第九話  「過去との繋がり」




突如として魔法生物からの襲撃を受けてから数日が経過された。

当初は一斉に湧いてきやがったので厳戒令を発動させ住民は緊急避難、

騎士は総出で排除に向かい鎮める事ができたのだが

翌日からもハティの出現は続いた

最も初日に比べたら数は多くはないのだがそれでも住民が安心できるはずもない訳で

騎士団は総出で警戒に当たる事になった・・

これ以上被害者を出さないために都市外からの露天商は立ち入りを禁止する事が決定

普段から騎士団が世話をしている分常連の露天商も納得してくれ、交易隊も別の都市に積み荷の下ろしを頼んだ

同時にハイデルベルク騎士団本部にこの異常事態を報告して応援要請をして近々増員される予定だ

 

しかしライフラインを止める訳にはいかない

商業地区は閑古鳥がないているが工業地区は一部は稼働している。

テント群と住宅地区も含め外を出歩く者はいない、

やむを得ず外出しなければならない者は騎士が護衛をするようになり全地区の騎士が常に巡回をしている状況

だが外に出なければ生活できないのが人の常、

そこでタイムの指示で食料などの露店商数人に協力願って護衛とともに各地区の巡回販売を行い

なんとかそれで凌げている

・・が、こんなのはいつまでも続く訳がない・・

早急に解決したいところなんだが・・

今のところ決め手がない分ふんばるしかないのが現状だ

 

 

 

「すでに・・4日か・・。皆の顔にも疲労の色が見えているな・・」

 

団長室の自席にて深刻そうな顔つきになるタイム・・

ってか疲労色ならタイムが一番出ているんですが・・、

この数日で緊急に備えての体勢を指揮したんだからな・・

いつも忙しいのも加えて正しく休む間もないってやつだ

「だが、こんな時こその騎士って事で皆弱音も吐かずにがんばっているぜ。

・・ってかマー坊の存在が意外に利いているみたいだな」

臆病で傲慢な貴族ボンボンとして認識されていたマー坊が自ら進んで任務に付く事は騎士連中に取っても意外だった

さらにそれからと言うもの、

マー坊は常に現場の詰め所用テントに寝泊まりをしテント群を巡回しているそうだ

それだけのやる気を見せられちゃ見下していた奴らもがんばるしかない・・

精神的な部分での喝になっているもんだ

それにマー坊も何度かハティと戦闘をして傷を負いながらも的確に排除できているらしい。

・・・意外に本番に強い奴だったんだなぁ・・

「でも、いつまでも持つものとは思わない方がいいわよ。・・タイムさんもね」

静かに笑うアンジェリカさん、

有事という事でフィートとともに全面協力してくれて異常の察知を知らせてくれている

全く持って心強いもんだ

「・・皆ががんばっている中、私一人が休む訳にはいかない」

「は〜い、タイム。その考えはバツだ、いざという時のために休むのも騎士の仕事。

他の奴らだって十分とはまではいかねぇが休憩は取っている・・だからタイムもきちんと取りなさい」

無茶をするのがタイムらしいところだがそこは直さないとな

「クロムウェル・・だが・・」

「彼の言う通りよ。

今までの事からして貴女は根詰めて体を壊すタイプなのは皆知っているわ、もっと自分を大切にしないとね」

「・・・・、わかった・・・」

まぁ、理解してくれてありがたいもんです

「それにしても・・初日に比べて召還数は減っているものの・・日に必ず一匹は現れるな・・・」

「そうだな。だが思惑は良くわからん・・都市機能の麻痺が目的か・・」

「・・・それだけど、出現されたハティ達のデータを取ったの。するとちょっと面白い結果が見えてきたわ」

「面白い?現状は余り笑えないぞ?」

今だと冗談も通じないようだな・・、まぁそれもそうか・・

「笑えない状態を笑える状態にするかもしれないから面白いのよ。

・・どうもテント群での襲撃例が多いようなのよ・・

他の地区では召還されない日もあったけどテント群はほぼ確実・・

これは何かの傾向なのかもしれないわ」

・・傾向・・か。

まぁテント群はそれこそ一部精鋭揃いだから問題なく駆除できていたもんだから余り気にしていなかったが・・

確かに目撃数は多いな

「テント群・・貧民狙いか?」

「仮説だけどね、もしそうだとしたら貧民を嫌う者と言えば・・?」

「・・貴族・・っとでも言いたいのか?アンジェリカ」

「仮説よ、私もフィート君も貴族地区が怪しいと見ているわ」

・・まぁ、基本怪しいところだけどさ

根拠もなく毛嫌いするのが貴族連中の特徴だし、何よりそんな事やっていたとしても全然違和感ない

「理由は・・?まぁ何の根拠がなくても怪しいところだが・・」

「テント群は人が多く遮蔽物が少ないだけあって、元々制圧しやすい分狙われやすいのかもしれない。

けど・・テント群担当課の活躍によりあの布きれの居住スペースでも被害は出ていない。

私が転送召還をしている者ならばそれだけの猛者を配置していると判断してそこはひとまず避けるわ。

それでも、テント群への召還を止まらない・・、執拗と言ってもいいぐらいね

そんな訳で・・貧民を特別視している可能性があるっという訳・・。

まぁ、それ以外にも転送召還もひっかかるわ。

あれだけの数の生物を毎日転送するなんてのは長距離なら相当大がかりなシステムを必要とするの。

それこそアルマティの転送室を使ってでも難しいわ、

それほどまでの手間を掛けている割には作戦としては成功しているとは言い難いしそれに対して何の変更もない

ハティのみを使ってルザリアを襲撃しようとするには割が合わないの。

それに対して近距離での転送ならば負荷はまだ弱いしそれだけ的確に召還はできる・・

簡易的な転送術式でも可能よ。それでも・・良い出費にはなるわ」

基本的に転送召還ってやつは高等技術らしいからな

俺もアルマティで転送してもらったがありゃ・・超常現象ですよ?

「つまりは貴族地区のどこかからハティを市街に送り込んでいるって訳か?」

「そう考えるのが今のところ一番有力ね。

実はここ数日、誰にも気付かれないように微弱な結界を張って観測していたの。

ハティの目撃情報に照らし合わせると召還された瞬間に貴族地区から反応が検知されたわ。

極めつけはハティが現れた時に出現される魔法陣、

魔術を得意とする騎士が偶然目撃してその法陣を描いてもらったのだけど

近距離の転移術だという可能性が高いのよ」

・・水面下で色々検証していたのか・・ほんと・・頼りになるぜ、アンジェリカさん。

「そんじゃ貴族地区を中心として調査をする必要はあるか。

ってかあそこ担当の奴らは異常とか感じているのか?」

「報告では異常を感じはしなかったらしい

・・っと言っても立ち入り調査はできないが故に外見のみでの判断だがな」

──まぁ〜、そうだよなぁ

「・・ってか、無差別に召還されているならあのだだっ広い敷地内に召還されていてもおかしくないはずだよな」

「まぁな。だが具体的な被害の届けは出されていない。塀の中の様子は謎のままだ」

関わり合い持つのが嫌なのだが貴族だからな

そこを担当している奴らは忍耐力が鍛えられるってぼやいていたよ

基本犯罪者だから尻尾掴むのに忙しいらしいしなぁ

「なるほどなぁ・・うし、じゃあ俺は貴族地区中心に調べてみる。

他の地区への応援はできなくなるが大丈夫だな?」

「毎度お前に頼りっぱなしになるつもりはない。

皆任務に励んでいるんだ・・問題はない。

それにベイトさん達にも協力願っているからな・・いざという時には彼女達に助力願う」

初日の襲撃からベイト達も現場への協力をしてくれている

超一流の技の体得者達であるベイト達、故にルザリア騎士より強いです、ほんと・・

ベイトは完全無欠な投げ技、関節技により犬だろうが遠慮なく叩き潰す

ジョアンナは高速の連打(ラッシュ)、鍛え抜かれた拳と爆発的なフットワークを持っており接近戦で先手を取られる事はない

アイヴォリーは猛烈なマーシャルアーツ、リーチが長く鋭い鎌のような蹴りはハティの堅い体なんてもろともしない

ミーシャは高速移動と連撃を得意とし東国独自の武術にて敵を撃破する、

力こそないが特殊なツボを突き肉体を破壊したり超高速で衝撃を伝えダメージを与えたり、

身のこなしを活かして絶え間ない連撃を与えたりとまぁ一度動き出したら手がつけられない

一芸に秀でているように見えるが一つの芸でも極限まで鍛えられれば下手なアベレージよりも優秀なものだ

「完全にメイド職から離れた行為だが・・まぁ、この状況じゃな・・」

「一応は非戦闘員な分心苦しいものだ。全く・・早く決着をつけないと・・」

「だなぁ・・タイムが倒れてしまうな・・」

「本当ね。マーロウ君の一件や領主のとばっちりも受けた分、この一件が治まったら大型の休暇でも取りなさい」

「・・・そうだな。たまには体も休めないといけないか・・」

「おっ、そんじゃこの一件が終わったら前に言ってた観光旅行でも行くか?」

そういやそんな話をしていたしな

タイムの事だ、ゆっくり旅行なんてやった事ないだろう

「ク、クロムウェル!」

「あらあら・・、私の知らない間にずいぶんと楽しそうな事を計画しているじゃない?」

「そりゃ恋人同士だから当然だ。

まぁ行き当たりばったりになるがリフレッシュにゃちょうどいいだろうよ」

「・・・・・・、わ、わかった・・一考しておこう」

アンジェリカがいるし緊急事態だからプライベートな『甘えタイム』にはなれないようですね

それでもうっすらと頬を染めるのは嬉しいからか恥ずかしいからか・・

「ははは・・そんじゃさっさと終わらせるようにがんばらないとな。アンジェリカ、詳しい情報・・頼むぜ?」

「ええっ、任せておいて。講義室で説明するわ」

ニコリと爽やかに笑みを浮かべるアンジェリカさん

・・何か、寒気がするんだがとりあえずは解決の糸口が掴めたのでよしとしますか・・

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

「それじゃ手短に説明するわ。これがその結界内のマップ、最初はルザリア全域で観測していたのだけど

新たに貴族地区に限定して結界を張り直したものよ。

リアルタイムで魔術行使に反応するようにしているわ、それとこっちはルザリア全域のマップ。

こっちは感度が悪いけどハティの出現ぐらいならちゃんと反応して記してくれるわ。

空間(エア)画像(ディスプレイ)の構築ができる格部署の騎士にリアルタイムで情報提供しているの」

 

誰もいない講義室の教壇に座りながら優雅に説明するアンジェリカさん。

でかい机の上には何もなくその宙に立体的な地図が展開されている

魔術師が使う空間(エア)画像(ディスプレイ)ってやつでここに情報を表示して操作できるらしい。

・・仕組みはよくわからんが・・要するに「魔法ノート」って感じか

でっ、アンジェリカが展開している空間画像が情報統括役である『マザー』

ここから各部署の騎士達に情報を転送して、また各部署からの情報を集計しているらしい

地図が展開しているんだけど実際はもっと色んな機能があるらしいのだが・・説明してもわからなかった♪

 

んでもって説明通りにディスプレイは二つ、

貴族地区に限定した魔術反応型とルザリア全域での召還反応型で反応がある地点が光って知らせてくれるらしい

「・・ってか、全域だと性能が悪くなるのか?」

感度が悪い・・って表現は今ひとつ理解できないのだが・・

「いいえ、私レベルになると規模の大きさで左右されるものじゃないわ。

言ったでしょう?こっちは他の騎士達と共有しているの。

余り高精度なモノになると周りの魔力が持たなくなってしまうから低消費のマップと情報転送にしているのよ」

なるほどなぁ・・、流石は講師アンジェリカ。

余所にはないそんなネットワークを形成できるほどにルザリアの騎士を鍛えていたとは・・

「すごいもんだ・・って事はもう罠は張っている訳だよな、後は敵さんが動くのを待つだけ?」

「その通り・・基本的にはもうこちらから仕掛ける事はないわ。

後は反応を待つだけよ?のんびり行きましょう」

「のんびりって言われてもよ・・」

そんな状況でもないと思うのだが・・

「ふふふ・・果報は寝て待て、よ。

それよりも・・私を放っておいてタイムさんとは随分お盛んじゃないの・・、

二人っきりの婚前旅行を計画しているなんて、妬けるわ・・」

──嫌な予感してたんだよ

妖艶な笑み浮かべて俺の首に手を回してくるアンジェリカさん・・

足まで絡めてきよります

 

講義室には俺達以外誰もいないしそもそも屋敷内に人がほとんどいない。

ピンチです、タイム

 

「アンジェリカさん、婚前旅行じゃアリマセン、そして僕を困らせないでクダサイ」

自然に講義室を訪れる奴は今の状態だとありえない、

そしてタイムが屋敷にいるのにこんな誘惑をしてくれるという事は

すでにこの部屋に何らかの結界が張られているに違いない!

ってか何気に手がわかってきたよ!!

「あら、つれないわね・・男と女の関係な・の・に」

「その男と女の関係の後に訪れた地獄への入り口な修羅場が怖いんです」

「あらあら、マーロウ君の相手をした時の勇ましさはどこに行ったの?貴方らしくないわよ?」

「馬鹿の相手なんかと比べるもんじゃないって・・ほんと・・」

あの恐怖は生きてきて一番のモノでしたしね、

女ってのが本当に恐ろしいモノだと感じました・・

「いくじなし、好きにしていいのよ・・私を・・」

妖艶な声で耳元で囁き息を吹きかける、眼下には豊満な胸、そしてそれより下には白い足

そういや、最近シてないよなぁ・・

って、いかん!

いかんですよ!俺!

「アンジェリカさん、仕事場でそんな不純な事をしてはいけない!僕達は騎士なんだよ!?」

「厳密に言えば違うでしょうし、団長室であれだけ激しく交わっていた貴方が言う台詞じゃないわよ?」

くっ、アンジェリカさんに惑わされているのか・・

頭が上手く回らない・・

「いやっ、ほんとだめだって。そら体は反応しちゃっているけど・・タイムに悪い」

「ほんと、タイムさん第一ね。暴れ牛はそこまで手懐けられちゃったの?」

「いつから俺は誰でも抱く男になったんだよ・・?」

そりゃ・・なんやかんやで結構美味しい思いはしてますけど・・

「別に恋愛感情なんて求めていないわ、私も貴方も今欲しいのは蕩けるような肉欲、そうじゃなくて?」

まぁ・・ほんとご無沙汰なんですけど・・

 

っぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

「こ、この血の気が鮮やかに引いていくような極上の寒気は!?」

そして背後から刺すような視線が!!

「気にしなくてもいいわ、空圧で扉は開かないから・・

ふふふっ、扉一つ隔てて交わるのも悪くないんじゃない?」

悪い!悪いって!

扉越でもすごいのがびんびん伝わってきてるよ!

 

・・コンコン・・

 

「・・ア、アアアアア・・アンジェリカさ〜ん、来客ですよ〜?」

「誰だかわかっているでしょう?」

 

コンコン

 

「いあ、そりゃわかるけど・・!!来ているんだから早く出ないと!ほらっ、大切な用件かもしれないじゃん!!」

「そうかしら・・?ふふっ、案外つまらない用件かもしれないわよ?例えばプライベートな事かも・・ね?」

 

コンコン!

 

「プライベートでも呼び出しているなら出て行くのが礼儀だ!

速く出なさい!その時にはできれば窓を解放しておいて欲しい!」

「あらあら、窓から逃げ出す気?臆病ねぇ・・、ああっ、そうね。

()()イイ事(・・・)しよう(・・・)()して(・・)いた(・・)のがバレたくないのね?」

 

ドンドン!

 

「違うって!そんな事よりほら・・怒ってらっしゃいますから!早く出て、そして俺を解放させて!」

「それはちょっと味気ないんじゃないかしら?

こうやって二人っきりになれる時も久しぶりなんだし・・

入ってこれないんだから今からイヤらしい事しましょ?

ふふ・・今言っていたじゃない、彼女(・・)にはもう飽きたって♪

まぁ・・ただただ貴方に抱かれるだけで性技なんて全然、

お尻も許していないところそれも無理はないわね・・

本当に貴方を愛しているのかも疑問ね」

 

バンバンバン!!!

 

「まずい!まずいって!!アンジェリカは良くても俺が死ぬ!確実に死ぬ!!

ってかただでさえ今ストレス溜まっているんだから火にリットル単位で油注ぐのはやめぃ!

あれか!?テンプラ火災に水ぶっかけて爆発させるつもりかぁ!!?」

「っと言いながらどこ触っているの?・・ぁん♪もう・・上手♪

ダメよ・・ぁん・・、そんなに猛々しくまさぐって・・。

ふふっ、()かさん(・・・)と比べて・・良い感度でしょう?

もうこんなに勃ってきちゃった・・♪」

「お、おい!リアルに一人芝居するな!勘違いするだろうが!俺は触ってない!触りたいが触っていないぞぉ!!」

 

ドス!

 

・・・ひえぇぇぇ・・・!

 

扉の中央から刃が生えた、

見事に貫通させるは黄金の剣身・・使う人は一人です

ってか切り口から煙が出ている・・ここを焼き払う気ですか・・

刃はそのままゆっくりと扉を切り裂いて・・・文字を描いている

 

・・・コ・・ロ・・ス・・

 

「・・・・・・・・・・・」

 

相当お怒りのご様子でこちらから見たらもろ反転しているんだけど・・殺意はしっかり伝わりました

そして物騒な言葉を描いた後、刃は引き抜かれ怒気に満ちた足音がゆっくりとフェードアウトしていく

わざと聞こえるように大きくしていますね

「備品破壊しちゃって・・怖いわねぇ」

「お前が一番怖いわ!・・ってかどうするんだよ!またストレス溜まっているぜ!?」

「違うわよ。ストレス発散させるためにわざと怒らしたの」

「・・なんでだよ?」

何より俺の寿命が縮んだぜ?

「ふふっ、ああして感情をむき出しにしたほうがスッキリするのよ。タイムさんは色々溜め込むタイプだからね」

「本当かよ・・」

「まぁ・・怒った分は貴方を切り刻む事でチャラになるでしょう」

「やっぱ俺が体を張らないといけないわけですか・・?」

「愛する女のため、でしょう?割り切りなさい・・。

彼女は変なところで自己管理ができないんだから、貴方がしっかりと面倒を見ないとね」

ニコリと笑うアンジェリカ・・

最初からそのために仕組んだのか・・!

「・・男はつらいよ・・」

「宿命ね、まぁ・・がんばりなさい。死にそうになったら仲裁に入ってあげる」

「それはそれでさらなる修羅場になるので怖い。さっきも肝が冷えたんだからよ・・」

女の争いはほんと・・勘弁してください

あんなのどんなに強くなってもダメっすよ・・、足がすくんでしまう

「あらあら・・んっ?ふふっ、ちょうど動きがあったようね」

「・・・なるほど・・」

ふと見たマップには貴族地区の一点が点灯している、

そしてルザリア全体図には計3つ、点滅しだした

「間違いないわ・・この地点から転送をしたようね、同時に三体・・ね」

「よっしゃ!そんじゃそこを調べて見るよ・・でっ、そこどこ?」

こうした地図で見ると全然わからねぇな、元々地図なんて見ないし・・

「ここは・・・領主の別荘ね。

ほらっ、先のスクルト君の一件でラベンティーニが人身売買を行った現場よ」

・・んだとぉ?

「ますます持って怪しいじゃねぇか・・。うし、あそこならわかる・・行ってくるぜ!」

「わかったわ、私はここでモニタリングしているから・・気をつけてね」

・・そうか、アンジェリカは別の動きに察知するためにここにいないといけないもんな

・・まぁ、それはいいか

「あいよ。んじゃ、そこで状況を確認しておいてくれ」

まぁ動きが合った方がやることができていい、

これ以上ここにいると余計な災いが起こりそうだしな

そんな訳で、「殺す」っと刻まれた扉を開けてタイムに見つからないように領主の別荘へと向かう事にした

・・今見つかったらそれどころじゃないからさ・・

 

 

・・・・・・・・・

 

目的地である貴族地区の領主別荘では以前、ある事件が起きていた

領主の助役であるラベンティーニって馬鹿が獣人女性の人身売買を極秘裏に行っていたんだ

それに俺達の元へやってきた白狐族のツェーラとスクルトが何故か絡んできて救出した

白狐族の女性はほんと綺麗な子が多いからツェーラも狙われたんだろうなぁ・・

シトゥラも強姦に遭っても不思議じゃないくらいの美貌だし

まっ、その馬鹿助役も俺の連れに手を出した事が運の尽き、

徹底的にぶち壊してやったのだが・・そこで今でも忘れられない奇妙な敵と出くわした

 

・・俺が元所属していた第13部隊の隊長補佐をしていた女魔術師ファラにそっくりな女戦士

 

常人ではありえない身体能力で襲いかかるもなんとかそれを倒す事ができた、

その事についてラベンティーニに問い詰めようとしたが何者かに暗殺されて詳しい詳細が闇の中に消えていった

他人の空似って事もあるのかもしれないがあれ以降その事がどうにも引っかかってしまうんだよな・・

今回もそれが関与しているのかどうか・・

 

因みにスクルトとツェーラは無事結ばれた、

白狐族には夫婦っていう概念がないが仲睦まじいそうで

ツェーラの腹にはめでたく新しい命が根付いているそうだ。

まっ、その一件は良いとして今は別荘について・・だな

 

確かその領主別荘は突入時にフィートが大暴れした結果、

最終的に倒壊してしまいそのまま撤去もされずに放置されているはずだ

家主である領主は撤去費用がかかるということで放っておいたらしい。

自身の別荘で人身売買が行われているにもかかわらず自分は知らぬ存ぜぬの一点張りを通した下衆だからな・・

そんくらいの非常識発言は普通だ

そういや・・その領主も行方不明だったな・・こいつは何かあるか・・な

そうなると・・あのファラもどきがもう一度出てくる可能性も大いにある・・

フィートを連れてこればよかったか

でもあいつ、ここ数日ずっと恋人であるエネのところにいるらしいからなぁ

惚れた女を守るために住宅地区の守護風となって鉄ワンコを切り刻んでいるそうだ、

おかげで住宅地区は今のところルザリアで一番安全な地域となっている

簡単に女を捨てる癖に本命にはどこまでもがんばるものですなぁ・・ったく。

まぁ、この事はアンジェリカが知っている・・

俺が帰ってこなかったら増援を送るぐらいの事はするだろう

・・・タイムが了承したら・・だが・・

 

「・・うわぁ・・、すごいな・・こら・・」

 

そうこうしている内に目的地に到着したのだが・・すごいな・・

別荘周辺を囲む塀はそのままなのだが敷地内はもうメチャクチャ、

ガレキが散乱しておりフィートがいかに大暴れしたのかが伺える

なんせただ倒壊したんじゃなくて強力な風により吹き飛ばして倒したんだ・・

広大な中庭があったのだがそこまで木片やらが散らかっている

騎士団の現場検証が行った後はそのまんまだからな、

周りの塀のせいで通りからはその様子がわからないから他の貴族連中から撤去の要請もない

ほんと・・近所関係もくそもない処だからな・・

 

「反応が合ったとなるとどっかに何かがあるはず・・だが・・」

 

ビンゴ・・だな・・

中庭の先に以前来た時にはない物が立っている。

一見すると石像、だがそれにしては味気なさ過ぎな人形像・・

掘りってもんがないのっぺらい体で目のみがある・・

典型的なゴーレムだな。

だが通常は土や石を使うのに対し遠目から見てもそれは金属の類

色合い的には青銅だが体つきがごつい分頑丈そうなのはすぐにわかる

ってか・・と〜っても堅そうだね・・

「骨だな、一気に行くぜ!」

熊みたいにでかい人型ゴーレム、

しかも金属製となると機動性なんてまるで考えていないはず

現に俺が突進するのに気付いたようだが動きが遅いのなんの・・

そんな訳であっという間に射程内に入った!

「ライトニング!ブレイカー!」

その胸元目掛け雷拳をたたき込む!

流石は金属、打ち込んだ瞬間に雷はその全身に駆けていくのだが・・

「硬い!!!こらすごいわ・・」

俺の突きに対し胸元がポコンと凹んだ程度、中身までギッシリ詰まっていやがる

オマケに電撃に対してもさほど効果はない・・

俺のライトニングブレイカーを食らってここまで効果がないのはこいつが初めてだな!

っと、そうこうしている間にゴーレムが腕を動かした・・!

ギッシリ詰まった金属での一撃なんざまともに受けたら流石にまずい、

勢いつけての一撃でもダメージが少ない分一端飛び退く!

変なギミックがあったらまずいから少し大きめにバックステップをしてゴーレムの攻撃を先に回避する

・・が・・

 

 

・・ブーン!!

 

 

────遅っ

 

素早く飛びのいた俺が馬鹿みたいじゃねぇか・・

「なんだこいつ・・ただの壁か?」

戦闘用とは思えなくなってきたな・・んっ?

大振りの一撃を終わらせた後にゴーレムが俺に向けて拳を突きだした

なんだ?拳を振るうとともに投擲をするのはあるんだが突きだしてしまえば後は何も起こらないものだが・・

・・って・・なんだ・・?

突きだした右腕の肘付近から火花が噴き出している

 

ま・・さか・・ね

 

ドォン!!!!!

 

って!やっぱり!

「腕が飛び道具かよ!!」

炎を吹きさっきまでの鈍い動きからは想像も付かないほどの速さでぶっ飛んでくる金属腕

速さからして弓矢のそれとは比べものにならねぇ、これがこいつの攻撃か!

「うわっと!」

ものすごい速度で迫る金属腕を横っ飛びで回避する、んなもんまともに受けていられねぇ・・

大盾もってもブチ貫かれてしまう

俺を仕留め損なった金属腕は数秒もしない内に塀に激突してガレキにしやがった

あの様子じゃ通りはおろか向かいの屋敷の塀までぶち壊したかもしれねぇ・・

一発撃ってももう一発ある・・あれには要注意だな・・

「鈍い分隠し球はあるか・・ってか今度はなんだぁ?」

ゴーレムの胸元にいつの間にか魔法陣が展開していやがる・・

あの金属腕に気を取られた一瞬で用意してら、油断できないな!

その瞬間、術式が発動し法陣の中心から巨大な球形の炎弾が放たれそれは放物線を描き俺へ襲いかかる

威力はでかそうだが弾速は遅い・・だが油断大敵、もうちょい距離を開けて見るか

さっきの金属腕に比べたら造作もねぇ、とりあえず安全地帯まで逃れるが・・

炎弾は着弾するとともに地面を燃え上がらせる

なるほどな、弾速が遅い分有害ゾーンがでかい魔法・・下手に防ごうとしたら火だるま・・か

だがこれなら大した事はない・・って・・なんだ・・まだ魔法陣が消えていない

 

「二発目!?」

 

再び光を強め放たれる炎弾・・俺の位置を正確に掴んでいるらしくさっきよりも強く放物線を描いている

金属腕が2発な分この攻撃は相当使えるらしい・・理に適ってら

だが・・いつまでもやられっぱなしじゃすまない

魔法陣が浮かび上がっている時、その胸部が赤くなっている

力を使う時に変化があるところは重要なところ・・つまりは狙い目だ!

そこに一点集中で打ち込む!

「へへっ、手の内見せすぎだ!!」

弾速が遅い炎弾なんて造作もねぇ、その下をかいくぐりながら一気に接近する!

すでにゴーレムは三発目のチャージに入っているようだが遅いな!

 

「ライトニングステーク!!」

 

激しい電撃とともに拳を胸元に突き刺す!初撃に打ち込んだ穴に正確にぶち込んだ後・・

 

パァン!

 

その瞬間に放電・・ゴーレムの体を貫通させる鋭い雷の刃が突き抜けた

本来なら手刀で打ち込んで放電させるのだが流石にこいつ相手に手刀を突き刺すのは無謀

だが意識を集中させて放電に指向性を持たせるのは可能であり胸部に集中して雷が駆ける!

手応え有り!内部に十分伝わったはずだ!

それはゴーレムの様子からもわかる、魔法陣は崩れその巨体はゆっくりと倒れバラバラに砕けていった

やはりな・・動力は胸部にあったらしい

「人間に似せたようだが余計だったようだな・・」

っとは言え・・ハティに比べたらかなり厄介だ・・

侵攻用には最低だが拠点防衛用では優秀だ、

そんでもってこいつがいるって事はここに何かやばいものがあるって事・・

ゴーレムが立っていたところをよく調べてみるとそこには地下に通じる階段があった

その周辺のみが石床だって事は倒壊前は地下室へ秘密裏に入るための小屋か何かだったのだろう

今じゃそれも見る影もない、どこからが室外でどこからが室内かは石床ぐらいでしか判断できないぐらいだからな

ともあれ・・ここからが本番か・・



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