第十六話  「白き消滅の光」


翌日

敵の襲撃もなく夜が明けその日の行動が開始する

森の朝ってのは新鮮で日課である早朝訓練も身が入った

・・でも、スピリット達やエトランジェ達はまだグーグー寝ておったな・・

そういう習慣はないらしい・・っというか敵が接近すれば神剣が教えてくれるみたいだから

そこまで持ち手が警戒することもないんだってよ

プライベートを引き換えにするのは嫌だが便利なもんだな・・

まぁそれは置いておいて、軽く朝食を頂いた後にはもうすぐに行動開始

戦争を早く終わらせたいってのは皆一緒だな


「・・それで・・、俺と同行するのが・・この4人と・・」


全員集合しての作戦伝達・・、それで俺が預かるスピリットを紹介された

「ああっ、色々考えたんだが・・こういう形になった。ネリーにシアー、ニムントールにヘリオンだ」

全員・・ちっこいね?

「質問!それは他の面々だと俺は道徳的にいけないからとかか!?」

「・・ヒミカとセリアはそう言っていますが・・、クロムウェル様に非があっての編成ではありません・・」

「寧ろ・・問題があるのは光陰の方なんだよな・・」

ため息交じりのユート・・

・・なるほど・・、先ほどからコウイン君が羨望の眼差しで俺を見ている

「全くに、その編隊には俺は納得いかないなぁ・・」

「な〜に言っているのよ光陰!ネリー達にいつも言い寄っているのはあんたでしょう?

この変態が妙な真似しない保障はないけどあんたと一緒よりかは少しは安全よ!」

酷い言われようだ・・俺も・・コウインも・・

「っというか・・そもそもの編隊のポイント・・間違っていないか?」

もっと別な事を重視するもんだろうに・・

「一応アンジェリカ様にも相談をしたのですが・・」

「貴方がふんばるんでしょう?問題ないわよ」

はっきりおっしゃる・・。

「なるほどな・・、ま・・いいさ・・」

「すまないな。それじゃ皆・・自己紹介しておいてくれよ?」

そう言いながら準備を終えた年少スピリット組みが前に出る

「え〜、ニムは面倒〜」

緑少女があからさまにめんどくさがっている

「ニム、きちんと説明しておきなさい」

それに何故かファーレーンが注意しだす・・保護者はユートじゃないのか?

「お姉ちゃんがそういうなら・・ニムはニムントール、緑スピリットだよ・・以上!」

以上かよ!?

「こらっ、ニム・・ちゃんとしなさい!」

「他に説明することないし〜、ヒミカをイジメた奴にはこのぐらいで十分!」

「それを言われると言い返せない・・まぁよろしく頼むよ」

「次はネリーだね!ネリーはネリー=ブルースピリット!見ての通りの『く〜る』な美女だよ!」

青ポニーテールの少女が二コリと笑って自己紹介、こちらは嫌われてはいないようだな

っというか・・『く〜る』・・ねぇ・・

「クールな女デスカ?」

「うん!」

・・まぁ、冷徹悪女なアンジェリカや反応冷たいセリアさんに比べたらまだ良いクールさなのかな・・?

・・ってかクールの意味知らないんじゃ・・

「・・よろしく頼む・・」

「シアーだよ・・、えっと・・青スピリットなの・・」

次はおかっぱ頭の大人しめの青スピリット・・ネリーとは大違いだな

「う〜ん、大人しそうだけど・・戦闘とかできるのか?」

「・・がんばる!」

グッと拳を握り戦意を見せる・・、ううむ・・後方で見ているコウインの目が狩人のソレになっている・・

奴は・・本物か・・!?

「無理はすんなよ、ともあれ・・頼む」

「最後は私ですね、ヘリオン=ブラックスピリットです!まだまだ未熟ですがよろしくお願いします!」

「一応は顔見知りだな、よろしく頼むよ」

・・一番安心できそうな相手になりそうな予感だ。

「・・それじゃ、お返しに貴方も自己紹介したら?」

「え〜、クロは面倒〜!」

「・・狂風」

ズドン!!

ひでぶ!!

「・・ちょ・・ちょっとした・・冗談じゃないかよ・・」

『狂風』の威力を軽減してのボディーブロー・・

・・・効いた・・

「貴方がやると気持ち悪いの」

「遠慮なく言いやがって・・。・・俺はクロムウェル、クロムウェル=ハット。

多少目つきが悪く悪人面に見えるがそれを言われると少し凹む純情な青年だ。

戦闘面は俺が突っ込むから基本的にゃ何もしなくていいぜ?」

「純情・・ですか・・。そ、それよりも戦闘に関してはどうなんですか?やはり体術のみだとか?」

ツッコミなし?・・すかし漫才の才能あり・・か

「っというか〜、ネリーは何やっている人が気になる〜♪」

「シアーも〜」

ううむ、ネリーとシアー・・阿吽の呼吸なり・・

「・・そうだな、まぁ戦闘スタイルは昨日見たとおり体術メインに後特殊な術を少々・・かな。

経歴は〜・・最初はゴロツキやっていてぇ・・その後に国営の傭兵集団に身を置いて〜・・今は住んでいる都市の騎士団特別教官」

「・・す・・すごい経歴だな・・」

「あ・・ああ・・」

驚くコウインとユート、話によればこいつらは学生なんだってよ。

まぁ俺の世界で言う専門機関の見習いの生徒ではなく基本的な教育の方・・、

教会なんぞで行う読み書きの学習をする方に近いんだとさ

こいつらの世界では俺達よりもきちんとしているらしい。

・・勉強するのに専用の服なんてあるんだからな・・

ってもそういう基礎的な事って親が教えるもんだろうし・・教育という建前で金儲けしている感じがするんだけどなぁ・・

「多少は特殊な経歴・・かな。まぁ・・これでも殺した人の数はこの中で一番かな?

アンジェリカさんが裏でどれだけエゲツない事をやったかによっては負けるかもしれないけど・・」

それが勲章になるわけでもないのだが・・

「あらっ、失礼ね・・どれも新薬開発のための尊い犠牲よ?

・・人として死ねたかは別だけどね」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

そこまでサラっと言われたら誰も何も言えない・・

まぁ俺以外の奴はこの女の恐ろしい面をまだ目の当たりにしていないから結びつきにくいだろうが・・ね

「・・人体実験を認めている処にいただけで想像はつくけど・・な・・

大方他人の揚げ足取って犯罪者扱いして実験材料にしていたんだろ?」

「あんなのは序の口よ?魔術の深みというのはもっと暗いもの・・力を得るというのはそれと向き合う事なのよ」

「へいへい・・これ以上アンジェリカさんの演説聞いていたら皆のハイロゥが黒くなりそうだから切り上げるか」

「そ・・そうなの?」

「・・なのぉ?」

「もちろんだ。いいか・・ネリー、『クール』な女を目指すといってもアンジェリカみたいなのを目指したらダメだ・・

あれはクールではなく冷徹、血も涙もない心のハイロゥがバルガ・ロアー色まで濁った・・」「狂風」

ズドム!

あべし!!

「今度は・・こめかみですか・・」

首が・・180度回転しそうなほどの衝撃でした・・

「名誉毀損の罰よ。馬鹿な事を言っている暇があるならルートの確認をしなさい」

「・・へいへい・・、先行してリレルラエルに向うのはいいんだが・・この『法皇の壁』の通過はどうする?

防御の拠点だろうし・・ここからだと一箇所からしか帝国領に入れないみたいだな

・・大穴空けたろか?」

「そうですね・・、このまま進めば大多数のスピリットが『法皇の壁』で待ち構えているはずです・・

少数で戦うには危険すぎます・・」

「大丈夫よ・・。そんな下らない壁・・粉砕してあげる・・」

軽く言うはアンジェリカ・・

「おいおい・・これだけ巨大な物を・・か?」

「・・大きさだけで『法皇』を名乗るなんて・・下らないのも程があるわね・・。

建設した人間は五分刻みにしてあげないと・・ね」

生暖かい風を放出しながらアンジェリカさん、正しく氷の微笑

そのとてつもなく黒い殺気にスピリット達は一同萎縮している・・

「アンジェリカさ〜ん・・。相手が『法皇』って名前つけているからってだけでやりすぎはよくないぜ?」

「ふん・・くだらないわね、『法皇』の名をつけた事を後悔させてあげるだけ・・よ」

こりゃ〜・・止まらないね・・

『法王』コンプレックスは未だ健在・・?

「・・ね・・ねぇ、アンジェリカさん・・何であんなに殺気立っているの?」

あまりの気迫に圧されたキョウコ達が俺に聞いてきた・・

「・・あいつが昔魔法学校にいたんだよ。

そこで得られる最高の勲章が『法王』・・でも惜しくもそれが取れなかってな

それから『法王』っ名にコンプレックス持っているんだよ」

「・・知的そうに見えて結構拘っているだなぁ・・」

流石のコウインもびびってら・・

「あの性格は仮初さ。元々は結構血気盛んだったんだが・・ある一件で捻じ曲がってしまったんだよ」

「どうやったら・・ああいう風になるんだよ・・?」

「・・壮絶過ぎて説明できないな、それにお前達の教育上よろしくない。

まぁあそこまで殺気立っているんだ・・『法皇の壁』の崩壊は間違いないな・・」

『狂風』を『疾空』みたく使い出してボロボロにするか・・まとめて嵐で押し倒すか・・

帝国の被害は大きいだろうが悪いの向こうだ。『法皇』を名乗った事を後悔するがいいさ

「じゃあ別行動でこのまま南下させてもらうよ。本隊は街道沿いにリレルラエルに向ってくれ」

「了解した・・それじゃ『法皇の壁』に関しては・・アンジェリカさんに一任するよ」

「あはは・・やりすぎそうになったら遠慮なく気絶させてくれ・・。

勢いで帝国の住民まで殺しだしかねないかもしれないし・・」

「それは『法皇の壁』の出来次第ね・・」

いやっ、出来次第じゃやるつもりなんですか!!?

「・・まぁ・・色々と頼む・・」

「ああ・・」

意外にこいつが一番危ないのかもな・・、それはユート達に任せましょう・・

はははははは・・

・・・・・



本隊が街道を進むのに対し俺達はそのまま森を南下する

元々余り人が入りこまない森のようなのだが特に歩きにくいということはない

普通なら草ボーボーなんだが・・これもマナの影響なのかな?

「歩きにくい〜!面倒〜!」

う・・うるせぇ・・

「ニムぅ!面倒面倒うるさいよぉ?」

「・・そうだよぉ?」

「だって面倒なんだもん」

・・ユート、人選はやはり間違っていたようだ・・

「・・先頭立って草を足で寝かせてやっているんだから我慢なさい・・」

「・・むぅ・・」

「ったく、ファーレーンが見ていたらまた怒り出すんじゃないか?」

「おっ、お姉ちゃんは関係ないでしょ!?」

ファーレーンの事になると余計感情的になるなニムントールは・・

「ふぅ〜ん・・、いい加減にお姉ちゃんから離れないとユートのモノになってから辛いんじゃないのぉ?」

・・ピシ・・

「へぇ?ファーレーンってユート様のモノなの?」

「・・なのぉ?」

「詰め所に忍び込んだ時に話題に出たが・・かなり慌てていた・・あれは脈有りだな。

後はあのヘタレが漢として覚醒すれば二人めでたく・・」

ぬ・・凄まじい殺気が・・

「お姉ちゃんはニムだけのもの!!!ユートになんて渡さない!!!」

「・・筋金入りだな・・。ニムニムは・・」

「・・・・クロムウェルはニムって言うな・・」

いや・・はははは・・血気盛んなこと・・、まるで赤スピリットだ

「じゃあ何て呼べばいいんだ?周りからはニムなんだろう?」

「そうだねぇ、皆ニムって言っているよ?」

「・・でも、コウイン様はダメだって・・怒っているよね?」

「コウインもクロムウェルもスピリットの敵だから隙を見せたらダメってセリアが言ってたもの!」

「コウイン様・・セリアさんにずいぶん嫌われていましたしねぇ・・」

・・セリアさん・・

コウインまで危険視していたのかよ・・

っというか、何やらかしたんだ?

「じゃあニムは止めておこう・・。

ニムントール、二・・ムントール・・うし!ムントだ!」

「・・ぬがぁぁぁ!」

「な・・何怒っているんだよ!?ニム以外の略称だとムントかトールかニムンしかないだろう!?」

「ニムントールでいいの!変な名前で呼ばないで!」

「わ〜ったよ。まったく・・短気な緑スピリットだなぁ・・」

「呼び名もそうですがファーレーンさんの事になると特にそうなるんですよねぇ」

二コリと笑うヘリオン、まぁ・・そんな気配丸出しだったしな

「・・・・・、まるで乳離れできていないガキだな」

「・・何か言った?」

「いえっ♪何にも♪」

ふっ、まだ若いのに良い殺気を持っていますね・・

「でも、クロムウェルって名前も長いよねぇ?」

「・・うん、シアーもそう思う・・」

「う〜ん、まぁ一人だけ俺の事をクロって言う女はいるけど・・。他はクロムウェルだな」

「そうなんですかぁ・・」

「それも捻りがないよねぇ?『ロム』とかだったらくーるなのに♪」

ロ・・ロム・・

天空で宙心な拳法を使って変身していそうだ・・

「・・俺らしくないや。多少長いがクロムウェルでいいよ。」

「わかりました♪」

「・・ふん・・」

ははは・・ニムントールに関しては前途多難だな・・

「まっ、それは置いておいて・・戦闘について多少打ち合わせしておくか・・」

そろそろ森を抜ける・・そこから法皇の壁までは平野が広がっている分戦闘は避けられないだろう

「ネリーにおっまかせぇ♪」

「いあ、無理に戦わなくていいって・・」

「えっ、じゃあ・・クロムウェルさん一人で本当に戦う気ですか?」

「まっ、そんなところだよ・・ヘリオン。

基本的にゃ俺が一人で戦う・・バテてきたら休むからその間の戦闘は任せるよ」

「・・それで・・大丈夫なの?」

心配そうなシアー、まっ・・一人で戦うのってのはこの世界じゃ猛者以外にゃ到底できない所業らしい

オールラウンダーって奴で精鋭扱いになる。

ラキオスにはまだいないらしいな

「大丈夫さ、そん変わり状況に応じて手を貸してくれ。それで十分だ」

「・・うん!」

ううむ・・シアーは良い子だ・・

「そういや、お前達の戦闘能力ってどんなもんなんだよ?」

そこら聞いていなかったな・・、見る限りまだ未熟さはありそうだけど・・

「う〜んと、ネリーはく〜るに敵を倒しちゃうよ♪」

「シアーも・・がんばる・・」

「ニムより早く動ける奴なんているわけないじゃない!」

「え・・えっとぉ・・足出纏いにならないようにがんばります!」

十人十色・・とでも言うべきか・・

っというか具体的なのはわからんね

「攻撃はネリーかヘリオンがいいか。シアー、サポートに回ってもいいか?」

「・・うん」

「シアーは大人しいから少し攻撃は苦手なの、だからそれでちょうどいいと思うよ!」

なるほどな・・、まぁ性格は剣に出るともいうし・・

「戦うのは苦手だけど・・がんばらないと・・」

ううむ、健気よの・・

にしても・・シアー・・シアー・・シァー

「・・髪を赤くして仮面をつけたら今の三倍強くなりそうだな」

「ほんと・・なの?」

「・たぶん・・な。そのうち『ラキオスの赤い彗・・」”そこまでにしておきなさい”

ぬっ!?

”アンジェリカさん!?”

”冗談言っている暇があるならさっさと進行しなさい”

いあ、盗聴ですか?

”へいへい・・”

「・・?赤い・・何?」

「いあ、気にするな・・注意されたから・・」

「???」

「まぁ防御はニムントール、攻撃はネリーとヘリオン、サポートはシアーって編成が一番無難かな?

極力お前達の出番はないようにするけど心つもりだけはしておいてくれ」

「クロムウェルが全て片付けてくれるなら、楽でいいね」

「ニムさん・・戦闘まで面倒なんですね・・」

「いつもの事じゃない?まぁネリー達の出番もちょうだいね♪」

「ね〜」

・・善処します・・

っと・・森ももう抜けるな・・そろそろ気を引き締めるか・・


・・・



森を抜けた先の平野、法皇の壁がもう視界に見えてきたんだけど・・

東の方に砂漠が広がっているっぽい

ダスカトロン大砂漠の始まりのようだが砂漠と森と平野が混同しているなんていつもながら不自然な世界だな・・

まぁここからは身を隠す場所はほとんどないし、早くもお出迎えが待ち構えていた

「・・こちらに出向いて正解でしたね」

平野にて静かに立っていたのは・・『紅蓮』のエスメラルダ・・

後ろにはトリオよろしくヴェロニカとティートがいる

「ははは・・動きがばれてたか?」

「雪辱は晴らさなければいけませんからね。少数ながら神剣の気配を感じてこちらで待ち伏せさせてもらいました」

「単独行動が好きだとか言っておきながらきっちりスピリットを引き連れているなんてね、所詮は口だけの人間よ!」

・・あの時と今では状況が違う・・っても信じないだろうな、こいつなら

「まっ、状況はリアルタイムに変化していくもんさね。相手は俺一人でやるから安心しなさい」

「・・ク・・クロムウェルさん、大丈夫ですか?かなり強そうですよぉ?」

「安心しな、ヘリオン。昨日一応退けた連中だ」

「そうなんだぁ〜、じゃあネリー達は戦わなくていいね♪」

「まぁ、この程度ならニム一人でも楽勝だけどね」

「で・・でもぉ・・魔法痛そう・・」

「まっ、いいってことよ。流れ弾に当たらないようにだけしてろ。」

・・そこまでこいつらも間抜けじゃないだろうがね

っということで数歩前に出て軽く腕を鳴らす・・

朝に訓練をしているだけにいつでも戦闘可能だ、そういう効果もあるから昔強要されていたのかもしれないな・・

「・・やはり、貴方一人で向ってきますか・・ただ・・」

「わ〜ってるって。そちらは三人で来ても問題ないぜ。」

「やはり・・嫌な男!」

ははは〜・・どうやら僕はスピリットには不人気らしい。

まっ、俺の魅力を解するには諸君にはまだまだ早いわけ・・・さ。


ははははははは・・・・・ぐす・・

「お姉ちゃん・・この人と・・戦いたくない・・」

おやっ?ティートの奴は乗り気じゃないらしい、何やらおずおずしている

「ダメよ、敵は倒さないと・・私達にはそうすることしかできないの」

「でも・・」

「それに・・昨日敗走した分、私達にももう後がないの・・」

「安心しなさい。ティートの心が痛まないように・・苦しまずに倒してみせるわ」

仲がよろしいことで・・

「投降しろよ、好きで帝国にいるわけでもないだろう?」

「・・・・、我らはサーギオス上級兵部隊・・そのような勧告など受けません」

「だが、心の中では迷っている・・違うか?」

「・・・・」
ピクッと一瞬エスメラルダの顔が反応する、ビンゴかな?

「まっ、俺を信じられないのも頷ける。ラキオス側にも信じてもらえなかったからな♪」


「・・じ・・自慢することじゃないと思うんですが〜・・」

「いいんじゃない?あそこまで嫌われているのに笑顔でいるんだから」

「コウインが言うには〜、『顔で笑って心で泣いている』ってやつね!」

「すごい・・ネリー・・く〜るだね♪」

「へへん!ネリーは知的なくーるだからね♪」


・・・大正解だけど・・そんなのクールじゃないやい・・・・

「お兄ちゃん・・大丈夫?」

「男ってのは・・色々大変なんだよ、ティート・・」

「そう・・なの?」
「だから、あの男としゃべっちゃだめ!いくわよ!クロムウェル!」

「・・おうよ、こいや!てめぇらの憂いを振り払って第二の人生歩ませてやらぁ!!」

後ろの事は気にせずに戦闘開始、知り合った以上はこいつらにもきっちりケリをつけないとな

「我らを見くびらない事です・・クロムウェル」

「見くびってないさ、お前らも昨日の俺とは思わないことだな!」

そう言うと真っ先にエスメラルダに向って突っ込む!

「勝負だ!」

「望むところです!」

先ずは先手!

俺の拳がエスメラルダの腹に向けて放つがそれよりも早くエスメラルダは真上に飛びダブルセイバー型の神剣を振るう

風を薙ぎ払う素早い一撃で反撃するがそれに当たってやるわけにはいかない!

体をしゃがんでそれを回避し連撃を放とうとするエスメラルダの脇腹目掛け拳を突き出す!

咄嗟にそれを回避しようとしたエスメラルダ、だがうまく体を捻り逃れようとしたがそれよりも早く俺の拳が到達する

だが・・浅いか!

「くっ・・ですが・・まだです!!」

やはりな!うずくまらずにそのまま反撃してくる!

だが多少なりと堪えているはずだ!

ここで確実に気絶させてもらおう!

「甘いぜ!エスメラルダ!」

風圧を受けながらエスメラルダの反撃の一撃を紙一重で回避する!危険だがこうしたほうがすかさず反撃できる!

「くっ!」

ダブルセイバーなんてでかい得物な分接近させた状態で隙を見せれば防ぐ術はない

ここで一気に!!

「やらせないわよ!!」

ヴェロニカ・・!?
それに割って入るように放たれる赤光の槍・・フレイムレーザーか!

ちっ!こいつもそれなりに魔法を使うようだな!

おまけにエスメラルダを巻き込みかねない位置に放ちやがって!

「こなくそ!身内に当てる気か!?」

っても、エスメラルダの方はヴェロニカの行動がわかっているらしく俺よりも早く距離を空けたんだけど・・

「私の魔法はお姉さんには当たらないのよ!」

コンビネーションってのは厄介なもんだぜ・・ほんと・・。

ティートには警戒していたがこいつまで使うとはね

「助かったわ、ヴェロニカ」

「私が守るわよ・・姉さん。」

エスメラルダの前に構えるヴェロニカ、その後ろにはティートがいる

本命はティートが放つ強力な上位神剣魔法、

だがそこに辿り着かせないようにヴェロニカが楯となりエスメラルダがその隙を埋める剣になる

防御的な陣形だがやりにくいんだよな・・

「ったく・・息があったパートナーがいるってのは幸せなもんだな?」

「無理しなくてもいいわ。後ろで見学しているスピリットと一緒に戦ったらどう?」

それなりに情けをかけるだけの度量があるみたいだな、エスメラルダさん

でも・・

「え〜!面倒〜!!」

・・ニムントールはん、ほんまに殺生やわぁ・・

「・・ああ言ってます・・」

「あんた、部下に恵まれないみたいね」

「ほっとけ、それにお前達とは俺だけで戦う。昨日と同じようにな」

「・・わかりました。手加減はしません・・・ティート!」

「は・・はい!」

ハイロゥを展開して勝負に出る気だな・・

「・・あれはまずいですよぉ、クロムウェルさぁん!」

「クロムウェル〜!魔法をバニッシュしたほうがいい〜!?」

「いい〜?」

ニムントール以外は・・皆優しいね・・

こいつらを危険な目に合わすわけにはいかないな・・

「手出し無用さ!よく見ておきな!」

「強がりを・・黒焦げになって後悔しなさい!!」

守り固めてよく言うぜ、ヴェロニカさんよぉ!

「上等だ!いくぜぇ!!」

最小限に抑えながら・・ヴァイタルチャリオッツ!

カッと体が熱くなると同時に体を淡い光が覆う、いつも使う全力のチャリオッツとは違い

最小限の身体能力の増強を行うだけだ。

流石にここでバテたら情けないからな・・

「こ・・これは・・オーラフォトン!?神剣を持っていないのに何故!?」

ん・・?ヴェロニカがあからさまに驚いている・・

オーラフォトンって・・確か強力な神剣の力を使う時に現れる光・・だったか。

まぁ確かに発光はしているが・・

「・・そんな・・シュン様以外に使える者がいるなんて・・・!?」

エスメラルダも動揺してら・・まぁいい!

この勘違いは返って好都合だ!

「あっはっは!オーラフォトンの力にひれ伏すがいい!いくぜ!」

「くっ・・早い!!」

まぁオーラフォトンじゃないけど踏み込み速度が上がることには変わりがないからな!

「ヴェロニカ!気をつけて!」

「任せて!私の防御がそう崩れることはないわ!」

っ、ところがどっこい!

殴りかかるフリをして防御姿勢を取ったヴェロニカの神剣に蹴りをかます!

だけどこいつは攻撃じゃない!

「お前の相手は後回しだ!」

「わ・・私を踏み台にした!?」

その通り〜♪神剣を踏み台にしてヴェロニカを飛び越える・・狙いはエスメラルダだ!

「最初から厄介なお前が目当てだ!エスメラルダ!」

「ヴェロニカを振り切るとは・・こうなったら!」

覚悟を決めて俺に突進するエスメラルダ、覚悟は最初からできているか・・!

上等!

「神剣の力を借りて!今!必殺の!!オーラフォトンナッコォ!!!」

嘘♪

だが威力は一級だ!骨の1本2本は軽いぜ!?

「はぁぁぁあああああああ!!!」

対し真っ向から突っ込んでくるエスメラルダも渾身の力で対抗するつもりだ

両手持ちのダブルセイバーを構え大振りの一撃を放つ気だろう!

「でぇい!」「はぁぁい!!」

渾身の一撃を放つエスメラルダ、だがそれは宙を空しく切り

俺の拳が深々とエスメラルダの腹に入った!

「な・・んて・・いりょ・・く・・」

体を震わせながら力なく倒れるエスメラルダ、まっ・・ある程度加減しているから死にはしない

「姉さん!」

「お・・お姉ちゃん!!炎よ!燃え盛る業火となりて敵を焼き払え!アークフレア!!!」

何!?いきなりティートが神剣魔法を発動させやがった!

「ティート!?それはダメよ!!」

ちっ!取り乱してエスメラルダがいるのにあんな広範囲なのを!!

「ネリー!シアー!こいつを受け取れ!!」

避けていたらエスメラルダを巻き添えにしてしまう・・こうなりゃこいつだけでも投げ渡さないと!!

「えっ!クロムウェル!?」

「あ・・危ないよぉ!?」

呆然としている二人だが宙を舞うエスメラルダを二人がかりで受け止める!

「クロムウェルさん!逃げてください!」

叫ぶヘリオンだが・・それよりも早く天から光が降り注ぎ・・

瞬間目の前が赤一色になり衝撃が体を通りぬける!

生身だと死ねるぞこんちくしょう!

「や・・やった・・の・・!?」

呆然とするヴェロニカさん・・だがなぁ!!

「あぢぢぢ!!!熱いな!バカヤロー!」

炎の中から特攻をかける!・・普通なら黒焦げだが微量ながらチャリオッツ中だ・・

数秒ならば何とかなる!

「え・・アークフレアを!?」

へっ、流石に防御する余裕はないみたいだな!!

「オーラフォトンちゃぶ台返し!!」

身を低くし勢いをつけた状態でヴェロニカに突っ込む!

・・ってか、普通のかち上げ式のタックルです

「く・・キャアアアア・・!!」

まともにぶつかり防御姿勢を取れきれていなかったヴェロニカはそのまま吹き飛ばされて地面を転がりながら気絶した

防御を固めなければちょろいもんさ

「ふぅ・・なんとかなった。助かったぜ?ネリー、シアー」

「クロムウェル、強引だよぉ!」

「・・だよぉ!」

怒りながらも気絶しているエスメラルダの介抱している二人。

緊急手段だ、悪く思うな・・

「ははは・・まぁ許してくれよ」

「で・・ですが・・アークフレアに耐えるなんて・・すごいです・・」

「っというか・・オーラフォトンってユートが使う技でしょ?全然違うじゃない」

・・ノリだ、ニムントール・・

「ほっとけ、俺の気分なんだよ。流石に肝は冷えたけどな・・、ティート!」

・・振り向いた先には呆然としているティートの姿が・・

「わ・・私・・おねえちゃんを・・」

「・・気が動転していただけだ。無事だったんだから気にするな」

「・・お・・お兄ちゃん・・」

体を震わせ俺のほうを見るティート、戦意はすでにないな・・

「強力な神剣魔法を使えるがそれを伴う心の強さがない。

わかるだろ・・?お前に戦闘は似合わない」

「で・・も・・戦わないと・・お姉ちゃんたちが・・ひどい目に・・」

「安心しろ」

「えっ?」

「エスメラルダ達はたった今からラキオスの捕虜だ。

戦争終了時とともにそれも解放されて戦いとは無縁の生活を送れるはずさ」

「・・・」

「もう戦わなくていいんだ。大人しく投降しろ」

「ほんと・・?」

「前にも言っただろ?それに俺がお前達を殺すとなればさっきのアークフレアだってエスメラルダを楯にして切り抜けるさ

・・ほらっ、こっちこい」

「・・うん・・」

神剣を下ろし静かに俺の方に近寄るティート、理解してもらえるのは初めてだ

・・何気に感動するな・・

「ここで待っていたならラキオスの別働隊が気絶したスピリット達の保護に来るだろう。

レスティーナ女王が選抜したスピリット達に理解を示している連中だ。そいつらの指示に従えば良い」

「・・ほんと・・なの?」

「ああっ、ほんとだ。妙なことされたら俺に言え・・頭蓋骨粉々にしてやるよ♪」

「・・お兄ちゃん・・」

少し微笑むティート、落ち着いたみたいだな・・

「よし、じゃあティート・・俺達は進軍しなけりゃなんねぇから・・ここで二人の介抱をしてやってくれよ

それと、ちゃんと間違ってアークフレア放った事はエスメラルダに謝っておくように」

「・・うん・・許してもらえる・・かな?」

「仲がいいんだろ?許してもらえるさ・・」

そう言いながらティートの頭を軽く撫でてやる、

こんな子供が戦争しているんだから・・やっぱ間違った世界なんだな

「ありがとう・・」

嬉しそうに笑うティート、気絶しているエスメラルダの元まで連れていってやる

ヘリオン達も特に警戒しないのが何だか嬉しかった

「クロムウェルさん、優しいんですね」

「そうか?まっ・・確かにニムントールが言うように面倒だがこうやらないと後味が悪いからな」

我ながら・・面倒な事に執着しているもんだぜ、本来ならばもう還っているんだし・・

「ねぇ、クロムウェル、後味って何?」

「・・まっ、後で良い気がしないことだ。お前らそんなの気にしないのか?」

「う〜ん・・ネリーはよくわからんない!」

「・・シアーも・・」

・・そこまで気にするタマじゃないか・・

「ニムもわかんないけど・・やっぱり面倒かな?」

「お前は何やっても面倒だろうが・・、むっ・・!?」

何かが空を切る音?・・それもかなり早い!?

「ティート!どけ!」

「えっ・・きゃ・・!」

咄嗟にティートの前に出る、その瞬間目の前には刀が飛んできた!

「けっ!姑息な手だ!」

鋭く飛来する刀が俺には脅威にもならず切っ先を叩いて地面に突き刺した・・

「・・・ちっ・・仕留めそこなったか・・」

見ればシアーに似たおかっぱ頭の黒スピリットが一人、何時の間にかそこに立っていた・・。

大方気配を消して様子を見ていたんだろうが、狙ったのは明らかにティートだ・・

「お・・お兄ちゃん・・」

ガタガタ震えながら俺の足にしがみつくティート・・察するに相当嫌われている奴みたいだな・・

ドギツイ殺気が滲み出てら。

「おい・・ティートを狙ったな・・。仲間じゃないのか?」

「仲間・・?下らん事を言う人間だ。倒すべき敵と戦わず捕虜になるようなクズは帝国には不要だ・・」

「・・だから、殺す・・か」

「当然だ。価値ある死をくれてやろうと思ったのだが・・」

・・・・

「ティート、下がっていろ。それにヘリオン達も・・手助けいらねぇぜ・・」

「でもぉ・・相手はオールラウンダーじゃないの?」

「そう・・だよね・・?」

「そうですよ〜!私達が全力で立ち向かっても勝てるかどうか・・」

オールラウンダー・・まぁ攻撃、防御、支援を全てこなす万能戦士って感じか

それだけの実力を合わせ持っているのだろうが、それを言うなら俺は万年オールラウンダーだっての

「この程度の馬鹿に交替するほど息が上がっちゃいねぇよ。ティート達の保護を頼む」

「じゃあ・・やっぱり一人でやるの?ニムはその方が楽でいいけど・・」

「・・こいつは俺が殺る・・、手出しはさせねぇ・・」

「うぬぼれたものだな・・いいだろう・・、帝国スピリットの実力・・見せてやる」

「そんなつまらんもん見せる必要もねぇな。てめぇはやりすぎた・・地獄で後悔しな」

一応はフェアであるために地面に突き刺さったヤツの神剣を投げ渡す

「ほぉ・・、余裕だな。だが・・甘くみないことだ・・

貴様を殺してラキオスの鼠どもを始末した後・・裏切り者のティートを処刑する」

そう言うとドス黒いハイロゥを展開するクソ黒スピリット、凄まじい殺気だ

だが・・それだけだ

「良くしゃべるスピリットだな・・。遺言はそれでいいのか?」

「・・ふん・・月輪の太刀!」

ハイロゥを羽ばたかせ突っ込むクソ黒、オウカやウルカに比べたらスローモーションだぜ・・

「くだらねぇ・・」

「・・何!?」

抜刀して俺に切りかかるその前に殴り飛ばす。こっちは手加減なし

「ぐ・・貴様・・」

自慢の攻撃を見事に跳ね除けられて驚いているクソ黒・・、慢心しすぎだ、三下が・・

「どうした?余裕見せて遊んでいるのか?

・・まぁ・・まさかあれで攻撃って言うんじゃないだろうな?」

「・・チッ!マナよ、黒き衝撃となれ。 彼の者に混沌と破壊の衝撃を!カオスインパクト!」

・・っ、攻撃系の神剣魔法か・・

ヤツの体から黒い衝撃波が放たれる。

・・ふん・・

「サンダーショット」

放つ雷撃に触れるや否や黒い衝撃波は乾いた音とともに綺麗に相殺され消滅する・・

「・・な・・んだと・・?」

「気の抜けた攻撃だな?やる気あんのか・・・?あぁ?」

「ぐ・・ならば!星火燎原の太刀!!」

・・見ない構えだ、だが・・所詮は下らん技だろうな

「もういい、てめぇは消えろ」

コォォォォ・・

「この一撃で確実に仕留める!終わりだ!」

ほざいてろ・・!

「身の程を知れ!!!雑魚が!!!スフィアストライク!!!」

抜刀して切りかかるクソ黒だが、それより早く俺が拳から白い閃光球が放たれる

陽気を練って作り出す超高温の光だ。触れただけでも消滅する・・

「何だ!?これは・・!?うわ・・!!!!!」

白い光に触れた瞬間、クソ黒スピリットは一瞬何か叫んだがその刹那に消滅した。

体が蒸発したのか霧に還ったのか・・、下らない馬鹿の最後だ

「・・ふん、仲間殺そうとするような奴に相応しい最後だな」

「・・クロムウェル、強い〜」

「強いね〜」

「で・・ですが、何をやったかわかりませんが少しやりすぎでは・・」

「ヘリオン、俺はああいう味方を殺そうとする奴は許さないんだよ」

「じゃあ、この赤スピリットはどうなの?」

「ひっ・・」

ニムントールの一言にティートが俺を怯えた目で見出す・・

「・・故意じゃねぇだろ・・?

あのクソ黒スピリットみたいなのがむかつくだけさ」

「そうなの・・?」

「ああっ、別にティートはエスメラルダに殺意があるわけじゃないだろう?」

「そんなのない!」

「ならそれでいいよ。ん〜・・他に伏兵はいないようだな・・。これでここらは一安心かな」

もう少し兵がいてもおかしくないんだが・・、本隊のほうが暴れているからか・・?

「でもクロムウェル、何やったの?白く光ったの・・オーラフォトンじゃないよね?」

「ん・・?興味あるか?ニムントゥーール君?」

「・・変な名前で言うな・・」

「でも!ネリーも気になるぅ!」

「・・シアーもぉ!」

「私も・・気になりますぅ」

・・まぁ、こっちの人間には全くわからん術だろうからな〜・・

「オーラフォトンもどきなのは・・何と言えばいいんだろうかね、体に纏った太陽の力だ」

「「「「???」」」」

やっぱわからんか

「え〜っとな、日光を浴びていたらその力ってのは知らない間に体に蓄積されているんだ。

元々日光ってのは人間が生きていく中で大切な役割を持っている。

俺が使った術はその日光によって体に宿った力を引き出してそれを練って

一時的に爆発的な効果を得るようにしているんだよ」

「よくわかんないけど〜、ようはすごいこと?」

「そうでもないさ。神剣魔法に比べたら体にかかる負担ってのはたぶんすごいんじゃないかい?

さっきの体に白い光纏ったヤツも本気で発動させたら後はしばらく起き上がられないぐらい衰弱しちまうしな」

「なんだが・・クロムウェルさんらしい術です・・ねぇ・・」

「まぁ・・な。話はここまでだ・・そろそろ進まないと本隊が先にリレルラエルに到着してしまうからな」

そうなったらアンジェリカやキョウコ達に何言われるやら・・

「そうだね、さっさと行かないといけないね」

「で・・でも、クロムウェルさん。術を使用して体は大丈夫なんですか?」

「安心しな、あの程度ならまだまだ戦えるぜ?お前達の出番、ないかもな♪」

「それならそれでニムは楽できていいけどね、・・早くお姉ちゃんと会いたいし」

・・もしかして姉妹以上の関係ですかい?ニムントールさんよぉ?

「・・そんじゃ行くぞ〜。

ティート、エスメラルダ達をしっかり守っておけよ?森に少し入っていたら大丈夫だろう」

「うん、お兄ちゃん・・ありがとう」

神剣をしっかりと握りながらエスメラルダの傍を離れようとしないティート。

健気だな・・
「いいってことよ、まぁ起き上がったらヴェロニカにゃよく説明しておいてくれ・・俺に襲い掛かられては厄介だしな」

「・・うん♪」

「そんじゃ〜、ティートだっけ?またね〜!」

「ね〜!」

「ティートさん、がんばってください!」

「・・面倒だけど・・まぁがんばって」

・・へっ、こいつらも別に帝国のスピリットってだけで殺意を持つわけでもないか

それでいい、そうじゃなきゃ良い世界なんてできないだろう

よし、この調子で帝国をぶっ潰してやるか!!


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