第六話  「龍の息吹」


ソーマ部隊第一師団と呼ばれる小隊の相手をした後

特に追撃があるわけもなく無事ラキオスへと到着した

腕の傷は気孔とアンジェリカお手製の携帯薬で何とか治ったが

満足な動きができるようになったのはラセリオに到着した頃・・思った以上の手傷だった

『無音』のオウカか、随分な強敵がいたもんだぜ



「なるほどねぇ・・、結構難儀な相手じゃない」



ラキオスの宿に戻って相も変わらず宿を占拠して色々と勤しんでいたアンジェリカさんが一言

話の内容と俺の傷を見て驚いていた

格言う俺はテーブルにごっそりと積まれている本の数に驚いている

いつの間にこんなに買ったんだよ・・

字が読めないから何の事についての本か全然分からん・・

「結構な深手だったからな・・、まぁお前の薬のおかげでもう大丈夫だが・・」

ベットに寝転びながら腕の傷を見る・・まぁ跡は多少残りそうな気がするが

もう全然大丈夫・・

「それは結構ね。・・相手はあの『漆黒の翼』だったの?」

漆黒の翼・・?

「誰だ?確かに黒スピリットが相手だったけど・・」

「ラキオス城襲撃の際の部隊長よ。

ウルカ=ブラックスピリット

大陸一の剣の腕でラキオス襲撃の際も目標であったエトランジェの一人を見事攫った人物

最強のスピリットとさえ言われているわ

まぁ噂だとラキオス勢に加わったとか言われているけど戦局が安定していないから情報は混乱しているわね」

流石、情報収集を行っているだけにもはやこの世界の事は全部わかったって感じだな

「いんあ、俺が相手したのはオウカって奴だ。確かソーマ隊って言っていたな」

「ソーマ・・なるほど、サーギオス妖精部隊の・・ね」

「なんだよ?有名か?」

「サーギオス勢力の中枢を担っている部隊の一つよ。よく無事だったわねぇ」

「そう簡単に遅れを取るかよ・・それに相手はその中の小隊だ。

まぁ・・目はつけられたみたいだがな」

「ただでは帰ってこないわね・・貴方・・」

・・いあ、好きで遭遇したわけちゃうて・・

「そんなことよりせっかく手に入れた結晶体だ。・・どうだ?期待できそうか?」

到着してすぐマナ結晶体をアンジェリカに渡しそれを鑑定しながら会話を進めていたのだ

ってかそれでわかるのかねぇ・・

「相当なマナに還元できそうだけど・・術の行使には少し物足りないわね。これと同じ大きさのが後2つぐらいあればいけるわ」

うへぇ〜・・めんどくさぁ・・

「めんどくさそうね・・?」

「わかります?」

「顔に書いているもの」

「そりゃどうも・・、まぁやらなきゃいけないわけだしな・・とっとと次のを探すか。・・情報は?」

「旧イースペリア国のランサに発見されたらしいけどこれはすでにラキオスのスピリット隊が回収済みね

他に未回収とされているのは、旧サルドバルト国のサルドバルトとバートバルトの中間地点にある洞穴ね

・・目撃情報があるって」

・・・洞穴・・ねぇ・・

「サルドバルトって今はラキオス国の一部だけど以前はそこが一国の首都だったんだろ?よく回収されなかったなぁ」

「それはそうよ、その洞穴には龍が住んでいると言われているのだからね」


・・・・・・はい・・・・・・?


「アンジェリカさん、今、龍とおっしゃりました?」

「ええっ、言ったわよ?」

「・・そんなん、おるん?」

「いるわよ、最近でも『求め』のユートが『リクディウスの魔龍』と呼ばれた門番サードガラハムを倒したと言われているみたいだし。

まぁ私達の世界と同じくどうやらそう滅多にお目にかかれるモノでもないらしいけどね」

「いやっ、会いたくないだろう!普通!」

俺達の世界でも龍ってのは伝説の生き物、ってか究極の生物とまで言われている

目撃例が極端にないが確かに存在しているらしい・・

「噂よ、あくまでね・・本当にいたなら潰せばいいだけでしょう?」

・・流石はアンジェリカさん・・目的のためなら躊躇う事を知らない

「楽させてくれないなぁ・・」

「楽して大事は成せないわよ。さっ、戻ってきたところ悪いけどさっさと準備するわよ?」

「何故に!?少し休ませろよ!」

ケムセラウトからの小旅行はまぁ危険なものじゃないがそれでも少しはねぇ・・

「はぁ・・、旅先で聞かなかった?ラキオスとマロリガンの戦いがいよいよ終盤を迎えているのよ。

彼らが戻ってきたら何かと動きにくいでしょう?」

・・う・・そういや治療に専念していたから全然知らないな

「ラキオス優勢なのか?」

「ええっ、マロリガンのマナ障壁が打ち砕かれてスレギトへの侵攻に成功しているわ。

ここからマロリガンとの総力戦に入るんだけど・・、切り札を失ったマロリガンに巻き返すだけの勢いはないでしょうね」

冷静に言うね・・

まぁ圧せているならいいか・・

「そんじゃマロリガンとの戦争にケリがつくまでに龍の洞穴から結晶体を回収すりゃいいんだな」

「そうね・・龍の存在の噂はスピリット隊にも届いているはず・・

もしかしたらマロリガン戦後に国力増強を目的に龍討伐に向かうかもしれないしね」

帝国との決戦に向けてとは言えども激戦の後にそんなことやらすかぁ?

・・レスティーナがそう考えるとも思わないが・・

「可能性よ?聡明な女王も目標達成のためには時として冷酷にならなければいけないものだからね」

「・・何俺の言いたい事言い当てているんだよ?」

「貴方って単純だから」


ムキー!!!


「どいつもこいつも毒舌ばっか!俺もうやだ!帰る!」

「ほらほら、すねないの。出発前にヨフアル買ってあげるからさっさと行きましょう?」

「子ども扱いすんな!ったく!」

まぁアンジェリカも一緒ならば龍相手でもなんとかなる・・かな・・?

それでも用心するに越したことはないか


・・・・・・・・
・・・・・・・・


その後用意を簡単に済ませてすぐに出発・・

ラースを経由してアキラィス、バートバルトまですぐに到着した

まぁアンジェリカと同行しているわけだから風魔法で歩行補助くれるので

ケムセラウトに向かった時に比べて格段早く到着することができた

バートバルトで洞穴の事をそれとなく情報収集した結果、やはり龍が住んでいるみたいだ

昔は守り神として崇めていたそうなのだが今はどういうわけか洞穴を訪れる者に襲い掛かってくるようになったらしい

・・っと言っても、圧倒的な力量差があるんだから最後の被害者が出てからもうだいぶ経つらしいけど・・な

それで、最近洞穴の近くを通りかかったここの住民が龍の鳴き声が聞こえたということで

ラキオス城へ報告したらしい

そこからは人は立ち寄っていなく、探索隊以外で洞穴の近づく事を禁じているとさ

それだけわかれば十分、一夜そこで明かしさっそくに問題の洞穴へと向かうことにした


・・・・・


「こりゃ・・龍がいてもおかしくないな・・」



洞穴前にて素直に感想が出てくる・・

湿地帯の途中に巨大な亀裂が入っている、斜めに大きく口を開き中が相当に広い事がわかる

「自然にできるにしてはおかしいわね、湿地帯のど真ん中なのに・・」

「っとはいえどもこの世界の気候はマナが左右しているんだろ?」

砂漠の隣が樹海だったり雪原だったりデタラメな気候の世界だ

こんな光景があっても不思議ではないんだろうな

「そうね・・、私達の常識では考えにくいこともある世界だものね。

それじゃ探索を開始しましょう。準備は大丈夫?」

「頼りとなる灯りは用意してくれるんだろ?いつでもオッケーさ」

いつでも戦闘に入れるように『崩天』装備はお約束・・

後はなるようになるさ・・バートバルトまで近いから食料も最小限で済む

さぁ・・異世界の洞穴探検としゃれこみますか


・・・・・・・・・


外が広ければ中も広い、あるで吹き抜けのホールのような巨大な空間が広がる

こりゃほんと龍が住んでいてもまったく不思議じゃねぇな・・

それに思った以上に明るい・・、これもマナの影響なのかな・・

ほの明るい光が壁から放たれており神秘的な雰囲気を放っている

これなら灯りがなくてもある程度見渡せるな

流石に湿地帯内だけにそこらに水溜りができており湿気があるのだが温度自体が低いから不快感はあまりない

「それで・・アンジェリカの魔法なら龍とも話できるのかな?」

まぁ話し合いでわかるならそれでいいんだけど・・

「相手にもよるわね、向こうがこちらと話をする意志があるならわかるでしょう。

もっとも、本能のまま襲い掛かる獣みたいな相手ならば意思疎通のしようがないんだし、

それなりに知能がある龍ならば向こうから話しかけてくると思うわよ?」

・・・なるほどね・・

「個人的には後者を希望します」

「同感ね、後者だとマナ結晶体のことにも聞けるわけだし」

「獣相手にゃ聞けないしな・・むっ・・」

洞穴の奥の方から不気味な音が響いた・・

「どうしたの?」

「何かの鳴き声・・かな。咆哮のようなモノが聞こえた」

・・かすかだが確かに聞こえた

「本気?何も聞こえなかったわよ?」

「俺の耳は普通じゃないのさ・・、何かあるのは間違いな・・い?」

急に空を裂く音がこちらに向かって響く・・?

「クロムウェル!」

「わかっている!!」

咄嗟に今いた場所を飛びのく!


轟!



次の瞬間暗闇から光の波動が襲い掛かり俺達がいた場所を焼き払った・・

おいおい、狙撃か?

「熱烈大歓迎ってやつか・・、ったくあんなのまともにもらえないぞ?」

神剣を持つスピリットやエトランジェならばその力で高い防御能力を発揮できるだろうが

こちとら戦闘能力に長けているとはいえ普通の人間だ。

直撃貰えばいくら俺でも致命傷は避けられないな・・

「魔法で障壁ぐらいは作ってあげるわよ・・、さっ、おでましよ」

ズゥ・ンズゥ・・ンっと重い音が響くととも振動が伝わる・・

それとともに暗闇からゆっくりと姿を見せるは美しい碧色の皮膚を持つ龍、

鋼のような逞しい筋肉を持ち龍翼は折りたたんである・・思ったよりも小柄だが・・

全身から発せられる異様な殺気からして油断はさせてもらえなさそうだ

「グルルルルルル・・・」

ギョロっと殺意に満ちた瞳を俺達に合わせ唸る龍・・

唸り声からしてお友達になりにきたわけでもない、

まぁ早速にブレスのプレゼントももらったし

「門番ネストセラスに間違いないわね・・前者で決まりのようだけど・・、ファイナルアンサー?」

「ふぁいなるあんさー・・・ってか勝てるかな・・」

とんでもなくタフそうだ、普通に殴ったところで与えるダメージは期待できない

「これを倒すのが目的じゃないってこと・・忘れないでよね」

「んなもんわ〜ってらぁ!援護頼むぜ!」

とりあえず突っ込む!

「あのブレスの射程からして逃げるのもできるか不明だしね・・『疾空』」

援護として軽くアンジェリカが手を振るうとともに白い空気の弾丸が無数に放たれる!

あいつの主力の術だ、詠唱時間がほぼゼロで無数の風の凶器が蛇腹を描き獲物を仕留める

牽制なんかにもちょうどいい

「グ・・!?」

流石に一発一発の速さが違う、ロクにネストセラスは防御体勢を取らずに直撃を立て続けに受ける!

「おんどりゃぁぁぁ!龍が怖くて異世界隠密紀行やってられっかぁぁぁぁ!!」

その隙を見て一気にネストセラスの頭上へと飛び上がる

ここまで体格差があるならば一撃を入れる箇所を考えなければいけない

ずばり!狙いは眉間!

「ラァァァァイトニング!ブレイカァァァァ!!」


ドォン!!!



放電をしながら俺の拳がネストセラスの眉間に食い込む・・脳に強烈な電撃が走ったはず・・どうだ!?

「!!!・・・グルルルル・・・(ギロリ)」

あら〜・・睨まれちゃった・・

「クロムウェル!」

「んならぁ!」

咄嗟に奴の頭を蹴り回避!


轟!!



その瞬間に空恐ろしい速度でネストセラスの腕が襲い掛かった・・

薙ぎ払うなんてもんじゃねぇぞ、おい・・

「・・!?」

っと、薙ぎ払いながら少しよろけた・・?

「へっ・・ちったぁ・・効いているみたいだな」

急いで後退しアンジェリカと合流、追い討ちかけるにしてもねぇ・・

「急所へ強力な一撃が入ったもの、いくら龍でも多少は効いているはずよ?」

隣でシレっというアンジェリカさん・・いやはや・・ここまで落ち着いているとなると頼もしいのなんのって

「でもどうする?同じ箇所狙い続けるか?」

「警戒はするでしょうけど・・頭部が有効なのには変わりはないわね」

だろうなぁ・・ってか他の部分殴っても逆に俺にダメージがありそうだぜ・・

疾空の弾丸もまるで効いていないみたいだ。正しく鋼の肉体ってか?

「一点集中で行くわよ、時間かけたらこっちが不利だし。」

「あいよ、そんじゃまた牽制してくれ・・お・・?」

何時の間にかふらついていたネストセラスが体勢を立て直し俺達を睨んでいた

電撃の効果はもう治ったらしい・・でたらめだぜ・・

「グァァァァ!!!」

まずっ!?大口開けてまたあのブレスを吐く気だ!

「ちっ、避けるしかないだろうがぁぁ!」

「甘いわよ、不意打ちでなければ防ぎようもあるわ・・『グランプレス!』」

軽く印を切るアンジェリカ・・それは・・

「グォ!!!」

途端にネストセラスの体が地に吸い付くように体勢を崩す

風圧で相手を封じるアンジェリカオリジナルの魔法『グランプレス』、なるほど・・

「青スピリットのバニッシュスキルを参考にね・・、

あの体躯には子供騙しだけど姿勢が不安定ならブレスは吐けないでしょう?

仕掛けるわよ!」

ぬっ、俺の体に風が纏わりついてくる・・ありがたい!

「あいよ!大技いくぜぇ!」

一気に突っ込む・・移動速度が格段に上昇している・・

この勢いを殺さず、奴のうな垂れた顎に向けて放つ!

「『ライトニングステーク!』」

ブレイカーの強化版!雷纏った手刀を食らいやがれ!


ズン!


「!!!!」

風圧の力に動揺して隙が目立つネストセラスの顎に深々と手刀が刺さる

ここからが見せ場だ!

「貫けぇぇぇぇぇ!!!」


パァン!


空を裂く音とともに貫いた顎の真上の鼻から雷の筋が走る!

これがステーク、手刀で突きそこから雷の刃を放電させる・・

あの雷が立てば顎から口を通過して鼻に一気に刃が貫通した事になる

・・アンジェリカのアドバイスであみ出したとっておきだ!

「グ・・ウウウウウウウァァァ!!!!」

流石にこの一撃は効いたのか衝撃で大きく顔を上げるネストセラス

しかしそこに

「ごめんなさいね、これも仕事なの」

何時の間にか優雅に龍の鼻先に降り立つアンジェリカ・・、俺の動きを陽動に自身は風に乗って飛び立っていたみたいだ

ってか・・自由落下する俺からは下着丸見えです

まぁそれは置いといて安全圏まで一旦退避しながら様子を伺う

あいつが前に出るなんてな

俺も隙を見て連携組めるように警戒していないと・

「グル・・・」

「おやすみなさい・・『狂風』」



ドォン!

ドォン!

ドォン!

ドォン!

ドォン!

あれは・・『疾空』よりも強力な風の弾丸を放つ攻撃魔法・・

貫通性が高いアレを眉間に立て続けに放っている

「グ・・ウォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」


ズ・・ゥゥゥゥン・・・


流石に立て続けに何度も急所を狙われたら龍と言えどもたまらないらしく咆哮を上げながら前のめりに倒れた

なははは・・、倒れるだけで地震だぜ・・

「・・・・殺ったか?」

そのまま優雅に風に乗り舞い降りるアンジェリカに聞く・・止めの感触ぐらい魔法でもわかるだろう

「ネストセラスは消滅していないでしょう?気絶させただけね・・」

あれだけの攻撃を受けてまだ倒せないとはな・・タフにもほどがあるぜ・・

「やれやれ、流石は伝説の生物・・」

「そうね、あの薙ぎ払いだけでもまとも入ったら致命傷でしょうし・・」

まったくだ・・神剣持っている奴が少し羨ましいもんだ

「それにしても・・『狂風』のほうも使えたんだな」

アンジェリカさんがこの魔法を使うのを見るのは初めてだ・・

「”あの子”の愛用する術は全般的にあまり使いたくなかっただけよ、これでも風に関する術は網羅しているわ」

あはは・・流石に因縁は深い・・

「まぁいいや、それで・・マナ結晶体はどこにあるんだ?」

「さて・・ね、噂によれば龍が死んで数日経てばあると言われているんだけど情報ってひょっとして龍の事だったのかしら・・ね」

いやっ、それだとしても倒せてないし・・

「とにかく、こいつが出てきた奥のほうも調べてみようぜ」

何かあるはずだ・・・、まぁ龍が目を醒まさない事を祈りますかな


・・・・・・


ネストセラスが出てきた奥の空間は巨大な水溜りになっていた

周囲はドーム状になっており一際壁から放たれる光は強い

何か神々しい雰囲気すらある

そして・・

「・・・・・・あったな・・・・」

「・・・ええ・・」

水溜りの中央部に青く大きな塊がある。

間違いなくマナ結晶体、それも俺達が手に入れた物より数段大きい、

まるで岩みたいだ・・

ひょっとしてあの龍はこれを守っていた・・のか・・?

「昔は守り神だったあの龍が何故か人を襲うようになった・・

その理由は謎に包まれているみたいだけど、この結晶体が答えなのかもね」

「・・どういうことだ?」

「マナ結晶体は純粋なマナ・・命があったモノがそうなったとも言われているの・・

自然発生するのもあるみたいだけど・・これを見る限り・・」

確かに・・ケムセラウトで渡されたのに比べたら大きすぎる・・

っというか自然にできた物にしては不自然だ

それこそ龍が死んだ後に出来るマナ結晶体って話が信じられるくらいの代物だ

「さっきの話・・龍が死んだらそこに結晶体が見つかるんだった・・よな。

じゃあこの結晶体はあのネストセラスのお仲間の成れの果て・・か?」

「はっきりとしたことは不明よ、だけどこの状況で今私達が結論付けるとしたらそう考えるのが自然なのかもね・・

さて、どうする?・・貴方に任せるわ」

やれやれ・・、こうした判断をすぐ俺に任せるのがアンジェリカさんの悪いところだぜ

「俺の考えは単純なんだろう?・・略奪してまで持ち帰る気にはなれねぇよ・・

それに、これを持ち出して向こうで伸びているネストセラスが大暴れしだしたらここらの街危ないしな」

あのブレスだけで街一つ壊滅しかねないし・・

「ふぅ・・それじゃ、今回は無駄足ということでいいわね?」

「まぁ龍相手にそれなりに対抗できる力量がある事がわかったからそれだけでもめっけもんだぜ。

・・・ほらっ、そうとわかれば帰るぞ?奴が目を醒ましたら厄介だ」

「意外に臆病なのね(クスッ)」

「あのな!あんなのと好きでやりあいたいわけじゃないっての!!

ほらっ、とっとと外にでるぞ!」

「はいはい・・、貴方と一緒だと・・手段を選ばないといけないからね・・」

ふん・・

わざとらしく愚痴るアンジェリカを無視しながら俺達は洞穴を脱出した

幸いネストセラスは気絶したままであったが・・

俺達が洞穴から出て湿地帯から立ち去ろうとした瞬間

あのけたたましい咆哮が鳴り響き・・再び一帯を静寂が支配しだした

どうやら、宝物が無事なのに安心したらしく、俺達を追撃する気はないようだ

門番というよりかは・・宝の番だったようだな

「何ボ〜っと洞穴を見ているのよ?」

「あ・?いやな・・、これでよかったんだ・・な?」

「貴方がいいと思うならそれでいいんじゃない?私は文句は言わないわよ?」

「でも愚痴るんだろ?」

「わかっているじゃない・・さっ、ラキオスに帰りましょう?

あの洞穴は・・人が立ち入らないほうがいいわ。」

「そうだな・・帰るか・・」

収穫はないが、これでよかったんだろう

そうと決まれば次の手を探すか・・

はぁ・・いつになったら帰れることやら


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