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第三話  「ラキオス城潜入」


その夜、ヨーティアは本当に本をベット代わりにして俺達を寝かした

イオは反対したのだが・・・まぁ地べたに比べたらだいぶマシなのは事実なので

最後には言いくるめられていた

まぁ夜営には慣れているしアンジェリカも講師をしていた時にこういう事をしていたらしいので

別に嫌な顔をしなかった

俺もどんなところでも寝れるような体質だから問題はない

・・・ただ・・

その夜俺は天才と助手の『戯れ』に付き合わされることになる

まぁそれはまた別の機会にでも・・・

「・・よ〜う、おはよう!客人がいるから夜更かしもできなくてあたしも久々に早く寝たよ〜

いやぁ〜、たまには規則正しい生活も悪くはないねぇ・・」

上機嫌なヨーティア、外からは鳥の鳴き声が聞こえてき洞窟内の空気も澄んでいる

だが・・

「クロムウェル、寝付けなかったの?」

「お〜お〜、酷い顔しているなぁ・・」

「・・夢で・・エーテルに追い掛け回された・・」

枕までエーテルに関する本だったからか、「エーテル!エーテル!」って叫んでいる

変な黒い影に追い掛け回された

・・我ながら奇妙な夢だったぜ・・

まぁ他にも色々と衰弱しているのですが・・

「はぁ?何言っているんだぁ、こいつ・・」

「さぁ・・。まぁ奇妙な発言はいつものことよ」

「うるせ〜、たまには変な夢も見てしまうもんなんだよ・・ったく」

外の空気でも吸えば少しは気も晴れるか・・

ともあれイオに貰った荷袋の中身を確認する

地図に毛布、これは・・干し肉か。

後は小さな袋・・ジャラジャラって音が・・ってこれ・・硬貨!?

「統一硬貨である”ルシル”です。地域によって物価は違いますが

とりあえずはラキオスまでの片道分ぐらいならば大丈夫でしょう」

「おいおい・・ずいぶん気前がいいなぁ・・」

「研究費の一部さ、異世界からの客人にくれてやるにゃ少ないだろうが・・」

「十分よ、助かるわ」

「有意義に使用してください。

ここで偶然出会ったのも何かの縁・・他にも何か協力したいところなのですが・・」

「まぁこっちもこっちで都合があるからねぇ・・。手を貸せるのはこのぐらいだ」

口は悪いけど結構良い奴だな・・

これ以上は迷惑もかけられないだろうし

「十分さ、後の事は自分でなんとかできる」

「お〜、頼もしいねぇ・・。まぁ気をつけな・・エトランジェが現れて以来、この地はどうにも物騒だ

ラキオス、マロリガン、サーギオス・・どこも何か企んでいる。しょうもないことに巻き込まれるなよ」

「・・・ヨーティア・・」

「あん?」

「・・、この世界に飛ばされた時点でもう巻き込まれているって・・」

「・・・、あっはっは!!それもそうだな!!」

いやっ、そこ、笑うところちゃうよ?

「人事だと思って・・」

「前にも言ったがまぁ神剣を持つエトランジェが国に加担すれば戦況が変わるほどなんだ。

もっとも剣無しだとどうかは知らんが気をつけるに越した事はない」

「ああっ、これから行く処だと『求め』って剣を持つユートって奴だろう?

人質取られて戦わされているとなりゃそりゃ必死にもなるだろうな」

こんな山奥でどうやってそんな遠くの情報仕入れているのか謎だが

どうやらエトランジェに関するモノにはかなり集めているらしい

・・・ヨーティア自身もどうやらラキオスの動向が非常に気になっている節があるしな

それにしても『求め』ねぇ・・変わったな名前の剣だぜ。

どうせなら『求められ』のほうが俺はいいなぁ・・

『求められ』のクロムウェル・・ウハウハじゃないですか!?

「否応がなしに戦わされる・・同情するわね」

っと周りは真面目な話の最中だった・・

真剣な顔つきで全然違う事を考える、ふふふ・・俺の特技だ

「とは言っても動機はどうあれ戦う事を決めたのは本人だろう?

ならばそれを終わらすのは他人の手じゃなくて自分の手で終わらせないといけないさ

自分自身でケリをつけないと戦場からは離れられない・・これ鉄則だぜ」

それに・・俺達がラキオスに不法侵入するとなりゃ最悪その『求め』のユートとやらとも手合わせするかもしれないんだしな

・・まぁ現在はスピリット引き連れて前線にいるからほんとの最悪な場合だろうけど

「間が抜けている割にはたまにまともな事いうねぇ・・あんた」

「恩師のおかげさ。そんじゃそろそろ行こうか・・世話になったな・・ヨーティアはともかくイオ」


「・・いえ・・」「な〜にを〜!!」


ふふふ・・天才と言っているわりには意外に短気らしい

「ちゃんと礼を言わないと失礼よ?クロムウェル」

・・むっ・・

「はん!そんな奴に礼など言われても嬉しくもなんともないぞ〜!」

「まぁまぁ、ヨーティアも世話になったぜ!」

「・・まったく、調子がいい奴だ。まぁがんばれよ」

「クロムウェルさん、アンジェリカさん・・貴方達にマナの導きを・・」

眼を閉じ祈るイオと軽く手を振るヨーティア

俺達もそれに応えつつ異世界の旅路についた


・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・


俺達が最寄りとも言える町ダラムに到着した時にはすでにラキオスとサルドバルトは交戦状態に入っていた

流石に世間の目はそこに向かれており奇妙な格好をしている俺達にはさほど興味がなかった

まぁ俺達はといえばそういう生活の知恵というのだけは長けているので「旅の大道芸人」ということで

たまに芸を披露ながらラキオスに向けて北上した

・・芸?まぁ姉御直伝の腹芸とか、アンジェリカの風魔法によるインチキナイフ投げとかかな

この世界ではあまりそういうのがないらしく奇妙な眼で見られつつも拍手喝さい

おかげで旅費も中々に溜まって来た



・・そして、俺達は特に騒動に巻き込まれることなくラキオスに到着した・・



「思ったよりも・・俺達の世界と酷似しているのが驚きだ」

ラキオス城下町の賑わいようを見てびっくり、まぁ流石に勢いがある。

それにどうやら俺達がラキオスに到着する数日前にサルドバルトとの戦いが終了し見事勝利したみたいだからなおさら活発なんだろう

・・どうにも戦の終わりが早いのはやはりスピリット同士の戦いなんだろうな。

劣勢に立った国ってのは国家総動員に玉砕法みたいなのを取るのが普通なのに・・あっさり負けを認めたらしい

因みに到着と同時にアンジェリカとは別行動、あいつはあいつなりに情報を集めるって事らしい

俺は特にやることもないのでブラブラと周辺の様子見をしている

「・・すげぇな、見たことある果物とかあるよ・・」

良くルザリアで叩き売りしているのを見たことがあるが・・叫んでいるところからして名前は違うらしい

まぁ当然だろうな・・。

どうやら世界が違っても土壌の性質が似ていたら同じような作物が育つらしい

・・それにしても結構複雑な街だな・・

区画を複雑にするのは敵の侵入を食い止める役割があるって聞いた事があるが〜・・この世界じゃそんな理由じゃないか

スピリットは人間には逆らえないらしいし、ここの人間がわざわざ武器を手に取るとも思えない

「にしても・・アンジェリカの奴ももう少し連絡入れろよなぁ・・」

あいつも初めての街なのに平気でズンズン進んでいくんだから・・

ったく、まぁあいつは目立つから探しながら歩くか

にしてもそろそろ日も傾いてきたのにまだ人通りが多いな・・流石は王都か・・



「エスペリアお姉ちゃん!早く早く!」

「こら、オルファ・・そんなに走っては・・あっ!前!」



ん・・ぬおっ!?


ドン!
・・ベチャ!!


出会い頭に派手にぶつかってしまった!

・・ちっ、俺もヤキが回ったか!?

・・ってか・・なんか顔にへばりついたんだが・・

「甘い・・、果物かなんかか・・っておい、大丈夫か?」

良く見ればチッコイ少女が尻餅ついていた・・、なるほど、この子が俺にぶつかったわけか・・

どうやら買い物の途中だったらしく紙袋から色々と散乱している

赤い髪をツインテールに括り、フリフリな赤いドレスを着ているが・・スカート部がかなりきわどい・・これって大丈夫なのか?

ううん・・クラークさんが生唾飲み込む幼女だな

・・・・・・

口が裂けても本人の前には言えないな・・

「あいたた・・ごめんなさぁい・・ああっ!お顔に・・」

「ああっ、別に構わないさ・・っと、ほれ、買った物散乱しているぜ?」

何か良くわからんが野菜みたいなのを拾ってやろうとするのだが

「申し訳ございません!」

俺と少女の前に割って入り深々と頭を下げる女性

・・格好からしてメイドさんかな?きちんと着こなしており清楚な感じの淑女だな

茶色の髪がサラサラしている・・

「ん・・あ・・?」

「この子もまだ若いので何とぞお許しを!ほらっ!オルファも!」

「・・ごめんなさぁい・・」

う・・オルファって少女のほうも目に涙をためている・・

「ちょ・・ちょっと待ってくれ!」

「・・は、はい!何でしょうか!?」

「いやっ、俺も前を見て歩いていなかったこともあるんだ。そこまで謝らなくてもいいしお互い様だ」

「で・・ですがお顔に・・」

「ああっ、心配してもらうほど立派な顔じゃないさ。

それよりも往来の邪魔だ、さっさと散らばった物を集めようぜ?」

「あ・・はい!」

思い出したように散らばった野菜達を集める女の子二人組み・・姉妹かな?

ってか周辺の視線集まりまくりだな・・、なんか白い眼差しだ・・ったく


「・・何見てんだよ?ああっ?」


見世物じゃないんだ、うざいから一睨みしたらそそくさと逃げていきやがった

・・なんなんだ?

「ほい、これで全部かな?ちゃんと確認しろよ?」

「うん!・・お兄ちゃんの顔で潰れちゃったの以外全部あるよ!」

「あはは・・まぁこれはしょうがないか」

手拭でふき取ったが甘い香りが取れない・・髪に染み込んだのかもしれないな

「あの・・本当に・・」

「いやいや、お嬢ちゃん。気にするなって・・ってか謝り過ぎだぞ?

・・俺が怖いとか・・かな?別にそっち系じゃないんだけどな・・」

「いえ!そういうわけでは・・ただ、私達はスピリットです。あまりご迷惑をおかけするのは・・」

『スピリット』その単語が出てきた途端二人の顔色が少し曇る

なるほどな、さっきの野次馬野郎達は俺を見ているんじゃなくてこの二人を見ていたのか

「ふぅん・・スピリットか・・。ううむ・・」

「あの・・」

「・・イオにしてもそうだがどこが人と違うのかねぇ・・、全く理解できん」

そりゃ目が3つもあったりしたらある程度距離置きたい気持ちもあるが・・俺達と全く同じじゃないか?

差別する理由が不明だぜ

「は・・?」

「いやっ、気にするな。別に俺はスピリットだろうが差別する気もないから安心しな・・

それに俺の髪色も珍しいらしいしなぁ・・」

この世界って金髪いないのかな?・・まだあったことないや・・

「お兄ちゃん・・」

「まぁ人の事言えないが前見て歩くように!危ない事には違いないからな」

少女の頭をポンポンっと軽く撫でてやる、それだけで怯えていた少女の顔がほころんでいった

「ありがとう!・・えへへ♪」

「ありがとうございます・・」

「いやいや、いいってことよ・・む・・?」

妙な悪寒がする!これは・・


”あらあら、こんな状況でナンパ?・・お盛んね”


背後・・それも俺のすぐ後ろから聞こえる嫌〜な声・・

「アンジェリカさん、これには深い訳があって〜決してナンパをしていた訳じゃぁないんだよぉ?」

「ふぅん・・ならば当たり屋まがいの事かしら?」

ちゃうわい!出会い頭にぶつかっただけじゃ!」

「そうかしら?怯えている様子からして体目的に・・・・冗談よ、殺気立たないで」

「ったく・・。彼女達はスピリットだから俺に過剰に反応しただけさ」

「・・スピリット・・ね。二人とも安心して?この男は短気だけど可愛い子には手を上げないタイプなの」

うるせー

「は・・はぁ・・」

「ほれ見ろ、リアクションに困っているだろうが・・。それよりも急いでいたんだろう?

もう日も暮れるんだし早く行きな」

「うん!お兄ちゃんありがとう!」

「本当に、ありがとうございます・・。

では、これで・・。あっ!オルフォ!だから走ってはダメ!」

「だってカオリが待っているんだもん〜!!」

元気良く走りだす少女とメイドの姉ちゃんは一礼して再び走り出す少女に注意しだす

・・・まぁ、子供は走り回ってなんぼか

「・・そんで、別行動して何か得たのか?そろそろ宿を探したいところなんだが・・」

「それだけど・・こっちに来て・・」

真剣な顔つきで俺の手を引くアンジェリカ

・・どうやら手が見つかったらしい



・・・・・・・・



連れてこられたのは湖に面した高台

細い路地をくくりぬけた先にあり絶景が望めるわりには人気がまったくない・・

デートスポットにゃちょうどいいのにもったいないな

まぁ人がいないのは今の俺達には好都合・・

「・・で、なんだ?」

「城に入る手はずができたわ。・・これよ」

荷袋から取り出すは・・街をうろついた時に見たラキオス兵の服装だ

「おいおい・・どこから手に入れた?」

「巡回している兵の一人を誘惑してね、物陰に連れ込んで眠ってもらったわ

催眠術をかけたら3,4日は眼を醒まさないし起きても記憶は消してあるから問題ないわよ」

・・うわっ、エグ・・

「そのために俺と別行動したのか・・」

「貴方と一緒じゃやりにくいからね、さっ、これに着替えて城に忍びこんで」

・・・やっぱりそうなるか・・

「でっ?お前は?」

「情報を集めるわ。・・侵入するための用意はしたんだし・・」

「はぁ・・、わかったよ・・それでラキオス城のどこに忍び込めばいい?」

「耳に挟んだところ王族以外の使用を禁じた図書室があるらしいの。そこに巡回という名目で忍び込んで。

マナ結晶体に関する情報もそこにあるはず・・」

なるほどな、いかにもってところだ・・

それならなんとかなるか。

「やれやれ・・・軍規にゃ詳しくないから下手すりゃばれそうだが・・まぁもう直、日も暮れる

・・そこまで兵もいないだろう」

「そう、それと・・、さっきのスピリットがいたようにラキオスのスピリット隊がもうサルドバルトから帰還しているわ。

何か騒ぎがあった場合最悪彼女達と顔を合わすかもしれないから気をつけて・・」

さっきあったお嬢ちゃん達と・・か。

まぁ偶然とは言え顔を知ってしまったんだから・・敵対はしたくねぇな

「善処します・・。そんじゃ着替えるか・・」

裸知っている間だけに目の前で脱いでも大丈夫だな

・・・・ん・・?

服は別にいいが・・この鎧やけに軽いし・・柔らかくねぇか・・?

兜まで丁寧にあるけどほんとに頭を守りきれるのか疑問だな

「良く似合っているじゃない、何処から見てもラキオス兵よ?」

「当たり前だ。ってか無意味に動きにくい構造だな・・」

「実際に戦闘をしないわけなんだからわからないんでしょう?ダミーアーマー着ていると思えばいいわ」

「へいへい・・それじゃ潜入してくるぜ。アンジェリカは適当に時間潰しておいてくれ」

「わかった、貴方の気配ならわかるから城から脱出したのを見計らって合流するわ」

・・・どうせアンジェリカの事だ。

時間潰すって言っても後々の手はずを整えたりするんだろうけどな・・

まぁいい、そんじゃ異世界のお城に社会見学としゃれ込みますか!



・・・・・・・
・・・・・・・



・・しばらくして・・

城内に意外なまでにあっさり侵入成功・・。

まぁ・・サルドバルト戦の勝利に浮かれていたのかな?

内装はまぁ予想通り、重厚な絨毯に威圧感が漂う扉・・

柱などにも細やかな装飾がされているが全体的に少し薄暗い気がする

・・エーテルの節約?まさかな・・

だが、内部は予想していたより広い。

広大な中庭もやら近くにエーテル変換施設もあり謁見の間なんか吹き抜けか・・

もともと小国だったって話だが・・随分と気前のいい造りだぜ

それにどうやらスピリットの詰め所もあるらしい。

ここらは厳重管理されているらしい・・まぁ兵にとっちゃ好き好んで近づくもんでもなさそうだ

「さて・・、どうするか・・」

一通り見回ったがそれらしい部屋はない。

後は王族が寝所としている階だが・・

やはりそこかな。

夜間ということで人は少ないがこれから先はもっと気をつけなければいけないか・・な


・・・・・


流石に、王様のプライベート空間は広く静かだ

延々と続く廊下に幾つも扉があるが・・人影が一人足りとしてない・・。

ううむ・・無用心っちゃ無用心だが・・

返って好都合、ただ一つ一つ開けて確かめるわけにもいかないしなぁ・・

「・・おい。そこで何をしている・・?」

っ!!

「わ・・私ですか?」

ち・・ここにも巡回がいたか・・。当然の事ながら俺と同じ服装の兵一人が近づいてきた

「他に誰がいる。持ち場はどこだ?」

「え〜っと、実は王から直に命令が下りまして・・図書室から書物を持ってきて欲しいとの事なんです

ですけど・・この階に来るのは初めてで・・」

「ふん・・なるほどな。確かにお前の若さではここの警備はまだ早いだろう・・」

・・なるほど、この階の巡回はそれなりに経験がある奴・・か

「はい・・、それでどこに行けばいいでしょう?」

「ああ・・突き当りから二つ手前の部屋だ。扉が他のと違うからわかるだろう・・鍵はあるか?」

「・・鍵、あるんですか?」

・・王様の図書室なら当然か・・。

元々鍵ごと捻り開けるつもりだったんだけど・・

「当たり前だ。王も何故にこんな若造に・・ほらっ、これが鍵だ。」

「あざ〜っす!」

「妙な言葉使いをするな、それと・・王は読む書物は限られている。

今回の勝利でもし別の書物を読まれるつもりの場合は

埃などをきちんと払ってからお渡しするように」

・・無精者だな・・

「了解、粉骨砕身の覚悟で挑みます!」

「・・・・、まぁいい。鍵は後で返すように・・じゃあな・・」

軽く鼻息をつきながら立ち去る兵・・まっ、疑われるわけでもない・・か

そんじゃサクっと行きましょう〜


・・・・・



流石は王族が使用する図書室、でかい机の後ろには本棚がぎっしり・・

アンジェリカの書庫よりも数が多いな

「大当たり〜・・」

まぁ、お目当ての代物以外は俺には興味がないのでパス、さっさとマナ結晶体の情報を記した本を探すか

「・・え〜っと・・・あ゛・・・」

字が・・・読めない・・



なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!



やってもうた!!言葉が通じるから気にしていなかったが文字も俺達と全く違うんだった!!!

アンジェリカもそのくらい気づいて作戦立案しろよぉ〜!!!

くっ・・それはまぁいい・・。

このままだと何が何だかさっぱりだ!

とにかく何か手を打たないと・・

「さっきの兵士に聞くか?

いや・・流石に2回も質問したら怪しまれるか・・だが他に兵士はいなかったし・・」

くそっ、せっかくここまで来たのに・・

・・んっ?

足音・・?こっちに近づいてくる・・

ちっ、とりあえず身を隠すか。幸い本棚が多い分死角も多い

咄嗟に身を隠した瞬間に図書室の扉が静かに開かれる

「・・鍵が開いている・・?誰か閉め忘れたのかしら?」

軽く首を捻りながら中に入る白いドレス姿の若い女性、黒く透き通った流髪が気品高い

王族しか使用できない事に加えてあの若さだと、王女レスティーナか・・

参ったな・・よりによって王族の登場か・・

ん・・?

「はぁ・・」

調べ物をするかと思ったらレスティーナはゆっくりと椅子に座り机にうな垂れた

・・相当疲れているようにも見える。

「私は・・どうすれば・・」

うわ言のように呟く王女、相当な悩みを抱えているらしい

ううむ・・気まずい、実に気まずいぞ

ともかくここを動かないと・・

「・・?誰かいるのですか?」

ありゃ・・気づかれてしまった・・。

いかんな・・どうにもこっちに来てから俺らしくないミスが続いている

異世界に来たって事のプレッシャーでもあるのか・・

「あ・・王女様、申し訳ありません」

仕方ないので顔を見せる、それにレスティーナは少し驚きつつもすぐに顔を引き締める

「この図書室は王族以外の使用を禁じているのは知っているはずです。何をしていたのです?」

「あ〜、いやっ、王からの命令で『マナ結晶体』に関する報告書を取ってくるように言われて探していたのですが・・

初めて入る上に広すぎて良くわからなくて〜・・」

「・・なるほど、だから鍵が開いていたわけですね。

・・初めてならば仕方ありませんがここは国家機密を管理している場です。

入室と同時に鍵をかける事を心がけなさい」

「申し訳ありません。・・すぐに終わらすつもりだったのですが〜・・全然わからなくて・・」

「何を言っているのです。今貴方の横にあるのがその報告書でしょう?」

・・・え・・?

「あ・・これ?」

「そうです。・・?気づかなかったのですか?」

「あ〜!これだぁ!いやぁ・・助かるっす・」

灯台元暮らしって良く言ったもんだぜ・・・、

ってかあぶねぇ・・ばれるところだった・・

「・・?用事が済んだのならば出て行きなさい。私もやることがありますので・・」

「・・お言葉ですが、用事というよりも何か悩んでいたように私には見えたのですが・・」

「!!」

おおっと驚いている・・。

まぁ見られているとは思っていなかったようだしな

「あっ、いや・・覗き見るつもりはなかったんですが・・」

「・・・、いえ、構いません。私の事はよろしいから早く職務に戻りなさい」

少しキツイ口調のレスティーナ王女、だが俺の経験からして相当悩んでいるはずだ

・・伊達に騎士団長なんてお堅い職をしているタイムと付き合っちゃいない

「そうはいきません。王女の悩みは国に仕える私の悩みでもあります

・・このようなみすぼらしい一般兵ですが悩み事を話されたら少しは気も晴れますよ?」

「・・貴方は・・」

「まぁ木に向かって愚痴るつもりでいてくださいよ」

う〜ん・・なんで俺、王女さんの事が気になっているのか・・

立場的にタイムに似ているのだからかな。

ここにアンジェリカがいたら浮気だとか言ってゆすられそうだ・・

「・・ふぅ、貴方も変わった人ですね・・では、少しだけ付き合ってもらいましょうか・・かけなさい」

ふと顔の険が取れる王女さん、まっ・・王だろうが貧民だろうが息抜きは必要だ

「はいはい・・っと」

ゆっくりと近づき彼女の対面に座る。

・・しかしなんだ、こうして見ると・・幼児体型だな・・

なるほどぉ・・それが悩みか・・

「・・食事のバランスは大切ですよ?まぁ時が解決する事もありますけど・・」

「はっ?」

あれ・・違った?

「あ・・いや・・あはははは・・」

「何の事かはわかりませんが・・すごく失礼な事を言いませんでしたか?」

・・鋭い・・

「いやぁ、お気になさらず。ささっ、ググっと・・」

「・・ふぅ、貴方みたいに調子の良い兵士がこの城にいるとは思いませんでした。

・・・、貴方は今の体勢についてどう思いますか?」

「・・えっ?」

「安心なさい、父様には内密にしておきます」

「今の体勢・・エトランジェを使い勢力を広げている事ですか?」

「そうです。父は野心のために異世界からの来訪者を道具に使い悪戯に戦火を広げています

・・それがこの地を揺るがす大災害になるのでは・・常日頃からそう思っているのです」

軽いため息をつくレスティーナ、・・なるほどな・・血が繋がっていても思想は違うもんなんだな

かく言う俺もそうか・・。

出来の悪い親から出来の悪い子しか産まれないとも限らないし

「なるほど・・」

「エトランジェも・・身内を人質にされ望まぬ戦をさせられている状態です。

この国は・・取り返しのつかない過ちをしているのかもしれません

・・とはいえども、貴方や国民にとっては『龍の魂同盟』が一つにまとまり国力が充実した事は喜ばしい事なのかもしれませんが」

「・・・」

「私は・・今の流れを食い止めたい。スピリット達の事もそうです・・、

ですが・・彼女達が・・エトランジェが傷ついているのに私にはそれを成すこともできない・・」

・・なるほどね・・

「お言葉ですが王女、それは泣き言に過ぎません」

「えっ?」

「人もスピリットもエトランジェも同じです。・・目標に向けて突き進む原動力は・・それに宿っている心の力です

貴方にその意志があるならば出来ないことはないはずです」

「・・ですが・・私には・・」

「これは私の恩師が言っていた言葉です、『運が回ってこないなら自分で回せ。ジッと待っていても誰も何もしてくれない』

まずは自分で動くことです・・そしてそれに立ちふさがる壁があるならば如何なる醜態を晒そうが乗り越え目指す先に辿り着く

それを成せるかどうかは貴方の意志の強さで決まるのです

それに・・自分のやった事が正しいかなんて・・後世の暇人に任せればいいことですしね」

まぁなんというか・・血の繋がりにゃロクな奴はいなかったが・・それ以上に大切な人達に出会えた

そう考えれば恵まれているのかもな・・。

「貴方は・・」

「あはは・・恩師の受け売りですよ。うまくいかずに立ち止まった時に殴られながら励まされましてね・・」

「・・そうですか、参考になりました」

フッと笑みを浮かべる王女・・若いのにしっかりしているものだ

「あ〜、なんか私がしゃべってばかりになってしまいましたねぇ・・面目ないです」

「いえっ、いいのです・・。

だいぶ気も晴れました・・どれだけやれるかはわかりませんが・・私が望む理想のためにがんばれる気がします」

「まぁ深く考えないことですよ、根を詰めるとロクな事がないですから・・」

「ふふっ、貴方は変わっていますね・・」

「良く言われます・・」

ってかこの世界の人間の考え方とはそもそも合わないしな。

彼女ががんばればスピリットの差別も少なくなるだろう

・・・・・・、んっ・・

「っ!!!・・これは・・」

「・・どうしたのですか?」

・・血の臭い・・?それもかなりの・・

「王女様、非常事態のようです・・」

俺がそう呟いた瞬間、けたたましく警鐘が鳴り響いた


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