第十五話  「スピリット共同戦線」



”・・クロ・・”

ん・・?この声は・・タイム・・?

”クロ、どうしたの?”

・・俺・・どうしたんだ?・・・ああ、アンジェリカにハメられて凶暴化した女達に吹っ飛ばされたんだ・・

”クロ・・”

タイム・・、言っておくけど駆け落ちじゃないからな・・

”わかっている・・だから早く帰ってきて・・”

やることやったら帰るよ・・すぐに・・


「ん・・・あ・・、くぅ・・夢か・・」

何とか意識が覚醒した・・まったく、再び目が醒めるか心配したぜ・・

「だ・・大丈夫ですか?無理しないで・・」

目の前にはエスペリアが・・、どうやら介抱してくれていたらしい

「大丈夫さ・・、おっ・・?」

妙に体が軽い、アレだけの攻撃を食らっちゃしばらく起き上がるのは無理かと思ったんだが・・

全快している

体を起こしたらすでに日は沈んでおり焚き火が焚かれて夜営の準備が完了していた

ラキオスのスピリット隊はつかの間の談笑をしている

「神剣魔法による回復を施しました。一般の方には効果がないはずなのですが・・貴方には有効だったみたいです」

丁寧に説明するエスペリア、わかりやすくて助かるよ

でも・・

「一般人にゃ効かないのに俺達には有効・・?」



「魔法を使うからね・・どうやら私達はこの世界ではスピリットや神剣を持つエトランジェに近い存在みたいね」



「アンジェリカ・・、なるほどな・・瀕死の重傷でもこの通り・・か」

「はい・・、ですのでアンジェリカ様の提案がなければ・・おそらく・・」

・・考えただけでもサブイボができるね・・

「ったく、報復にも限度があるっての・・それで・・あの御三方のお怒りは治まりになられたのでございましょうか?」

「変に敬語にしないの。とりあえずは気が済んだらしいわ。以後気をつけなさい」

・・俺が起きたのに気付いたのかヒミカとセリアが離れたところからジロジロ見てます・・

「へ〜い・・」

「それにしても、寝言でタイムさんの名前を連呼するなんて・・こっちが恥ずかしかったわよ?」

んがっ!!?

「マジで!?俺そんなこと言ってたのか!?エスペリア!?」

「え・・ええっ、何度か呟いていました・・」

・・何故頬を赤らめる・・?

「さいですか・・。まぁ・・忘れてくれよ・・。

それよりも状況はどうなんだよ?説明は終わったのか?」

「これだけ夜が深まってきているのよ?こっちの情報は全て伝えたわよ。

・・私はともかく貴方がスピリット相手に勝っていた事は信じてもらえていないようだけど・・」

気絶させられてますからねぇ・・。

「やれやれ・・とりあえずはこれからどうするかだな・・」

「よう、無事だったみたいだな・・」

ん・・おおっ、コウインが俺に近づいてきた。

周りは全員飯を食い終わった状態のようでコウインは木製の椀を二つ持っている

「なんとかな・・、まったく手加減ってのを知らない奴らめ・・」

「はははっ、俺もそう思うぜ。あんたの分を取っておいたから食べなよ・・それとアンジェリカさんにエスペリア、

悠人が呼んでいるぜ?明日からの行動について相談したいそうだ」

「そう、わかったわ・・それじゃ行きましょう」

「はい、ではクロムウェル様、失礼致します」

行儀良く一礼をするエスペリア・・献身的よのぉ・・

・・なるほど、よく見たらユートとアセリア、キョウコとセリアが集まって何やら相談しているな・・。

・・明日からの部隊編成についてなのかな

まぁいいや・・どうせ俺に発言権なさそうだし

とりあえずは飯だ

「ありがたくもらうよ。・・・悪いな〜、俺のせいでとばっちり受けてよ」

「まぁ気にするな、あいつが勝手に勘違いしただけだしな。だけど・・いつもよりきつかったな・・

あんた、キョウコになんかやったのか?」

「・・やったというか・・不可抗力だというか・・」

「俺が聞いても何も応えないんだよ・・、参考までに教えてくれないか?」

そうだよな・・、あいつと絡んでいる以上コウインも逆鱗に触れるわけにはいかないだろう

「わかった・・その前に・・あいつのスカートと一緒に履いている黒いパッツンパッツンの短パンって・・下着か?」

まぁ下着としたら丸見えだろうが・・

「短パン・・ああっ、スパッツな。いや、運動するの時に使うズボンみたいなものだ

・・それがどうかしたのか?」

「・・いやな、俺のことをお前だと決め付けたキョウコの野郎が情け容赦なく襲いかかってきたんだよ。

応戦する事もできないから隙を作り出そうと思ってその・・スパッツか?

あれをずらして足に絡ませようとしたんだ」

「ふぅん・・、確かに今日子はすばしっこいからな。それだけでも隙になるか・・それで?」

「まぁそれは成功したんだが・・ずり下ろしたらあいつ・・何も付けていなかったんだよ・・」

極力声を小さくして伝える、それにコウインは意外に驚いている

「あいつ・・下着つけていないのか?」

「ああっ、それで完全にプッツンして・・後はお前が体験した通りだ」

「・・あいつがノーパンだったとはなぁ・・」

「この事は内密にしてくれよ・・、まったく怖い女だ・・」

二人揃ってキョウコを見つめる・・あいつは地図を見ながら何やら頷いていたのだが

こっちの視線に気付き目が合ってしまった

「・・二人して何見ているのよ・・?」

「「なっ、なんでもないっす♪」」

「ふん・・それとコウイン、その変態には何も話さないようにしなさい!」

「おいおい、変態ってのは失礼だろう?それとも変態呼ばわりされても仕方ないことでもされたのか?」

嫌な笑みを浮かべるコウイン・・こいつ・・できる!

「・・な・・なんでもないわよ!」

その部分には触れられたくないらしく不機嫌なままそっぽ向きやがった

「は・・ははは・・向こうも相当なショックだったみたいだな・・」

「まぁ、そうみたいだな。

でも・・あんなのでも意外女らしい一面があったもんだな。

何しろああいう性格だろ?女の子から恋文貰った事すら・・(ガチン!)あでっ!」

「何話しているのよ!?」

すご・・、食器を投げつけて寸分の狂いもなくコウインの後頭部に直撃させた

やはり身体能力はすごいらしいな・・

「あたた・・全く乱暴だな・・。

まぁ色々参考になったよ・・俺はあいつのご機嫌でも伺っていくるよ」

「ああ・・暴れ出さないように頼む」

苦笑いのコウイン・・俺もコウインも被害者だものな・・

まぁいいや、腹が減ったし飯にしよう

・・・・・・

用意してくれていたのは野菜のシチューにパン、進軍中の食事の割には味は抜群だ

聞いたところによるとエスペリアお手製らしい・・家庭的だねぇ・・

俺が食い終わった時にはキョウコの機嫌も直り隊長陣の中に入って作戦会議に・・

「それで・・どうする予定なんだ?」

「ああっ、俺達はそのままリレルラエルに向うだけなんだけど・・問題はあんた達だな・・」

まぁエーテル変換施設の暴走の件もあるからな。

「問題がないならこのまま先行してリレルラエルで真偽を確かめたいところなんだけどな・・

アンジェリカ、どう思う?」

「・・正直、偵察部隊との戦闘でここまで時間をかけているから・・きついかもね。

ラキオス軍勢の登場で多少敵の目はそちらに向うでしょうが、同時に私達の存在も敵の中では知れ渡っているから・・

現状は変わらないかしら・・ね」

「・・それなら、部隊の再編成して少しこちらから助力するのはどうでしょうか?」

「エスペリア・・」

ふと言い出すエスペリア、料理がうまいだけでなく戦況を見極める目もあるみたいだな

万能メイドっ子だな

「おいおい、いいのか?」

「そうよ、一応疑惑は晴れたけど私達を騙した連中なのよ!?」

・・お前が言うな、凶子。

「・・変換、違っているわよ?」

「何故わかる、アンジェリカ・・?」

「「「「「「???」」」」」」

「何でもない、それで・・いいのか?ユート?」

「ううん・・そうだな・・、あんた達のおかげでケムセラウトから戦闘もなくすんなりとここまでこれている

その分あんた達の負担が強いのなら・・少し手を回してもいいと思う」

「ただ・・スピリットを気絶させるだけって戦闘は・・難しいかもな」

「わかっているよ、刃物使っての手加減なんてそれこそ達人がやっても怪我するもんだ

相手も帝国、手心加えて戦っていたら死んでしまうぜ?」

「・・そうね・・、でもそれをあんたはやっているんでしょ?」

「そう決めたからな。まっ、こっちは色々加減が効くモンで命張っているからできるんだろうさ・・・。

まぁスピリットを預かるのは俺は構わない・・、誰一人死なせはしないから安心してくれ」

「クロムウェル様・・」

「・・そうとなるとスピリット達とエトランジェ達の連絡を取った方がいいわね・・私が本隊と行動を共にしましょう」

「えっ・・?いいの?」

アンジェリカには素直だな・・キョウコさん・・

「私とクロムウェルは魔法を使って遠距離通信できるの、片方が本隊と一緒にいて連絡を取り合ったほうが都合がいいでしょう?

それでいいわね、クロムウェル?」

「ああっ、それにアンジェリカがいるならば色々とかく乱も出来る。

本来魔術師は単独で戦闘するのは危険だしそれには俺は賛成だよ」

「ならば決定ね。余力を残しつつ露払いしてあげるわ・・」

「ううん〜・・そうなると、逆にこの変態の部隊が気になるけどねぇ・・」

「うるせぇ、お前に心配されるほど能無しでもないっての」

いちいち突っかかってくるな・・こいつは・・

「ん・・心配ない。クロムウェル・・強い・・」

「アセリア・・、アセリアと戦闘して無事だったんだな。その腕は信用できると俺は思うんだけど・・」

ユート君・・君の判断は正しい・・

流石だ『求め』、それでヘタレさを克服すればお前は英雄となろう

「ですが・・問題はクロムウェル様と行動を共にするスピリットの編成ですね。

ヒミカやセリアは・・断るでしょうけど・・」

申し訳なさそうなエスペリアさん・・

「・・・いあ、それは仕方ないさ。まぁ明日までに決めておくれよ・・敵の相手はほとんど俺がこなすからどんな編成でも

大船乗ったつもりでいてくれたらいいさ」

「わかった、俺とエスペリアで考えておくよ。すまないな・・キツイ仕事を任せて」

「いいってことよ。それに・・突っ込んで叩き伏せるほうが俺の性に合っているからさ」

「その分、危険が伴うと私は思うのですが・・そうした事は我々スピリットが・・」

うむ?エスペリアが険しい顔つきになっている・・

「キツイ仕事をどうしてスピリットがやらなきゃいけないんだ?」

「・・私達スピリットは人間を守る剣であり楯です。私達は戦争の道具に過ぎません」

はっきりとそういうエスペリア

・・何か訳があるらしい。

まぁ、そんなのわかるわけがないんだが・・

「それは今までの事・・だろう?少なくともユート達はスピリットを道具として見ていないしそれは俺も同じだ」

「でっ、ですが・・」

「今までの常識なんぞすぐに変わるさ、人は常に変わり続けるしこの世界も変わりつつある・・

ラキオスの城下町一つ見てもわかるだろう?」

「・・・・」

「まぁ、どちらにせよ俺にはこの世界のルールや常識なんぞ知ったことじゃない。

俺は俺の思うとおりに動く。これだけは誰にも止められない」

「・・わかりました・・」

ゆっくりと頷くエスペリア、まぁ彼女が背負っている問題ってのはユート達が解決するだろうに

「堅苦しい話になったな。ここらで雑談でもしようや・・

確かヨーティアから聞いてから疑問に思ったんだけど、

神剣を持つ者ってのは剣の声ってのが聞こえるんだよな?」

「あ・・ああ、そうだ。俺もこのバカ剣には色々と悩まされたよ」

そう言って噂の『求め』を取り出す。・・剣というか、馬鹿でかいナタみたいだな・・

「ふぅん・・バカ剣って事は『ゆ〜と、いくのら〜!』みたいなのらりくらりとした口調で話しかけるとか?」

「まさか、声は・・男の声なのかな?『契約者よ』って威圧的な声でよくマナを催促してくるよ」

その言葉に一同が暗くなる・・なるほどな、こいつらも同じ経験をしているわけか

でもよく話しかける剣・・か・・

オマケに契約者って言い方だなんてな・・

・・つまりこういうこと?

ケース1

『契約者よ、今日は便が少し柔らかい。腹を冷やさないように気をつけよ』

ケース2

『契約者よ、その程度の愛撫ではこの娘は満足しておらんぞ?』

ケース3

『契約者よ、食事はバランスよく取れ。それでは野菜が不足している』

ケース4

『契約者よ、出窓の埃が取れておらぬぞ?掃除くらいしっかりこなせ』

ケース5

『契約者よ、飯はまだか?』

・・・・・

「・・・、お前達、大変なんだな・・」

俺は今、お前達を心の底から尊敬している・・

「な・・何泣いているのよ、気持ち悪い・・」

「感涙だ・・。っというかプライベートもなく姑が嫁いびりするが如くの状態なんだろ・・?俺には無理だ・・」

「嫁いびり・・じゃないだろう・・。それに日常生活をいつも見られているわけでもないだろう?なぁユート?」

「え・・ああ、そうだよな・・?バカ剣・・?・・お・・おい!バカ剣!何とか言えよ!?」

・・ユート、どうやら君にプライベートはないらしい・・

「ふふ・・かわいそう。

そういえばユート君・・コウイン君達が合流するまではスピリット隊を引き連れていたのは貴方よね?」

おっ、アンジェリカも疑問があるらしい

「ああ・・そうだよ、エスペリアやアセリア達に助けられてここまでこれたんだよ」

「そんな・・私なんて・・」「ん・・」

少し照れるエスペリア&アセリア

脈あり・・か・・

う・・うらやましくなんかないやい!!

「なるほど・・、じゃあ部隊に貴方一人が男だったのね・・ふふっ、さぞ役得もあったでしょう」

さわやかにそっち系の話をしだすアンジェリカさん

青少年を見てS気が出てきたか!?

「そ・・そんなことない!俺は・・皆を大切に思っているから・・手・・手を出すなんて・・」

対し顔を真っ赤にするユート。

相も変わらず・・

青い!!!!!

「甘いぞ、ユート!第一ほれ、俺がお膳立てしてレムリアと良い関係になれただろうが!?自信を持て!」

「ち・・違う!大体あんたが妙な事言い出したからあの後レムリアと気まずい状態になったんだぞ!?」

「な・・何!?じゃあお前・・あれから・・何もやっていないのか・・?」

「当たり前だ!」

「・・ユート・・、お前それでも男か?」

呆れるな・・、想像以上のヘタレだ・・

「・・クロムウェル様、つかぬ事をお尋ねしますが・・レムリアとは一体どちら様のことでしょう?

それにユート様とのご関係は・・?」

「ん・・私も・・聞きたい・・」

ん・・?エスペリアとアセリアが何やら黒い気配を出している

エスペリアさんに至っては何気に青筋立ててます・・

「ああっ、レムリアってのはラキオスの城下町に住んでいる子だ。

この間町をぶらぶらしていたらユートとレムリアのデート現場を目撃してな、

俺が良い感じになるようにしたんだが・・不発だったよ」

「あれのどこが良い感じなんだよ!それに・・俺は・・レムリアとはそういう事をするために会っているんじゃ・・」

「青いわね・・ユート君。ほらっ、エスペリアさんやアセリアさんも怒っているわよ?」

「え・・?エスペリア、アセリア・・どうしたんだ?」

「知りません!」「・・ん・・」

ヘタレだ、それもどうやら筋金入りらしくキョウコとコウインが苦笑いしてら・・

「ダメね・・これも何かの縁・・お姉さんが女の扱い方を教えてあげるわ」

急にユートの隣に座り込み、肩に手を回すアンジェリカさん

「え・・あ・・あの・・アンジェリカさん?」

「ふふっ、ダメよ?英雄色を好むと言うように立場がある人間はそうしたこともこなさないと・・」

そう言いながらもう片方の手をユートのズボンの股間部分に置き上から焦らすように軽く撫で始める

・・講師の前に、娼婦でもやっていたんかい・・この色魔・・

「でも、俺は・・こういうことが・・」

「だめよ、きちんと学びなさい・・いいこと?女はね・・」

淫らな笑いを浮かべながらユートの耳に息を吹きかける

「・・人気のないところに連れて押し倒したら・・後はこっちのものよ・・」

・・シーン・・

その一言に一同固まる

何を・・教えてんねん・・

「・・アンジェリカ、青少年に強姦の方法を教えるな・・」

「愛情表現よ?煮えきられないヘタレには時に大胆になる必要があるわ・・っというわけで・・エスペリアさん・・?」

「は・・はい!?」

「これからの作戦に当たって隊長と副隊長で打ち合わせが必要よ?外部に聞こえないように・・森の奥で話し合いをしてきなさい」

「「え・・ええっ!?」」

淫らに笑うエスペリアに驚くユートとエスペリア、エスペリアに至っては顔がすでに赤い

「何を驚いているの?隊長や副隊長だけが知っていないといけない情報は当然あるでしょう?

・・ああっ、メインのアタッカーであるアセリアさんにも参加しておいたほうがいいわね」

「・・ん・・?そうする・・」

何気に頷くアセリア、純粋なんだね・・

「確かにそうですが・・アセリア、連絡は後でしますので・・ここにいてください!」

「じゃあ・・ユートは・・エスペリアを押し倒すのか?」

「「!!!」」

「アセリアさん、さっきのは例えよ。・・あくまで・・ね。ふふふ・・♪」

悪女だ・・

「コウイン・・」

「な・・なんだ・・?」

「ああなるとアンジェリカは悪乗りする。適度なところで止めてくれ・・」

「・・あんたは・・どうするんだよ?」

「俺にはわかる・・アンジェリカがああやってユートをおちょくっているのは・・逆に俺を狙っている証拠だ。

ああやって俺を挑発しているんだよ・・だから・・逃げる・・」

「・・・、俺には・・よくわからんな・・」

「わからんでいいさ、あの悪女の手口はな・・それじゃ・頼む・・」

騒ぎが起こっている地点を離脱する俺・・

チラっと後ろを振り向いたら赤くなっているユートとエスペリア、それに食い下がっているアセリアが

延々と何か話し続けていた・・

・・・ありゃ・・アンジェリカの思う壺だ・・

・・・・・・・・

とりあえず気絶していた分まだ眠気はないのでスピリット同士での談笑している中で時間でも潰そう

「あ・・クロムウェルさん!その節はお世話になりました!」

ツインテール黒少女ヘリオンが俺に気付き声をかける。

何やら数人ごと分かれているらしくヘリオンとセリア、後はナナルゥ・・だったか。

それとウルカとオルファがダベっている

それに少し離れたところでポニーテールとおかっぱ頭の青スピリット、ちっこい緑スピリットがファーレーンと一緒にいており

ヒミカとハリオンが仲良く座っている。

こうしてみたら別に同じ属性だからと言って極端に気があうわけでもないみたいだな・・まぁ当然っちゃ当然か

「よぉ、酔っ払いに絡まれていたいつぞやの嬢ちゃんだな」

「はい、助かりました!」

「ははは・・あの程度助けたつもりもねぇよ。腕も随分上達したようだな」

足つきは身振りである程度わかる・・隙が少しなくなっている

「わ・・わかりますか?」

「まっ、瞬時で相手の力量を見ないと戦場じゃ生き残れないもんだ」

「す・・すごいです・・」

「ヘリオン、気をつけなさい・・この男に近づくと破廉恥な事をされるわよ?」

・・う゛・・セリアさん・・

「いやっ、あれは悪かったよ・。仕返ししたんだから青スピリットなだけに水に流してくれって・・」

「つまらないわよ」

・・きついなぁ・・

「まぁよいではありませぬか。クロムウェル殿・・動作からしてかなりの使い手を見受けました」

きついセリアを言い止めて俺に声をかけるはウルカ

丁寧というか礼儀正しい

「それなりに血生臭いことはしているよ。刃物は趣味じゃないんだけどな」

「ええっ、じゃあお兄ちゃん本当に武器を持たずに戦っていたの?」

目を丸くして驚くオルファ、ヘリオンもびっくりしてら・・

「そうだとも。っというか、戦いの基本は格闘だぜ?

武器や装備、魔法に頼り過ぎていたらその内痛い目見てしまうもんだ」

「・・一理あります・・」

むぅ、ナナルゥさんが何気に唸っている・・

機械的に話している割には多少感情のようなものは感じるね

「まぁ、剣相手に体一つで立ち向かうにゃそれなりの訓練が必要だけどなぁ・・、わかるだろ?セリアさん♪」

「・・知らないわよ・・」

あらら・・そっけない・・。まぁセクハラしましたからね・・

「あははは・・は・・はぁ・・、まぁ、そういうことだ・・」

「手前には・・剣を振ることしかできませぬ。

体術のみで戦う・・、勉強になります」

ウルカさんって・・真面目よのぉ・・

「刀扱う奴って常に一撃必殺を狙うもんだからな・・。まぁ例外もいるけど・・」

「例外?そんなのがあるんですか?」

これまた驚くヘリオン、ううむ〜、素直だけど・・そういやヘリオンも刀使うんだったな

「ああっ、体術と剣術を得意とするバケモノがいるのさ。俺が倒すべき宿敵だ」

「剣術と体術・・ですか?手前にはよくわかりませぬ」

「ああ〜、そうだな。普段は蹴る殴るで応戦しておきながら一瞬の間合いで居合いを放つんだよ・・

通常の刀使いとはまた違った奴だな・・」

「なるほど・・確かに変わった戦い方ですね!」

「その分厄介さ。

例えば・・居合いの構えのまま相手に肩を当てて吹き飛ばしたその瞬間に居合いで追撃する・・

なんてデタラメな攻撃とかもしていたな・・」

「ふむ、バランスを崩した瞬間に斬る。行うのは難しいでしょうが・・確実に相手を捉える戦法です・・」

「ずば抜けたセンスは要求されるけどな。全くもってバケモノだ・・」

「それで・・クロムウェルお兄ちゃん。そのバケモノってどういうのなの?龍さんみたいなの?」

興味深そうなオルファだが・・着眼点が子供じゃねぇな・・

「いんや、ヒョロリとした男だ。一見すると全然強そうじゃないが剣術、体術の達人で未だ負けなし・・

恐ろしい奴だ」

「・・そうなんですかぁ・・クロムウェルさんほどでも勝てないなんて・・」

「俺もまだ未熟ってわけさね・・。

まっ、そいつに勝つために色々特訓しているから刀使い相手にゃ自信はあるぜ?」

素手で立ち向かうわけだからな・・

「訓練していても勝てなければ同じよ・・」

「・・ですが何事も積み重ねは大切です」

セリア&ナナルゥ・・意外にいいコンビなのかね?

「ははは・・、ありがとよ、ナナルゥ・・。

それで・・ウルカ、寝る前だけど軽く手合わせ願えないかな?」

「手前が・・ですか?」

「ああっ、帝国に厄介な黒スピリットがいてな・・今まで引き分けなんだが次で決着をつけたんだ。

そのために少し慣れていたんだよ」

「・・わかりました。手前も動かねば落ち着かぬ性分です・・軽く手合わせ願いましょう」

「ありがとよ、そんじゃ・・少しスペースあるところでやろうか・・」

「はい・・」

ゆっくりと立ちあがる俺とウルカ、周りがダベっていたりしているので少し離れた場所に向った


・・・・・


野営地から少し離れたスペースにて俺とウルカは向かい合う

二人だけで軽く手合わせするつもりだったが・・

「ウルカァ!殺っちゃいなさぁい!」

興奮しているキョウコ・・二人だけで移動する俺達に不審がって全員見学することとなった

アンジェリカがあんな事言いやがるから余計に注目を集めたらしい

そんな中キョウコ、ヒミカ、セリアの三名は俺が痛い目合うのを心待ちにしている・・みたいだ・・

他はスピリット隊一の剣の腕を持つウルカと実力不明な俺との対戦に普通に興味があるらしい

「何やら盛り上がっているが・・一応は戦地なんだぞ〜?」

「まっ、盛り上がれる時は盛り上がるもんさ。それで、ネリーちゃんはどっちが勝つと思うぅ♪」

・・コウインが少女青スピリットに聞いている・・

こ・・こいつ・・ロリ属性か・・!?

戦友、お前・・修羅の道を歩む者か・・

「う〜んと・・やっぱウルカ姉ちゃんかなぁ・・?シアーは?」

「う〜ん・・やっぱり、ウルカお姉さん・・かなぁ・・?」

陽気なポニテのネリーとおかっぱで大人しいのがシアーな・・。

まっ、前評判からしてウルカ優勢ですかな

「あのぉ・・・余り騒がれるとそれはそれで・・」

・・エスペリアの注意もなんのその、焼け石に水状態だな・・

「まぁいいじゃないの。結界は張ってあるわ・・この森にいるのは私達だけよ?」

「ですが・・・・、ユート様、何か言ってください」

「訓練ならば仕方ないが・・、二人とも、怪我するなよ?」

「そこまで本気ださねぇよ。それよりも・・賭け事なんぞするなよ?ったく・・」

異様な盛り上がりだからな・・

対しウルカは目を閉じて精神集中をしている。

すでに戦闘モードか・・な

「よっしゃ!大陸一とも言われた『漆黒の翼』の太刀筋・・拝見させてもらおうか!」

気絶させられた分しっかりと準備運動はしないとな・・

屈伸で足をほぐすか・・

おいっちに〜さんし〜!に〜にっさん・・

ビリ!!!


はぉう!!

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

俺の尻から放たれた破裂音とともに周囲の時が数秒止まった・・

恐怖に襲われながらも恐る恐るソコを確認する・・

こ・・これは・・


「・・見事だ・・ウルカ・・俺の完敗だよ・・」


「て・・手前は・・まだ何もしておらぬのですが・・」

なんともいえない表情のウルカ・・、

「・・やっぱり、一瞬で俺のズボンを切ったんじゃないか・・・ははは・・」

「当たり前よ・・、同じ服を使いまわししすぎなだけじゃないの?」

・・まぁ、一張羅だからな・・

ズボンの後ろがぱっくり割れてら・・

「しょうがない・・。少しスースーするがこのままでも・・いいかな?」

「かっ・・構いませぬ・・では・・」

ゆっくりと居合いの構えを取るウルカ・・、遠慮しないのがありがたい

っというか・・外野の視線が痛いなぁ・・

ええい、集中集中・・

「参ります・・居合いの太刀!」

気合とともに駆けるウルカ!その姿は一瞬にして消え去り次の瞬間には俺の懐に現れた!

この速さ・・流石だ!

だが、居合いを放つまでは刃は納まっている・・ここだ!

「てぇい!」

ウルカが抜刀をするまでの刹那のタイミングで俺が踏み込み、ウルカの刀の柄を叩く!

これで居合いのバランスは崩れる・・、ここまで接近されちゃ避けきれないしな!

「なっ・・!?」

これには驚くウルカ、抜刀しようとして強制的に刀を納めさせられたのだからな!


チャンスだ!追撃いくぜ!

そのまま体を捻りつつ回し足払い!

十分な加速をつけた蹴りがウルカの足を狙う!

「・・くっ!」

命中する寸前にウルカは飛びのき足払いを回避した・・反応がずば抜けている

普通ならば命中は確実だったのにな!

おまけにすぐに体勢を整え再び居合いをしようとする・・

「参ります!」

次の瞬間には居合いを放つ!鋭い銀閃が俺を襲う!

「・・あまぁい!!」

牽制としては十分な体勢だが俺に当てるには距離が離れている!

しゃがんだ姿勢のまま地を蹴り低空でバックジャンプ!

鋭い刃音が聞こえたが何とか回避できた・・

「手前の一撃を・・流石です!」

「へっ、まだだぜ!」

そのまま放ち終わったウルカに向けて突きを放つ!

しかし崩した体勢に放ったそれは刹那にて弾かれる、鞘を咄嗟に鈍器として弾き返したんだ

「ちっ!これなら!」

拳が弾かれても足がある!

「・・ぬっ・・!?」

ウルカの顔色が変わる・・、流石に対処できないか!?

ドン!

鋭い音がしたが・・見事鞘で受け止めた・・

「うへぇ・・、こりゃ攻め手に欠くな・・」

「それは手前も同じです。よもや抜刀するよりも早くそれを防がれるとは・・」

戦闘はここまで、距離をあけ互いの腕に感服する俺とウルカ・・こいつは・・本気でやっても勝てるかどうか・・だな

「ははは、まぁ刀使いに対する手は研究しているからな。結局は有効打は打てなかったけど・・」

「流石にそこまでやらせはいたしませぬ」

ニヤリと笑うウルカ、手合わせとしてはこのぐらいで十分か

「こんなもんかな、ありがとよ・・ウルカ」

「いえっ、手前の方こそ色々と勉強になりました」

「ははは・・、その腕ならもう学ぶ事もなかろうに」

「手前もまだまだ未熟、余りお褒め頂かないようにお願いします」

・・堅物よのぉ・・、まぁ慢心せずに常に高みを見る姿勢がその強さに結びつくんだろうな


「これはすごいな・・正しく一瞬の攻防だぜ・・」

「ええ・・、あの変態・・流石に身のこなしだけはいいわね・・」

コウイン&キョウコが驚いてら、まぁ他のスピリット達も同じような反応だが・・ね

「まっ、賭け事にするにゃ中途半端だが・・明日から本格的な進軍になるから勘弁してくれよ〜」

「あらあら、残念ね・・。どっちが勝つか興味があったのに・・」

・・アンジェリカさんよぉ・・

「オルファも!ねぇねぇ・・続きがみたいよぉ!」

「オルファ!遊びではないのですよ!?」

「そうだぞ、ここで怪我したら明日からの戦いに支障が出る」

ううむ〜、なんというか・・エスペリアとユートってほんと仲が良いようだな

でもアセリアとユートもなんだか良い感じだし・・ヘタレでもそれなりに手を出しているのか?

「まっ、就寝前の運動さ・・ほれっ、やる事やったらさっさと寝る!睡眠も大事な仕事だぜ!?」

なんか・・俺達以上にマイペースな集団だよな・・

まぁいいや、今日はもう疲れたし・・さっさと寝よう

・・・・・・

ズボンの修復は・・明日でいいや・・・




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