第八話  「第2スピリット隊詰め所潜入」


広場で騒動が起こったのを鎮めた後、目立たないように裏路地を伝って宿に戻った俺達

騒動が相当広く伝わったのかいつもの活気が外から感じられない

まっ、戦争の余波って奴をヒシヒシを感じたんだから無理もないか

「・・っというかアンジェリカさん、気分転換外に外に出たいとか言って高台で打ち合わせしたのは

ひょっとしてあの工作員の騒動を起こすのがわかっていたからか?」

いつもに比べて静かな宿の一室にて開口一番にそう言う

この色魔は意外に人情味にある面もあるもんな

「・・さて、どうかしら・・?ただの気まぐれかもね」

・・確信犯だな、ってか裏路地まで盗聴しているとは流石というべきか・・

「まぁ・・結果としては俺達の存在が知れ渡ってしまったな」

「被害を出さないためには仕方なかったわよ。

行動に障害が出るようならラース辺りを拠点にすればいいでしょうし」

・・まぁそうだよな・・

「まったくに、だんだん行動が制限されていくな・・」

「余計な事に首突っ込んでいるからね・・まぁ捨てて置けないところが貴方らしいところなんだけど」

自分でその場面に向かわせたくせに何を・・

「へっ、自分の信念曲げてまで執着することでもないしな・・、

しかしこうなると第2スピリット隊詰め所にある結晶体は絶対失敗できないな・・」

「そうね・・でもさっきの騒動がひょっとしたらこちらにとって有利に働いてくれる可能性はあるわ」

さっきの・・かぁ?

あっ、そうか。首都に帝国の刺客がいたんだ

警戒を強化してスピリットが夜警に回る可能性もあるな

・・だが、同時に・・

「俺達も狙われかねないんじゃないか?」

「異質な能力を持つ人物が昼間の広場で大暴れしたんだからそうなっても不思議じゃないわね。

夜警に力を入れるか、貴重品である結晶体に力を入れるかは・・現場の指示じゃないとわからないわ」

・・・賭けだな

「だけどさ、失敗できないんだからラキオス兵士の服以外にも道具は欲しいな」

「そう言うと思って用意しているわよ。

幸い、あの兵装は小物入れるスペースが多いから役立てると思うわ

・・それと、私も今晩はちょっと出かけるから・・回収後は念波で呼びかけたらいいわ」

「・・サーギオス工作員のもう一人か?」

「ええっ、記憶球の角度から顔は見えなかったけど大体わかっているしね。

今後の行動に支障が出ないために・・悪いけど消えてもらうわ」

準備万端だな・・、まぁアンジェリカさんも色々溜まっているみたいだからねぇ・・お任せするか

下手すりゃ俺相手よりも悲惨かもな・・、冷酷だし。

それはいいとして俺も失敗はできないんだ・・今夜ははりきって行かせてもらいましょうか。




・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・




さてさて、やってきました夜!

夕方辺りからラキオス城門付近にゃ兵士が増えるのでそれを利用して兵士になりすましつつ城内へと侵入した

後は適当に見回りをするふりをして時を稼ぎ夜になるのを待っていた

・・どうやら以前侵入した時とあまり変わっていないらしい

まぁ、この城まで敵に侵入されたんだったら兵の数増やしたところであまり効果はないだろう

接近を許しすぎているんだしな・・

それはいいや・・適当に兵士に見つからないように第2詰め所へと向かう・・

一度侵入したことがあるだけに場所ははっきりとしている

スピリットの詰め所はなんというか隔離された地区にある

城内から外に出て多少歩かなければならず外に出たら見回りをしている兵など全くいない

・・っというか多少どころか結構離れているな・・、

スピリットが汚らわしいとか言ってた連中ドモがした仕打ちの名残か。

まぁ広大な敷地ゆえに城区画にあるという意識もなくなっていいのかもしれないな

おっと、見えてきた・・

スピリットの館ってわけだからお粗末な造りだろうと思ったがかなりしっかりしているし

清潔感が漂う立派な物だ。レスティーナの指示か?

まぁいい・・、ここからが正念場だ。

灯りもついているし、中に無敗のスピリット隊がいることは確実か・・

ははは、こういう芝居打つのは俺に向いていないんだけどな・・


コンコン


・・・・

無反応・・

・・消灯し忘れて全員寝たのか・・?


コンコンコン


”は〜い・・”

おおっ、いたいた

っていうか随分のんびりした口調だな。

「夜分すまない、レスティーナ様より言伝を申し付かった者だ・・中に入れてくれないかな?」

”あ〜、はいはい〜、今開けますね〜・・”

ガチャガチャっと扉の鍵を開ける音がしゆっくりと開かれる

「どうも〜、お待たせしました〜」

出てきたのは緑スピリット、背が高くのんびりした口調に良く似合うおっとりとした女性だ。

長い緑髪を後ろと耳元に括っておりスッキリとしている

なんというか・・『お姉さん』っぽいな。胸大きいし・・

「いやいや、こちらこそ夜中にすまないな」

「いえいえ〜、さぁこちらへどうぞ〜」

ううむ、何と言うかこの口調・・調子が狂う・・

ある意味曲者だな・・


・・・・



館内は質素ながらもしっかりとしている。

どうやら2階にそれぞれの部屋が用意されているらしい・・

あまりジロジロするわけにもいかないので適当にあの緑スピリット姉さんを見ていたら居間に通された

大所帯らしく今はかなり大きくさらには広く大きなテーブルが中央に陣取って人数分の椅子が並べられていた

椅子の数からしてこの詰め所に住んでいるスピリットは

・・7・・・8・・9人か。

結構いるもんだな、流石に全員いたらまずいが・・居間には誰もいない

他にも気配らしきものは感じられない、こりゃこの姉ちゃん一人だけかな

「ここでお待ちくださいね〜、お茶をいれますので〜」

「え・・あ・・ああ、ありがとう」

用件聞く前にお茶?

ううむ・・夜中に突然訪問した割にはずいぶんゆっくりとした応対だ・・

俺の事に気付いているのか・・?

警戒しなければ・・

「いえいえ〜、それではちょっと待っててくださいね〜」

・・・、いやっ、あの性格だとそんな芝居も打てんか・・

なんか鼻歌交じりで厨房に向かっているし・・

「・・ふぅ、しかし・・人いないな・・」

広い居間に一人待たされているのもなんか落ち着かない。

やはり昼間の騒動で夜警に出払っているらしいな

今の状態が続くとありがたいのだが・・・・ん・・?

そうはいかせてもらえなさそうだ

誰か帰ってきたらしく玄関の扉が開く音が聞こえた

数人帰ってきたみたいだ


「ハリオン〜、帰ったわよ・・って・・あれ・・?」


ボーイッシュな髪型の赤スピリットが入ってきた。

手には赤お約束のダブルセイバーを持っている

刃物は趣味じゃないんでよくわからんがいつ見ても扱いにくそうな武器だぜ・・

まぁいいや。ずいぶん活発そうな感じだが今は俺を見て怪訝な顔をしている・・

まっ、兵士とスピリットの関係は良いとは言えない部分があったらしいからな

「夜分すまんな、レスティーナ様に言伝を預かって来た者だ」

「そうですか、ご苦労さまです・・あの・・・、それで何故誰もいない居間に座っているのですか?」

好きでボーっと座っているんじゃないやい

「それは・・あの緑スピリットのお姉さんがお茶を入れると・・」

「ハリオンったら・・、お茶より先に用件済ましてあげないと・・すみませんね」

緑スピリットの姉ちゃん・・ハリオンって言うのか

あれがマイペースなのに比べてこの娘はしっかりしていそうだな・・要注意要注意っと・・

「ああっ、いや。急を要する事でもないらしいので・・」

「そうですか、それで・・用件とは?」

「マロリガン戦で手に入れたマナ結晶体が必要となったので取りに行けということでね」

「マナ結晶体を・・?」

っと・・彼女の顔つきが変わった・・。

これでマナ結晶体が狙われているという事が伝達されているのは確実と見ていいな

「ああっ、ここで保管しているという話だったんだけど・・」

「え、ええ・・わかりました。少し待ってくださいね。ファーレーン!セリア!ちょっと・・!」

・・・・、増員・・か。

ううむ、何気に包囲網が狭まっている気がする

「どうしたの?」

「何か異常事態でもあったのですか?」

壁一つ向こうの廊下で会話をはじめている、3人と見ていいな

まぁ扉開いているから丸聞こえだし

「レスティーナ女王の言付けで兵士さんが来ているの。

マナ結晶体が欲しいという事だから〜、ファーレーン、取って来てもらえる?」

「わかったわヒミカさん、少し待っていて・・。確か今日はハリオンさんの部屋でしたね?」

「そのはずよ、お願いね」

一人、2階に上がっていった・・保管場所は2階なんだな

そして『今日は』・・か、保管する場所を日によって変えているらしいな

「すみません、もう少し待っていただけますか?」

「ああ・・、多少遅れてもいいよ。女王には怒られるだろうが出世からは見放されているからな」

二コリと笑う俺に赤スピリット・・ヒミカって言われたな・・彼女も少し微笑んだ

「さて〜、お茶が入りましたよ〜♪あっ、ヒミカとセリアも一緒にどうぞ〜」

「そんなことよりもハリオン、お客様待たせちゃダメじゃない」

「細かい事気にしていたらダメですよ〜、ヒミカ〜?」

「貴方ねぇ・・」

「まぁまぁ、俺は別に気にしていないから・・せっかくだから頂こうじゃないか」

「はぁ・・」

・・・結晶体貰ってすぐおさらばのはずが妙な方向に向かっていっているな・・

くそ・・ままよ・・


・・・・・・・・


結局スピリット達とお茶会になってしまった

流石にこの時間じゃ茶請けの菓子は出ないが中々に味わいがある甘いシナティってお茶だ

俺の目の前の窓際の席にはあの赤スピリットのヒミカ、隣には緑スピリットのハリオン。

そして斜め前、ヒミカの隣に青スピリットのセリア・・だったか、ポニーテールでどこか冷たい印象を受ける美女だ

ってかスピリットって美女揃いだな・・

そして何気に壁側の席に座っている僕、逃げ出し辛いけど今更交替してくれって言えないよな・・

オマケに全員見回りに帰ってきたばかりなのか神剣を手元に置いていらっしゃる

・・居間にはそれ用の壁掛けまであるんだからスピリットってのはいつも神剣を持ち歩いているみたいだ


「お茶のおかわりいかがですか〜?」


他の二人はどこか俺に対して不信感を感じるのだがハリオンだけは変化なし

・・本心がまったく読めん・・

「ああっありがとう。それにしても・・他のスピリット達はもう休んでいるのかな?」

「いえっ、昼間サーギオスの手の者が街で騒動を起こしたので念のために数名夜警に出ております。

私達も今帰ってきたところですよ」

丁寧に説明するヒミカ・・、なるほどな・・

っということは時間が経つほど戻ってくるスピリットが増えてくるわけか

あの工作員にゃ感謝すべきなのか恨むべきなのか・・

「なるほどな、確かに帝国が動き出している以上スピリットが見回りに出たほうがいいだろうしな」

「・・そうですね、それに騒動を静めた不審な男女の行方も気になります」


・・ギク・・


「確かに〜、一般のお方でもないようだって言われていますし〜」

「あ・・ああっ、報告で聞いているよ。犯人を一瞬で見分けたんだ、特殊な能力を持っているみたいだな」

「城内では新手のエトランジェかもしれないと噂されています。

ですが味方と決まった訳でもありません。・・・貴方も気をつけてくださいね」

心配そうに言うヒミカ、警戒はしているが悪い奴でもないみたいだな

・・隣のセリアはずっと無言ですが・・

「ありがとうよ・・」

おっと、もう一人降りてきたみたいだ

「ありました、すみません・・お待たせして・・」

うん・・?ボサボサな青緑色の髪の女性・・緑スピリットかな・・

あっ、でも腰に刀下げているから黒スピリットか・・

なるほど、髪や瞳に影響が必ず出るとも限らないらしい。

この娘はさっきの話からしてファーレーンって名前だな

「いやっ、お茶を頂いたから大丈夫だよ・・それにしても随分大変なところに保管していたみたいだな・・」

もう結構待たされているからな・・

金庫にでも入れていたのか?

「・・それですがハリオンさん、枕の裏に入れていたら壊してしまうかもしれませんよ?」

「ハッ、ハリオン・・貴方どこにしまっていたのよ!?」

「え〜、だって机だとお決まりっぽいじゃないですか〜。それに頭がゴリゴリして〜、気持ちいいいんですよ〜?」

・・希少な物を健康器具扱いですかい・・

この緑娘、大物なり!

「ま・・まぁ、割れていなかったらだいじょぶじゃないか?そこらはどうなんだ?」

「大丈夫です。こちらです」

取り出した結晶体はケムセラウトで手に入れた結晶体よりも二周り大きい・・

こりゃ大当たりか・・?

ネストセラスの一件分はチャラにできるな

「おおっ、すごいな・・。」

「ええっ・・、これほどの大きさの物は中々見つからないようです」

「へぇ・・まぁ俺も見たことないな・・、確かに預からせてもらうよ。

んっ?ファーレーン・・だったか?何か顔赤いぞ?」

晶体を受け取りテーブルに置きながら彼女の顔を見る

・・熱でもあるのか?

「えっ!?そう・・ですか?」

「ああ〜、ファーレーンは赤面症なんですよ〜。男の人の前だともう真っ赤になるんです〜」

ふぅん・・

まぁそれはそれで点数高い病気ですな

「あ・・申し訳ありません。不快な思いをさせてしまって・・」

「いやいや、別に不快じゃないよ。

っというかファーレーン君、男というものをわかっていないな」

「・・えっ?」

「顔を赤らめている女は男にとってはドキっするもんなのさね。

女の武器の一つ、ってな」

特に頬を赤らめているならポイント高いよ?

わざとそうした芝居を打つ女性もいますが・・、例えば同行しているあの魔女とか・・

「そうなんですか・・?」

「ああっ、そういうものだ」

「じゃあ〜、ユート様の前だと仮面を取ったほうがいいですね〜」

「なっ、ハリオンさん!ユート様が私にそんな感情をもたれても・・その・・困ります!」

おおっ顔が真っ赤だ・・、こりゃ脈有りだな

っというかユートってあの『求め』野郎か・・

くそっ、その様子じゃスピリット達から『求められ』状態か!?

・・・・


・・ぜ・・・全っ!然っ!羨ましくないからな!!!




「まぁまぁ〜、でも赤いのがいいんでしたらヒミカはもうモテモテですね〜」

「・・いやっ、髪と目が赤なだけだろう・・?」

「そ・・そうよ、それを言うならナナルゥやオルファもそうでしょ?」

「冗談ですよ〜」

「さいですか・・」「まっ、まったく・・タチの悪い冗談を・・」

・・ボケなのか素なのかまったくわからん・・

「・・・・」

ん〜、何かセリアがさっきからずっと無言でこっち見ているな・・

「あの・・セリア・・だっけ?何か俺、不快な思いさせたかな?」

「いえ・・別に。ところで貴方は以前ラキオス城がサーギオスの妖精部隊の奇襲にあった事を覚えていますか?」

「・・あ・・ああ、前王が殺害されたんだ。忘れられるものでもないだろ?」

「ではっ、その時に現れた不審な人物も知っていますか?」

・・ぬっ、セリアとやら・・何のつもりだ?

「確か・・帝国のスピリット相手に真っ向から立ち向かった奴だろう?」

「そうです、神剣を持たずしてスピリットと互角以上の戦いを見せた

その時に戦闘ともなれば少なからずその人物は返り血を浴びたでしょうね」

・・・?

「セリアさん、何が言いたいのですか?」

「いえっ、少し興味深い事を見つけたの・・」

「興味深い事?さっきから黙っていたけどどういう事なの?セリア?」

「ええっ、スピリットの血というのはどうやら特殊な物でそれを浴びた者は身体的にある特徴が現れるみたいなのよ

スピリットも、人も関係なく・・」

・・何・・?

「ええ〜?そうなんですか〜?」

「それはハリオンの淹れてくれたシナティのお茶に関係しているわ」

堂々と言い放つセリア、なんだ・・自信に満ち溢れている・・

血とお茶の関係?

「・・どういうことなのですか?」

「スピリットの返り血を浴びた者はシナティの香り嗅ぐと・・」

「「「嗅ぐと?」」」

「鼻の頭の血管が浮き上がる」

なぬ!?

そんな事が起きるのか!?

って・・あれ・・浮き上がってないぞ・・?

「あれ〜?浮き上がってないですよ〜?」

「私も・・です」

「私もね・・嘘でしょ?セリア?」

「ええっ、嘘よ・・。

でも、間抜けは見つかったみたいね」

「「「あっ・・」」」

全員俺の方を見ている・・ははは・・しっかり鼻触ってますよ・・

「ラキオス城に現れ戦闘に巻き込まれながらもマナ結晶体の報告書を盗み、

ケムセラウトに現れまんまと結晶体を手に入れた不審な兵士・・貴方ね・・」


・・・・・・・・


「・・しぶいねぇ〜・・、まったくおたく、しぶいぜぇ・・!

確かに、その不審兵は俺さ・・」

「「「っ!」」」

その瞬間にヒミカ達は神剣を手に取る!

だがそれよりも一瞬早く俺はテーブルに置かれた結晶体を手にして後ろに飛びあがる・・

ってか背を壁にするぐらいしか現状ではできないな

「あらあら〜、不審人物さんでしたか〜」

「私達を騙していたのね!?」

「・・気付かないとは・・不覚です・・」

「いや、皆この男を信じ過ぎなのよ・・

ケムセラウトの件からしてマナ結晶体を狙っている人物がいるのは明白だしね」

すばやく全員武器を構え俺を包囲した・・


いや・・ははは・・こりゃまずいか?

一番近い逃走経路である窓にゃファーレーンとヒミカを切り抜けなければいけない・・か

時間かけたら背後まで取られてしまう。そう簡単に突っ込めない・・

「そんな格好をしてまで何故マナ結晶体を狙うの?応えなさい!」

「ふっ、セリアさん。理由はそれぞれ・・言ったところでわかるものでもないさ」

「だからと言って国の貴重品を持ち出すのは重罪よ!神妙にしなさい!」

「ヒミカ・・、結構態度がコロコロ変わるなぁ・・」

「大人しくしないと〜、死んじゃいますよ〜♪」

「・・あんたはもう少し緊張感持ったしゃべりしなさい・・」

「この人数差では逃げ切ることは不可能、ヒミカさんの言う通り神妙にしてください。

貴方は不審な人物とはいえレスティーナ様を守ったと聞いています・・手荒な真似はしたくありません」

「・・悪いな、敵対するつもりはないが捕まるつもりもない」

とはいえ、ファーレーンの言う通りこの人数差は流石にきつい

ふ・・もはや退路はない

ならば・・腹をくくるか!!

「決まりね・・覚悟!」

真っ先に飛びかかるはセリア、ふん・・不審人物を見分ける勘が鋭い事が決して良い事ではないことを教えてくれる!

「ぬるいわ!」

テーブル越しに飛びかかってくるセリア、室内ではハイロゥもうまく使えまい!

ならば踏み込みの速さは俺に分がある!

一気に飛びあがり!

「何・・!?きゃっ!」


モニュモニュ♪・・サワサワ・・♪スリスリ・・♪
ペチペチ♪


空中で交わった刹那、俺の奥義が炸裂する!

「くっ・・な・・何を!?」

体勢を崩しながらも何とか着地したセリアさん、胸を押さえて顔を真っ赤にしている

俺は手に残る素敵な感触に満足しながら華麗に着地・・窓に多少近づいたが依然気は抜けない

すぐさま他の三人が取り囲んでいる

流石は歴戦のスピリット達よ

「ふっ、セリアさん・・良い体していますなぁ♪」

空中の一瞬でセリアの胸、腰、尻を堪能させてもらいました

これぞ俺の奥義『漢の情熱三連撃』・・未だ不敗の業よ・・

「ふっ、ふざけないで!いきなり胸を揉むなんて失礼千万!この場で成敗してくれるわ!」

胸を押さえて動揺しているセリアに代わり何故かヒミカが大激怒している

「・・いあ、あんたが怒るのおかしくないか?」

「黙りなさい!多少痛い目見てもらうしかないわ!スピリットの敵め!」

ダブルセイバーを振り回し殺気剥き出しになる

・・ふ〜ん・・

なるほど・・セリアに比べたらあまりにも寂しい二つの膨らみ・・

”それ”が関わることになるとスイッチが入るタイプか

「こりゃ参ったな〜、あんただと胸を触るのも難しいや♪」


「・・な・・んで・・すっ・・・てぇ・・?」



ぬ・・室温が上がっている!?

うおっ、ヒミカの背中に哀しみの業火が燃え出している!!

スフィアハイロゥの動きもどことなく哀愁が漂っている!?

「ああっ!まずい・・ヒミカさん落ち着いて!?」

「ダメよ、ヒミカ・・怒りに身を任せちゃ!」

周りが落ち着かせているが・・もはや焼け石に水のようだ

「そうだぜ♪怒ったらいけないよん♪

胸がマナ消失のヒミカさん♪」



「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」




血の涙を流しながらプッツンしちゃった・・

そんなに気にしていたのか・・

だがこれはピンチでありながら逆に言うとチャンスでもある

混乱を誘う事こそ活路を見出す秘策なり、

ヒミカの射殺さんばかりの視線が非常に痛いのですが・・

「いけない!ハリオン、ファーレーン!ヒミカを取り押さえて!」

あの冷静沈着なセリアが焦っている・・こりゃ本当にヤバイのか・・

「めっ、ですよ〜?ヒミカ〜。落ち着いてください〜」

ヒミカの腕を掴んで宥めているハリオンさんだが胸がしっかりと彼女に当たっているその行為は油を注いでいるしかない・・

「何よ!!貴方達みたいなふくよかな胸を持つ連中にはこの気持ちはわからないわよ!

私だって・・私だってぇぇぇぇ!!!」

・・まるで魂の叫びだな・・・

「ヒ・・ヒミカさん・・、いや、ヒミカさんも周りに比べたら少し・・いや、かなり小さいだけで

あの人が言うように決してマナ消失の後の大地のような胸というわけではありません、

それに近い部分はありますが・・」

・・フォローになってないぞ?

「もういいわよ!不審兵・・貴方だけは・・貴方だけは許さない!!!」

油注いだ他の二人はいいのですかい!?

こりゃもう誰にも止められないか

・・ならば潮時よ・・

「ふっ、平常心がないな。ともかくこいつは有効に使わせてもらうよ。

ではスピリット諸君!さらばだ!」

懐から取り出すは小さなガラス玉・・

それを床に叩きつける!


「逃がすかぁぁ!私の怒り思い知れぇぇ!」


咄嗟に飛びかかるヒミカ、

うわぁ・・怖ぇ・・

しかしそれよりも俺の方が早い


カッ!!!


「うっ!」「きゃ!」「何!?」「いやん〜」


一瞬で居間を包み込む凄まじい閃光、アンジェリカからもらったもしもの時の脱出道具だ

そしてその閃光が治まる前には俺は窓から飛び出て暗闇の中は駆け出していた


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