第十七話  「倒れる壁 震える街」



エスメラルダ達と様子見していた黒スピリットを撃破した後

余り兵は配備されていないのかもう法皇の壁は目前に迫っていた

どうやら本隊の方に集中しているみたいだな

まぁこっちとは違い向こうは戦力が充実しているんだ、ガチンコでも引けはとらないだろうが・・

それだとこっちは張り合いがないんだよなぁ・・

「敵・・いないねぇ・・」

「その方が楽ちんでいいじゃん。ニムはこのまま何もしなくて街まで行けたらいいのになぁ〜」

ほんと・・、ニムントールは面倒くさがりやですな

「お前・・良い嫁になんねぇぞ?」

「むぅ・・、ニムはお姉ちゃんと一緒だったらいいの!」

・・・どういう教育してんのやら・・だな

「そ・・それよりも!ユート様達は大丈夫なんでしょうかね!?」

「そういやそうだね、こっちに敵が少ないと向こうが多いのかな?」

「そうだな〜・・じゃあ連絡取ってみるよ」

定期的に交信しておく事が大切だからな。こっちも色々とあったからここらで連絡しておいたほうがいいだろう

”アンジェリカ、聞こえるか?”

”・・ええっ、聞こえるわ”

”こっちは昨日遭遇した赤スピリット三人を倒した。そっちの様子はどうだ?”



「ね〜ね〜、クロムウェル〜、何黙りこんでいるの?連絡するんじゃないの?」



・・ぬっ・・

”こっちも順調よ。流石に迎え撃つ敵の数は多いけど大方眠ってもらったわ。神剣に飲み込まれているのとかは

スピリット隊をお任せしているんだけど・・ね”

対多数戦に優れているアンジェリカさんだけに救おうとするスピリットだけ気絶させようとしているんだろうな

”じゃあ法皇の壁まで辿り着いたのか?俺達はもう目前なんだけど・・”

”こっちももう目前よ、もう少し抵抗はありそうだけど・・ね”

「ね〜!どうしたの〜!?クロムウェル〜?」

「気分が・・悪いの・・?」

・・・

”わ・・わかった、じゃあ俺達はどうすればいい?”

”これから・・・”


「ね〜ってばぁ!!」



ええい!

「今通信中だっての!」

「え・・そうなの?黙ったまんまなのに?」

「・・そういうもんなんだよ、少し静かにしておいてくれるかな?」

「「は〜い!」」

ネリシアも素直なところはいい、ニムントールも見習って欲しいもんだ

”あ〜、すまない。もう一度頼むよ”

”わかったわ。今敵スピリットの排除が終わったわ・・壁から極力離れておいて・・”

”離れておく・・っておい・・!?”

”集中できないからこれで終わるわね、後は貴方にお任せ・・”

なんか・・嫌な予感が・・

「・・皆、少し下がるぞ・・」

「えっ、どうして?何かあるの?」

「・・あるのぉ?」

「よくわからんが・・アンジェリカの事だ・・何かよからぬ事を企んでいるに違いない」

「企んでいるって・・、まぁアンジェリカはどこか危険な感じがするけどね・・」

よくわかっていらっしゃる。

まぁこいつらが思っているよりも遥かにアンジェリカは『黒い』
てめぇの血の色は何色だぁ!ってぐらいだ・・

”赤よ”

・・・

”・・・・なぁ、遠距離からも人の心を覗き見できるのか?”

”細かい事を気にするのは、貴方らしくないじゃないの?”

いやっ、細かいことじゃないと思う・・

”ともかく、これから発動するわよ・・スピリット達をよろしくね”

まったく・・、おちおち文句も言えねぇ・・

「何気に秘密主義なんだよな・・って・・おお・・」

あれは・・また・・・すごい規模の竜巻を・・

「ねぇねぇ!クロムウェル!向こうに何かでっかい搭みたいのが現れたよ!あれって何!?」

「ほんとだ・・なんだか・・生きているみたい・・」

・・この世界にゃ竜巻はないのかな。まぁ俺もそこまで気候が特殊な地域は行ったことないしな

「あれは・・風だ」

「あれが・・ですか!?何やら唸ってますよぉ!?」

まぁ・・、アンジェリカさんが操るならば生き物と変わりはないだろうな

「莫大な力が渦となって風をあんな搭みたいな姿を作ったんだ。自然じゃ発生しないレベルのものだな・・」

「あ・・あんなの巻き込まれたら・・どうなるの?」

流石にニムントールもビビッてら・・、まぁ・・初めてみるにしては禍々しいからな
土を巻き上げて黒くなっている竜巻・・バケモノとして見た方がそれらしい


「街一つ飲み込んで全てを破壊するだけの威力はある・・あれは法皇の壁にぶつける気だろう・・」

「あれをですか!?本気で・・潰す気なんですね・・」

「ああ見えてアンジェリカは執念深いからなぁ・・全く、これを建てた人間も馬鹿な事をしたもんだぜ
・・おっと・・ぶつかるぞ」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・!!




法皇の壁を飲み込んでいく巨大な竜巻、異変はすぐに現れた・・。

まるで侵食されていくかのように破片が剥がされ吹き飛ばされていく。

「まるで・・壁を食べているみたい・・」

ポツリとシアーが呟く、まったくその通りの状況だが・・このままで崩壊するほどやわな物でもなさそうだ・・

んっ?

竜巻が発生した時点から何かが猛烈な速度で飛来する・・

あれは・・『狂風』だ。
見えない風の凶器に『疾空』の白い弾丸が纏っていら・・

さしずめ『狂疾空』?

無数に放たれるそれは等間隔に法皇の壁の根元に突き刺さり抉っていく・・

それもかなりの広範囲・・
俺達のいる地点にもそれは飛来してきて壁の根元をがりがり抉っている

狂風は目に見えないが疾空は白いのでその動きがわかる、
どうやら狂風の周りを螺旋描きながら回っているらしくドリルの役割を果たしているんだろう

「・・あんなの生身の人間が食らったらえげつないことになるだろうな・・」

「・・そ・・そうですね、あの巨大な石壁をものともせずに抉ってますし・・」

尚も放たれる狂疾空(仮)
竜巻付近に重点的に打ち込まれているようで門がある付近はもはや原型を止めず徐々に傾き出している
竜巻の超エネルギーに常に晒されているんだ。
石の壁なんぞどうしようもないか・・


そして法皇の壁はその名に似つかわしくなく風によって崩壊していった。

一箇所がなぎ倒されたら後はその連鎖・・風の力も手伝って壁は連鎖して崩壊していく・・

破片が俺のところまで降り注いできやがった

っというか・・竜巻がこっちに向っている!?

「まず・・おい!お前ら!森の付近まで後退するぞ!」

「そ・・そうだね!なんだか危なさそう!」

「アンジェリカ、乱暴〜!」

丸々壁を食らっていく竜巻を余所に俺達は必死に後退した・・

いやっ、だいぶは慣れているのに普通にレンガが飛んでいるんだからこれ以上接近されたらそれこそレンガの豪雨になりそうだからな



・・・・・・・
・・・・・・・



・・しばらく人が創り出した自然の驚異を見学した後・・


アンジェリカが放った竜巻は門がある付近から法皇の壁に沿って南下していき、
俺達がいる付近を通過した辺りから勢力を弱め消滅していった

通り去った後はもう見るも無残、原型を止めている箇所はほとんどないし根元にダメージを受けた箇所はほとんど崩れ去っている

・・やりすぎだと思うのは俺だけか・・?

「・・あんなのに巻き込まれたら・・街だって崩壊するね・・」

「・・だろう?ニムントール・・」

「恐ろしいですね・・アンジェリカさん・・」

ヘリオンも萎縮してら・・、まぁ目の前の光景みたらね・・。
岩やらレンガやらが散乱しており足場が瞬時で悪くなった感じだ。

まぁ壁から相当離れたのに結局『雨』は降って来たわけだし・・・


”こんなものね、さっ・・リレルラエルに向うわよ・・”

”・・ってか、やりすぎじゃねぇの?”

”今放てる魔力の全てを込めたからね・・しばらくは通信もできなさそう。
でも・・相手の威嚇にはなったでしょう?”

あんなのぶっ放したら誰だって怖がるわい

”そんじゃ・・魔力が回復したらまた通信してくれ・・俺達はとりあえずは突っ込むよ”

”道は作ったわ・・後はがんばってね”

悪戯っぽく笑う声が俺の頭に響く・・無邪気というかなんというか・・

「うし、侵攻するぞ」

「崩れた壁を乗り越えていくんだね!?」

「ああっ、その通りだ。あんなもん見せられたら帝国のスピリットと言えども混乱しているはずだ・・
一気にリレルラエルまで行くぞ」

「了解です!アンジェリカさんのがんばりに負けないように私達もがんばりましょう!」

「・・どうがんばっても勝てない気がするんだけど・・」

「・・き・・気分ですよ、ニムさん〜」

水差すの好きだな・・ニムさん・・

「まっ、気合だ、気合。行くぜ!!」

とりあえず意志があるスピリットにとっちゃ動揺を誘う現象だ。
だからこれから待ち受けているのは・・たぶん神剣に心を奪われた人形達だろうな・・

奇麗事もそろそろ終わり・・かな・・

・・・・・・・・

法皇の壁を突破して本格的に帝国領へと進む俺とスピリット年少組。

壁より先は平野が広がっておりリレルラエルはもう目前となった

だがエーテル変換施設暴走の真偽はどうであれリレルラエルは帝国にとって重要な拠点の一つ

さらにアンジェリカさんの派手なデモンストレーションにより増援も考えられる

まぁ、その前に・・



「「「・・・・・・」」」



当然の事ながらそう簡単に進ませてくれない、目の光が篭っていない緑スピリットに青スピリット二人が行く手を阻む

神剣に心を奪われているのが一目でわかる

編成的にゃ赤スピリットがいない分強烈な一撃がないがその分バランスが取れている。
・・可もなく不可もなくってやつかな・・

「時間が惜しいな、一気に畳み掛けるぞ!」

「よし!張り切っちゃうよ〜!」

「ま・・参ります!」

前衛のネリーとヘリオンを引き連れて速攻をかける!

こっちからの攻撃が早いために敵さん防御姿勢を取った・・、

ここに神剣魔法なんぞ「かます」といいんだろうが〜・・

攻撃系の神剣魔法を使う奴がいないためにシアーとニムントールは見学と相成った


・・ニム・・仕事せぇや・・


「先手必勝!頂く!」

先ずは俺が攻撃・・それで相手を揺さぶる

感情を持たずに淡々と行動を行うこいつらに取っては効率的に動くはずだ

となると先手で相手の注意を集めればネリーとヘリオンの危険は低くなる・・

預かった子供はちゃんと保護者に返さなければな

そんなわけでタフそうな緑スピリットに向けてライトニングブレイカー!!

「・・!!」

シールドハイロゥと防御スキル・・アキュレイトブロックだったか?

碧色の粒子が集まる強固な防御壁ごと拳をぶつけそのままよろめかす・・

それだけで終わるならば相手の勝ちだがこれは初手・・俺もそれなりにスピリットとの戦闘を経験している

初手で仕留められるほど緑スピリットの防御能力は甘くない


だから・・♪


「オォォォォラフォトォォォォォン!!!ギロチン!!!」

「また言っている・・」

なんちゃってオーラフォトンってのも中々癖になるね・・

まぁこいつらには動揺をさそうネタにもならないし気功使ってないから関係ないんだがね・・

それはともかく、ライトニングブレイカーでよろめく緑スピリットに対しさらに踏み込みつつ首を狙った回転袈裟蹴り!

勢いをつけて首の根元を深く抉る!

それだけで致命傷だ・・、無表情の姿のまま緑スピリットは吹き飛ばされながら黄金の霧へと還る

「「!?」」

防御を崩されたからとはいえ一撃で仲間が葬られた姿に一瞬他の青スピリットの注意が俺に向けられる

・・今だ!!



「この距離はネリーの間合い!くらえぇぇぇ!!」



「剣よ!応えて!一気で断ち切って見せます!」

タイミングよくネリーとヘリオンが隙を見せる青スピリット達に攻撃を放つ!

青スピリットは防御力が低い、しかも気を取られた瞬間だ・・

二人が放った一撃は見事急所に入りそのまま消滅させた

返り血が消滅する光景はどこか幻想的だな・・・、まぁ・・見惚れるほど良い光景でもないが・・

「良いタイミングだ、言う事ないぜ?」

「クロムウェルさんが注意を集めてくれましたから、うまく行きました」

「って言うか〜、緑スピリットをあんなすぐに倒せるなんてクロムウェルすごいね?」

ふっ、ようやく俺の実力がわかってきたか・・

「急所狙いだからな。お前らが剣一本に対して俺は相手の急所を狙う武器ってのが4つはあるんだ」

両手両足ね、まぁそれ以上に相手の急所ってのを把握しているからな

スピリットとは言え構造が人と同じならば自ずと弱いポイントは決まってくる

「ふぅん・・すごいね。ネリーはよくわかんない♪」

「私も・・、セリアさんに首元を狙えとはよく言われますけど・・」

「妥当なとこだな。他にも色々あるが講習はなしだ・・そんな知識、直にいらなくなる
このままの勢いで行くぞ!先頭は俺達で行く、シアーは敵が神剣魔法使いそうならバニッシュ、
ニムントウルは支援スキルが使えたら援護してくれや」

「うん・・わかった・・」

「だから・・変な呼び名を言うな・・」

ふふふ・・、ニムって呼ばせる許可が出るまで俺は食い下がる・・

ともあれ・・一気に行くか!



・・・・・・・・・
・・・・・・・・・



流石に法皇の壁が竜巻で崩壊だけに警戒ってのはそれが起こった地点に向けられているのだろう

多少回復したアンジェリカとの通信によればやはり大多数のスピリットが向こうの行く手を拒んでいたようだ

まぁ向こうはスピリット達よりも力があるエトランジェが3人

加えて激戦を勝ち残ってきたラキオスの精鋭が揃っているんだ

並の迎撃は寄せ付けねぇだろう

そんなわけで俺達は少数待ち構えているスピリットを撃破しつつリレルラエルまで辿り着いた



「なんだ・・この街は・・」



街の様子を見て唖然とした・・、戦争により厳戒態勢なのかもしれないが・・まるでゴーストタウンみたいだ

活気の残り香すらない閑散とした空気・・住民はどこかに避難しているみたいだがそれ以上の異常な気配を感じる

「人いないねぇ・・」

「避難しているのではないでしょうか?」

「それだけじゃない・・な。この通りも見てみろ・・荒れ放題だろ?
人が普通に生活をしてできるもんじゃねぇ」

街の入り口より真っ直ぐ伸びる表通り・・だが、レンガ造りのそれはガタガタ・・

周辺の店はだいぶ前から営業していないんじゃないかってぐらい寂れている・・、
木が腐りかかっている店すらあるものな

これが、帝国か・・

「嫌なところだな・・、だが・・占拠されないために防衛しているスピリットがいるはずだが・・」

「神剣の気配は街のあちこちから感じるよ?面倒くさそう〜」

「ニムゥ、ここから大変なんだからちゃんとやろうよ!それに・・・何か変な感じがするし・・」

ん・・?

ネリーが何やら不安そうな表情をする・・他の3人も同じだ

「確かに〜・・何か・・変ですよね?」

「うん・・、何だか落ち着かない・・」

「ヘリオンとシアーもか・・ニムントール、お前は何か感じるか?」

「ニムも何だか変かな・・、重い感じがする・・まるで神剣がここから離れろって言っているみたい・・」

・・神剣が何かを感じ取ってこいつらに警告を流しているのか?

「さっさと済ませたほうがよさそうだな。いよいよきな臭く感じ・・っ!?」



ゴゴゴゴゴ・・!!



何だ・・?地震・・!?

数秒縦揺れの衝撃が伝ったがピタリと止まった

普通の地震にしちゃ不自然過ぎる・・

「ねぇ・・ネリー・・なんか怖いよ・・」

「・・だ・・大丈夫大丈夫、ユート様がくるまでにちゃっちゃと占領しちゃおう?」

・・空元気なネリーなんて初めて見たぜ・・

「・・今の地震がエーテル変換施設の暴走に関係していたらまずいことには違いない・・

俺は変換施設に向う、お前達は街にいる敵スピリットの排除を頼む・・敵わないようならそのまま街の外へと逃げろ・・いいな」

「で・・でも、お一人で大丈夫ですか?」

「心配するな、それにこのまま固まって施設に向っても街にいるスピリットが背後から襲ってくるだろう?
分担したほうが効率がいい・・万が一マナ消失が起こってもお前達が巻き込まれる可能性は下がるわけだしな」

「クロムウェル・・」

「そんなの・・ダメ・・」

「ば〜か、万が一だ。俺がしくじるわけないだろう!?なぁ、二ムン?」

「・・寧ろ・・ニムはしくじって欲しい・・」

「ニムさ〜ん・・」

いつでも怒るニムントールのおかげで少しはこいつらの表情も和んだ

「ってか寧ろお前達のほうが心配だよ、拠点を守るスピリットってのはそれなりの実力があるんだろう?
敵わないと直感したら迷わず逃げろよ?」

「わかりました・・ですけどクロムウェルさんもがんばっているんです。私達もできる限りの事はします!」

「そうそう!ネリー達が力を合わせたら敵なんていないよ!」

「・・がんばる!」

「面倒だけど・・このままクロムウェルだけが活躍したら・・むかつくしね」

・・へっ、中々良い気迫じゃねぇか・・

「じゃあ、任せるぞ!また後でな!!」

返事を待たずに一気に街を駆け出す・・、オウカ達がいるとなれば変換施設には気配が多いはず・・
それを目指して決着をつけてやる!



・・・・・・


街中に人の気配はなし・・

これだけだと本当に避難してマナ消失をしでかすような気がしてきやがる

気配を探りつつもエーテル変換施設を探すのだが敵スピリットの気配はない

神剣を持っていたのならばもうちょい違うんだろうがこちとら生体反応だからなぁ

まぁ遭遇したならその場で叩き潰せばいいだけの話なんだけど・・

「エーテル変換施設ともなると一般人の立ち入りは制限される・・ともなると・・」

街のど真ん中にデ〜ンと建っているわけはない。

街隅の可能性が大きいな・・。

現に臭そうな建物も視界に入ってきている

それは表通りをそのままずっと進んだ先に見える神殿のような物。

なんだかあそこから嫌な気配が感じられる

たぶん・・あそこだろうな。

とりあえずは全力で突っ走るか・・、様子からして閉められた店から突然ガバッと敵さんが登場するとも思えないし

・・っというか、住民はほんと何処にいるんだよ・・?

ったく・・薄気味悪い国だな・・


んっ?

「いたぞ!止めろ!」

お客さんか・・わき道から出てくるは・・帝国の兵が数人。

それもスピリットじゃなくて人間

・・なんじゃい、拠点だからって安全なところでのうのうとしていたのか?

「うわああああ!」

問答無用に槍を構えて突っ込んでくる、意外にちゃんとしているな

・・スピリットの訓練士か何かなんだろうかな・・

「お呼びじゃねぇんだ!とっとと失せろ!!」

そちらも問答無用ならばこちらも同じ事・・

人に教えるのは得意だろうが実戦となれば話は別、

「ぎゃあ!」
「うげぇ・・!」
「ぐぼぉ・・」

とろい一撃なんぞ見切るまでもなくぶっ飛ばした。

いちいち構ってられないから・・手加減しなかったけどまぁいいや、死んだら向こうの鍛え不足が悪いということで・・

こんな連中の相手なんぞ足止めにもならねぇ

さっさと行かせて貰おう!



・・・


見回りにでている兵は他にはおらずそのまま神殿前に辿りつけた

一般兵も極わずかかと思いきや神殿内から気配が幾つか感じられる

大事な施設をスピリットに任さずにね・・、つくづく考えていることはわからん

その分ヘリオン達が心配だがそうも言っていられんか・・

ん・・入り口に緑スピリットが二人いる。

門番か、こりゃビンゴだな

「どいてろ!手加減しねぇぜぇ!!」

「「・・・」」

黒く澱んだ瞳のまま槍を構える・・戦闘する気はない。

ただ中に入らせないように守りに徹するつもりだ・・

だが・・こちとら街に入った時点から強行突破のつもりだ

そのためにさっきからライトニングブレイカーを発動しつつ手に集中している

チャージは十分だぜ!


「ペレトレイトショット!!!!」


貫通性を上げたサンダーショット!

・・っうか最初に放った雷撃と全く同じ軌道に連撃で放ち相手の防御を貫通させるって仕掛けだ!

防御に優れる緑スピリットだがこれをそう簡単に防げない・・

マナの壁を貫通しながら数発体に着弾し電撃が体を駆け回っている

なんだか最近緑の相手が多い気がするがそんなことおかまいなし!!

一気に階段を駆け上がりそのままタックルをかます!!



ドォン!!



スピリット2体を巻き込みつつ神殿入り口の扉を勢い良くぶち破る!!

凄まじい衝撃を緑スピリットに与えつつ二人を下敷きにして起き上がる

「けっ・・どんなもんだ・・!!って・・あら・・?」

扉の向こうに待ち構えるは帝国兵およそ・・20人

槍を構えて俺を取り囲んでいらっしゃる・・

「準備万端ってか?スピリットに門番やらせて大したもんだぜ」

その瞬間、20以上もの槍が一斉に俺に向けて突き出す!

そんなもん当たるわけもなく軽く跳躍、重なりあう槍を尻目に一人に踵落としを決める、

兜を被ろうが衝撃に変わりはない。

その一撃で相手は首が妙な方向に折れ曲がり倒れる!

そのまま着地し近くに落ちてあった緑色の槍を手に取った・・

スピリットの槍か・・!

ヘッポコ兵士に支給されるのよりかはマシだな!

「ライトニングブレイカー!!!ア〜ンド!!皆まとめて薙ぎ払い!」

雷を纏うのは拳だけじゃない!槍にもその効果は現れる!

帯電した槍を力任せに振る!

「うわぁぁぁ!!!」
「ぐえぇぇぇぇ!!!」
「ごはぁ・・!!」

武器なんか使い慣れていないが一度に攻撃して間抜けに槍が絡まった馬鹿達よりも早く攻撃が放てる

片っ端から腹を切り槍から迸る電撃が刃が届かない相手を切る・・

戦闘を碌にしていないに加えて群れなきゃ何もできない連中なんてこんなもんさ。

20人はいた兵士達は皮肉にも自分らが蔑んで来たスピリットの得物で絶命して逝った

「ふぅ・・、帝国のスピリットもそろそろ不足してきたのかぁ・・ったく」

それにしても・・ここに来て人間相手とは思わなかった。ヘリオン達より先行して正解だったな・・

だが・・神殿内ってのはひんやりしているもんなんだな・・・

四角い石に変な紋章が描かれた資材で構築されており今まで見た事がない造りだ

とりあえずは細い路地が奥まで一本道で繋がっている。

それほど複雑な構造でもないか・・

ん・・!?



ゴゴゴゴゴ・・・!!



地震・・、それもさっきよりも大きい・・

こりゃ急がないとまずいか!?

とにもかくにも突っ走るしかねぇ!!!



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