだな

「私達は第2詰め所から結晶体が盗まれたという一報を受けて

あんた達だと気付き他に起こっている異変を探して足を運んだわけさ。」

まぁそもそもラキオスの結晶体を狙えって思いついたのはおたくらだしな

「なら好都合だ・・。見つからないうちにとんずらするから黙っておいてくれよ」

「まぁまぁ、せっかく再会したんだ・・私の研究室にきなよ。

その傷の治療ぐらいはしてやるよ」

「・・・好意はありがたいけれども正体ばれる危険があるわよ?」

「安心しな、助手や業者ってことにすれば納得するし研究室は関係者以外の立ち入りを禁止している。

久々に会ったんだから遠慮するなって」

ニヤリと笑うヨーティア・・、まぁ・・

こいつなら隙を見て俺達を捕まえて女王に差し出すなんてことはしないか・・

「まぁいいか、そんじゃ応急処置してから付いていくよ。アンジェリカもそれでいいか?」

「いいわよ。ちょうどいいわ・・情報も仕入れておきたいところだったし」

「ではっ、治療を致します。アンジェリカさんは怪我などは?」

「彼とは違って突っ込まないからこの通りよ。

彼の肉体の疲労は自然治癒じゃないと取れないと思うから腹の傷だけで十分よ?」

「かしこまりました。」

そう言うと手早く俺の服を脱がし傷口の治療に取り掛かるイオ

・・なんともなしに恥ずかしい・・

「なぁに顔を赤くしているんだ、ドスケベ」

「うっ、うるせっ!あだだだ・・」

「動かないでください。傷は思ったよりも深いです・・」

・・すみません・・

「それで、神剣の気配をイオは感じたみたいだが、やはり大事だったのか?」

「ええっ、サーギオスの奇襲部隊よ。

ラキオスのスピリットを一人でも減らしておくつもりで来たらしいわ。

まぁ結果は失敗だけどね」

「なるほどねぇ・・、今になって動き出すにしちゃ大層なもんだ」

「上層部はともかく、エトランジェが増えたことは帝国の兵達にとっても動揺を隠せない・・っと見ていいわね

それに規模が小さい・・あの男の独断かしら・・ね」

「まぁ、そこは研究室で話そうじゃないか。

こんなところで会議ってのも悪かぁないが・・これでも私は寒がりでね」

・・・、山奥暮らしがそんなこと気にするな

まぁいいや・・。これからのことも決めないといけない・・

こいつらと再会できたのはありがたいことなのかも・・な



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