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第十一話  「ルザリア最大の危機」




 

意識が闇に落ちる、

全身が軋んだ状態で気絶しただけに心も変に苦しい

・・よく考えてみたらクラークさん以来のはっきりとした敗北だからな・・

悔しいというかなんというか、実感が湧かないが深層心理的に疼いているのか

ここで寝ていられないと気が急いてしまう

それもそうだよな、ルザリアを騒がしている原因がわかった以上タイムに伝えて沈静化しなきゃいけない

俺を助けたあの姉ちゃんが伝えてくれていると思うが・・

やはり俺からも報告しないとな

 

 

「・・クロ・・クロ・・・」

 

 

・・ん・・?タイムの・・声・・

ああ・・そうか、妙に頭が冴えているが俺は眠っていたんだよな・・早く起きないと・・

 

 

・・・・・・・

 

「ん・・ぐぁ・・ふぅ・・いたたた・・」

 

ぼんやりと目が開き意識が次第にはっきりしてくる、目の前には心配そうに見つめるタイムの姿・・

何とか手を伸ばそうとしたが激痛が走った

「お目覚め?・・ほんと、大した回復力ね。感心するわ」

「クロ・・」

タイムの隣で憎まれ口を叩きながらも心配そうな様子のアンジェリカ・・

迷惑かけちまったかな

「余り良い目覚めじゃねぇけどな・・っ!今回は流石にきついな・・」

ゆっくりと上半身を起こし周囲を確認、ここは・・タイムの私室か。

タイムのベッドに寝かされていたらしいな。ベッドの隣にいるはタイムとアンジェリカ

出動していたのかタイムは鎧姿のままでありアンジェリカも魔女スタイルのままだ

・・んっ、なんだ?部屋の奥に見知らぬ女が珈琲飲んでいる

髪の毛はボサボサで後ろで軽く結っている・・がそれ以上に目立つのが視線が全くわからないグルグル眼鏡

そしてあからさまに職業を主張している白衣

 

「思ったよりも早いねぇ〜、もうちょい眠っていると思ったよ」

 

ニヤリと笑いながら普通に話してくるグルグル眼鏡・・

いあ、フレンドリーに話されても・・

「あの〜、どちらさん?」

「貴方を助けた人よ。ベアトリーチェさん、プラハ近郊で練金研究をしている人だって」

「・・俺を助けた・・?あれ、確か赤髪のメイドさんだったような・・」

「ありゃ私の使用人ってところさね、今は別行動さ」

・・なるほど、このベアトリーチェってのがあのメイドの雇い主か・・

「感謝しなさいよ、

普通なら一ヶ月は寝たきりな状態なのをベアトリーチェさんのおかげで起き上がるまで回復したの。

──本当、感心したわ。練金精製のパワーストーンを応用した治癒がここまで有効だって」

感心しているんだけど気絶していたから何やられたのかは全然わからねぇ・・

石を使って治療?

妙な石を埋め込んで蘇生したとかじゃねぇだろうなぁ・・

「・・俺、そんなに酷かったのか?」

「酷かったも何も瀕死だよ、その右手なんて骨がグチャグチャだったし腹の方もだいぶ酷かった。

・・まぁ生きているのが生命の神秘ってやつかね?」

・・うへぇ、そんな酷かったんだ・・確かにあの時右手が全く動かなかったからな

「クロ・・」

「悪い、タイム・・心配かけたな」

「ううん、私の方こそごめんなさい。もっと貴方に気を掛けて複数で調査するようにしておけば・・」

「──いや、俺一人でよかったかもしれない。援護に回っても止められなかっただろう」

ヘキサ・・あいつの強さは異常だからな

俺とフィートを纏めて相手にするつもりだった以上、小隊で挑んでも結果は同じ

・・いや、もっと酷い結果になっていたはずだ

「ふぅん。中々分析しているじゃないさ、流石だねぇ・・クロムウェル=ハット」

「あ〜、ベアトリーチェ。

色々と疑問があるんだけど・・

あのメイドさん、俺を助けるのが任務って言っていたけど・・あんたが命令したのか?」

「ご明察、彼女・・ヘキサの狙いがあんただって事は掴んでいたからねぇ」

「・・奴の事を知っているのか?」

「知っているも何も、今回のこの都市の異常も全てわかっているよ。

そこらはタイム団長とアンジェリカにも説明して対応してもらっている」

・・なんてこった、そんなに話が進んでいたのかよ?

「俺だけ仲間外れ?」

「気を失っちゃしょうがないさね、順を追って説明するよ?」

「・・頼む。でもわかりやすく頼むぜ?」

「わかったわかった、まず現状から説明しよう。

クロムウェル、君があの地下室で気絶してから丸二日経過している。

その間ルザリア内では魔物の出没が急増して

ルザリア騎士団とハイデルベルクの増援隊が対処しているが正直旗色はよろしくない」

 

なんだと!?

 

「・・タイム・・」

「うん、ハティだけじゃなくて色んな魔物が徘徊するようになったの。

総出で住民の避難をさせて交戦しているのだけど負傷者多数で頭を抱えているわ」

「ちっ・・!ああっ!そうだ!領主は・・」

「それも説明しているよ、今回の一件の首謀者は領主ギーグ=セルシオ。

現在は自身の屋敷に身を寄せていると思うが周辺に超強力な結界が張られている。

アルマティの法王レベルにしても解除に手間取っていてまだ侵攻はできない」

「数ある結界の中でも最高レベルだからね・・フィート君と二人でやっているけど・・後数日かかるわ」

「なるほど・・だからこそ堂々と居場所を言い放ったわけか・・でもなんでギーグの野郎は・・」

「実験だよ。製造した魔物でハイデルベルク有数の都市を制圧できるかどうかって言うね」

「・・実験・・確かにそんな事言っていやがったな。

『彼ら』がどうとか言っていたから・・あいつの意志じゃないか」

「その通り。ギーグはルザリア領主以外にもう一つ顔を持っていた・・それは闇商人と言えばいいのかね。

とある組織と取引をしてその一員に加わろうとしていたんだ。

貿易都市という事で違法な物をその組織と取引して、

ついには自分の都市を売ったんだよ」

「・・組織?」

「『レイヤード』ってところさ。裏で色々よからぬ事を企む連中でねぇ・・

今回自分達の研究機関で開発した魔物どもが優秀な騎士団相手をどれだけの期間で倒し

都市を制圧できるかの実験を行っているのさ、

おそらくは奴らからギーグに実験を持ち出し承諾するなら組織に一員に加えるようにしたのだろう」

「むなくそ悪いな・・ってか・・レイヤードって・・確かアルマティを崩壊させた組織じゃねぇのか!?」

「その通り、アンジェリカもアルマティ解放に立ち会ったらしいねぇ」

「ええ・・まぁアルマティを焼き払う事自体に文句はなかったのだけどね」

「ちょっと待て、確かレイヤードってのはアルマティの連中と小競り合いをし続けているんだろう?

ルザリアに手を出す余裕なんてあるのかよ?」

「それだけ巨大な組織なんだよ、ぶっちゃけ、アルマティ侵攻もルザリア侵攻も違う連中が指揮を執っているのさ。

もっとも・・情報はそれなりに共有させているだろうがねぇ

・・特にクロムウェル、あんたが目をつけらているのさ」

「俺・・?フィートとかの方が目立ってだけどよ」

「そうでもなかったようだね。まぁ先のラベンティーニの一件でより詳しくデータが取れてしまったから

それを元に
対クロムウェル用として開発されたのがヘキサだ。

成果は上々、仕留めるには至らなかったがあんたを半殺しにはできたところ中々の出来らしいね」

「俺はそんなに褒められないけどよ

・・ってか、ラベンティーニの一件でどう俺のデータが取れたんだよ?」

 

「・・クロムウェル、その一件で小柄な女と戦っただろう?それさ」

 

「っ!!?あのファラに似たメチャクチャタフな女か!?」

「──その通り。あれはMVと呼ばれるレイヤードの兵卒だ、

高性能な戦闘ホムンクルスでまぁ性能は言わずもかな・・だね。

奴らはそれを量産して闇市場で売りさばいているんだよ、

そしてその戦闘データは一カ所に送られ次の作品のために活かされるんだ

ギーグは自分に足がつかないようにしながらラベンティーニにMVを購入させていたんだよ。

まぁ狙ったのかどうかはわからないがクロムウェルと交戦してそのデータが開発した奴の元に送られ

それを参考にして
さらに強力なホムンクルスであるヘキサが生まれたって訳だよ」

「・・なるほど、確かにヘキサは自分が人形だって言っていたな」

・・そういやフィートの奴もムーヴァって言っていたな・・

舌噛みそうだからファラもどきで通していた分言われても気付かなかったぜ・・

「ただの人形じゃあない。ヘキサはMVを超えた次世代の戦闘ホムンクルスだね・・

MVって言うのは任務遂行のみを念頭を置いて絶対服従を基本をしているから自我を剥奪されているんだよ」

「なるほどな・・確かにあのファラもどきは人形って感じがしたがヘキサはそんな感じじゃなかった」

「そう、ヘキサは自身で高い知能を備えいかなる状況でも与えられた使命をこなすように製造されている

ホムンクルスって言ってもほぼ人間だ、・・いや、超人って言った方がいいかね。

人が造った存在故にその身体能力の高さはあんたの深傷を見ればわかるだろう?」

「ああっ、あれは異常だ・・。

つまりヘキサは俺を殺すためだけに生まれた超人って感じでいいのか?」

「まぁ、そうだね。今のあんたじゃヘキサには適わない・・体が治っても殺されるのが目に見えているよ」

はっきりと・・でも反論できないか・・

「だけど、あいつに深傷を負わす事はできた・・」

「そこらは上等って感じかねぇ・・でも現状じゃ勝ち目はない。

その証拠に最高度を誇るブラックダイヤは粉々に粉砕されてそのまま右手を破壊されただろう?

ブラックダイヤの粉砕で雷の威力が一瞬倍増した故にヘキサの攻撃はわずかに反れたんだが・・

まともに受けていたらその右腕は消滅していたよ?」

「・・そ、うだ・・!俺の崩天は!?」

「回収してあるわよ、でもブラックダイヤは完全に粉砕されているわ。

グローブ部分は何とか残ったけど・・

異常ね・・破砕不可能とまで言われているブラックダイヤが綺麗になくなっているんだから」

「それが、ヘキサの能力さ。

彼女は超人じみた身体能力と高い治癒能力を兼ね備えている以外に

対クロムウェルの切り札としてとある術を備えてるだ。その術の効果さ」

「術・・?確かソニックブレイカーって技で砕かれたな」

「それだよ。ヘキサに備わっているのは『失われた(ロスト)魔術(マージ)』と呼ばれる特殊な魔術だ」

「・・・失われた(ロスト)魔術(マージ)?」

魔術は専門外だから初めて聞くな・・

失われた(ロスト)魔術(マージ)、簡単に言うと『訳あり魔法』って事よ。

先人が使いにくいって事で書に記して
拾得者がいなくなった術なの。

大抵は実用的ではなく他に優れた術があるからと言って誰にも見向きがされない物のはずよ」

「普通ならね、でも中には特異なのもある。ヘキサが使ったのは白風(ホワイトソニック)と呼ばれる術だよ。

物質を破壊する特殊効果を持つ風術でまともに受けたらどんな物質でも破壊されてしまう」

「おいおいおい・・メチャクチャ実用的じゃねぇかよ・・」

「ところがどっこい、白風が行使できるのは接近戦のみ。

それも莫大な量の魔力を消費しながら神経を常に尖らせないといけない

実用するとなりゃそうさねぇ・・、全力疾走しながら針に糸を通すほどの器用さが必要なんだ

まっ、魔術師には余りにもハイリスクなのさ。

かと言って戦士が習得できるほどハードルは低くない・・っと」

・・なるほどな、魔術師ってのは格闘戦なんて苦手だろうし・・

格闘をこなせるスタイルを取る奴なんて今でも極少数なんだし

「自身で殴りかからないと意味がないか・・そら誰も習わないわけだよな・・」

「そう、他にも失われた(ロスト)魔術(マージ)には格闘戦に特化した術が幾つかある、

普通の魔術師には使いにくいが
条件によっちゃ非常に強力なんだよ」

「・・ちっ、なら勝ち目はないのかよ!」

「まぁ焦りなさんな。あんたが信用するならこの状況、打破してやろうじゃないか」

「・・お前が・・?」

「私としても奴らの動きを見過ごす訳にはいかないんでねぇ・・っと言っても今は訳ありで表立って動けないんだけどね」

「・・・レイヤードやヘキサについて妙に詳しいのもその訳ありって事か?」

「そう、まぁそこらは目を瞑ってくれるとありがたい。

とりあえず敵ではないのは天地神妙に誓ってもいいさ」

・・・

「わかった。ベアトリーチェ、この状況を打破するために手を貸してくれ」

「あいよ・・話がわかる奴で助かるよ・・、でも騎士団の状況は専門外だ。そこらは何ともしがたいよ」

「・・何とかするしかない・・か。うし、とりあえずは街の様子を確認してくる」

「ク、クロ!いいの!?」

「ああっ、やることがあるんだから寝ていられねぇ。

体の調子も本調子じゃないが悪くはない、右手さえ使わなければ何とか戦闘もできるさ」

「無茶はしないでよ」

「わかっているって。んじゃ、ベアトリーチェ。ちょっと席を外すぜ」

「ああっ、わかったよ。私も準備する事があるから・・団長室で待ち合わせと行こうじゃないかい」

「わかった。んじゃ、巡回してくる・・」

「待って、クロ・・私も行く」

「・・おいおい・・」

「お願い・・」

「・・わかったよ。でも無理するなよ?」

「今のクロに言われたくないわ、さぁ・・行きましょう」

強引に手を取るタイム・・相当心配していたんだろうな・・

まぁそれも仕方はない。とりあえず、今のルザリアの状況を確認しに行くとしよう

 

 

────

 

しばらくして、タイムと共にルザリアの様子を見て回ったがまぁ・・酷かった

各地区必ず戦闘が行われており騎士達が奮闘していた、

敵はハティ以外にも別荘で見かけたゴーレムも配置されており

上半身だけの骸骨が鎧を着て浮遊しながら襲ってくる奴もいた。

本格的な襲撃・・、

都市機能は完全に麻痺しており住民の避難場所を死守しつつも戦力となる騎士小隊が討伐に出ているという事らしい

幸い、街にこれだけ魔物が闊歩しているが死者は出ていない。

それだけ騎士が奮闘しているからだ

しかし住民を一カ所に纏めるほど事態に余裕がなかったために

避難所が複数存在し各部署毎で騎士達が分担して対処している

そのために連絡が取りづらく余り良い状態とは言えない。

情報によれば敵は無制限に現れるために完全な消耗戦状態・・強引に攻めてもジリ貧になるからな。

だがそのまんまでいればいずれ魔物で溢れかえりどうしようもなくなってしまう。

そんな訳で俺とタイムは街で目に付く範囲で魔物を排除して各避難所に対して顔を出し様子を確認した

騎士達は疲労感を漂わせるがまだまだやれそう、

タイムに現状を伝え今後の行動を打ち合わせて次に回る・・

直接陣頭指揮を執るのがいいのだがタイムは騎士団屋敷を守っているだけにそれも中々難しいとの事。

現在ルザリアでの最重要拠点としてあるのが屋敷だからな。

ここが一番安全という事で街のガキや年寄りが最優先で避難させている。

そしてそこを守っているのがタイムとアンジェリカ、後は総務室の連中となっている

そんな訳で一通り街を周り騎士の安全と様子を確認した後に屋敷へとたどり着いた

流石に一人で廻るにはきつい敵の数だったがそこはタイムがしっかりとサポートしてくれて何とかやり過ごせた

・・だが、やはり無制限らしく屋敷に戻った時には再び通りには魔物の姿が見えていた・・やばいな、ほんと・・

しかし事態を打破するには領主の屋敷の結界を破りギーグの野郎を倒さないといけない

貴族地区を見回ったが目で見えるほど強力な結界が張っていやがった

なまじの奴なら触れただけで黒こげにするぐりあのモノだそうだ・・

まぁそこはアンジェリカとフィートが何とかするらしい、

とりあえず俺がやらなければいけないのはヘキサを倒す事・・

それができなければギーグを倒す事はできないからな

そんなわけで、事態を打開すべく謎の協力者のベアトリーチェさんにご助力願いますか

 

「おうおう、帰ってきたねぇ・・意外に遅かったじゃないかい。魔物やられたかとちと心配したよん」

 

団長室に到着するとあの独特の軽い口調で話しかけてきた・・

おまけに無断で団長しか使用してはいけない机に座ってら・・

まぁ、俺も座っているんだけど・・

その隣ではアンジェリカの姿も・・、こいつも協力するのか?

「ばぁろぉ、幾ら何でもそんな事で遅れなんて取るかよ・・でっ、用意はできたのか?」

「あ〜、ばっちりさ。そんじゃ・・説明するけどいいかい?」

「おうよ。頼むぜ」

とりあえずはソファに腰掛けてベアトリーチェの言葉に耳を傾ける、

タイムも自分の席を取られたから俺の隣に・・

そんな事で文句を言うような状況でもないらしいがちょっと・・不満そう

「ああ・・、とりあえず現状問題となっているのは街の魔物、屋敷の結界、そしてヘキサという存在だ。

街の魔物の排除は正直消耗戦に近い故に被害者を極力少なくして終息まで踏ん張るしか方法がない。

結界に対しては・・まぁ、私が言うよりも法王クラスの術師が二人もいるのでそちらに任せる。

後はヘキサだ、これを対処できるのはクロムウェルしかいない」

「負けたけどな」

「次に勝てばいい・・、結界が崩れるまでの数日でクロムウェルにはヴァージョンアップをしてもらおう」

「ヴァージョンアップって・・、そんな短期間に強くなれるのかしら?」

アンジェリカが呆れるのも無理はない

まぁ、ここでの一分がそこでは一日経過するような素敵空間があれば別だけど

「勝算はある。もっとも鍛錬して鍛えるにしては期間が短すぎるから

私にできるのはクロムウェルに力を『付加』してやれるぐらいだけどねぇ」

「力を・・付加?」

「そう。先ずは武器だ・・

ヘキサが装備しているダイヤモンドのナックルグローブはそれだけでもブラックダイヤを超える硬度を誇っている

ぶっちゃけ、白風(ホワイトソニック)の効果に巻き込まれていなくても

お前さんのブラックダイヤは砕かれていたのは間違いない」

「・・待って、ダイヤモンドを硬化させたのがブラックダイヤでしょう?」

「そうさね・・だがそれは巷に出回っている既存の技術、

ヘキサのダイヤはまた別の加工を得て強化をしているんだよ。

つまりは透明な強化ブラックダイヤと思ってくれて良い」

「・・でっ、それに対抗する訳か」

「ああっ、使用するのはこいつだ。

アークトゥクスっていう戦闘用人工ダイヤモンド・・

このままでも十二分な硬度を持つがこれを硬度化させて

世界最硬度のブラックダイヤにしてやる・・そこは私の独壇場さね」

取り出したダイヤモンドはかなりでかい・・流石は人工物だが原石なのか輝きはなく、ややくすんでいる

「ちょっといいかしら、ダイヤモンドの硬度勝負でどうこうなるモノでもないと思うのだけど・・」

「流石はタイム団長、まぁそれについてはちゃんとした設計はしているよ・・

優秀な鍛冶師を呼んでいるから安心しておくれ」

「・・おいおい、今ルザリアが外部からの立ち入りを禁止しているんだぜ?」

「──まぁ、そこらは追々説明するさね。

次は技術!ヘキサには前回ラベンティーニの一件で記録された

クロムウェルの戦闘データを元に格闘に特化した性能を持っている

ついでに法王フィートもその場にいたから風術も使えるようにしているはずだ。

だからこそ格闘戦に特化されたホムンクルスでありながら白風(ホワイトソニック)を行使している、

他にも「狂風」のような遠距離の飛び道具も持っていると考えた方が良い」

・・そうだとしたら・・死角ねぇな・・

「・・つまりはクロムウェルを倒すためにクロムウェルとほぼ同等の力を手にしていたわけね」

「そう、本来ならばあの地下室の戦闘で目的であるクロムウェルを倒せていたはず・・しかし結果は辛勝・・

自身もしばらくは戦闘行為が出来ないほどの深傷を負っていたわけだ。

つまり・・MVの情報と実際に戦ったクロムウェルの戦闘能力に誤差があった・・

その間に成長していたって訳だ。まぁ・・その誤差も今頃修正しているんだろうけどね」

「・・おいおい・・修正していたら同じだろう?」

「頭の回転悪いねぇ・・

つまり、同じようにもう一度ヘキサと戦う時までにお前さんが一皮剥ければ勝機があるんだよ」

「・・簡単に言うけど、技なんてものは一朝一夕で習得できるものではないわ。

クロだって毎日訓練を欠かしていないから
その誤差が出たのでしょうし」

うむうむ、タイムは俺の事を良くわかっている・・

「ところが、あるのさ。一朝一夕で技術を習得できる裏技がねぇ・・」

・・・・ウソ・・?

「マジですか?」

「マジだ。アンジェリカなら知っているかもしれないかな〜?

技術(スキル)複製(コピー)』だよ」

「っ!・・それは・・禁呪指定じゃない」

・・?何かアンジェリカさん驚いているけど俺わかんないよ

「説明プリーズ、アンジェリカ女史」

「・・つまりは高度な情報交換と言ったところかしらね。

例えるなら・・ある人がAという技術を持っているとする、

この術を使えばそのAという技術を別の人に習得する事ができるの」

うおっ!それってすんごい便利じゃん!

「もちろん、それなりの条件がある。

アンジェリカの例えを使わせてもらうと例えばその人が習得しているAという技術が
難易度の高い魔術だとする、

それを仮にクロムウェルに習得させても行使はできないんだよ」

「・・なんで?」

「つまりは元から習得している人には簡単に行使できても

クロムウェルみたいな魔術の素人が
そんな難易度の高い術の使い方を知っていても実際は知っているだけ、

行使するには体と頭のスペックが追いつかないの。

その術の使い方を知っているだけで発動するには全くの力不足って事ね」

・・なるほどな、確かに下地なんて全くない状態でいきなり難しいのを使う訳だしな

「・・だったら、その技術の提供者と同じ程度の技術をクロが持っていないと習得しても意味がないわけね」

「その通り。まぁ今のは術での例えだけど体術などの技でも可能だ・・

その人が習得している技のやり方やコツってのを習得できる。

しか〜し!ただ習得しただけでは技の威力は本家に比べてだいぶ貧弱だ・・それは間違いない」

「──そうか、得るのは技の『情報』だけ。

幾らやり方がわかっても体がそれに慣れていないと本家に比べて劣ってしまうわけだな?」

「その通り!技術複製をした後でその技を改めて鍛える事で初めて習得するんだ。

この屋敷には確か体術のエキスパートでもあるメイドさんがいただろう?

彼女達に協力してもらってクロムウェルに技を与える。

お前さんはそれを本番までに自分のモノにするんだ」

・・とんでもない訓練だな・・、だが・・希望は持てるか

「わかった・・、条件があるけど便利だなぁ・・ってかなんで禁呪なんだ?

同じ技が世界中に溢れるから?」

「そんなんじゃないよ。

技術複製ってのは情報を他者に与える術だ・・それがさらに進んだらどうなると思う?」

・・???

「・・なるほど、技術の情報だけじゃなくて記憶や性格まで相手に与えてしまう」

「そこまで言えば与えるんじゃなくて移植、もしくは浸食するって感じになるかね。

それが不老不死ともなるとして禁呪扱いになったのさね。

もっとも・・人格複製と移植先の人格の浸蝕は理論上での話なんだけどねぇ」

それでも二重人格にはなりそうですね・・

・・ん?

二重人格・・ひょっとして・・ファラの奴も・・?

まさかな・・

「技術複製は後で早速行うとしようかね、

後は
白風(ホワイトソニック)対策だねぇ・・これは、武器ができた時に教えるよ。

それで何とかなるはずだ」

はい!?

「やけに悠長だな?触れていたらバラバラになる激ヤバ魔法なんだろう!?」

「だ〜か〜ら〜、普通の対策じゃ意味ないのさ!

まぁあれは遠距離使用はできないんだから
お前さんが近寄らずに倒すか

あの攻撃を全て回避して倒せば用意しなくてもいいんだけどね」

「絶対無理っす♪」

あれだけの身体能力を持っていたら回避は紙一重だからな、

無傷じゃまず勝てない・・でも一発でも食らったらアウトでしょう?

・・無理ですよ・・

「なら文句を言わずにこっちの指示に従っておくんなよ」

・・へいへい・・

「でも・・武器はどうするのよ?追々説明するとさっき言ったけど・・」

「・・まぁ、そうさね・・おっと、用意できたようだね。

ちょいと風が吹くと思うけど驚かないでおくれよ?

・・?なんだ?用意って言ってもここには俺達しかいないんだし・・

 

カッ!

 

ぬおっ!?いきなり室内の中央部に閃光が!?それと同時に風が吹き荒れた!

 

「・・お待たせいたしました。ご主人様」

 

───何が起こった?今まで四人しかいなかった団長室に、突如として人が現れた

それも3人・・一人は地下室で俺を助けたあのメイドだ・・。

一人は犬人の少年、最後の一人は黒髪の女。って・・あれは確かリュートか!

 

「うわ・・本当だよ・・シャン」

 

「すごい・・ね。リュート」

 

何か驚いてる・・まぁ俺も驚きだしアンジェリカなんて青冷めている・・何かのイリュージョンだな

「おうおう、ご苦労様〜。え〜、紹介しよう!我が右腕であるスレイブたんだ!」

「スレイブたんだ!って言われても・・、まぁ・・その節は助かったぜ?」

「・・いえ、任務ですので」

うむ、タンパクだ

「ははは・・リュートも久しぶりだな!アルマティでの一件以来か!」

「えっ・・?ああっ!クロムウェルさんにアンジェリカさん!

お久しぶりです!って・・ここは・・本当にルザリアですか?」

「ああっ、厳戒態勢中の貿易都市ルザリアだよ、ここは騎士団の団長室さ」

「ええっ!?そんな処に・・」

やたらと周囲を気にしているようだけど・・

「お〜い、ベアトリーチェ。自分だけ理解していても周りはわからん、説明せぇ」

「あいあい。え〜っとスレイブたんの紹介は終わったね、

でっ、こっちの犬人はリュート。そっちの姉ちゃんはシャン。

優秀な鍛冶師だよ。HOLY ORDERSの店主・・って言えばわかるかね?」

「・・あの有名な鍛冶工房の・・?」

タイムが驚いてら・・

「・・タイムも知っているのか?」

「え・・ええ、プラハに小さな店を構えている鍛冶屋だけど

その品物はどれも逸品でオーダーメイドを頼む騎士も多いのよ」

「いあ・・はは・・どうも。

ベアトリーチェさんから至急の依頼という事で何だかよくわからない内に到着したのですが

ナックルグローブを造るという事でいいんですね?」

いあ、普通混乱するような状態なのに・・意外に適応能力あるな・・

「あ、ああっ、俺のだ。とっておきのを造ってくれよ」

「わかりました!で・・どこで造ればいいんですか?」

「そこらは街の鍛冶屋を失敬させてもらうよ。まぁ・・事後報告って事で一つ」

・・非常事態ですからね

「了解したわ、この場合は仕方ないでしょう」

「物わかりが良くて助かるよ・・そんじゃ!

詳しい図面は現地で説明するよ〜、材料も用意しているから安心しなよ」

「・・ちょっと待って。リュート君・・

貴方達・・普通に適応しているけど・・今自分がどんな事をしたのかわかっているの?」

なんだ?アンジェリカさんが深刻そうに見つめている

「・・え?いや、さっぱり・・今までプラハの店にいたのですが突然こちらに来ましたので・・」

「・・なんだ?アンジェリカさんすごい事なの?」

「凄いもなにも、単独で複数対象の転移なんて聞いた事がないわ。

相当な転送システムが必要なはず・・

おまけに今この都市では魔物の認識を鈍らせる結界が張っているはず。

その影響で転移座標に少なからず誤差がでるの・・

だからこんな目的地と思われる場所にドンピシャリで現れるなんて不可能だわ」

「・・そ、そんな凄い事だったのですか?」

「・・まぁ、通常転移ならね。

スレイブたんが行使したのは
空間(ゲート)飛翔(ジャンプ)これも禁呪指定さ。

頭に浮かんだ地点に瞬時に飛ぶ・・故に普通の結界なら無効化されるのさ」

・・禁呪って色々あるんだな・・

「・・ってかさ、それだったらスレイブたんが領主屋敷の結界を通り抜けたらいいんじゃねぇか?」

「チッチッチ、言っただろう?

空間(ゲート)飛翔(ジャンプ)は思い描いた地点にしか飛べないんだよ。

つまりは自分が一度言行った処、見た処じゃないと飛べないんだ」

なるほど・・なぁ・・

「そんな禁呪までが・・技術(スキル)複製(コピー)といいベアトリーチェ、貴方一体・・」

「・・・・まぁ、知識の探求者ってところで頼むよ」

「──わかったわ」

「ありがとよ・・そんじゃあクロムウェル!

近くの鍛冶屋まで案内してくれ!そこで超かっちょええ武器を造ろうじゃないかい!」

・・いあ、造るのはリュートなんだろう?

 

「・・あいよ。そんじゃタイム、アンジェリカ・・ここは任せる。ちょっと行ってくるぜ」

「わかったわ・・ここは任せて・・クロ・・」

ニコリと笑い何のためらいもなくキスをして起立。

ふっ・・人前でも関係あるかってんだ!よっしゃ!色々あるがやってやるぜ!!



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